ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/11/06
関節可動域(ROM)とは、関節が動くときや運動を行うときの生理的な運動範囲や角度のことを指します。 関節可動域が大きいほど柔軟に動かせるため、できるだけ大きな数値を保つことが大切です。ここでは関節可動域(ROM)の評価方法や正常値について解説しています。
この記事の目次
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関節可動域(Range of Motion:ROM)とは、体の関節が痛みや傷害などが起きないで運動できる範囲のことです。関節可動域は、どれだけ動くかを角度で表記します。
関節可動域は、一人ひとりの利用者に必要なケアやリハビリ計画を立てるために重要な情報です。関節を中心とした身体機能を評価することで、障害の程度や困難となる生活を把握するために役立ちます。
たとえば、両足首の関節可動域が狭い場合、正しい起立動作が行えません。これを理解せず、無理矢理に正しい起立動作を促しても運動効果は薄くなるでしょう。
また、運動効果の側面だけでなく、関節可動域の知識はアクシデント予防にも役立ちます。
たとえば、人工股関節の手術をしている方がいた場合、股関節屈曲100°など可動範囲の目標値が設定されているケースもあります。この目標値を無視して関節を動かしてしまった場合、脱臼してしまう可能性があります。
関節可動域は、医療事故を予防するためにも医療・看護の現場では必須の知識と言っても過言ではありません。
そのため理学療法士や作業療法士といったリハビリ関連職種だけでなく、介護福祉士や看護師など直接的に介護に関わるスタッフは、関節可動域を理解しておくことが重要です。
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人の体には多くの関節があり、関節ごとに参考可動域角度は異なります。
各関節における参考関節可動域角度を以下に紹介します。
部位名 | 関節運動 | 可動域 |
---|---|---|
膝 | 屈曲 | 0-125° |
足首 | 底屈 | 0-50° |
背屈 | 0-20° | |
肘 | 屈曲 | 0-160° |
手首 | 屈曲 | 0-90° |
伸展 | 0-70° |
ここでは介護の現場で測定する機会が多い関節を中心に、関節可動域の測定方法について解説します。
部位名 | 運動方向 | 参考可動域角度 | 測定方法 | 測定肢位および注意点 |
---|---|---|---|---|
肩関節 | 屈曲 | 0-180 | 測定者が腕(肘あたり)を持って、前方向や後ろ方向に腕を持ち上げる。 肩から床への垂直線と腕のなす角を測定する。 |
座り姿勢もしくは立ち姿勢で測定する。 |
伸展 | 0-50 | |||
外転 | 0-180 | 測定者が腕(肘あたり)を持って、横方向に腕を持ち上げる。 肩から床への垂直線と腕のなす角を測定する。 |
座り姿勢もしくは立ち姿勢で測定する。 体が動かないように注意する。 被検者の後ろから測定する。 |
|
内転 | 0 | |||
外旋 | 0-60 | 測定者が肘を持って、肩を中心に外側や内側に回す。 体に対して垂直線と前腕のなす角を測定する。 |
座り姿勢や立ち姿勢で測定するが、上向きで寝た姿勢でも測定できる。 肘は90°に曲げて、脇を閉じる。 親指を上に向ける。 |
|
内旋 | 0-80 | |||
水平屈曲 | 0-135 | 検査者は腕(肘あたり)を持って、腕が被検者の顔に近づけるように前に動かす、もしくは遠ざけるように後ろに動かす。 両側の肩を結ぶ線と腕のなす角を測定する。 |
座り姿勢もしくは立ち姿勢で測定する。 肩は90°上げた姿勢を保つ。 被検者の上から測定する。 |
|
水平伸展 | 0-30 |
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部位名 | 運動方向 | 参考可動域角度 | 測定方法 | 測定肢位および注意点 |
