要介護認定調査とは?74の調査項目・内容とポイントを解説

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更新日:2024/10/21

介護の認定調査は、市区町村の職員や委託を受けたケアマネジャーが行います。認定調査に慣れていない場合、利用者・家族に対面する際に戸惑うこともありそうです。この記事では認定調査員・ケアマネジャー向けに、当日の流れや聞くべき74項目・特に注意しておきたい点などを解説しています。

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介護認定の流れ

介護の認定調査は、申請から二次判定までいくつかの段階を経て介護度が決定されます。認定調査に慣れていないケアマネジャーや調査員は、この流れをしっかりと頭に入れておくことが大切です。

ここではまず介護認定の流れを解説していきます。

介護認定の流れは以下の通りです。

  1. 申請
    介護認定は申請が必要です。 被保険者が市区町村の介護保険担当窓口に申請します。
  1. 調査
    次に申請を受けた市区町村が調査員を派遣して、要介護者の状態を調査します。
  1. 一次判定
    調査結果をもとに、市区町村が一次判定を行います。
    一次判定は介護認定の一部で、要介護者の状態を評価するために必要なプロセスです。この判定は、要介護認定等基準時間に基づいて行われます。
    具体的には「身体機能」「起居動作」「生活機能」「認知機能」「精神・行動障害」「社会生活への適応」などの項目を評価します。
    これらの評価は1分間タイムスタディという特別な方法による時間であり、実際に家庭で行われる介護時間と同様ではありません。この一次判定の結果が、最終的な介護認定に影響を与えます。一次判定は、客観的で公平な判定を行うため、コンピュータで処理されます。
  1. 二次判定
    一次判定結果に対して、都道府県が二次判定を行います。
    二次判定は、一次判定の結果を参考にして、介護認定審査会によって判定が行われます。
    介護認定審査会では、一次判定の結果(要介護認定調査と主治医の意見書)を参考にし、要介護度を公平に審査・判定します。二次判定では一次判定の結果をもとに微調整を行い、最終的な介護度が確定します。
  1. 介護認定結果の通知
    介護度が決定したら被保険者へ通知されます。

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介護認定調査員とは

介護認定調査員は、要介護認定の判定に欠かせない情報を収集し、その内容を整理・評価する役割を担います。通常この役割は市区町村の職員によって果たされます。しかし、地域によって役割を担う調査員は異なり、必ずしも市区町村の職員とは限りません。

調査の規模や要求に応じて、専門知識を持つ調査員が市区町村から委託されることがあります。これらの調査員は認定調査票と呼ばれる共通のフォームを使用して、対象者からの情報を収集し、要介護度を評価します。

調査員の主な業務には以下の要素が含まれます。

  • 対象者やその家族との面談
  • 日常生活の動作確認
  • 医療記録の確認

調査員は要介護度の決定に重要な情報を的確に収集し、調査票に記入します。また、以下のような情報を特記事項として記録する必要があるでしょう。

  • 調査員が特に重要だと判断した情報
  • 調査票には表現しにくい具体的な状況
  • 介護の頻度
  • 回数に関する情報
  • 根拠

要介護認定調査は、高齢者や障害者が必要な介護サービスを受けるための基盤であり、調査員の役割は非常に重要です。適切な情報収集と評価により、最適なケアプランを策定する上での鍵となります。

訪問調査当日の流れと内容

介護認定調査員の訪問調査は、一般的に以下の手順で進行し、要介護度を評価するための必要な情報を集めます。

  1. 予約と挨拶
  2. 現在のサービス利用や家族・居住環境などを聴取
  3. その後に身体機能・生活機能・認知機能・精神行動障害・社会生活への適応に関する質問
  4. 特記事項や追加情報を聴取
  5. 質疑応答を受け付ける
  6. 説明・認定調査協力への感謝

