LIFEフィードバック|事例で学ぶデータの見方と活用方法【セミナーレポート】

運営ノウハウ

科学的介護

更新日:2024/09/10

LIFE開設に伴い、科学的根拠のあるサービスの需要は一層高まっていきます。さらに、 2024年度の介護報酬改定では、自立支援やADL向上につながる加算が上位区分に設定され、介護事業所の在り方はさらに変化を求められるでしょう。今回は、日本経営グループで介護福祉事業部の次長である本島傑氏をお招きし、根拠のあるケアや治療プログラムを提供するために、LIFEフィードバックの活用方法を具体的な事例とともに解説します。  

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日本経営グループ 介護福祉事業部 次長
本島 傑

(1)略歴
主に社会福祉法人や介護施設の会計監査業務及び運営助言コンサルティング業務に従事。その他、介護福祉事業の経営計画策定、財務分析、
財務研修や、各種団体での介護報酬関係のセミナー講師や実地指導(運営指導)対策コンサルティングを実施している。

(2)得意分野
・財務会計、管理会計
・社会福祉法人制度(改正社会福祉法、社会福祉法人会計基準)
・介護報酬適正化(加算取得、実地指導対策)
・セミナー講師

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こんにちは。本島と申します。私は、日本経営グループの介護福祉事業部に所属し、主に社会福祉法人や介護施設の運営者さまから、収益改善や財務計画に関するご相談を受けています。また、介護報酬改定のセミナーのほか、実地指導改め、運営指導対策に関して支援しています。

本日は、「LIFEフィードバック、事例で学ぶデータの見方と活用方法」というテーマでお話しいたします。今後一層、LIFE関連加算の取得が求められていくなかで、事業所としてどのように活用していけばよいのか、LIFEフィードバックに焦点を当てて、通所系のデータを基に具体的に考察していきたいと思います。

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LIFE開設の目的と加算の動向を正しく理解

まずは、LIFEの現状について正しく理解を深めていきましょう。皆さんもご存知のとおり、LIFEとは、厚生労働省が用意したデータベースを指します。こちらのリリースに伴い、介護報酬改定でこのデータベースを活用しないと、算定できない加算、いわゆるLIFE関連加算が新設されました。

私はLIFE新設にあたり、このデータベースは通所リハビリや訪問リハビリといったVISIT、CHASEから派生し、「ADLの改善、自立を促す」といった目的で作られるものと考えていました。しかし、驚いたのが、資料のとおり、多くのLIFE関連加算が介護老人福祉施設などの施設系のサービスでも対応されることを示しており、「重度化させない」という観点が多分に含まれていると考えられます。

さらにLIFEを活用すれば個別機能訓練加算、口腔機能向上加算、ADL維持等加算などの上位区分がスタンダードに加算できるので、デイサービスの運営においてマストになってくることがわかります。

また、2024年度以降、介護報酬改定について財務省が議論している内容によると、大規模な報酬改定に一本化するという方向性が検討されています。そして、デイサービスや特養など、既存形態の事業は介護報酬が引き下がる可能性が高くなると予測されており、ゆくゆくは老健のように在宅復帰に注力されている事業所が強化加算対象となるのです。

この介護報酬の加算対象を、何を基準として決定するのか。その指標の一つがLIFEであるといえるでしょう。つまり、LIFEを活用してLIFE関連加算を取得している事業所は、自立支援やADL改善に向けた動きができていると評価され、基本報酬の単価も変わるのではないかと思われます。

さらに、前回の改定時には、まだ訪問介護や居宅介護支援事業所が対象に挙げられていませんでしたが、今後、利用者の自宅環境の評価等にも対応を進め、次回の改定時には確実に同項目もLIFE関連加算に含まれることが見込まれています。

LIFEの利用状況

介護報酬改定の動向を踏まえると、LIFEに早く対応する必要性を実感できると思います。ここで、福祉医療機構のアンケート結果をご紹介すると、実際にLIFEの利用状況は以下のようになっています。

デイサービスでは、「近いうちに利用予定」という事業所も含めると、大体8割弱ぐらいがLIFEを利用していることがわかりますね。特養や老健といった施設系の事業所はさらに高い利用率です。

さらに、科学的介護推進体制加算も算定しているかどうかについて。デイサービスでは、6割弱ぐらいが近いうちに算定予定、老健などでは85%にのぼります。現在、科学的介護加算が新設されてから1年も経っていませんが、多くの介護事業者がその重要性に着目していることが明らかです。続いて、LIFEフィードバックを活用した加算項目も追加されています。

皆さんもご存知のとおり、LIFEフィードバック票は当初、暫定版として打ち出されました。2023年の5月30日をもって厚生労働省から留意事項に則り、LIFEを活用するよう発表され、結果的に暫定版ではなくなりましたが、LIFEフィードバックの活用は、まだ必須ではないという状況です。

