ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
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更新日:2024/10/21
介護では利用者のQOL向上のため、さまざまなケアやサービスを提供しています。しかし、「QOLってなに?」という疑問を持っている人も少なくないでしょう。この記事では、改めてQOLの定義や介護においてやるべきこと、特に注目すべき点など、介護におけるQOLについて詳しく解説しています。
この記事の目次
QOLとは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称であり、日本語に翻訳すると「生活の質」となり「生きがい」や「満足度」という意味を持ちます。
QOLの有名な評価スケールであるSF-36は、8つの健康概念を測定するための複数の質問項目から成り立っています。
8つの概念とは、(1)身体機能 (2)日常役割機能(身体) (3)体の痛み (4)全体的健康感 (5)活力 (6)社会生活機能 (7)日常役割機能(精神) (8)心の健康です。
こういった要素をもとに、多面的に構成されるのがQOLの特徴です。
定義については、1994年にWHO(国際保健機関)によって「一個人が生活する文化や価値観のなかで、目標や期待、基準または関心に関連した自分自身の人生の状況に対する認識」と定められました。
厚生労働省は、2000年から国民健康づくり対策として、健康寿命の延命とQOL(生活の質)の向上に向けさまざまな取り組みを進めています。
高齢者介護におけるQOLでは「利用者一人ひとりがその人らしく生きること」が幸福や満足感につながるとされています。
利用者一人ひとりの幸福な生活をサポートするために、生活の質(QOL)に焦点を当てた介護サービスの提供が重要になるでしょう。
QOLが低下する要素と原因は、多岐に渡りますが主に以下の項目が挙げられます。
運動不足は、身体的な健康に直接的な悪影響を及ぼします。筋力低下の進行により、日常生活に支障が出ることは少なくありません。
特に高齢者では自分で行えていたことができなくなる背景に、足腰の弱さや疲れやすさがあります。
運動不足が生活に支障を与える例として、たとえば以下のようなことが考えられるでしょう。
適切な運動を行なうことで、日常生活を守れる可能性があります。
高齢者の運動不足から生じる日常生活の支障を予防・改善するために、介護現場では利用者の身体状態に応じて適切な運動が提供できるように支援することが大切です。
高齢者においては、現時点で行えている生活を維持・向上するためにも、無理のない範囲での運動を取り入れることが望ましいでしょう。
人間関係とQOLには密接な関係があります。
人は家族や友人、近所の方との良好なコミュニケーションから、安心感や幸福感を感じるものです。
人間関係から感じた安心感や幸福感は、活動に対する意欲やストレスの軽減につながり、その人のQOLを向上させるでしょう。
コミュニケーションが不足すると、孤独感や不安感が増加しQOLの低下へとつながります。
特に認知症の方や障害を抱える方は、日常生活で援助が必要になることや物事を忘れてしまう経験などが重なると、無意識に人との関わりを避けてしまうことも少なくありません。
周囲との人間関係が希薄になってしまうと、自身が孤立しているように感じてしまい、QOLは低下します。
介護現場では、利用者と適切なコミュニケーションを取ることを心がけ、安心感や幸福感を感じてもらえるように信頼関係を構築することが望ましいでしょう。
身体的かつ心理的な健康が阻害されると、活動の意欲低下につながります。
「〜をしたい」「〜に行きたい」といった主体的な感情は、その人らしい生活を営むための重要な原動力です。
しかし、加齢や病気をきっかけに「〜したい」という希望が叶わなくなり、自身の主体的な感情を次第に話さなくなるケースもあるでしょう。
意欲の低下は、QOLの低下をはじめ、生きがいの喪失にも直結しかねないため注意が必要です。
介護現場における利用者の意欲の低下は、その人らしい生活を阻害する大きな課題になり得ます。
利用者の置かれている状況や利用者自身の心理状況を理解した上で、サポートすることが大切になるでしょう。
社会参加が低下すると、楽しみや生きがいの喪失につながりQOLが低下します。
高齢者のQOLは、日常生活活動や社会的活動などが良好なほど高いと報告されています。
社会参加の機会が減少する原因としては、健康面の不安や参加意欲の低下などがあげられるでしょう。
