徒手筋力テスト（MMT）とは？評価方法と評価表・注意点【上肢・下肢部位別】

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MMT（徒手筋力テスト）とは

MMT（徒手筋力テスト）は、Manual Muscle Testingの略称であり、筋力を評価するテストの1つです。0〜5の6段階で判定し、MMT0は筋肉の収縮がなく最も筋力が弱い状態で、MMT5が最も筋力が強い状態を示します。

MMTは専門機器を使用しないため、介護の現場においても活用しやすいテストといえるでしょう。

実際の測定では関節ごとに被検者が体を動かし、負荷をかけて、どれだけ抵抗できる筋力があるかを判断します。

負荷をかける際は、測定者の力や重力を用いるため、機器購入などをする必要がなく、金銭的なコストがかかりません。

比較的短時間で筋力を測定できる点も介護現場でMMTが活用しやすい理由の1つになるでしょう。どの施設でも筋力の測定が簡単に行えます。

MMTは関節の運動ごとに測定する評価であり、目的としている部位が定まっていれば比較的短時間で筋力測定を終えることができます。

簡単に評価できるテスト方法でありながら、筋力を把握することでそれぞれの利用者に合ったケアを選定しやすくなる点は大きなメリットでしょう。

たとえば、MMTを活用することで、介護計画やリハビリ計画を作成しやすくなったり、転倒などのリスクを予想しやすくなったりします。

筋力の評価を理解すると、介護現場でも大いに役立てることができるでしょう。

介護におけるMMT（徒手筋力テスト）の目的

ここでは、介護現場においてMMTを実施する目的について解説します。

主な目的は4つあります。

1. 利用者の特徴を把握する
2. 日常生活の支援方法を決める
3. リハビリ計画に活用する
4. 身体機能の変化を評価する

具体的な内容について、以下で解説します。

１．利用者の特徴を把握する

MMTを用いて筋力を測定することで、部位ごとに筋力を判定することができます。部位ごとの筋力を評価することで、利用者の身体的な特徴が把握できるでしょう。

MMTは0～5の6段階で判定するため、筋力低下の有無だけでなく、筋力低下の程度まで評価することができます。

利用者の筋力の特徴を把握することによって、適切な支援方法が決定できます。

２．日常生活の支援方法を決める

MMTにより関節ごとの筋力を評価することで、日常生活動作の詳細を把握でき、利用者に合った日常生活の支援方法が選択しやすくなります。

たとえば、MMTの測定から脚を中心に筋力の低下があると判断されたAさんがいたとしましょう。

Aさんは、評価の結果から転倒するリスクが高いことがわかりました。

そのため以下の支援方法を決定しました。

• Aさん1人で移動する時は歩行器を使用する
• 支援者がいる時は付き添って歩行する

筋力評価は、実践的なケアを検討するための大切な情報になります。

３．適切なリハビリ計画の立案

利用者にあったプログラムを検討するためには、各関節の筋力を把握する必要があります。

たとえば、歩行器を活用して歩くことを目的にリハビリを希望しているBさんがいたとしましょう。

Bさんは、手術後に脚の筋力が低下し、歩行できなくなってしまいました。現在は、特に膝の屈伸を伴う運動に困難を感じています。Bさんに対して適切なリハビリ計画を立てるためには、脚の筋力を詳細に評価し、必要なトレーニングを特定しなければなりません。

評価の結果、膝関節のみでなく、股関節と体幹の筋力低下が確認されました。よって、Bさんには膝関節・股関節・体幹の筋力を強化するリハビリ計画を立てました。

このように、利用者の各部位の筋力を評価することが、ひとり一人にあったリハビリ計画を立てるための重要な情報になります。

４．身体機能の変化を評価する

筋力を定期的に測定することで、身体機能の変化を評価できます。

MMTは筋力を0～5の段階で示すため、以前の測定結果と比較することで、簡単に筋力の変化を把握できます。

たとえば、筋力の向上のトレーニングを行っている利用者Cさんがいたとしましょう。Cさんは、リハビリを開始する前、膝関節伸展のMMT2でした。3ヵ月間、リハビリを行うことにより、Cさんの脚の筋力がMMT3に変化しました。

