ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/09/11
介護現場では必ず「アセスメント」が行われます。利用者の状態・環境把握やその後の介護計画作成のため、事業所の種類を問わず重要な業務です。この記事では介護におけるアセスメントとは何かを紹介しています。
この記事の目次
アセスメント(Assessment)とは、英語で「評価」や「分析」などの意味を持つ言葉です。
介護場面では、利用者の問題や解決すべき点を明確にするために、身体状況や家屋環境などを評価・分析する際に用いられています。
また、アセスメントはケアプランの作成には欠かせないものです。
基本的に、ケアマネジャーが介護のアセスメントによってケアプランを作成します。
利用者に適切なサービスを提供するには、ケアプランの作成が重要です。そのためには、利用者の細かいアセスメントが求められます。
ここではアセスメントの目的や、なぜ重要なのかについて解説します。
アセスメントは利用者の生活課題を明確にして、サービスの方向性を決める指標となっています。
このときにADLや身体機能などの表面上だけに注目してしまうと、利用者の希望とは異なるサービスを提供する恐れがある点に注意しましょう。
アセスメントは利用者の能力だけに注目するのではなく、その方の考え方や生活背景、価値観などの幅広い面を理解することが大切です。
そのうえでどのようなサービスを提供すべきなのか、どのような生活を送ってもらいたいのかを考えてみましょう。
質の高いアセスメントは質の高いケアにつながります。
また、アセスメント情報の共有によって、担当する職員が変わってもサービス内容が統一化されやすくなるでしょう。
生活課題やADL、身体機能などのさまざまな視野でアセスメントをすることで、利用者に適切なアプローチが可能になります。
アセスメント情報を職員内で共有・検討すれば、さらに質の高いケア内容が見つかりやすくなります。また、共有によって利用者の全体像がさらに明確化されやすくなり、アプローチ方法も統一化されていき、質の安定化につながります。
アセスメントの対象者はサービスを提供する利用者だけではありません。
利用者の家族や友人、親戚、さらに入院・通院先だった医師や看護師、リハビリ職員などにも情報を聴取することもあります。
また、アセスメントは、基本的にケアプランや介護計画を作成するタイミングで行われます。
その他にも、利用者の身体状況が大きく変化したり、短期目標が変更したりするタイミングでアセスメントを実施することもあるでしょう。
デイサービスの介護計画に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひご一読ください。
▶通所介護計画書の作り方とは?手順や記入例・様式・更新期間などを解説
ここでは介護におけるアセスメントのやり方と流れについて解説します。
アセスメントでは、あらかじめひな型を作成して質問内容をまとめておくとスムーズに進められます。
まずは情報収集を行います。
このときに重要なのは、利用者のADLや身体機能などの表面的な部分に注目するのではなく、あらゆる視点から情報収集することです。
利用者の性格や価値観、家族との関係性などの情報を集めておくと、質の高いサービスの提供につながります。
なお、ADLに関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらもぜひご一読ください。
▶ADLの評価方法とは|介護・看護・医療で把握する目的・項目や書き方を徹底解説
収集した情報をもとに分析・仮説を立てて、どのようなサービスを利用者に提供すべきか検討します。
このときに情報量が少ないと、利用者にとって的外れなケアをしてしまう恐れがあります。
さまざまな視点からの情報をまとめて、効果的なアプローチ方法を見つけてみましょう。
分析・仮説を立てたら、実際にケアプランの立案をしましょう。
利用者に適したサービス内容について決定し、利用を進めていきます。
サービス提供したらそこで終わり、ではありません。その後の利用者の反応や変化について、再びモニタリングしていきます。
引き続きそのサービスが必要であれば継続し、何か問題が現れたら別の方法を検討することも大切です。
このように、アセスメントは1度きりだけではなく継続的に実施することが大切です。
アセスメントを行う際は、「アセスメントシート」の活用がおすすめです。