身体機能の低下により屋外への移動や出先での生活行為全般が困難になると、社会参加が絶たれてしまいます。
友人や知人との交流や近所付き合いが、加齢に伴い希薄となることも原因の1つとしてあげられるでしょう。
介護の現場においては、単身世帯の高齢者が増え続けている中、高齢者の孤立や孤独を防ぐためにも社会参加の機会を創出することが求められます。
参照:高齢者のシームレスな社会参加と健康の関連 東京都健康長寿医療センター研究所
ADL(日常生活動作)はQOL(生活の質)と密接に関係しています。
「ADL(Activities of Daily Living)」は日本語で「日常生活動作」と訳されます。食事、排泄、入浴、整容(身だしなみを整える)、移動などの基本的な動作を指します。
高齢者や認知症のある方のADLは認知機能や精神状態、栄養状態、環境などのさまざまな側面から影響を受けやすく、ADLの低下が生活の質に直結します。
日常生活でなんらかの支障が生じている場合は、本人の意欲や社会参加の機会が減少している可能性もあり、QOLも低下していることが考えられるでしょう。
たとえば、歩いて買い物へ行くことが生きがいであった方が骨折により歩行が困難になった場合、リハビリによって屋外歩行の再獲得ができれば、活動の再開へとつながります。
一方で、以下のように代替え手段を用いたり環境調整をしたりすることで、日常生活に支障がありながらも本人がしたいことが実現できる可能性もあるでしょう。
ADLの能力が低くてもその人なりの生きがいを見つけて社会参加や自己実現を叶えることで、生活の満足感を得てQOLが向上するケースもあります。
介護現場では、ADLとQOLの相互作用を理解した上で、その人らしい生活の意思決定が行えるような支援が求められるでしょう。
介護においてQOLを向上させる具体的な行動について、項目に沿って説明しますのでご参考ください。
運動やリハビリを習慣的に行うことは身体機能の維持・向上だけに留まらず、利用者のQOL向上にへも大きく寄与します。
適度に身体を動かすとストレス発散の効果も得られるため、心理的にも良い影響を与えることが期待できるでしょう。
利用者へ手軽で適度な運動やリハビリを取り入れる方法については、下記をご参考ください。
【在宅に住んでいる利用者】
【施設へ入所されている利用者】
バランスの取れた食事内容とは、主食、主菜、副菜を基本として、野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚類が組み合わせて作られたメニューを指します。
1日の食事が2回以下の人は、3回食べている人と比較して栄養素が不足したり偏ったりする傾向があります。
栄養不足や偏りは活動の低下にも直結するため、1日の中で3食取ることを目標にすると良いでしょう。
高齢者においては若年層よりも低栄養を生じるリスクが高いため、朝・昼・夜の3食に加え、適度に間食を取り入れることも好ましい場合もあります。
また、認知症のある方は食欲の減退や食べたことを忘れてしまうこともあるため、間食を通して栄養の充足や食べることの楽しみを提供することが求められることがあります。
一人ひとりにあった効果的に栄養を取る方法や間食の活用については、管理栄養士やかかりつけ医などへの相談を検討してみてください。
利用者の状況によっては配食弁当や食材の宅配、日持ちする缶詰など等を紹介することも望ましいでしょう。
人との交流の頻度が少なく、閉じこもりがちな高齢者はQOLの低下に留まらず、健康状態悪化のリスクも抱えています。
友人を作り社交の場を得ることで、利用者のQOLを向上が目指せるでしょう。
在宅で生活する要介護者や要支援者は、介護サービスにて通いの場への参加を促すことも一つの手段です。
介護施設では、世代間の交流が行え、さまざまな活動を通し共通の趣味や嗜好を持つ利用者同士が仲間になることができます。
たとえば、季節ごとの行事では利用者が一緒に作品づくりを行ったり、演芸会などに参加することで仲間意識が生まれやすく関係性の構築につながるでしょう。
認知症のある方でも、同じ世代の人同士であれば共通の話題が多く、穏やかに他者との交流を行える場合も少なくありません。
また、ADL能力が高い高齢者においては近所のお茶会や地域のサロン活動、趣味クラブに参加することで、介護サービスに依存せずに社会的交流の機会を得ることができます。
介護現場では、一人ひとりの生活背景などを理解した上で、社会交流の場が提供できるよう検討をするのが良いでしょう。
利用者の中には、これまで行ってきた趣味や楽しみが身体機能の低下や環境の変化から行えなくなってしまう方も少なくありません。
新たな趣味や楽しみを見つけようとしても、なかなか思い浮かばないかもしれません。
