ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/11/05
30秒立ち上がりテストは、高齢者の筋力低下を図るスケールとして広がっているテストです。脳卒中患者だけでなく、ロコモやサルコペニア、フレイルなどを検出するテストとしても注目されています。この記事では30秒立ち上がりテストの概要・やり方・カットオフ値などを詳しく解説しています。
この記事の目次
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30秒立ち上がりテスト(CS-30:30-second chair stand test )は、30秒間で椅子から何回立ち上がることができるかを測定する簡便な運動機能評価テストです。Jonesらにより下肢筋力を評価する方法として開発され、中谷らによって日本人向けに修正されました。
このテストは、加齢による筋力変化を簡便に評価できます。また、以下の項目との関連について研究が行われています。
下肢筋力や転倒リスクの評価法として活用されています。フレイルやサルコペニア、ロコモティブシンドローム(ロコモ)のチェックにも有用とされています。CS-30は、身体機能の測定機器が十分に揃っていない環境で下肢筋力を測定したい時に役立つでしょう。
たとえば、BIODEXのような筋力測定器がある場合、それを活用すれば詳細で多様な筋力のデータを得られます。しかし、筋力測定器のような特殊な機器のある場所は限られており、特に介護現場ではほとんど用意されていません。
よって、CS-30のような機器を用いず簡便に評価できるテスト項目を上手く活用することが重要になります。
CS-30の対象者は幅広く、下肢筋力低下が疑われる方であれば、どなたでも評価対象になると考えて良いでしょう。ただし、立ち上がり動作が自力で行えない方は、評価が行えないため対象外になります。
CS-30は、リハビリの初期評価や定期的な運動機能評価に活用されており、特に転倒リスクの高い高齢者に対して有効な評価となっています。
介護現場での使用頻度も高く、通所系・訪問系を問わず、多くの介護施設・介護サービスで活用されています。介護予防事業などで用いられることも多いでしょう。CS-30は簡便に実施できるため、多くの介護従事者にとって使いやすい評価方法であり、抑えておいて損はありません。
CS-30には、以下のような特徴があります。
これらの特徴から、現場でも取り入れやすいテストとなっています。
CS-30テストを実施する際には、以下のものを準備するようにしましょう。
椅子の高さを変えないことが重要です。椅子の高さが変わってしまうと、評価が正確に行えません。
後述するカットオフ値を活用する場合、椅子の高さは40cmでなければいけません。ただし、椅子の高さが40cm以外の場合であっても、同一の椅子の高さで継続的に評価ができれば同利用者の能力比較することは可能です。
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30秒立ち上がりテストのやり方・手順を以下で解説します。
1.準備 | ・被検者は、踵の低い靴を履くか素足で行う。・椅子の中央部より少し前に座り、少し前屈みになる(体幹が約10度前屈するように)。 |
---|---|
2.姿勢確認 | ・両膝は握りこぶし1つ分くらい開く。・足裏を床につけ、踵を少し引く。・両手は胸の前で腕組みする。 |
3.練習 | ・テスト前に何度か練習を行い、正しい姿勢を確認する。 |
4.テスト開始 | ・開始の合図で、両膝が完全に伸びるまで立ち上がり、素早く元の座位姿勢に戻る。・座位姿勢では体を少し前屈みにし、立位姿勢では背中をまっすぐ伸ばすようにする。 |
5.測定 | ・開始の合図から、30秒間に何回立ち上がりができるかを測定する。・座位姿勢から立ち上がったら1回とカウントし、再び座位姿勢から立ち上がったら、2回とカウントする。 ・30秒が経過したタイミングで、少しでも立ち上がり動作が見られれば、回数にカウントする。 |
以上が30秒立ち上がりテストの基本的な実施方法です。
【男性】
年齢 | 劣っている | やや劣っている | ふつう | やや優れている | 優れている |
---|---|---|---|---|---|
20〜29歳 | 22以下 | 23〜27 | 28〜32 | 33〜37 | 38以上 |
30〜39歳 | 20以下 | 21〜25 | 26〜30 | 31〜36 | 37以上 |
40〜49歳 | 19以下 | 20〜24 | 25〜29 | 30〜35 | 36以上 |
50〜59歳 | 17以下 | 18〜21 | 22〜27 | 28〜31 | 32以上 |
60〜64歳 | 13以下 | 14〜19 | 20〜25 | 26〜31 | 32以上 |
65〜69歳 | 13以下 | 14〜17 | 18〜21 | 22〜25 | 26以上 |
70〜74歳 | 11以下 | 12〜15 | 16〜20 | 21〜24 | 25以上 |
75〜79歳 | 10以下 | 11〜14 | 15〜17 | 18〜21 | 22以上 |
80歳以上 | 9以下 | 10〜13 | 14〜16 | 17〜19 | 20以上 |
【女性】
年齢 | 劣っている | やや劣っている | ふつう | やや優れている | 優れている |
---|---|---|---|---|---|
20〜29歳 | 17以下 | 18〜22 | 23〜28 | 29〜34 | 35以上 |
