ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/08/02
ICF(国際生活機能分類)とは、人間の「生活機能」と「障害」に関する状況を把握することを目的とした分類です。ICFについての考え方や項目、ICFとICIDHの違いについて、事例を交えながらまとめて解説します。言葉の意味や考え方を深め、人の生活を幅広い視点から把握し、より良い医療・介護のサポートをする一助となります。デイサービスなどの介護現場で働く皆さんの基礎知識として理解しておきましょう。
この記事の目次
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ICFとは、「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略称で、日本語では「国際生活機能分類」といいます。
ICFは、元々WHO(世界保健機関)で1980年に制定された「ICIDH(国際障害分類)」の改訂版で、人間の「生活機能」と「障害」に関する状況を把握することを目的とした分類です。
これまでのICIDH(国際障害分類)は、身体機能の障害や生活機能(ADL・IADL)の障害、社会的不利を分類するという障害重視の考え方であったのに対し、ICFは環境因子や個人因子等の背景因子の視点を加えて、障害があっても「こうすれば出来る」というように生活すること・生きることの全体像を捉え、プラスの視点を持つように広い視点から総合的に理解することを目指しています。
子ども向けのICFとして、2006年にICF-CY 児童青年期版(仮)(ICF version for Children and Youth )もWHOの関係会議で承認されています。
【関連記事】 ADL(日常生活動作)とは|医療・介護現場で役に立つADL評価の知識 活動・参加に必要な基礎知識にADL・IADLがあります。ADL・IADLについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事がオススメです。 |
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ICFは、図のように健康状態、心身機能、身体構造、活動と参加、環境因子、個人因子から構成され、複雑に絡み合うように人の生活機能と障害を捉えています。
この心身機能、身体構造、活動と参加(ADL・IADL)、環境因子の項目は、合計1,424に分類されていますが、健康状態と個人因子は提示された項目はありません。
以下に、ICFの各項目の用語の定義をご紹介します。
心身機能 | 身体系の生理的機能(心理的機能を含む)のこと。 |
---|---|
身体構造 | 器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分のこと。 |
活動 | 課題や行為の個人による遂行のこと。また、活動制限とは個人が活動を行うときに生じる難しさのこと。 |
参加 | 生活・人生場面への関わりのこと。また、参加制約とは個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのこと。 |
環境因子 | 人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子のこと。 |
個人因子 | 年齢、性別、民族、生活歴、価値観、ライフスタイル、興味関心など、その人を構成する因子のこと。 |
厚生労働省「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について
平成29年8月30日アクセス
これまでICFの考え方や項目についてご紹介していきましたが、ここではICFの特徴について簡単にまとめました。ICFの特徴は以下の通りです。
これまでの医療・介護現場は、患者様の心身機能・身体構造など障害へ向けて直接的な治療やリハビリテーションを行うことが中心でした。しかしながら、このような考え方では根本的に病気や怪我が治らなければ、いつまでも患者様の生活がよくならないことになります。
そこで活用されるようになったのが「ICF」の考え方です。
ICF活用のメリット |
---|
患者様や家族、保健・医療・福祉等の幅広い分野のスタッフがICFを活用することで、障害や疾病の状態についての共通理解を持つことができる。 |
医療・介護現場のサービスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供することができる |
障害者に関する様々な調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを提供することができる |
ICFでは、障害だけでなく、生活すること・生きることなどの「生活機能」と「環境」の全体像を捉えることができるので、患者様自身が本当に望む生活について、その「制限となっている因子」や逆に「利点となる因子」を把握するきっかけとなります。
特に、在宅生活に近い介護現場では、根治できない病気や怪我と向き合いながら、住み慣れた地域でその人らしい生活を営むための支援を行います。このような場合に、ICFの生活モデルに基づいた考え方や捉え方をすることによって、患者様・ご利用者様が求めるサービスの提供ができるようになるのです。
ICIDHとは、「International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps」の略称で日本では「国際障害分類」と呼ばれます。
ICIDHは、ICFが採択される約20年前の1980年にWHOにより定義され、障害を機能障害→能力障害→社会的不利の3つのレベルに分けて捉える「障害の階層性」を示したものです。
しかしながら、障害の捉え方が「障害をマイナス面のみで把握している点」や「障害が直接的に社会的不利につながると行った一方方向の視点」から問題視されるようになりました。
例えば、足に障害がある人が旅行に行けないなどの社会的不利があった場合、その問題点には歩行能力の低下や痛みなどのその人の問題だけでなく、車を運転してくれる知人がいないことや旅館の配慮、障害者用の旅行支援がないことなど社会的な環境因子などいろいろな要因があります。
そこで新たに考案されたのがICF(生活機能分類)となります。
ICIDHは障害の階層を一方方向としてネガティブに捉える考え方、ICFは障害を活動や参加、環境・個人の因子まで多面的な視点からポジティブに捉える考え方という点が大きな違いです。