参考:介護認定調査は何をするの?事前に知っておくべきこと ~親の自尊心も大切に~

認定調査の内容

介護認定調査では、訪問調査時に概況調査と基本調査の2つの情報を収集します。
概況調査では、受けているサービスや家族状況、居住環境に関する情報を尋ねます。

基本調査は認定調査票に基づいて行われ、以下の6つの領域に関する情報を収集し、対象者の心身の状況を把握するのでご確認ください。

  1. 身体機能・起居動作
  2. 生活機能
  3. 認知機能
  4. 精神・行動障害
  5. 社会生活への適応
  6. 特別な医療

これらの情報は全国共通の基準に基づいて収集されます。特記事項には基本調査だけでは伝えられない選択の根拠や特殊な介護の手間を記載します。

本人や家族から具体的な状況や困りごとを聴取し、情報漏れがないように注意しましょう。
以下に聴取するべき内容の一部を紹介しますのでご参考下さい。

  1. 身体機能・起居動作
    麻痺の有無や関節が動く範囲などの身体機能の状況。寝返りや歩行などの基本的な生活動作について聴取します。
    可能であれば実際に動作を確認します。ただし、危険がある場合には無理をして動作確認をすることは避け、口頭で確認しましょう。
  1. 生活機能
    食事動作やトイレ動作など、生活内で行う活動について聴取します。また、外出頻度も聴取の内容に含まれます。
  1. 認知機能
    生年月日や年齢の理解、自分のいる場所の理解など、記憶や認知機能について聴取します。
  1. 精神・行動障害
    感情の不安定さや介護への抵抗、自分勝手な行動など、精神状態や普段の行動の様子について聴取します。
  1. 社会生活への適応
    金銭管理や買い物ができるか、簡単な調理ができるかなど、社会生活への適応について聴取します。
  1. 特別な医療
    現在、対象者が特殊な治療や医療器具・装置を使っているのか。医療ケアを受けているかどうかを聴取します。たとえば、透析・吸引・酸素療法などが挙げられるでしょう。
    また、対象者に特別な医療を提供している医療機関や主治医の情報を収集し、連絡先や治療内容を把握します。

認定調査の74項目とは

前述した①身体機能・起居動作 ②生活機能 ③認知機能 ④精神・行動障害 ⑤社会生活への適応 ⑥特別な医療の6つの領域は、全74項目が調査項目になります。

公平に情報収集を行うため、認定調査では必ず聞くべきことが決まっています。調査は対象者に記載してもらう形式では行いません。調査員が口頭で質問する形式を取ります。

対象者を適切に評価するため、選択の根拠や重要と考えたことは特記事項に必ず記載しておきましょう。

質問例を以下に列挙しますので認定調査時の参考にしてください。

  1. 身体機能・起居動作
  • (右手に)麻痺はありますか。
  • 手足を自由に動かすことができますか。
  • 関節が硬くなって動かないところはありますか。
  • 自分で寝返りはできますか。
  • 自分で起き上がることはできますか。
  • 自分で座ることはできますか。
  • 両足で立っていることはできますか。
  • 自分で歩くことはできますか。
  • 歩くためには何か道具が必要ですか。
  • 椅子から立ち上がることはできますか。
  • 片足立ちはできますか。
  • 自分で身体を洗うことはできますか。
  • 自分で つめ切りをすることはできますか。
  • 目が見えにくいことはありますか。
  • 耳が聞こえにくいことはありますか。
  1. 生活機能
  • 車椅子からベッドへの乗り移ることができますか。
  • 普段、自分で移動することができていますか。
  • 飲み込みに困ることはないですか。
  • 食事は普通のものが食べられますか。
  • 硬さや大きさなどの配慮が必要ですか。
  • 自分で食事を召し上がることができますか。
  • トイレで人の手を借りることはありますか。
  • トイレに間に合わないことはありますか。
  • 尿意や便意はありますか。
  • パットの交換などは自分でできますか。
  • 差し支えなければ排泄の失敗の頻度を教えてくださいますか。
  • 自分で歯磨きや入れ歯の洗浄ができますか。
  • 顔を洗うことができますか。
  • 髪を整えることができますか。
  • シャツはご自分で脱ぎ着できますか。
  • ズボンはご自分で脱ぎ着できますか。
  • どのくらいの頻度で外出されますか。
  1. 認知機能
  • 自分の伝えたいことを伝えられますか。
  • 生年月日を教えてくださいますか。
  • 昼食の内容を思い出せますか。
  • お名前を教えてくださいますか。
  • 今の季節を教えてくださいますか。
  • ここがどこか教えてくださいますか。
  • 目的もなく歩き回ることはありますか。
  • 外出して戻れなくなったことはありますか。
  1. 精神・行動障害