この場合、リハビリによって筋力が向上していることがわかります。MMTを定期的に評価することで、利用者の変化を捉えることができるでしょう。

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MMT（徒手筋力テスト）の判断基準

ここではMMTの判断基準について解説します。

MMTの判定は0〜5の6段階であり、MMT0が最も筋力が弱く、MMT5が最も筋力が強い状態を示します。

数値の判断基準について、以下の表に記載しますのでご参考ください。

5	normal	強い抵抗下で重力に対して可動域内を完全に動かせる
4	good	かなりの抵抗下で重力に対して可動域内を完全に動かせる
3	fair	重力に対して可動域内を完全に動かせる
2	poor	重力を除くと可動域内を完全に動かせる
1	trace	筋肉の収縮のみで関節の動きはない
0	zero	筋肉の収縮なし

MMTの結果から、日常生活動作を予想することも可能です。

たとえば、全身のMMTが3の利用者がいたと仮定しましょう。MMT3は「重力に対して可動域内を完全に動かせる」状態のため、ベッド上や椅子上で体を自由に動かすことができると判断できます。

ただし、MMT3のレベルでは「物を運ぶ」などの重力よりも負荷がかかる動作を実施することは難しいと予想されるでしょう。また「立ち上がる」など、テストで行う関節運動以外の自重がかかる動作も困難を伴います。

つまり、MMT3の状態では日常生活動作のほとんどが困難な状態になります。

重力に上手く抵抗できないMMT2以下であれば、ベッド上での動作でも困難な場合があるでしょう。

MMT4以上であれば、ある程度の日常生活動作が可能だろうと判断できます。

MMT（徒手筋力テスト）の評価表

ここではMMTの評価表を紹介します。MMTを評価する際に、評価表を用意すると便利です。評価表を使い、測定した部位や測定結果、測定日を記録します。

一般的なMMTの評価表を以下に載せますのでご参考ください。

左		筋肉部位	支配神経	右
日付	日付			日付	日付
		僧帽筋	C2、C3
		三角筋	C5
		上腕二頭筋	C5、C6
		上腕三頭筋	C6、C7
		腕橈骨筋	C5、C6
		腸腰筋	L1、L2
		大腿四頭筋	L4
		大腿二頭筋	L5、S1、S2
		前脛骨筋	L4、L5、S1
		腓腹筋	L4、L5、S1、S2

筋肉部位の項目では、関節運動に関わる主な筋肉の名前が記載されています。たとえば、三角筋は肩関節屈曲に関わる筋肉なので、その運動のMMTテストの結果を記載しましょう。

日付の下に測定した左右のMMTテストの結果を0〜5で記載します。

支配神経の項目には、筋肉を動かす信号を送る神経の名前が記載されています。支配神経は、脳や脊髄から筋肉に信号を伝えて、体を動かします。

よって、支配神経の神経伝達に異常がある場合に筋力がうまく発揮できません。MMTを行う際には、神経伝達異常の可能性も考慮する必要があります。

また、1つの関節運動に対して筋肉と支配神経が複数関わっていることが多いため、それを考慮する必要もあるでしょう。

評価表の内容は、病院や施設などの役割やMMTを測定する目的によって異なることもありますが、評価目的を抑えておけば判断に困ることは無いでしょう。

MMT（徒手筋力テスト）のやり方

ここでは、MMTの具体的なやり方について解説します。部位ごとに説明しますのでご参考ください。

測定の際には、代償動作に注意しましょう。たとえば、肩の上げ下げの運動を行う場合、肩の上げ下げ以外に体を後ろにそらすような動作がみられることがあります。この、測定している筋肉以外を使った運動を代償動作と呼びます。

代償動作が生じた場合、正確に筋力が測定できません。MMT測定時は、代償動作がないことを確認しつつ、行いましょう。代償動作がみられる場合は、それも評価として考慮しつつ、再測定も検討してください。