まだ導入を足踏みしている事業所はあるものの、LIFEはデータを提出して終わりではなく、集計、フィードバックされた内容を利活用していくものに発展していきます。PDCAサイクルによって、改善の項目を検討できれば、次のアクションの手立てになり、国もこうした質の高いケアの必要性を求めています。

そのため、LIFEフィードバックが正式な算定要件になる前に、練習しておくことをおすすめします。

2024年度の介護報酬改定でLIFEフィードバックの活用は本格化する

介護報酬改定において、厚生労働省は、最終的に事業所単位でLIFEフィードバックの算定加算をイメージしていることが伺えます。現在は、自分たちの事業所のデータと登録している全国の事業所のデータが単純に集計され、比較されているという状況です。このデータの解釈は、各事業所に委ねられてしまっており、LIFEフィードバックをどのように活用していくのか訓練が必要なのです。

さらに、事業者単位から発展して、個々の利用者単位のフィードバックの活用も検討されており、この動向からもLIFEの利用は、前提条件とわかりますね。

そもそも既存の加算の前提条件に、LIFEが組み込まれた加算もいくつかあります。例えば、ADL維持等加算や施設系サービスの褥瘡マネジメント、排せつ支援加算などが対象です。LIFEを活用しないと、加算そのものができないという傾向は今後もさらに強まり、2024年度の介護報酬改定を皮切りに本格化することがおわかりでしょう。

LIFEフィードバックの効果的な活用方法

では、LIFEフィードバックの活用方法について、具体的に解説していきます。実際の通所介護の事業所のフィードバックデータをご覧いただき、理解を深めていきましょう。

モデル事業所を例にデータを考察

左のグラフは要介護度。右のグラフは年齢の平均を指しています。それぞれ中央から左側がモデルとした事業所のデータ、右側が全国の事業所のデータです。それぞれ6ヵ月前と直近の数値を比較しています。このモデルの事業者は、例えば要介護度でいうと要介護3以上の割合が全国平均に比べると大きく、相対的に要介護1とか要支援の割合が少ないことがわかりますね。まずは、自分たちの事業所にどのような層の利用者さんが属しているのか端的に調べられます。

一方で年齢構成を見ていくと、80歳から84歳、85歳から89歳の層が全国平均に比べて多く、90歳以上では少ないことがわかります。当然、高齢者ほど介護度が上がりやすい傾向はありますが、80歳以上の全ての割合を見ると全体的にあまり変わりがないことも見て取れます。そのため、細かい層で割合に違いはあれど、この事業所では、介護度が高い理由は年齢ではないのです。

さらに、細かくデータを見ていきましょう。日常生活自立度、障害高齢者の日常生活自立度、寝たきり度、認知症高齢者の日常生活自立度に焦点を当てると、この事業所では、自立度が低い方の割合が、全国平均に比べると高いようです。さらに、同事業所内の6ヵ月前と直近のデータを比較すると、あまり変わっていないもしくは若干自立度が低い方が増えている傾向があります。つまり、要介護度が高い原因は、自立度が低いことが背景にあるようです。

さらに、ADLの合計点数は、20点以下といった低い点数の方がかなりいらっしゃることがわかります。全国数値の4〜5%と比較して、モデル事業所は14%とかなり上回っているのも特徴です。

一般的には、デイサービスに通う人は、食事、排便コントロール、排尿コントロール、トイレ動作の自立度は比較的高いはずですが、このデータでは検討の余地があることがわかるでしょう。

自立度やADLに関しては、口の清潔、あと栄養状態も起因してくるので、口腔・栄養項目を見ていく必要があります。BMI、体重減少率、血清アルブミン値、食事摂取量を個別に分析していく必要性は予測できるでしょう。

寝たきり度は、デイサービスではあまり関与しないかもしれませんが、認知症の影響は要介護度を高めている理由として考察する対象になり得るでしょう。認知症項目では、以下のような評価項目が高値を示しています。

  • 日常的なものに関心を示さない
  • 特別な事情がないのに、夜中起きている
  • 特別な根拠がないのに1人で勝手な言いがかりをつける

こうして分析を重ねた結果、介護度が高く、自立度が低いという要因の一つに、認知症の影響が大いに考えられるわけです。Vitality index(意思疎通)の評価項目を見てわかるとおり、やはり少し認知症の影響で全国平均よりも値として悪い水準であることが明らかになりました。

LIFEフィードバックの活用は職員教育や治療方針の決定に役立つ

各事業所毎に日々、アセスメントや治療プログラムを計画されていると思いますが、やはり評価する人によってばらつきがある可能性は否めません。私は、評価の質をあげる点においても、LIFEフィードバックは有効だと考えています。介護職員さんたちのレベルアップが叶い、社員教育にもつながっていくでしょう。将来的に全国平均よりも自立度の高い方の割合が増え、同事業所内でも半年前と比べて改善していけば、職員のモチベーションも上がります。