この項目は、質問の入り方に注意が必要です。
要介護認定認定調査員テキスト2009」には以下のような記載があります。

調査にあたっては、調査対象者や家族に不愉快な思いを抱かせないように質問に留意する必要がある。認定調査員が調査時に質問を工夫し、あるいは、「日頃の行動や介護上でなにか困ったことや問題がありますか」といった質問を糸口に、調査対象者の現在の感情の起伏、問題となる行動を具体的に聞き取り、該当する項目を選択してもよい。

引用:要介護認定認定調査員テキスト

上記にあるように、この項目では丁寧なコミュニケーションが必要です。まずは「日ごろの行動に問題を感じられますか」「介護上こまったことはありますか」など、対象者や家族が不愉快にならない質問からはじめて、少しずつ問題となる行動を特定していきましょう。

  • 被害的にふるまわれることはありますか。
  • 作り話をすることはありますか。
  • 感情が不安定になることはありますか。
  • 昼夜逆転がみられることはありますか。
  • 何度も同じ話をすることはありますか。
  • 大声を出すことはありますか。
  • 介護に抵抗されることはありますか。
  • 落ち着きなく過ごすことが多いですか。
  1. 社会生活への適応
  • 薬の内服は自分で管理できますか。
  • お金の管理は自分でされていますか。
  • 日常生活の中で、自分の衣服や食事、日課などについてどの程度の自分自身の意思決定ができますか。
  • 医療的な決定や重要な事項に関して、ご自身で判断することができますか。それとも家族や介護者に判断を任せていますか。
  • 集団の活動や社交的な場に参加することがありますか。
  • 他の人との交流や集団活動に参加する際に不安を感じることがありますか。
  • 日常的な買い物、たとえば食料品や日用品を購入することはできますか。
  • 自分で簡単な料理を調理できますか。
  1. 特別な医療
  • 透析、吸引、酸素療法などの医療ケアを受けていますか。
  • 特別な医療を提供している医療機関や主治医の連絡先や治療内容を教えてくださいますか。
  • 特別な医療ケアや看護の頻度と必要な医療サポートについて教えてくださいますか。
1 身体機能・起居動作 2 生活機能 3 認知機能
1-1 麻痺(5) 2-1 移乗 3-1 意思の伝達
1-2 拘縮(4) 2-2 移動 3-2 毎日の日課を理解
1-3 寝返り 2-3 えん下 3-3 生年月日をいう
1-4 起き上がり 2-4 食事摂取 3-4 短期記憶
1-5 座位保持 2-5 排尿 3-5 自分の名前をいう
1-6 両足での立位 2-6 排便 3-6 今の季節を理解
1-7 歩行 2-7 口腔清潔 3-7 場所の理解
1-8 立ち上がり 2-8 洗顔 3-8 徘徊
1-9 片足での立位 2-9 整髪 3-9 外出して戻れない
1-10 洗身 2-10 上衣の着脱  
1-11 つめ切り 2-11 ズボン等の着脱  
1-12 視力 2-12 外出頻度  
1-13 聴力    
4 精神・行動障害 5 社会生活への適応 6 その他
4-1 被害的 5-1 薬の内服 特別な医療について(12)
4-2 作話 5-2 金銭の管理  
4-3 感情が不安定 5-3 日常の意思決定  
4-4 昼夜逆転 5-4 集団の不適応  
4-5 同じ話をする 5-5 買い物  
4-6 大声を出す 5-6 簡単な調理  
4-7 介護に抵抗    
4-8 落ち着きなし    
4-9 一人で出たがる    
4-10 収集癖    
4-11 物や衣類を壊す    
4-12 ひどい物忘れ    
4-13 独り言・独り笑い    
4-14 自分勝手に行動する    
4-15 話がまとまらない    

認定調査の際の注意点

認定調査の際の注意点について、4つにポイントを絞って解説しますのでご参考ください。

同席者の有無

調査にケアマネジャーや施設のスタッフが同席するかを確認します。同席者がいる場合、誤解や誤情報が減少し、円滑に調査を進められるでしょう。

特に介護サービスの内容についての情報収集が必要な場合は、同席者が重要です。

認知症の症状について対象者には聞かない

調査対象者に認知症の症状があるかどうかについては事前に家族に確認しておきます。また、調査対象者に認知症がある場合、認知症の症状については介助者や同席者に確認しましょう。

