24年度介護報酬改定を見据えたデイサービスの生き残り経営戦略 【セミナーレポート】

介護報酬改定

更新日:2024/10/09

2024年度は介護報酬改定により、デイサービスの位置付けが大きく変化すると予想されます。現在、来年4月に施行となる改定介護保険法案の国会審議が進んでいるなか、介護報酬改定については政府の審議会での議論が年末に向けて本格化します。デイサービスの経営者や管理職の皆さんはこの潮流をいち早くキャッチし、取り残されないようにしましょう。本セミナーでは、年間250本以上の講演実績を有する、介護事業経営指導の第一人者である小濱道博氏をお招きし、こうした改定の最新動向を解説すると同時に、デイサービスの経営マネジメントと生き残り戦略について解説します。  

小濱介護経営事務所 代表
小濱道博

◎小濱介護経営事務所 代表
◎C-MAS介護事業経営研究会 最高顧問
◎C-SR一般社団法人医療介護経営会 専務理事。

日本全国対応で介護経営支援を手がける。
介護事業経営セミナーの講師実績は、北海道から沖縄まで全国で年間250件以上。昨年も延20,000人以上の介護事業者を動員。全国の介護保険課、各協会、社会福祉協議会、介護労働安定センター等の主催講演会での講師実績は多数。介護経営の支援実績は全国に多数。
著書、連載多数。著書は「これならわかる!LIFE」「これならわかる!BCP」「これならわかる!運営指導」「算定要件シリーズ」等。

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コロナ前後におけるデイサービスのニーズの変化

こんにちは。小濱と申します。本日は、2024年度介護報酬改定を見据えたデイサービス生き残り戦略というテーマでお話いたします。私は、小濱介護経営事務所の代表を務め、日本全国の介護経営支援を手がけております。年間250件以上の講演実績や介護保険や経営にまつわる著書を執筆しております。

本セミナーでは、デイサービス事業に従事する皆さんにとって経営マネジメントのヒントとなるよう、改定介護保険法案の方針や今後のデイサービスの在り方についてお伝えしたいと思います。

今、デイサービスのニーズが大きく変化してます。皆さんもご存じのとおり、コロナ禍の影響で、デイサービスは休業を余儀なくされたり、利用者は通所を控えたりと、利益率は大幅にダウンしました。厚生労働省が今年、2023年2月に公表した2022年度の介護事業の経営情報調査結果では、2020年と2021年を比較すると、デイサービス(通所介護)を提供する事業所の平均利益率が2.8%も減少しました。

参考:令和2年度介護事業経営実態調査結果の概要

そして、先日5月8日より、コロナが医療区分第5類に分類され、デイサービスの利用は戻りつつあります。しかし、コロナ前後で比較すると、事業所によって利用の戻りに明らかな差が生じているのです。

その差というのは、リハビリテーションを中心としたサービスを提供しているかいないかです。コロナによって、デイサービスの利用が長期的に控えられ、その間に衰えてしまった体力や筋力、さらにはフレイルが問題視されており、利用者やケアマネジャーもリハビリテーションを優先するようになりました。今まで一般的だった預り型やレスパイト型からニーズが変化しているのです。

介護保険制度の変遷と変化

では、そもそもデイサービスが始まってからどのようにニーズや制度が変わってきたのか順番にご説明しましょう。

1963年の老人福祉法制定に伴い、1979年に初めて最初のデイサービスが創設されました。当時は施設入所や介護サービスを、行政機関である市区町村が決定していましたが、高齢化率の増加に伴い、もっと介護を社会全体で支える仕組みを作るため、2000年に介護保険法が制定されました。介護保険法は時代のニーズに合わせて3年毎に制度改定され、方針や介護報酬額の見直しがされています。

しかし、介護保険制度が導入されてから、介護報酬がアップしたのは、2017年の処遇改善加算が認定された年のみです。処遇改善加算は対象職員に還元されるもので、事業所には1円も残らないという事実があり、実際の介護報酬は下がり続けているのです。

参考:令和4年 介護保険制度をめぐる最近の動向について 厚生労働省老健局

政府はこれまで物価高やコロナの影響など一過性の問題に助成金や補助金で対処してきました。そうした極めて厳しい状況で迎えた2021年度の介護保険法、介護報酬の改定は、半年後の2022年10月に持ち越されたのです。

半年後に実行された3つの法改定

では、2022年10月に持ち越された改定内容についてご説明しましょう。社会的情勢の影響とさらなる高齢化率の上昇を見越して、次回2024年度の前段階として以下3つの小規模な改定が実行されました。

  • 高所得者の介護保険料の引き上げ
  • 診療報酬・医療保険自己負担2割、対象者の拡大
  • 老健の4人部屋、多床室料全額自己負担に

特に所得に応じた自己負担額増大においては、デイサービスの利用に大きく影響する内容で、後期高齢者75歳以上で年間所得200万円以上の方が対象となりました。これにより、高齢者の行動にどのような変化が起こるかと言うと、お金のやりくりを見直し、使う必要のないサービスを減らすということです。

つまり、今まで預り型やレスパイト目的で使用していたデイサービスを利用しなくなっているのです。また、近い将来、介護保険料を確保するために2号被保険者の対象年齢を引き下げたり、健康な高齢者が増えたために1号被保険の対象年齢を引き上げたりと、大幅な変化が予想されます。このような法改定は介護サービスの利用の仕方をさらに選択的にしていくでしょう。

