介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
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運営
更新日:2024/04/26
2024年度の介護報酬改定までに、業務継続計画(BPC)策定が義務化されています。これは、災害や感染症に対していち早く対応し、事業の復旧を進めるための対策で、介護事業所の利用者や地域貢献に必要な政策です。居住・居宅サービスをはじめ、デイサービスなどの通所介護事業においても策定が求められていますが、まだ対応できていない事業所もあるかもしれません。本セミナーでは、日本経営グループで介護福祉事業部の次長である本島傑氏をお招きし、BCPの策定方法についてゼロから丁寧に解説します。
この記事の目次
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日本経営グループ 介護福祉事業部 次長
本島 傑
(1)略歴
主に社会福祉法人や介護施設の会計監査業務及び運営助言コンサルティング業務に従事。その他、介護福祉事業の経営計画策定、財務分析、
財務研修や、各種団体での介護報酬関係のセミナー講師や実地指導(運営指導)対策コンサルティングを実施している。
(2)得意分野
・財務会計、管理会計
・社会福祉法人制度(改正社会福祉法、社会福祉法人会計基準)
・介護報酬適正化(加算取得、実地指導対策)
・セミナー講師
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こんにちは。本島と申します。本日は、前回の介護報酬改定で義務化されましたBCP策定についてお話いたします。私は、日本経営グループの介護福祉事業部に所属し、主に社会福祉法人や介護施設の運営者さまから、収益改善や財務計画に関するご相談を受けています。また、介護報酬改定のセミナーのほか、実地指導改め、運営指導対策に関して支援させていただいています。
本セミナーでは、デイサービスや居宅サービス事業を運営する方々に向けて、BCP策定の基本と実際の書面の作成において、抑えて欲しいポイントをお伝えしていきます。
BCP(業務継続計画)とは、企業・法人が自然災害、大火災、テロ攻撃など、緊急事態に遭遇した場合に、どのように対策するのかを定めた方針です。事業の継続あるいは早期復旧を可能とするため、手段や方法をマニュアル化しておく必要があるのです。
元々、BCPは一般企業に浸透していた取り決めでしたが、コロナ禍の影響や自然災害が毎年のように起こりうる状況を鑑みて、医療・介護業界においても、2024年度の法改定までに策定することが義務付けられました。
もし、災害や感染症が起きた際の対応基準が設けられていないと、事業の縮小や復旧までに時間がかかること、さらには廃業してしまうというリスクがあります。仮に事業に影響が出てしまっても、いち早く再開し、利用者様や地域に貢献できるよう、事業全体として対策を考え、実行できるよう準備を進めておきましょう。
前回の介護報酬改定時に大々的に通達された感染症発症に対するBCP策定のガイドラインについて詳しくご説明します。感染対策の徹底に関して以下4つのポイントを押さえていきましょう。
元々、施設サービスにおいては、感染症や食中毒の予防およびまん延の防止のため、感染対策担当者の専任が義務付けられており、3ヵ月に1回以上、定期的に委員会が開催されることになっています。
新たに加わったのが、居住系・居宅サービスにおいても新たに同委員会の設置義務が課されたという点です。まずは、委員会の担当者を決め、6ヵ月に1回以上定期的に会議する体制を整える必要があります。
この会議は、テレビ電話を活用したり、他の運営委員会と紐付けて開催しても構わないといった内容で、地域のサービス事業と連携することも差し支えありません。
また、施設サービスはもちろんのこと、居住系・居宅サービスにおいても「介護現場における感染対策の手引き」を参照し、以下3つ観点で指針を策定させなければなりません。
また、デイサービスにおいても、2024年度までの経過措置の間に指針を策定するよう通達されています。
さらに、施設サービスと居住系サービスにおいては年2回、居宅サービスにおいては年に1回以上の感染対策研修を実施してください。新規入職者はもちろん、業務委託者に対しても研修し、基本的に全員が感染対策を把握しておくことが大切です。
マニュアルを確認したら、机上だけで終わらず、実際にできるかどうか実行してみましょう。これは、自然災害の場合にも当てはまることですが、マニュアルだけ見てもできないことが大半ですし、やってみると施設や地域によって改善・追加すべき点も出てきます。
発生時を想定し、地震の役割や感染対策、優先すべきケアを把握し、迅速な対応を可能にしましょう。
では、実際にBCP策定に関して記載するべきことについて詳しくご説明しましょう。感染症対策のBCP策定は自然災害のBCPを理解すれば、進めやすい内容です。まずは自然災害のBCPについてどのようにマニュアルを作成すればよいのか、確認していきましょう。
はじめに、どのような形態の事業所であっても基本方針を定める必要があります。
上記3つを明確にすることを基本とし、以下の対応フローチャートを参考にBCPの大枠を掴んでください。
さらに、自然災害に関わるBCP策定で特に記載すべき項目は以下3つで、これは感染症対策においても考え方はほとんど同じです。
自然災害も感染症対策どちらにおいても雛形を利用すると、作成しやすいでしょう。
参照:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修資料・動画|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