調査方法や質問の仕方を工夫し、適切なサポートを提供できるように準備します。
認知症の場合、調査時と普段の状況が異なることもあるため注意してください。

認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストについて知りたい方は、ぜひこちらの記事もご一読ください。
▶︎長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|MMSEとの違い・評価方法・診断基準

特に重要な生活機能の調査は具体的に行う

生活機能の評価は要介護度の決定に大きく影響します。調査員は「食事」「排泄」「移動」「入浴、」「更衣」「歯磨き」などの基本的な生活機能について特に注意を払う必要があります。

利用者がこれらの機能をどれだけ独力で遂行できるかを正確に評価することは、介護ニーズを適切に把握し、適切な支援を提供するために欠かせません。

家族や介護者からの情報と観察を役立てつつ、注意深い調査と明確な情報収集プロセスが重要です。

調査員の主観は伝えない

調査中、あるいは調査終了後に「どのようなサービスが受けられるか」「どの程度の要介護度が認定されるか」などを対象者や同席者から質問される可能性があります。

しかし、調査員からは「要介護〇〇程度は認定されると思います」「訪問介護や訪問リハを〇〇回は利用できると思います」などと安易に主観を伝えてはいけません。

調査員が行うのは聞き取り調査だけであり、最終的な判定はコンピューター判定や介護認定審査会で行われます。調査員の主観と異なる結果になる可能性は十分に考えられるでしょう。

「一度持ち帰らせてもらい、判定をしてから通知します」などと伝え、その場で安易に返答しないようにしましょう。

礼節を持った態度や姿勢を忘れない

認定調査は質問が多くなり、対象者にとっては試されているような感覚を持つ場合があります。また、対象者は介護認定を必要としていない場合もあり、認定調査をされることを不快に思う可能性もあるでしょう。 

そのため、対象者や家族へ礼節を持った態度で臨むようにしなければなりません。 挨拶や態度など基本的な礼節を保つことを心がけましょう。 本人や家族の話に耳を傾け、感情的にならずに冷静に対応することも大切です。

また、清潔感のある服を着用し、相手に不快感を与えないように努めましょう。

表札の有無

住所が特定しにくい場合、表札の有無を確認しましょう。同じ番地の複数の家がある場合や、表札を設置していない場合も考えられます。

詳細な住所情報を得るために、家の特徴や隣接する場所を尋ねることが必要になるかもしれません。到着時間に遅れると迷惑がかかってしまうため注意してください。

これらの情報を確認することにより、調査の円滑な実施と正確な情報収集が可能になります。

認定調査より前に確認しておくこと

認定調査の当日より前に確認しておくことについて以下にまとめましたのでご参考ください。

【細かい家の場所の確認】

  • 番地
  • 建物(一戸建てかマンションか)
  • 表札の有無

【同席者の有無】

  • 同席者あり(同席者を確認する)
  • 同席者なし

【認知症の有無】

  • 認知症あり(症状を確認)
  • 認知症なし

細かい家の場所の確認は直前に行うと焦ってしまうため、余裕を持って確認しておきましょう。番地を含めた住所をGoogleマップで検索しておくと安心です。

事前の電話連絡の際に「一戸建てか」「マンションか」「表札はあるか」なども確認しておきましょう。
このとき、同席者の有無と同席者の属性(家族・施設のスタッフかなど)も確認しておくとスムーズです。

また、対象者に失礼にならないように家族や同席者に認知症の症状の確認をしておきましょう。これらのことを事前に把握しておくことで、戸惑うことなく対応できます。

正確な認定調査を行い対象者や家族を支援するために

認定調査当日の抑えるべきポイントは、対象者が安心して話せる雰囲気を作ること、誰でも理解できる言葉を使い具体的な質問を心がけることにあります。

対象者の声を大切にし、その人の意見を真摯に受け止めてください。相手を尊重する姿勢が信頼を築きます。信頼を得るためにも、失礼のないように事前準備を整えることを欠かしてはなりません。

認定調査の情報を正確に記録し、確認を怠らないようにしましょう。正確な情報は認定調査の信頼性につながり、利用者のサービスの質にまで関わります。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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