そのような場合は興味関心チェックシートを用いて、利用者の想いを細かく聞き取っていく作業が有効です。
利用者が興味を持つ活動がわかり次第「いつ・どこで・誰と・どんな環境で」行うかを深く掘り下げて検討することで、新たな趣味や楽しみを提供しやすいでしょう。
また、今まで行ってきた趣味や楽しみがある場合、利用者の現状の能力に合わせて行って頂くのも良いでしょう。
利用者のQOLの向上は、介護サービスを提供する上で最重要目標の一つです。
介護職員がQOLの向上のために取るべきアクションについて説明します。
定期的な面談や会話の中で、利用者の要望や意見を積極的に収集しましょう。
利用者の声に耳を傾けるときのポイントは、相手を否定せずに最後まで話を聞くことです。また、共感を示しながら、相手との適切な距離を保つことが重要になります。
その場で悩みを解決しようとすると、焦りや先入観が生まれ、相手の話を遮ってしまうかもしれません。
認知機能の低下や病気の影響でスムーズな会話が
が難しい方も少なくないため、相手がうまく表出できるように配慮することが大切です。
介護サービスを提供する際には、ケアマネによって作成されるケアプランの内容を把握し、利用者によって異なる目標や目的を理解することが重要です。
利用者が「自分らしく生活する」ことや「生きがいを持つ」ことを実現するために、職員同士が共通の認識を持ってケア提供時の様子を共有する必要があります。
個々に異なる健康状態、家族関係、趣味、嗜好、ライフストーリーなどの把握に努め、個別性のあるケアが提供できるように心がけましょう。
介護サービスの提供にあたっては、同一職種だけでなく他の専門職を含めたチームアプローチが欠かせません。
施設や事業所に従事する介護職員、看護師、リハビリ専門職がそれぞれの視点で利用者の状況を評価し、情報を共有することで質の高いサービスの提供へとつながります。
定期的なミーティングを設け、利用者についてのディスカッションを行うことも大切です。また、日々の会話からも有益な意見交換が可能であり、日々の円滑なコミュニケーションの重要性は高いです。
また、利用者の健康状態に変化がある場合や入退院前後などでは、医療現場との連携も求められるでしょう。
病院やかかりつけの医師、看護師から医療情報を受け取ることで、健康状態に合わせた適切なケアを提供できます。
利用者と適切な距離感を保つこともQOL向上の鍵です。
過剰な介助は、本来は自分でできることを奪ってしまう可能性があります。状況によっては、利用者の自尊心を傷つけるケースも考えられるでしょう。
利用者ができることはなるべく自分で行ってもらうように声かけを行い、見守ることも重要なケアです。
また、過剰な介護は利用者の介護依存を強め、意欲低下にもつながります。
利用者の身体機能や環境因子を適切に把握することで、過剰な介護を防ぐことができるでしょう。
見守りと支援の適切なバランスを意識し、利用者の自己決定を尊重したサービスの提供を心がけましょう。
介護予防とは「要介護状態の発生をできる限り防ぐ(遅らせる)こと、そして要介護状態にあってもその悪化をできる限り防ぐこと、さらには軽減を目指すこと」と定義されています。
「介護予防事業」は、平成18年の介護保険法改正に伴い国の制度として導入され、これまでにもさまざまな取り組みが実践されてきました。
介護予防は、あくまでも予防を目的としたサービスであることから、対象となるのは基本的に自立と判定された高齢者と要支援1〜2の高齢者に限ります。
以下に地域在住の高齢者のQOL低下を防ぐ、向上させるための介護予防サービスの種類や効果、活用方法を紹介します。
介護予防サービスは、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を継続することを目的に提供されるサービスです。
必要性に応じてサービスを受けることにより、高齢者は健康状態の悪化を防ぐことができ、生活機能やQOLの維持向上が期待されます。
介護予防サービスの種類と効果については、以下の表をご参考ください。
介護予防サービスの種類 | 効果 |
---|---|
介護予防訪問入浴介護 | 自宅に浴室を持ち込んでもらい、入浴の介助を受けられる。 |
介護予防訪問看護 | 看護師などに訪問してもらい、医療的な処置を受けられる(褥瘡の手当や点滴の管理) |
介護予防訪問リハビリテーション | リハビリ専門職が自宅を訪問し、リハビリを受けられる |
介護予防通所リハビリテーション | 介護老人保健施設や病院、診療所などで機能訓練を日帰りで受けられる |
介護予防福祉用具貸与 | 介護予防のために必要な福祉用具をレンタルできる |