では、順番に具体的なBCPの策定方法を説明します。
平時からの備えは、以下の3つを意識しておきましょう。
まずは、自然災害の対策本部をつくりましょう。対策本部長、事務局長、事務局メンバーを設け、関係各部署へ指示できる体制をつくります。また、担当者と合わせて代行者も決定し、非常時に対応できる体制を整える必要があります。
次に、ここで一番のポイントである、自然災害のリスクの把握と職員との情報共有です。まず、リスクの把握の基本として、ハザードマップを確認し、災害規模を想定しておきましょう。
ハザードマップポータルサイトでは、地震や洪水、土砂災害、津波の影響など、地図上で検索できるようになっています。
まずは、ご自身の地域で想定される災害とリスクを可視化し、事業所にどのような影響が考えられるか職員と共有してみてください。南海トラフ巨大地震をはじめ、日本全国どこにいても、何かしらの自然災害の影響があります。
例えば、福山市では、沿岸部における津波の影響の発生時間の想定は13分後。4時間30分後には3.3mの津波がくることがわかります。ハザードマップを活用すれば、避難ルートや緊急時の対応を決定づけられるでしょう。
また、震度6の地震が発生した場合、電力の停止や断水が想定され、大体3日目から復旧されるケースが多いとわかっています。その間、自家発電は可能なのか備蓄の飲料水や食品の在庫はどれくらい必要なのか、現状と照らし合わせて検討してください。
最後に、予め優先業務の選定も必要です。事業全体としては、判断基準が2段階あります。デイサービスのみの事業所なら、休業するのか、継続するのか。有料老人ホームや訪問介護などのサービスも運営している法人ならば、優先する順番を予めつけておきましょう。
例えば、入所系サービスがある法人に関しては、お住まいの方の業務を止めるわけにはいかないので継続し、通所系サービスは一旦休業する方針を取る可能性が出てきますよね。
個々のサービスとしては、災害発生直後は入居者や職員の安全確認を優先し、その他の業務は応援体制が整うまで控えることになります。脱水のリスクが高い方への水分補給や、失禁がある方への清拭介助は必要になってくるかもしれませんが、出勤率、飲食物の在庫量、ライフラインの状況によって業務継続の判断基準を設けておくとよいでしょう。
次に緊急時の対応として、BCP発動基準と行動基準について説明します。
発動基準は、把握したリスクを照らし合わせ、具体的な数値を決めておくことが重要です。しかし、地震なら震度5以上が発生したときなどと基準を決めやすいのですが、水害に対しては数値が定めにくい実状があります。
そのため、施設所在地が大型台風の直撃が見込まれる場合や、洪水・高潮のリスクが高い場合、その拠点が警戒レベル2に到達したとき、BCPを発動するなど、明確に決めておくとよいでしょう。この発動基準を元に、災害対策本部の構成メンバーを中心に対応を進めていくことになります。
続いて、行動基準。これは、災害発生時の職員個人の行動基準を記載したものになります。それぞれが携帯カードに則り、災害時の場所や状況に応じて、命を守る行動をとるよう定めておきましょう。自身の安否の連絡と参集基準を確認し、最終的に事業所の対応体制の役割を遂行するようにしておきます。
安否確認の具体的な内容に移りますが、ここでは、利用者さんと職員対象のシートをそれぞれ準備しておかなければなりません。
利用者さんは先ほど説明したとおり、安否確認が最優先事項で、その他の食事やケアは対応体制が整ってから、推進対策チームの指示に従い、徐々に通常業務にシフトしていきます。
職員は自身の安否確認、安全確保が最優先です。
例えば携帯電話が使えるかどうかや自宅の状況、家族の安否や位置情報も判断基準に加えます。被災してしまったときや、事業所まで4キロ以上距離があるなど、事業所に参集しなくてもよい条件も必要です。被災していなくても、子供が小さいことや、両親の介護が必要な場合、自宅の近くの川が氾濫しているなど、具体的な条件を設けておきましょう。
緊急時の対応基準は、最悪の状況を想定して、利用者さんや職員を危険に晒さないようにするものです。そのため対策本部が作成したマニュアルをそのまま実行するのではなく、現場を理解している管理職や職員と協力して改善していくことが大切です。
ここまで、自然災害のBCPのつくり方と役割分担などをご説明しました。この考え方を参考に、感染症対策のBCPに対しても基本的な全体フローをご確認ください。
平常時の対応、感染疑い者が発生したときの対応、そして実際に陽性者が出た場合の初動対応と、全体像が掴みやすくなっていると思います。特に対策本部の策定様式は同じなので、自然災害のBCPを参考に進められます。
厚生労働省のBCP策定資料に研修動画もありますので、事業所の職員の方々と、課題を抽出し、BCPの発動基準と行動基準、そして実際に活用できるかどうかを試してみてください。
介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修
また、このBCP策定の義務化によって、責務ばかりに意識が向いているかもしれませんが、結果としてコロナによって表面化した介護業界の課題についても考えさせられる内容だと思っています。
コロナによる利用控えが続き、ADLや認知機能が低下し、家族の介護負担の増加などが問題視されていますが、事業者そのものが営業できなくなると、一層この問題は如実になります。介護人材や資金不足で経営が悪化すると、介護の質が下がり、感染症の影響が続く可能性もあります。
感染症を含め、災害は1年に数回必ず見られる現象です。BCPの策定は、事業戦略上、法人の事業継続性を担保するために非常に大きなツールだと意識し、活用していただくとよいでしょう。
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