---|---|---|---|---|
肘関節 | 屈曲 | 0-145 | 測定者が肘を支えて、手首を持つ。肘の曲げ伸ばしをする。 腕と前腕のなす角を測定する。 |
座り姿勢で測定するが、上向きに寝た姿勢でも測定できる。 肘は体につけるように注意する。 手のひらを被検者に向ける。 |
伸展 | 0-5 |
部位名 | 運動方向 | 参考可動域角度 | 測定方法 | 測定肢位および注意点 |
---|---|---|---|---|
股関節 | 屈曲 | 0-125 | 屈曲:測定者が膝下とかかとを持って、太ももが測定者のお腹にあたるように曲げる。 伸展:太ももの前と足首を支えて、上に持ち上げる。 体と太もものなす角を測定する。 |
屈曲:上向きで寝た姿勢で測定するが、横向きで寝た姿勢でも測定できる。測定する側の膝関節は曲げる。 伸展:下向きで寝た姿勢で測定するが、横向きで寝た姿勢でも測定できる。測定する側の膝関節は伸ばす。 被検者の横から測定する。 体が動かないように注意する。 |
伸展 | 0-15 | |||
外転 | 0-45 | 測定者が膝裏と足首を持って、股を外側に開く、もしくは内側に閉じる。 骨盤に対して垂直線と太もものなす角を測定する。 |
上向きで寝て、膝関節は伸ばした姿勢で測定する。 内転の測定では、測定する足が当たらないように、測定しない側の下肢を測定者が持ち上げておく。 体や骨盤が曲がらないように注意する。 |
|
内転 | 0-20 | |||
外旋 | 0-45 | 測定者が膝裏とかかとを持って、太ももを中心に外側や内側に回す。 膝から下した垂直線と下腿(すね)のなす角を測定する。 |
上向きで寝て、股関節と膝関節を90°曲げた姿勢で測定する。 測定する太ももが外側や内側に傾かないように注意する。 |
|
内旋 | 0-45 |
部位名 | 運動方向 | 参考可動域角度 | 測定方法 | 測定肢位および注意点 |
---|---|---|---|---|
膝関節 | 屈曲 | 0-130 | 測定者が膝とかかとを持って、膝の曲げ伸ばしをする。 太ももと下腿のなす角を測定する。 |
上向きで寝た姿勢で測定するが、座り姿勢や横向きに寝た姿勢でも測定できる。 股関節は曲げた姿勢で測定する。 被検者の横から測定する。 |
伸展 | 0 |
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関節によって運動の種類は異なります。関節運動を正しく理解することで、関節可動域の測定や結果の解釈が行いやすくなるでしょう。
関節運動を種類別にまとめると以下の表のようになります。
関節運動 | 運動を行う関節 | 詳細 |
---|---|---|
屈曲・伸展 | 肩関節、肘関節、頚部・体幹・手関節、指、母趾・趾 | 多くの場合は、体に対して前後方向の動き 屈曲:2つの隣接する部位が近づく運動伸展:2つの隣接する部位が遠ざかる運動 |
背屈・底屈 | 足関節・足部 | 足関節と手関節に用いられる背屈:足の甲や手の甲が近づく運動底屈:足の甲や手の甲が遠ざかる運動 |
外転・内転 | 体幹・指・股関節・足関節・足部 など | 多くの場合は、体に対して左右方向の動き外転:体や手指の軸から遠ざかる運動内転:体や手指の軸から近づく運動 |
外旋・内旋 | 肩関節・股関節 | 腕や太ももを軸の中心として回る動き外旋:外側に回る運動内旋:内側に回る運動 |
回外・回内 | 前腕・ | 前腕や足部など軸を中心に回る動き回外:外側に回る運動回内:内側に回る運動 |
右回旋・左回旋 | 頚部・胸腰部 | 頸部や胸腰部が左右に回る動き右回旋:右方向に回る運動左回旋:左方向に回る運動 |
出典:一般社団法人日本骨折治療学会「関節可動域表示ならびに測定法(2022年4月改訂)
介護の現場では多職種が関わるため、多くのスタッフと連携を取る必要があります。円滑な連携を図るためには、知識を共有することが大切です。
介護現場において測定した方が良い関節可動域は、主に直接介助に関わる部分になるでしょう。
以下の関節が特に重要です。
生活動作の介助を行う中で、上記の関節可動域を把握していないことが原因でアクシデントを引き起こす可能性があります。