 さらに、事業所のフィードバックと、利用者フィードバックの検討したデータに注目して見てください。個別機能訓練加算(Ⅱ)のフィードバックは、要介護度別のADL合計点数の分布・要介護度別のADLの変化状況・要介護度別の利用者のIADLの3つです。対して、科学的介護推進体制加算は、栄養状態や口腔機能などのアセスメントする項目が多い分、根拠のあるフィードバックが可能で、適切な治療プログラムを立てられます。

こうしたデータが蓄積することで自立度や介護度へ影響しているものが何なのか、的確に判断できるようになり、ケアの方向性が正しく定まってきます。そのため、できるだけ早くLIFEに取り組み、半年毎と言わず、算定要件以上にデータを提出していくとより良い活用ができるでしょうね。

しかし、データは利活用するためのもので、ケアの方向性はあくまで各事業所の皆さんが導き出すものです。日々、目の前の利用者さんの困り事は何なのか、それぞれの専門職同士でよく話し合い、どのような軸でケアを進めていくのか検討することが大切ですね。

2024年度介護報酬改定に向けてLIFEと向き合うか

では、2024年度の介護報酬改定に向けて、LIFEとの関わり方をご説明したいと思います。

この議論の上で欠かせないのが、ポストコロナ期・ウィズコロナ期において通所介護事業では、以下のような問題が顕在化しています。

  • 利用控えによる利用者のADL低下、認知症の進行
  • 既存のデイサービスの利用者の減少
  • 資金力不足による雇用控えやICT導入の難しさ

利用者側の変化とニーズ

まずは利用控えについて。以前としてコロナ感染のリスクがある中で、通所事業所の利用を控えたり、そもそも外出を控えるといった現象が起きています。その結果として、ADLが低下し、逆に訪問介護の利用が増えている統計が出ているのです。

そのため、介護事業のニーズは、生活モニタリングへのシフト、または利用控えから回復するためのリハビリテーションやフレイル予防の対策を立てる重要性が顕在化しました。もしくはデイサービスに代わる多様な社会参加の場も求められており、既存の通所介護だけでは完結しない問題があるといえますね。

さらに、先ほどのモデル事業所さんでも話題に挙げましたが、認知機能の低下によるADL低下が問題視されています。そして、ADL低下が認知機能を一層低下させ、コミュニケーションの機会が減っていくという悪循環が起こっています。

認知機能低下の側面でもコミュニケーションやアセスメントの機会を作るために、訪問事業のニーズは高くなってきているでしょう。もしくは家でも可能な認知機能訓練プログラムの提供も必要になるかもしれません。

事業者側の変化と選ばれるサービス

次に事業所の大きな問題として営業不振が挙げられます。東京商工リサーチが公開したデータでは、この上半期で介護事業所の倒産件数が過去最大だったと報告されており、その大部分を占めたのが、通所介護、訪問介護、高齢者住宅関係とのことでした。

介護業界は慢性的に人材不足の問題がありますが、営業不振により新たな雇用ができなくなる可能性があります。そもそも事業継続が困難で、ICT投資に対してなかなか取り組めず、ケアの質は追求できず、スタッフのモチベーションも低下するという悪循環に陥るでしょう。

さらに事業所の問題として、やはり感染リスクが依然としてあります。BCP策定に乗り出せない事業所は、既存の利用者さんだけでなく、新規の利用者さんの獲得も難しい状況です。

こうしたポストコロナ期・ウィズコロナ期で表在化した状況で、あえて厳しい言い方をしますが、不要不急のために、利用控えが起きている可能性もあるとご理解いただきたいと思います。つまり、裏を返せば、必要なサービスであれば、コロナ禍であっても利用していただけるのです。

では、これから利用者に選ばれる必要なサービスに転換していくには、どのような対策を練れば良いのでしょうか。私たちは、LIFEフィードバックを活かすために事業所内でLIFE委員会を立ち上げることをおすすめします。

LIFEフィードバック票を事業者だけでなく、各職種に配付し、それぞれの職種ごとに分析・検討することが必要だと考えています。先ほど申し上げたとおり、現在は事業所フィードバックだけに止まっていますが、ゆくゆくは利用者単位のフィードバックが求められていきます。

事業所内で、利用者さんの個別のデータをとり、その中でも如実に数値の変化がある方々を分析し、LIFE委員会で都度検討していけば、職員のケアの質は大幅に向上しますし、確実に利用者さんのADLや自立度の改善につながっていきます。

今はまだ、LIFEでデータをコンスタントに提出することが重視されていますが、今後、LIFEデータベースの稼働が本格化していくと、結果を出している事業所が高い報酬を得られる体系に変化していくことは間違いないでしょう。

そのために、LIFEフィードバックをチームで活用する体制づくりに取り組んでください。国は科学的に自立支援の効果が裏付けされたサービスかどうかを国民に開示していく予定です。情報が見える化されるということは、根拠のあるサービスが選ばれるということ。事業所の利用者数や稼働率に直結することが容易に想像できますね。LIFEを初めとしたICT化は、介護業界の一つ大きな課題となります。増加する間接業務に対応しながら、結果を出すことに、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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