「なんとなく」から「エビデンス」のあるリハビリ提供へ

社会福祉法人小田原福祉会

水口英一さん(管理者)

課題
  • マシンはあったが適切に運動を提供できているか不安だった
  • 他のデイサービスとの差別化に悩んでいた
結果
  • なんとなくからエビデンスのあるリハビリ提供が可能に
  • 新規の利用者が増え、満足度も向上した
  • 個別機能訓練加算の算定により、収益が上がった
  • 社名・事業所名:社会福祉法人小田原福祉会 潤生園 みんなの家ほりのうち
  • 所在地:神奈川県小田原市、一部南足柄市
  • 定員数:33名
  • 専門職:看護師在籍

神奈川県小田原市にある社会福祉法人小田原福祉会「潤生園 みんなの家ほりのうち」は、定員33名の地域密着型の通所介護事業所です。職員20名の中で、機能訓練指導員を兼ねた看護職員が2名在籍しています。

利用者の方々とフランクに接することを心がけておられ、施設の中の雰囲気もとても和やかです。2015年に開業され、地域の高齢者と真摯に向き合い続け、多くの方々に受け入れられてきました。

一人ひとりに合った個別機能訓練を提供したいという想いから、リハプランの導入を決められました。2022年6月から利用を開始し、その後、利用者の満足度は向上しています。運動目当てで加入される新しい利用者も増加したそうです。今回は施設管理者の水口英一さんにお話を伺いました。

トレーニングマシンはあったが、効果に不安

以前から利用者様から「運動したい」という声が多く、特に男性からの要望が顕著な傾向にありました。

もともとトレーニングマシンはあったものの、「一応あるよ」という感じで、そこまで強く宣伝できるものではありませんでした。それゆえ、「トレーニングマシンがあるからほりのうちに入りたい」という人は正直少なかったです。

また、どの利用者様も同じマシンでトレーニングを実施していたことや、若干程度の負荷を変えるだけだったことから、効果については不安がありました。

加えて、運動を利用者様に提供しても個別機能訓練加算を算定していなかったため、報酬にはなりません。そのため、職員もいまいち全力で仕事に向き合いにくいという実情がありました。

個別機能訓練加算の必要性は理解しても算定に踏み出せず

看護師は在籍していたものの、個別機能訓練加算の知識がないので計画書の作成は現実的ではなかったです。また、法人内の別施設から専門知識を持っている人に異動してきてもらうのも、人数が限られているため難しい状況にありました。

​​小田原市内の他のデイサービスとの差別化を図る上でも機能訓練の必要性は高いと感じてはいました。提供できるサービスがほりのうちと他の施設とほとんど変わらないため、特別に「選んでもらう」ことが難しい状況だったからです。

しかし、「計画書の作成はどうやるんだろう」「算定に必要な要件は記載してあるけど実際どんな風にやるんだろう」「本当に今の配置でできるんだろうか」などの疑問や思いから、なかなか算定には踏み出せませんでした。

一人ひとりの利用者に適した計画が作成できる

そのような中、利用者様それぞれに適した、機能訓練の計画を簡単に作成できる点が決め手となり、リハプランを導入することにしました。

目標や課題に適した運動プログラムを自動で提案してくれたり、リハビリ専門家が考案した運動マニュアルで効果的なリハビリができたりなど、専門的な知識がなくても心配がないことも魅力でした。

利用者様ごとのプログラムを提案できるようになったために、施設の職員もサービスのメニューとして「運動がある」ということについて、自信を持って説明できるようになったと思います。

ICTに対する意識の高まりがリハプラン導入を後押し

別システムの導入によって、自事業所内で「ICTに対するリテラシーを高めよう」という雰囲気ができてきたので「やるなら今しかない」と思ったのも、後押ししました。また、現状の運営では稼働率(収益)が伸び悩んでいたという点も要因として大きかったです。

多くの利用者が個別機能訓練加算の算定に同意

個別機能訓練加算の算定にあたり、利用者様から納得してもらえるかどうかが一番の不安でした。説明の際、「より専門的な訓練ができるようになる」と伝えたところ「わかりました」とすんなりおっしゃっていただけるケースがほとんどだったので、ホッとしたのを覚えています。

「なんとなく」から「エビデンス」のあるリハビリ提供へ

職員の機能訓練に対する意識が大きく変わりました。「効果のある運動をきちんと提供する」という意識を持つようになりました。それ以前は、なんとなく「効果がありそうだから」といってマシンを使ってもらうだけだったので、違いは歴然です。