上肢のMMT（徒手筋力テスト）

主な上肢のMMTについて、以下で解説します。

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肩（腕）の上げ下げ動作

肩（腕）を上げる動作に関わる筋肉は、主に三角筋です。着替えや洗濯物を干すなどの動作で行う重要な関節運動です。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座り、測定する腕を垂らした状態で開始姿勢を保つ
• 検査者は、被検者の横から肩と肘の少し上に手を添える

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「肘を伸ばしたまま、前に向かって肩の高さまで腕を上げる」ように指示をする。この時、肘は軽く曲がっても良いが、手のひらは床を向くように注意する。
2. 肘を伸ばしたまま、肩の高さまで腕が上がればMMT3と判断する。
3. ２の動作ができなければ、被検者の肩を触りながら腕の動きと筋肉の様子を観察する。腕がわずかでも動けば 、MMT2と判断する。腕は動かないが、触れている肩から筋肉の動きが感じれば、MMT1と判断する。触れている肩から筋肉の動きを感じなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「腕を肩の高さまで上げたまま、できるだけ腕の位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の上腕を手で抑えて、床の方向に徐々に力をかける。検査者のある程度の負荷に耐えられ、被検者が腕の位置を肩の高さで保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の力を被検者の上腕にかける。検査者の最大負荷にも耐えて、腕の位置を肩の高さで保つことができれば、MMT5と判断する。

以下に注意するべき代償動作の例を挙げます。

• 体を後ろに反らす
• 肩をすくめる

腕の回外・回内

腕を外に回す動作に関わる筋肉は、主に上腕二頭筋です。また、腕を内に回す動作に関わる筋肉は、主に円回内筋や方形回内筋です。

腕の回内や回外は、手のひらを回す動きを要する食事や歯磨きなどの生活動作に関わる関節運動です。

まず、腕の回外のMMTの説明を行いますのでご参考ください。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る
• 肘を体につけた状態で90°に曲げ、手のひらを床に向ける
• 検査者は、被検者の正面から肘を支えて、手首を持つ

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「手のひらを天井に向ける」ように指示をする。
2. 手のひらが問題なく天井に向けば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができなければ、被検者の肘の付け根を触りながら腕の動きと筋肉の様子を観察する。腕がわずかでも動けば、MMT2と判断する。腕は動かないが、触れている肘の付け根から筋肉の動きが感じられればMMT1と判断する。触れている肘の付け根から筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできた場合、MMT4と5の評価に進む。被検者に「手のひらを天井に向けたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の前腕を持って、手のひらを下に向ける方向へ回すように徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷に耐えて、被検者が手のひらを天井に向け続けられれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷にも耐えて、被検者が手のひらを天井に向け続けられれば、MMT5と判断する。

腕の回内のMMTは、腕の回外のMMTの方法と腕を回転させる方向が反対になるだけであり、ほとんど同じです。よって、開始姿勢において異なる点は「手のひらを天井に向けた状態」になります。

そして、被検者に「手のひらを床に向ける」ように指示をします。その後の手順は、腕を外に回す筋力の測定と同じですが、指示が「手のひらを床に向けたまま、できるだけ位置を保ち続ける」に変わる点だけ注意してください。

腕の回外・回内の測定時は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 肘が体から離れる
• 手や指が強く曲がる

肘の曲げ伸ばし

肘を曲げる動作に関わる筋肉は上腕二頭筋、肘を伸ばす動作に関わる筋肉は上腕三頭筋です。物を持ち上げるなどの動作に関わる関節運動です。

まず、肘を曲げる動作のMMTの説明を行いますのでご参考ください。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る
• 被検者は手のひらを自分に向けて、肘は90°よりも大きく曲げる
• 検査者は、被検者の正面に立ち、肩と手首を持つ

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「肘を曲げる」ように指示をする。
2. 肘が問題なく曲がれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができなければ、被検者の肘の付け根を触りながら腕の動きと筋肉の様子を観察する。腕がわずかでも動けば、MMT2と判断する。腕は動かないが、触れている肘の付け根から筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。触れている肘の付け根から筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なく行えた場合、MMT4と5の評価に進む。被検者に「肘を曲げたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の手首を持って、肘を伸ばす方向へ徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷に耐えて、被検者が肘を曲げたまま位置を保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷にも耐えて、被検者が肘を曲げたままの位置を保つことができれば、MMT5と判断できる。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 体を前に倒す
• 手首をひねる