アセスメントシートとは、利用者の状態や家屋環境などの情報を詳細に記載するためのシートです。
厚生労働省が定めている「課題分析標準項目」と呼ばれる23項目の内容を聴取すると、網羅的に情報収集できるでしょう。
▶デイサービスにおけるアセスメントシートの記入例と効率的な作成方法
アセスメントシートの様式には以下のようなさまざまな種類があります。
あらかじめ決められている種類の他にも、独自の様式を使用している事業所もあります。
アセスメントシートには決められた様式が指定されているわけではないので、用途にあった種類のものを活用してみましょう。
参照:平成 27 年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成 29 年度調査)(2023年7月9日確認)
具体的にどのようにアセスメントを実施するのかについて、以下に3つ事例を挙げて紹介します。
80歳の女性Aさんは、要介護2の認定を受けています。Aさんは一人暮らしで、お話好きな性格ですが、最近、近所の方との交流が少なくなりました。Aさんは軽度の認知症があり、短期記憶に問題があるため、日常生活に支障をきたすことのある状態です。息子さんが近くに住んでおり、週に2回ほどAさんの家を訪問してサポートしています。
アセスメントでは、要介護者本人と息子さんから詳しい生活状況を聞き取りました。
Aさんの場合、軽度の認知症により、料理と服薬管理が難しくなっていることが特定できました。協力の得られるご家族は、近所に住む息子さんしかいません。
Aさんは、できる限り自宅で生活したいと考えており、息子さんもAさんの意向に対して協力的です。ただし、息子さんは仕事をしているため頻回の訪問は難しいため、一人暮らしのAさんの認知症が進行することを心配しています。
情報収集した結果から、Aさんは認知症が進行しやすい環境にあり、安全な生活が徐々に難しくなっていく可能性が考えられました。なるべく在宅生活を継続したいという希望を叶えるために、生活状況を改善する必要があります。
そのため、Aさんに週2回のデイサービスと毎日の訪問介護の利用をすすめました。また、息子さんが服薬管理カレンダーを活用して服薬管理を行い、Aさんが適切に服薬ができるように支援することにしました。
料理に関しては、訪問介護のスタッフがいる時はAさんと一緒に調理を行い、協力者がいない時は温める程度で簡単に食べられる物を用意することにしました。
要介護者本人と息子さんが希望する生活を支える計画を立てることで、認知症の進行を予防しながら安全に楽しく生活できる支援につなげられました。
継続的にサービスを利用することで、短期記憶に障害はありながら、認知症の進行をあまり感じられなくなったと息子さんは話されています。
75歳の男性Bさんは、要支援2の認定を受けています。妻と二人暮らしで、最近足腰の衰えを感じるようになり、外出が減っています。趣味だった庭いじりもできなくなり、精神的な落ち込みが見られます。
アセスメントでは、Bさんと妻が今までしてきた生活のことやBさんの現在の思いを聞き取りました。
Bさんは、庭いじりを趣味にしながら生活を送っていましたが、その他に体を動かすことを特にしていませんでした。
仕事をしていた頃は、会社の仲間と活発にゴルフなどを行っていましたが、定年後は徐々に外に行くことも減り、最近は庭いじりをする以外に外に出るきっかけがありません。
Bさんは、運動することは嫌いではない様子ですが、介護サービスの利用は拒否的です。
情報収集した結果から、運動不足と精神的な落ち込みによって生活の質が低下し、前向きな行動ができずに悩んでいることが予想されました。
よく話を聞くと、Bさんはデイサービスの利用に拒否的ではありましたが、リハビリには前向きです。
そのため、半日型の通所リハビリテーションを週に1回利用することをすすめました。
Bさんはリハビリテーション施設に通うことで、徐々に身体機能の維持・向上が見られました。また、専門家から指導された自宅での運動プログラムを前向きに続けることで、庭いじりも再開でき、精神的にも明るくなりました。
90歳の女性Cさんは、要介護3の認定を受けています。息子夫婦と同居しており、家族から支援を受けながら生活しています。最近は夜間のトイレの頻度が増え、それを介助する家族の負担が大きくなっています。
アセスメントでは、Cさんと息子夫婦に夜間のトイレの様子などの聞き取りを行いました。