加えて、運動のサポートも目的意識を持ってできるようになりました。職員から利用者様に対して主体的に「どんな運動がしたいの」と聞くように変化しています。利用者様は「こんな運動がしたい」「こんな動作に不安がある」と積極的に答えてくれるので、より良い相乗効果が生まれています。

イラストや写真の運動マニュアルを使えば説明がしやすい

機能訓練をする際には毎回、利用者様に運動のイラストを印刷したものを見てもらっています。やはりイラストがあったほうが、言葉だけで説明するよりも運動の説明がしやすいです。

1冊のファイルに利用者一人ひとりの運動マニュアルを入れています。マニュアルにはすべてイラストや写真が使われているので、毎回、安心して効果的なリハビリ方法を実施できています。運動マニュアルの種類は全部で2,200種類あると聞きましたが、その種類の豊富さも、利用者の満足度につながっているのではないでしょうか。

一度施設をご利用されれば、嫌になって辞めることはほとんどありません。効果的な機能訓練ができるようになったことも、その状況を作るのに貢献していると考えています。

利用者が積極的になった、職員のやる気もアップ

リハプランを導入し、その人にあった運動メニューの立案と、運動に対する報酬がきちんと入るようになったことで、顧客満足度と職員のモチベーションアップの両方が実現できました。

報酬をもらっているため、「しっかりとしたサービスを提供しよう」という責任感を職員全員がこれまで以上に持てています。

利用者様は職員に指導されながら運動するようになったので、「今日は運動頑張ったな」などと感じやすく、より満足感を得やすくなったのではないでしょうか。

「運動」という武器が加わり営業しやすくなった

ほりのうちにはもともと、1つの施設で2つのサービスを提供する2単位制という特色がありました。さらに「運動」という武器が加わり、ケアマネジャーへの営業の際に話しやすくなった点は大きいです。

既存の利用者の満足ももちろんあるとは思いますが、特に新規のご依頼時には「運動ができる1日型のデイサービスを探していた」というお声をたくさんいただいています。機能訓練型のデイサービスには半日型のところが多く、運動を提供しているところが少ないため、比較検討の際に選んでもらいやすくなりました。

差別化できて利用者増、選んでもらえる施設へと変化

デイサービスを選ぶ際に、選んでもらえる確率が上がりました。以前は同じ法人内の他の施設を選ぶ方も多かったですが、今は、「運動したいから」ということで、ほりのうちを選んでもらう機会が本当に増えています。

リハプラン導入を検討される方にとって気になるのが、維持コストだと思います。私たちの場合、維持コストよりも「運動ができるから」といって施設に入ってもらう人が増えたことによる増収のほうが大きいので、その点は問題ありませんでした。加算の利益もあるため、収益は増えています。

運動をやっている施設には半日型が多いです。午前だけ、午後だけなど、時間を限定してサービス提供をしています。ほりのうちにくる人は、「ご飯も、お風呂も、運動もしたい」という人が多く、「1日型のデイサービスで、運動もできる」という価値を求めています。明確に差別化できているため、選んでもらいやすくなってきました。

個別機能訓練加算の算定で収益もアップ

個別機能訓練加算で顧客単価がアップしていることと、選ばれやすくなった結果として新規顧客が増えていることから、収益が増えました。

リハプランを導入した22年11月は、前年同月比で105%程度の売上アップを達成しています。延べ人数で施設利用者が40名程度、今年度の方が減っている状態にも関わらず、です。顧客単価も9,000円から10,000円に上がっています。

将来、自分が入りたいと思える施設を作る

将来、自分もデイサービスを利用することになることを考えると、自分自身が「入りたい」と思えるような施設を作っていきたいと常々考えています。

今の施設の利用者様もそうですが、年配になると、施設にくるとき以外でコミュニケーションをする機会が非常に少なくなっていきます。「今日は誰かと久しぶりに話したよ」などと言われることもしばしばです。とすれば、コミュニケーション機会を提供することも、デイサービス施設の大きな価値なのではないでしょうか。せっかくなら、利用者の方々が同年代と気軽に楽しく喋れるような施設を作っていきたいです。

サービス提供者でありながらも、自立支援をするという感覚も忘れず、これからも利用者の方々をサポートしていきます。

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