次に、肘を伸ばす筋力測定の説明を行います。MMT開始前に以下の姿勢になるようにしましょう。

• 被検者はうつ伏せに寝る
• 肩を90°開き、肘から先をベッドから下して、肘を90°曲げる
• 検査者は、被検者の横に立ち、被検者の肘のすこし体側の部分に手を添える

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「肘を伸ばす」ように指示をする。
2. 肘が問題なく伸びれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができなければ、被検者の肘のすこし体側の部分を触りながら、腕の動きと筋肉の様子を観察する。腕がわずかでも動けば、MMT2と判断する。腕は動かないが、触れている肘の体側の部分から筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「肘を伸ばしたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の手首を持って、肘を曲げる方向に徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷に耐えて肘を伸ばした位置を保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能だった場合、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷にも耐えて、被検者が肘を伸ばした位置を保てれば、MMT5と判断できる。

肘を伸ばす筋力の測定は、うつ伏せの姿勢で開始します。うつ伏せは被検者への負担が大きい可能性があり、実際の介護現場では測定ができないこともあるでしょう。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 体をひねる
• 肩をすくめる

手首・手の動作

手首の手のひら側を曲げる動作、つまり手首関節の屈曲に関わる筋肉は頭側手根屈筋と尺側手根屈筋です。食器を持ったり、タオルを絞ったりする生活動作に関与します。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る
• 机に手を載せ、手の甲が触れるようにする
• 検査者は、被検者の正面に位置して、被検者の手首を下から持つ

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「手のひらが前腕に近づくように曲げる」ように指示をする。手首が問題なく曲がれば、MMT3と判断する。
2. 2の動作ができなければ、被検者の手首の付け根を触りながら、手の動きと筋肉の様子を観察する。手首がわずかでも動けば、MMT2と判断する。手首は動かないが、触れている肘の付け根から筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。触れている手首の付け根から筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
3. 2の動作が問題なくできれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「手首を曲げたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の手のひらを持って、手首を伸ばすように徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷にも耐えて、被検者が手首を曲げたままの位置を保つことができれば、MMT4と判断する。
4. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷にも耐えて、被検者が手首を曲げたままの位置を保てれば、MMT5と判断できる。

手首の手の甲側を曲げる動作、つまり手関節の背屈のMMTは、手関節屈曲のMMTの方法と手のひらの向きが反対になるだけであり、ほとんど同じです。よって、開始姿勢において異なる点は「机に手を載せ、手のひらが触れるようにする」になります。

そして、被検者に「手の甲が前腕に近づくように曲げる」ように指示をします。その後の手順は手関節の屈曲のMMTと同じですが、手の甲が前腕に近づく方向で行うように注意してください。

手首の筋力の測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 指が大きく曲がる
• 肘が曲がる

手指の動き

手指の動きに関するMMTを解説します 。指を曲げる動作に関わる筋肉は浅指屈筋と深指屈筋です。

指を曲げる動きは、服のボタンの付け外しなどの生活動作に関わります。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る。
• 机に手を載せ、手の甲が触れるようにする。
• 検査者は、被検者の正面に位置して、被検者の手首を下から持つ。

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「指を曲げる」ように指示をする。
2. 指が問題なく曲がれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができれば、被検者の手首の付け根を触りながら指の動きと筋肉の様子を観察する。指がわずかでも動けば、MMT2と判断する。指は動かないが、触れている手首の付け根から筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「指を曲げたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の指を持って、指を伸ばす方向へ徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷にも耐えて、被検者が指を曲げたままの状態を保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷にも耐えて、被検者が指を曲げたままの状態を保つことができれば、MMT5と判断する。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 手首が大きく曲がる
• 肘が大きく曲がる