Cさんは、自宅で過ごしたいと思っていますが、息子夫婦は夜間の介護によって眠れないことが負担になっている様子です。
息子夫婦は、Cさんの支援に積極的ですが、介護の経験は無く、排泄ケアの対応が難しいと感じています。
情報収集した結果、Cさんが自宅で快適に過ごしていくためには息子夫婦の支援が不可欠であることがわかりました。よって、息子夫婦が健康に過ごせることも大切になります。
息子夫婦は、適切な排泄ケア用品の選定や直接的な介護に難しさを感じていました。
そのため、夜間を含めた訪問介護サービスと月1回のショートステイの利用をすすめました。
夜間訪問介護を利用することによって、Cさんの夜間の排泄ケアにあった用品を選定しつつ、適切な介助支援方法を家族と介護スタッフで共有します。
息子夫婦が休息を取るためにショートステイを月1回利用し、Cさんの支援を続けられるように計画を立てました。
Cさんの夜間のトイレの問題は、訪問介護サービスと適切なケア用品の利用で改善されました。家族の負担も軽減され、全体的な生活の質が向上しました。また、息子夫婦も訪問介護の支援を受けることで、夜間のトイレ介助に徐々に慣れることができています。
自身の生活について質問されることに不快感を覚える方は少なくありません。アセスメントに必要な質問を行う際は、質問の目的を伝えてから行うようにしましょう。
アセスメントを行う際は、対象者が答えにくい情報を聞かなければならない時もあるでしょう。その際は、対象者が自ら答えてくれるタイミングを待つことも重要です。
実際にアセスメントに必要な質問をする際は、主にオープンクエスチョンとクローズドクエスチョンを活用します。以下に具体例を示しつつ解説しますのでご参考ください。
【オープンクエスチョンの例】
【解説】
オープンクエスチョンは、対象者が自由に答えられるような質問です。オープンクエスチョンをすることにより、対象者の生活状況やニーズについて深く理解しやすくなります。
一方、デメリットとしては、回答が長くなりがちで、分析や整理が難しくなる点が挙げられます。また、質問が曖昧だと、回答者が何を答えるべきか迷うこともあるでしょう。
たとえば、上記に挙げた「日中はどのように過ごしていますか?」という質問の場合、回答者は話をする範囲に迷ってしまいます。
オープンクエスチョンは、回答できる範囲を調整することがコツになります。
具体的には、以下のように回答できる範囲を絞りながら会話すると良いでしょう。
さらに、子育ての話や盆栽を育てている場所を質問することで、対象者の興味や生活範囲などの情報を集めることができるでしょう。
適切に質問をすることで、回答者も求められている情報の範囲がわかりやすくなります。
しかし、オープンクエスチョンを中心に会話を進めると話がまとまりにくくなり、結論を導き出すまでに時間がかかることもあります。時間が限られていたり、明確なデータが求められたりする場面では、クローズドクエスチョンの方が適している場合もあります。
【クローズドクエスチョンの例】
【解説】
クローズドクエスチョンは、対象者が「はい」か「いいえ」のように特定の選択肢の中から答えられる質問です。
具体的な問題や状況を把握するのに適しており、特に時間が限られている場合や、対象者が詳細な回答を避ける傾向がある場合に役立ちます。
一方、デメリットとしては、回答の自由度が低く深い情報が得にくいことが挙げられます。回答者が自分の考えや感情を十分に表現できない質問形式のため、表面的な情報にとどまることが多いでしょう。
また、クローズドクエスチョンのみを繰り返してしまうと、冷たい印象を与えてしまう可能性があるため注意する必要があります。
以下のように、適度にオープンクエスチョンを織り交ぜながら質問をすすめると良いでしょう。
このように、クローズドクエスチョンとオープンクエスチョンを効果的に活用することで、会話の流れを自然に導くことができます。
冷たい印象を与えず、質問の流れがスムーズになるように、適度に相槌を打ちながら会話をすすめるようにすると良いでしょう。
【その他の質問の例】
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの他に以下のような質問の仕方があります。
プロービングクエスチョンは、さらに詳しい情報を求めるための質問です。オープンクエスチョンの後に使われることが多いです。