30〜39歳 | 17以下 | 18〜23 | 24〜28 | 29〜33 | 34以上 |
40〜49歳 | 16以下 | 17〜22 | 23〜27 | 28〜33 | 34以上 |
50〜59歳 | 15以下 | 16〜19 | 20〜24 | 25〜29 | 30以上 |
60〜64歳 | 13以下 | 14〜18 | 19〜23 | 24〜28 | 29以上 |
65〜69歳 | 11以下 | 12〜16 | 17〜21 | 22〜26 | 27以上 |
70〜74歳 | 9以下 | 10〜14 | 15〜19 | 20〜23 | 24以上 |
75〜79歳 | 8以下 | 9〜12 | 13〜17 | 18〜21 | 22以上 |
80歳以上 | 8以下 | 9〜12 | 13〜16 | 17〜19 | 20以上 |
出典:30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)成績の加齢変化と標準値の作成.臨床スポーツ医学20(3):349-355,2003
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30秒立ち上がりテスト(CS-30)を実施する際には、以下の点に注意してください。
正確に行う | テストのやり方を間違えると、正しい結果が得られません。被検者が正しい姿勢と動作を行っているか確認しましょう。たとえば、座位姿勢や立位姿勢が前傾し過ぎたり、腕の勢いを使って動作したりするなどに注意してください。 |
---|---|
椅子の高さを変えない | 椅子の高さが変わらないようにしましょう。高さが変わってしまった場合、立ち座り動作の行いやすさも変わり、テストの結果が正確では無くなってしまいます。 |
練習を行う | 実際のテストの前に、何度か練習を行い、被検者が正しい姿勢と動作を理解しているか確認します。特に座位姿勢と立位姿勢の理解度に注意しましょう。被検者がテスト結果を良くするために、姿勢を崩して回数を稼ごうとすることがあります。 |
安全を確保する | 被検者がバランスを崩し転倒する可能性があるため、測定者は常に被検者の近くで注意を払い、安全にテストが行えるように努めましょう。 |
痛みを確認する | テスト中に被験者が膝や腰、背中などに痛みを感じた場合はテストを中止しましょう。痛みがある状態でテストを続けると、症状が悪化する可能性があります。被検者の様子を観察し、痛みの訴えがないか確認しましょう。 |
これらの注意点を守ることで、30秒立ち上がりテストを安全かつ正確に実施できます。
サルコペニアとは、年齢とともに筋肉量や筋力が低下する症状を指します。特に高齢者においては、このサルコペニアが日常生活の質を大きく左右します。
サルコペニアは、早期発見と予防が重要です。介護に携わる者として疎かにできない項目になるでしょう。30秒立ち上がりテスト(CS-30)は、サルコペニアのチェックに有用とされているため、判断基準となるカットオフ値を抑えておきましょう。
【カットオフ値とは】
まず、カットオフ値とは、特定のテスト結果に基づいて、ある症状があるかどうかを判断するための基準値のことです。たとえば、CS-30のカットオフ値を超えた場合、サルコペニアの可能性が高いとされます。
【30秒立ち上がりテスト(CS-30)のカットオフ値】
最新の研究によると、CS-30を用いてサルコペニアを検出するためのカットオフ値は、以下のように設定されています。
つまり、30秒間に椅子から立ち上がる回数が男女それぞれ15回以下・17回以下である場合に、サルコペニアの可能性があると判断できます。
【ロコモとサルコペニアの関係】
ロコモとは、骨や関節、筋肉の衰えによって運動機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。ロコモとサルコペニアは密接な関係があり、どちらも加齢に伴う筋肉や骨の減少によって発生します。サルコペニアが筋力の低下に焦点を当てているのに対し、ロコモは運動器全体の機能低下に焦点を当てています。
サルコペニアが進行すると、筋力低下により立ち上がり動作や歩行が困難になり、転倒リスクが高まります。これが進行すると、さらに生活の質が低下する可能性があります。したがって、介護現場ではサルコペニアの早期発見と予防が、ロコモの予防にもつながります。
30秒立ち上がりテスト(CS-30)は、高齢者の運動機能を簡便に評価できる重要なテストです。下肢筋力やバランス能力、転倒リスクの評価に加え、ロコモやサルコペニアのチェックにも有用です。介護予防の観点からも活用できるでしょう。
女性は15回以下、男性は17回以下がサルコペニアのカットオフ値とされ、研究でその有効性が確認されています。
CS-30を実施する際には正確な姿勢と動作、安全確保、痛みの確認が重要です。このテストを介護現場で活用することで、早期に健康状態を把握することができ、より適切な支援が可能となるでしょう。
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記録した内容は各種帳票へ自動で連携するため、何度も同じ内容を転記することがなくなります。また、文章作成が苦手な方でも、定型文から文章を作成できるので、簡単に連絡帳が作成できるなど、日々の記録や書類業務を楽にする機能が備わっています。
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