下肢のMMT（徒手筋力テスト）

主な下肢のMMTと立ち上がり動作による下肢筋力チェックについて、以下で解説します。

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立ち上がり動作（下肢の筋力チェック）

立ち上がり動作は、下肢全体の筋力を大まかに評価できる動作です。簡単に行えるため、現場でも活用しやすい評価になります。

なお、立ち上がり動作はMMTではありませんが、下肢の大まかな筋力をチェックするための動作確認のためこちらで取り上げています。

測定の方法は以下の通りです。

• 被検者は椅子に座る
• 支えや手を使わずに立ち上がる

支えや補助なく立ち上がることができる場合は、下肢の筋力は比較的保たれていると判断できるでしょう。

支えがないと立てない場合や手を使わないと立ち上がれない場合は、自身の体を脚だけでは支えられない可能性があります。よって、脚の筋力が低下しているかもしれません。

脚の筋力低下が疑われるのであれば、より入念に部位ごとの筋力評価を行う必要があるでしょう。

立ち上がり動作は下肢を中心に幅広い筋力を評価できます。部位ごとに細かく評価する前に、立ち上がり動作によって全体の筋力を把握するとよいでしょう。

膝の伸展

膝を伸ばす動作に関わる筋肉は大腿四頭筋です。立ち座りや歩行などの生活動作に関与します。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る
• 膝を約90°に曲げておく
• 手は体の横に自然に下ろす
• 検査者は被検者の横から膝下に手を添える

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「膝をまっすぐ伸ばす」ように指示をする。
2. 膝が問題なく伸びれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができなければ、被検者の太ももを触りながら足の動きと筋肉の様子を観察する。足がわずかでも動けば、MMT2と判断する。足は動かないが、触れている太ももから筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。触れている太ももから筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なく行えれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「膝を伸ばしたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の足首を持って、膝を曲げる方向へ徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷に抗して膝を伸ばした姿勢を保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷に耐えて、被検者が膝を伸ばした姿勢を保つことができれば、MMT5と判断できる。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 体が後ろに反る
• 太ももを上げる

股関節の屈曲

太ももを上げる動作である、股関節の屈曲に関するMMTを解説します 。股関節屈曲動作に関わる筋肉は腸腰筋であり、お風呂の浴槽をまたぐなどの生活動作に関与します。

MMT開始前に以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は椅子に座る
• 膝を約90°に曲げておく
• 手は体の横に自然に下ろす
• 検査者は被検者の横から膝の上に手を添える

MMT測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「膝を曲げたまま、太ももを上に上げる」ように指示をする。
2. 太ももが問題なく上がれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作ができなければ、被検者の太ももの付け根を触りながら股関節の動きと筋肉の様子を観察する。股関節がわずかでも動けば、MMT2と判断する。股関節は動かないが、触れている太ももの付け根から筋肉の動きが感じられれば、MMT1と判断する。触れている太ももの付け根から筋肉の動きが感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできれば、MMT4と5の評価に進む。被検者に「太ももを上にあげたまま、できるだけ位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の膝の上に手を添えて、太ももを下げる方向へ徐々に負荷をかける。検査者のある程度の負荷に耐えて、太ももを上げたままの姿勢を保つことができれば、MMT4と判断する。
5. MMT4も可能ならば、検査者は最大の負荷をかける。検査者の最大負荷に耐えて、被検者が太ももを上げたままの姿勢を保つことができれば、MMT5と判断できる。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 体が後ろに反る
• 太ももや足首が内側や外側に向く

足関節（足首）の屈曲

足首を曲げる動作、足関節の屈曲（底屈）に関するMMTを解説します。足関節屈曲動作に主に関わる筋肉は腓腹筋とヒラメ筋です。これらの筋肉は歩行や階段の上り下りなどの生活動作に関与します。

足関節底屈は、MMT3以上とMMT2+以下で測定する姿勢が異なるので注意してください。

MMT3の測定開始前には、以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者は片脚立位の姿勢を取る
• 被検者は壁などに触れて姿勢を保つ
• 検査者は被検者の安全を確保するために近くで備える