たとえば「もっと詳しく聞かせてもらえますか?」のような質問がプロービングクエスチョンです。詳細を聞くために有効ですが、多用しすぎると相手に負担を感じさせることになりかねないので注意しましょう。
リフレクティブクエスチョンは相手の発言を繰り返すことで理解を確認する質問です。
たとえば「つまり、あなたは○○ということを言いたいのですね。」のような質問がリフレクティブクエスチョンです。誤解を防ぐのに有効ですが、頻繁に活用すると会話の流れが何度も途切れてしまい、不自然になるので注意しましょう。
クッション言葉は、質問や指摘を和らげるために使う表現です。相手に配慮しながら話を進めたい場合に役立ちます。
なるべく相手に配慮し、良い雰囲気でアセスメントをすすめるために「答えにくいことをお聞きしますが」といったクッション言葉を活用することは有効ですが、多用すると要点がわかりにくくなり、質問者の信頼性が低下する可能性があるので注意しましょう。
アセスメントとモニタリングは意味が似ているように思われますが、明確な違いがあります。
アセスメントは今まで紹介したように、利用者の身体状況や希望、今後の課題などを把握してケアプランの作成に役立てるものです。
一方で、モニタリングとは作成したケアプランの内容の通りにサービスを提供できているかを確認するために行うものです。
まとめると、それぞれの違いは以下の通りです。
このように、アセスメントとモニタリングの違いについておさえておきましょう。
アセスメントを実施する際の注意点として、以下が挙げられます。
それぞれについて詳しく解説します。
アセスメントの訪問は、なるべく短時間で済ませましょう。
アセスメントでは利用者や家族に聴取したり、家屋環境を調査したりなど、時間がかかりがちです。そのため、時間がかかると利用者の疲れが溜まりやすくなります。
アセスメントをする際はムダを省いて、1時間ほどを目安に終わらせることを心がけましょう。また、あらかじめ利用者や家族に所要時間を伝えておくことをおすすめします。
以前に利用していた病院や施設の職員から情報を事前に集めておくと、自宅のアセスメントがスムーズになります。
利用者の基本情報を把握しておくことで、アセスメントの際に的を得ていない質問を投げかけてしまう心配もなくなるでしょう。
事前の情報収集はアセスメント全体の時間短縮になり、利用者の負担軽減にもつながります。
アセスメントの際は利用者の目線に立ってやり取りをしましょう。他人事のような姿勢で接していると、利用者との関係性に悪影響が出る恐れがあります。
利用者の気持ちに共感しつつ、同じ目線で寄り添うことで強い信頼関係が生まれやすくなります。
アセスメントを通して、利用者や家族が持っている課題や希望を具体的に掘り下げられるようにしましょう。
たとえば、利用者の歩行能力が低下していたとしたら、どのような原因があるのか、どのような方法で解決できるのかなど、より詳細に考えてみることが大切です。
表面上だけでなく、潜在的な要素を発見することで適切なサービスの提供が可能となります。
こちらの判断で進めるのではなく、アドバイスやおすすめのサービスなどを紹介するときは必ず利用者に説明して了承を得るようにしましょう。
利用者が状況をつかめないまま話が進んでしまうと、本人の自尊心が傷つくだけでなく、お互いの関係性が悪化する恐れがあります。
自己判断で物事を進めずに、利用者や家族の理解・了承を得ながら段階を踏んでいきましょう。
アセスメントで得た情報は忘れずに記録しておきましょう。せっかくアセスメントでさまざまな情報を得られたとしても、記録しておかないと忘れてしまうこともあるでしょう。
その結果、利用者や家族と進めた話に食い違いが起きたり、不適切なサービスを提供してしまったりする恐れがあります。
アセスメントが終了したら、情報をまとめて記録しておくことをおすすめします。
介護場面におけるアセスメントは、利用者の状態を正確に把握し、適切なケアプランを策定するための重要な要素です。
アセスメントは身体機能やADLだけでなく、生活環境、利用者・家族の課題などをはじめとした多角的な視点で行うことが大切です。
それぞれのニーズを明確にし、リスクや問題を特定することで、効果的なサービスの提供につながります。
利用者や家族が満足のいくサービスを受けられるように、アセスメントの重要性についておさえておきましょう。
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