障害保健福祉研究情報システム「国際障害分類初版(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ」平成29年9月27日アクセス
ICFの項目には、「健康状態」「心身機能・構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」の6つがあります。ここからは、それぞれの言葉の意味が何を示しているのか解説していきます。
まず、ICFの「健康状態」の言葉の意味をご紹介します。
ICFにおける「健康状態」とは、自分が抱えている病気や怪我、変調などを意味します。その他にも肥満、高血圧、妊娠、ストレス状態なども含みます。
次に、ICFの「心身機能・身体構造」についての言葉の意味をご紹介します。
ICFにおける心身機能・身体構造とは、生命の維持に直接的につながるもの自分の体の機能を指します。
例えば、
心身機能は、手足の動き、視覚・聴覚、精神面などが挙げられます。
身体構造は、手足の関節の構造、靭帯、胃・腸、皮膚などの体の部位が挙げれます。
ICFの「活動」の言葉の意味をご紹介します。
ICFにおける活動とは、人の全般的な生活を指します。主に日常生活を営むために必要な食事や着替え、入浴などがあります。その他にも仕事や遊び(余暇)なども含まれます。また、主婦であれば料理や掃除などの家事動作、ウォーキングやサイクリングなどのスポーツ(趣味)も含まれます。
ICFの「参加」の言葉の意味をご紹介します。
ICFにおける「参加」とは、地域の中で何らかの役割を持ち、社会的・文化的・政治的・宗教的な集まりに参加するなど広い範囲の関わりを指します。家庭内の役割も含まれます。地域行事や家庭行事のほかにも将棋や囲碁などの趣味やスポーツへの参加などあらゆる場面が考えられます。
【関連記事】 ICFの 活動 と 参加 の項目の違いの具体例 分類に迷った時の考え方 ICF(国際生活機能分類)の基本概念とモデル図から、分類が難しい活動・参加の項目の具体例を紹介します。 |
ICFの「環境因子」について解説します。
ICFにおける「環境因子」とは、大きく「物的環境」「人的環境」「社会制度的環境」の3つがあります。
物的環境 | 階段や段差、道路、建物、交通機関などの構造、手すりや車いすなど福祉用具などがあります。 |
---|---|
人的環境 | 家族や友人、職場のスタッフ、学校の教師などがあります。 |
社会制度的環境 | 日本国憲法などの法律、医療保険、介護保険などの制度があります。 |
ICFの「個人因子」について解説します。
ICFにおける「個人因子」には、年齢、性別、民族、生活歴、価値観、ライフスタイル、興味・関心などのその人の特徴のことをいいます。
個人因子や環境因子はその人の背景を示し、活動と参加に大きく影響すると理解しておきましょう!
ではここで、実際にICFを活用した60歳代女性の事例をご紹介します。
ICFを活用する場合は、その人の情報収集を行った後に、どの項目に該当するのかを考えて記載するようにしましょう。
健康状態 | ・疾患名:変形性膝関節症 (人工膝関節の術後90日経過) ・既往歴:高血圧、糖尿病、骨粗鬆症 |
---|---|
心身機能・身体構造 | プラス面 ・認知機能:見当識に問題なし (MMSE28/30) ・精神状態:不穏なく穏やかに過ごしている ・皮膚状態:問題なし マイナス面 ・関節可動域:右膝を伸ばす際に制限あり ・筋力テスト:右膝を伸ばす力が低下 ・痛み:荷重時痛あるも自制内 |
活動 |
プラス面
・食事:普通食で箸を使用して自立 ・更衣:椅子に座って自立 ・トイレ動作:パットを使用して自立 マイナス面 ・移動:杖を使用して自室内自立 ・入浴:シャワー浴に見守りを要す ・料理:非実施 ・洗濯:全介助 |
参加 | ・レクリーションに積極的に参加される ・もともと近隣のゲートボールクラブに1回/週参加している ・家庭内の役割として家事全般(料理・洗濯・掃除・買い物)をしている |
環境因子 | ◎物的環境 ・自宅の玄関の上り框が高い ・寝室が2階で階段(16段)がある ・自宅前の道路の交通量が多い ◎人的環境 ・家族構成が5人家族(本人・夫・息子・嫁・孫)で生活援助が依頼できる ◎社会制度的環境 ・介護保険あり(要介護2) |
個人因子 | ・60代後半 ・女性 ・66kg ・157cm ・高卒 ・専業主婦 ・障害受容良好 ・自宅復帰への意欲強い |
【関連記事】 ICFの各分類の書き方について 病院や介護現場のスタッフの方でICFの書き方がわからないと思っている方はいませんか?ICFの書き方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。もっと詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 |
ICFは、「健康状態」「心身機能・身体構造」「活動」「参加」「環境因子」「個人因子」のそれぞれが双方向に作用し、複合的な関係によって成り立っています。特に環境因子は、活動や参加に対してプラスにもマイナスにも大きく影響することを理解しておきましょう!
ICFを活用すると患者様の生活機能や障害の分類が見てわかるようになるだけでなく、その全体像の把握や生活機能の低下をもたらしている原因が環境因子なのか身体機能・構造なのかなどを総合的に判断することができます。
これまでご紹介してきたように、ICFは人が生きることを環境も含めた広い視点から捉え、判断することができる評価です。本人が望む、より良い生活を獲得するため私たちスタッフがICFの考えを理解しておきましょう!
【最後に筆者より】
平成30年度の介護報酬改定に伴いご高齢者の「自立支援」が重要視されています。
当メディア「リハプラン」では、「ICF」と「ICIDH」の違い以外にも医療・介護現場に役立つ基礎知識や介助方法、機能訓練の方法をリハビリの専門家がご紹介しています。
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デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。
→→ 【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新
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