MMT3以上の測定は、以下の手順になります。

1.  被検者に「片足で立ち、踵を上げる」ように指示する。
2. 被検者が問題なく最大限踵を上げられれば、MMT3と判断する。
3. 2の動作が問題なく行えれば、MMT4と5の評価に進みます。被検者に「踵を最大限上げたまま、できるだけ位置を保つ」ように指示する。1度でも指示した動作が行えればMMT3と判断する。
4. 3の動作が問題なく行えた場合、検査者は被検者の片脚立位の姿勢を見守りながら、被検者が何回連続でかかとを上げ下げできるかを確認する。繰り返し動作が10回以上行えたらMMT4と判断し、20回以上行えたらMMT5と判断する。

測定の際は、以下の代償動作に注意しましょう。

• 上肢に力が入る
• 体が前に倒れる

MMT2+以下の測定開始前には、以下の姿勢になるようにしてください。

• 被検者はうつ伏せになり、足はベッドの端から出るようにする
• 検査者は、被検者の足首を支え、足底側を手で持つ

MMT2+以下の測定は、以下の手順になります。

1. 被検者に「足先を天井に向かって最大限上げた（底屈した）位置を保つ」ように指示します。
2. 被検者が問題なく最大限底屈できれば、MMT2と判断する。
3. 足がわずかでも動けば、MMT2-と評価します。足首は動かないが、ふくらはぎの筋肉が収縮しているのを感じる場合は、MMT1と判断する。筋肉の収縮が感じられなければ、MMT0と判断する。
4. 2の動作が問題なくできれば、MMT2+の評価に進む。被検者に「足首を天井に向かって最大限上げた（底屈した）位置を保ち続ける」ように指示をする。検査者は被検者の脚の指の付け根に手を添えて、足先を床の方向へ曲げるように負荷をかける。検査者の最大限の負荷に耐えて、被検者が足先を天井に向かって最大限上げたままの姿勢を保つことができれば、MMT2+と判断する。

測定の際は以下の代償動作に注意しましょう。

• 太ももが天井に向かって動く
• 足の指が大きく曲がる

MMT（徒手筋力テスト）の注意点

ここでは、MMTの注意点について解説します。MMTは比較的短時間で簡易的に行えるため介護現場でも活用しやすい評価ですが、いくつか注意点があるため抑えておきましょう。

MMTの主な注意点は以下の3つです。

1. 重度の認知症や意識障害のある人への実施は困難
2. MMTの実施により痛みや疲労などが出現する可能性がある
3. 筋力測定の正確性は専門機器を使用するより劣る

以下で詳しく解説します。

重度の認知症や意識障害のある人への実施は困難

筋力の測定には対象者自身に力を入れてもらう必要があります。そのため、測定に協力が得られないような重度の認知症や意識障害がある場合では、MMTを正しく測定することはできません。

MMTを実施する前に、認知機能や意識レベルを評価する必要があるでしょう。

MMTの実施により痛みや疲労などが出現する可能性がある

MMTでは被検者に最大限の努力を指示し、筋力を発揮してもらいます。そのため、人によっては痛みや疲労などが出現する可能性が考えられます。

特に連続して多くの部位を測定する際は、疲労などの不快感が出現しやすいため、注意しましょう。事前に説明を十分に行うことが大切です。また、測定中も説明を行いながら、疲労などに注意して評価を進めましょう。

筋力測定の正確性は専門機器を使用するより劣る

MMTでは測定者が手で負荷をかけるため、負荷量が人によって異なります。負荷量が異なれば、同じ部位を評価しても結果が異なる可能性もあるでしょう。

そのため、握力計など筋力を測定する専門機器を用いた評価に比べ、正確性は劣ります。検査者は、測定時にできるだけ同じ負荷をかけるように意識する必要があります。

MMTは介護現場において支援方法を決める大切な評価

MMT（徒手筋力テスト）について、目的やメリット、注意点などを解説しました。利用者の筋力は、介護計画やリハビリプログラム作成などに大きな影響を与えるため、介護現場において無視できない評価項目になります。

筋力を評価し、身体機能の特徴を把握することで、利用者に適切なサービスを提供できるでしょう。

MMTは専門機器を必要としません。比較的短時間で簡易的に実施できるため評価のため、介護現場で実施しやすいというメリットがあります。いくつか気をつける点もありますが、MMTは簡単に筋力を評価できる方法の1つです。

是非、MMTを活用し、日々のケアをより良い内容にしていきましょう。