2024年は地域包括ケアシステムの深化・推進

さて、迎える2024年度はいったいどのように法改定するのか。現在、政府が審議真っ只中の内容も含めてご説明しましょう。

複合型介護サービスの創設

今回大きく変わるのが、12年ぶりに新しいサービスが創設される点です。訪問と通所を組み合わせた複合型サービスの提供がスタートします。

  • 看護小規模多機能型居宅介護サービス:訪問看護と小規模多機能型居宅介護を組み合わせたサービス。日常生活上の世話及び機能訓練並びに療養上の世話又は必要な診療の補助を行うもの。
  • 前号に掲げるもののほか、居宅要介護者について一体的に提供されることが特に効果的かつ効率的なサービスの組合せにより提供されるサービスとして厚生労働省令で定めるもの

2つ目の内容については、まだ明らかになっていませんが、小規模多機能居宅介護サービスからショートステイサービスを除いたもの。デイサービスと訪問看護または訪問介護などを組み合わせた内容ではないかと考えられています。

現在、デイサービスは2万4000箇所。小規模多機能型居宅介護が1万8000箇所。合わせて4万3000箇所あります。このような複合型のサービスの創設は、以下のような目的を達成しようとするものとされています。

  • 今後ニーズが高まる訪問介護の働き手を集めること
  • 様々な介護ニーズに対応し、事業所の売上げアップにもつなげること

科学的介護・LIFEの利活用推進に伴う収益構造の変化

2024年度以降は、自立支援介護に向けて一層ケアマネジメントの質を向上させるために、科学的介護の推進が加速します。居宅介護支援事業所においても、ケアプランの情報を利活用させ、LIFEの提出が必要になってきます。

データベースやガイドラインに基づいた質の高い介護の提供

ケアマネジャーは経験則に委ねるのではなく、データベースやガイドラインに基づいたケアプランの作成、提出を求められるのでしょう。そのためには、他職種が連携して、ADLを評価するBI(バーセルインデックス)や認知症の周辺症状を評価するDBD13、その他、口腔・栄養や褥瘡などさまざまな評価を定期的に実施する必要があります。

また、そうしたデータをLIFEに提出することは、利用者毎の適切なアセスメントや、担当者間の共有、フィードバックにつながるため、PDCAサイクルが循環します。アウトカムを意識し、根拠のあるサービスを提供している事業所は、結果として選ばれていきますし、生存戦略として必要な過程です。もう、LIFEを避けた経営マネジメントが困難であることはおわかりになりますね。

さらに将来的には、サービス提供量を重視した時代からインセンティブ型の報酬の導入が進められるとわかっています。これは、利用者毎の回復自立を成果と見なすものではなく、しっかり評価し続け、加算をとること。そして、より効率的で質の高いサービス提供の再現を介護現場に求めているのです。今はまだ加算が低いADL維持等加算などもインセンティブ制度を設けることで、介護業界全体に対してLIFE導入の動きを加速させていくでしょう。

個別機能訓練加算を積極的に取る事業所は生き残る

前回の2021年度には、個別機能訓練加算も加算内容が変更となりました。

  • 機能訓練加算(Ⅰ)イ 56単位/日
  • 機能訓練加算(Ⅰ)ロ 85単位/日
  • 個別機能訓練加算(Ⅱ)20単位/日

新たに追加された個別機能訓練加算(Ⅱ)とは、生活機能チェックシートと個別機能訓練計画書のデータをLIFEに提出したら、追加で20単位が加算される項目です。つまり、政府の方針は、個別機能訓練に注力している事業所を優良であると位置付けており、デイサービスは2024年度以降に一層、この役割を求められているのです。

介護人材の確保と定着率の向上

出典:社会保障審議会介護保険部会(第92回)資料 令和4年3月24日

複合型介護サービスの需要が高まる一方で、深刻な人不足が重要視されています。政府の予想では、2040年度までに介護職員が約69万人不足する見込みです。介護人材を確保するためには、募集だけではなく離職防止の対策を講じ、職場定着率を向上させなければなりません。

デイサービスには、看護職員、機能訓練指導員、生活相談員といった専門職の配置が必要です。このような有資格者を人材紹介サイトで募集してもなかなか集まらない上、紹介料が一人当たり少なくとも50〜60万円かかります。

お金をかけて人材確保してもすぐに離職してしまっては、とてつもない支出になりますよね。そのため、優先すべきは定着率を上げていくこと。これからのデイサービスの経営マネジメントは離職を防ぎ、質の高い介護を求められるため、現場が効率よくまわる体制を意識しなければなりません。

人手不足による介護負担を軽減するためのICT活用や介護ロボットの推進についてはこちらの記事をチェックしてみてください。

介護報酬改定まであと1年。対応準備を始めよう。

2024年度の介護報酬改定でデイサービスの位置付けは大きく変化します。現在、デイサービスは小規模多機能型居宅介護を含めると、4万3000箇所あり、全国のコンビニの数に匹敵するほどです。

今後、複合型介護サービスとして、訪問介護とデイサービスの役割を持った事業所のニーズが拡大していくと説明しましたが、現在この2つだけで介護サービス全体の約1/3を占めています。

この大きな市場で生き残っていくには、今までのような入浴や食事、レクリエーションをして過ごす場所では難しいでしょう。それぞれの事業所が個性を出し、自分たちは、何ができて、何を提供しているのかを外部にPRしなければなりません。

まだまだ介護業界は自分たちの提供価値の発信や差別化ができていません。利用者のニーズに応え満足してもらうには、「個性」がとても重要なキーワードになりますね。

介護改定は3年に一度必ずあります。常にその動向を追い、変化に対応する。そんな経営マネジメントを意識してください。

繰り返しますが、最低限、機能訓練つまりリハビリテーションに対応できる体制の強化が急務です。介護報酬改定まであと1年。対応準備を始めていきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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