介護予防短期入所生活介護 | 介護老人保健施設などに短期入所し、食事や入浴などの生活援助や機能訓練を受けられる(福祉施設等のショートステイ) |
介護予防短期入所療養介護 | 介護老人保健施設などに短期入所し、医療によるケアや介護に加え機能訓練を受けられる(医療施設等のショートステイ) |
介護予防居宅療養管理指導 | 医師・歯科医師・薬剤師・歯科衛生士などの医療スタッフが訪問し、薬の内服方法や食事方法など療養上の管理・指導を受けられる |
介護予防特定施設入居生活介護 | 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などに入居ている要支援者が、食事や入浴などの生活支援、機能訓練を受けられる |
介護予防小規模多機能型居宅介護 | 通所での利用を中心に訪問や宿泊を組み合わせたサービスを受けられる |
介護予防認知症対応型通所介護 | 軽度の認知症がある方が、通所介護事業所(デイサービス)へ通い入浴、排泄、食事等の介護、機能訓練を受けられる |
介護予防認知症対応型共同生活介護 | 認知症の高齢者が共同生活する住宅(グループホーム)において、入浴、排泄、食事等の介護、機能訓練を受けられる※要支援1では利用できない |
介護予防福祉用具購入費の支給 | 都道府県から指定を受けた特定福祉用具販売業者から購入した福祉用具に対して、1年間につき10万円まで給付を受けられる |
介護予防住宅改修費の支給 | 住宅の対象となる箇所の改修を行った際に、限度額の範囲で改修費の一部が給付される |
介護予防訪問事業 | 介護福祉士や訪問介護員(ホームヘルパー)が居宅を訪問し、入浴、排泄、食事等の介護、調理、洗濯、掃除等の家事の支援を受けられる |
自立支援訪問事業 | 介護福祉士や訪問介護員が居宅に訪問し、入浴、排泄、食事の介護、その他の生活全般の支援などの自立支援を受けられる |
訪問型短期集中プログラム | 保険・医療の専門職が短期間(3ヶ月程度)集中的に、在宅を訪問して支援を受けられる |
介護予防通所事業 | 通所介護事業所(デイサービス)などで入浴、排泄、食事等の介護、日常生活上の支援、機能訓練、レクリエーション等を日帰りで利用できる |
自立支援通所事業 | 在宅の高齢者が通所の方法により、心身機能の維持・向上、積極的な社会参加へ向けた各種サービスを受けることができる |
通所型短期集中プログラム | 保険・医療の専門職が在籍する施設や事業所に短期間(3ヶ月程度)集中的に通い支援を受けられる |
地域密着型介護予防サービスは要支援1〜2の方が受けられるサービスであり、住み慣れた地域を離れずに生活を続けられるよう、地域の特性に応じた柔軟な体制で提供されるサービスです。
メリットとしては、通常の居宅介護サービスとは異なり、利用者の希望に合わせて柔軟に対応が可能な点です。
小規模な施設しか利用できないという特性はありますが、利用者にとっては個別性のある支援を受けられたり、スタッフや他利用者と親密な関係になったりすることが期待されるでしょう。
地域密着型介護予防サービスは「介護予防認知症対応型通所介護」「介護予防小規模多機能型居宅介護」「介護予防認知症対応型共同生活介護」の3つのサービスに分けられます。
利用者のニーズに応じて、介護状態予防やQOLの維持・向上を目的に地域密着型の介護予防サービスを活用することが望ましいでしょう。
【地域密着型介護予防サービスの対象者・利用方法・利用可能サービス】
対象者 | 原則として指定した市町村に居住する要支援認定1~2の被保険者 |
---|---|
利用方法 | 担当ケアマネジャーを決定し、利用について相談する。ケアマネジャーが使用したい事業所との契約を結び、ケアプランを作成する |
利用可能サービス | 介護予防認知症対応型通所介護介護予防小規模多機能型居宅介護介護予防認知症対応型共同生活介護 |
今回は、QOLについて「向上施策」「ADLとの関係性」「予防の取り組み」などを紹介しました。
高齢者は加齢に伴う機能の低下や生活環境の変化などから急速にQOLが低下することも少なくありません。
介護現場においては、QOL向上の視点を持ちサービスを提供することで、利用者の身体的・精神的・社会的な健康の促進が期待できるでしょう。
QOLの向上を実現するためには「規則正しい食事」「適度な運動」「社会的活動」が大切になります。
地域に居住する高齢者が元気に生活できるよう、介護現場においてもQOLへの働きかけが重要視されることは間違いありません。
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