たとえば、股関節の外転や外旋の関節可動域制限を把握しておらず、オムツ交換の介助時に無理な力をかけて骨折させてしまうアクシデントなどが考えられます。
介護事故を予防するためにも、関節運動の種類を把握しておくと良いでしょう。
関節可動域を適切に把握することでアクシデントを予防すると同時に、改善を図るべきポイントも抑えることができます。
ここでは、関節可動域の評価がどのようにリハビリに役立つのか紹介します。
以下に具体例を挙げて解説するので、ご参考ください。
関節可動域を評価することで、関節運動の制限が原因となる生活動作の困難さを予測できます。
また、関節可動域評価を活かして介護計画を作成することで、それぞれの利用者に合ったケアを選択しやすくなるでしょう。
以下に具体的な例を挙げます。
右肩関節屈曲が30°までしか行えない利用者Aさんは、服に腕を通すのが大変な状況がみられています。
Aさんの場合、服の選択や服の着方を変えることで、生活の困難さを減らすことができるでしょう。
肩が動かしにくいAさんへの支援方法として「前開きの服を選択する」「動きにくい右腕の方から服を着る」などが挙げられます。
さらに詳細に評価し、肩関節屈曲可動域の改善が見込めるかどうかを考察することによって、支援方法はさらにきめ細かく設定することが可能でしょう。
関節可動域運動は独占業務ではなく、リハビリ職でなくとも実施可能なため、適切にリハビリ・支援方法を定めることで、機能向上も図りやすくなります。
以上のように、関節可動域評価を活かして介護計画を立てることで、利用者に合ったケアを選択できます。
関節可動域評価を行わずに無理な支援を行なった場合、脱臼などの介護事故につながる可能性も否定できません。
適切な評価を行い、アクシデントを予防することが大切です。
リハビリでは関節可動域を拡大するトレーニングを実施することがあります。ただし、リハビリを行える時間は限られているため関節可動域の評価を行い、対象の関節を絞ってリハビリを行う必要があります。
たとえば、股関節や膝関節は参考可動域と同程度であり、左足関節だけ関節可動域が0°程度のBさんがいたとしましょう。
Bさんは、ふくらはぎの筋肉が硬く足関節の関節可動域が狭くなっていることによって、立ち座りのしにくさや歩きにくさが生じていていました。
この場合、股関節や膝関節よりも足関節の可動域を拡大するリハビリ計画を立てるのが効果的でしょう。
よって、リハビリ計画として以下のような内容を立てました。
上記の動作をリハビリとして組み込み、少しずつ可動域の拡大を図ります。
このように、関節可動域を評価することによって、適切なリハビリ内容を検討することができます。
関節可動域を定期的に測定することで、ケアやリハビリの効果を判定することもできます。
たとえば、膝の関節が硬く、3ヵ月前からストレッチなどの関節可動域を拡大するためのリハビリを開始した利用者Cさんがいたとしましょう。
Cさんの3ヵ月前と現在の関節可動域を比較した結果、以前よりも関節可動域が大きくなっている場合は、実施しているリハビリが適切であったと判断できます。
反対に、関節可動域が変わらない場合では、リハビリ内容を見直す必要があるかもしれません。
関節可動域を定期的に評価し、変化を確認することが、ケアやリハビリが適切であるかを判断する1つの目安になります。
関節可動域について、正常な関節角度や評価方法、現場での活用方法を解説しました。
関節可動域は、関節を中心とした身体機能の指標であり、利用者に必要なケアやリハビリ計画の作成に役立つ重要な指標になります。
計画を共有して効果的なケアを行うためには、理学療法士や作業療法士などのリハビリ関連職種だけでなく、介護福祉士や看護師など多くの職種が関節可動域について理解する必要があるでしょう。
参考可動域を把握し、定期的に評価することで、一人ひとりの利用者のケアの見直しをすることも大切です。
積極的に関節可動域測定を実践し、より効果的な支援計画を作成しましょう。
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