介護施設のBCP(事業継続計画)策定とは?義務化への対策ポイント

運営ノウハウ

経営

更新日:2024/09/11

令和3年の介護報酬改定において、すべての介護施設に「事業継続計画(BCP)」が義務付けられました。2024年4月からの義務化に対応するため、介護施設におけるBCPの理解は必須といえます。この記事ではBCPとは何か、またBCP義務化への対策・策定のポイントなどをご紹介します。  

BCPとは

BCP(Business Continuity Plan)とは、日本語で「業務継続計画」のことを指す言葉です。

BCPは自然災害や大事故、感染症のまん延など、突発的な環境の変化が起きても事業を中断させないために作成するものです。

介護事業者にとってのBCPとは、災害や感染症に備えて、介護サービスの業務継続のために準備・検討することをまとめたもののことを指します。

現在は経過措置期間ではありますが、2024年4月からはBCP策定が必須になります。そのためBCPに関して実地指導で指摘される可能性がありますので、早めに作成に取りかかりましょう。

参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省老健局)

日本経営グループの介護福祉事業部次長・本島傑氏をお招きしてBCP策定方法について解説していただいたオンライン研修会(Webセミナー)のレポートは、こちらからお読みいただけます。
▶︎2024年4月までに策定が義務化!業務継続計画(BCP)策定方法をゼロから丁寧に解説【セミナーレポート】

BCPを策定するメリットとは

事業者にとってBCPの策定はどのようなメリットを得られるのでしょうか。ここでは具体的なメリットについて解説します。

人命と事業を守れる

まず、人命と事業を守れるメリットがあります。BCPを策定しておけば、緊急事態が発生してもスムーズな対応を行いやすくなるため、人命を守れる可能性が高まります。

災害時・緊急時に人命を守ることができれば、利用者や家族、施設スタッフの心身にかかる大きなストレスを軽減できます。また、その後の事業復帰もしやすく、著しいほどの経営打撃を受けずにすむでしょう。

税制優遇と補助金を受けられる

BCPを策定すると、国から「中小企業防災・減災投資促進税制」と呼ばれる税制優遇を受けられます。これは災害に備えた設備の導入によって特別償却の税制措置を受けられる制度です。

また、自治体によってはBCP策定に必要なコンサルティングや設備導入に対しての補助金をもらえるケースもあります。

参考:中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)の運用に係る実施要領

万が一のリスクを避けられる

BCPを作成することで、法的・社会的な責任を追求されるような問題が起きたときに、リスクを回避・軽減しやすくなります。

BCPによってさまざまな想定に対処することで、職員を守りながら安全に事業を継続できるでしょう。

参考:中小企業防災・減災投資促進税制(特定事業継続力強化設備等の特別償却制度)の運用に係る実施要領

介護施設ではいつまでにBCPを策定する?

2021年の介護報酬にて、BCPの策定が義務化となりました。その際に、3年間の経過措置期間を設けることとなっているため、2024年4月1日から義務化が開始されます。

そのため、その期日までにBCPの策定に努める必要があります。

参考:令和3年度介護報酬改定における 改定事項について

通所系(デイサービス)のBCP策定手順とポイント

BCPでは、入所系や通所系、訪問系などの介護施設の種類によって策定する内容が異なります。BCPの策定における共通事項はあるものの、それぞれのサービスの特徴にあわせた固有事項を守ることが大切です。

ここではデイサービスのBCP策定手順を「感染症」と「自然災害」に分けて解説します。

感染症BCP

デイサービスで策定すべき感染症BCPでは、業務範囲の縮小や事業の閉鎖も検討しつつ、利用者に悪影響を与えないような対策を取る必要があります。

新型コロナウイルスにおける感染症BCPでは、策定すべき内容と手順は以下の通りです。

  • 平時対応
  • 感染疑い者の発生
  • 初動対応
  • 検査
  • 休業の検討
  • 感染拡大防止体制の確立

平時対応では、関係者の連絡先や連絡フローの整理を行い、感染防止の取り組みと消毒液等の備蓄品の確保をします。

利用者に対して体温計測や自覚症状の確認をして、必要に応じて医師などに相談します。

コロナウイルスの感染疑いが発生した場合は、速やかに管理者に報告して感染者の対応、消毒・清掃などを実施することが大切です。

また、感染者数や勤務できる職員の人数に応じて休業を検討する基準を決めておきましょう。その後は保健所と連携して濃厚接触者への対応をしつつ、感染拡大防止体制を整えます。

参考:新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン

自然災害BCP

デイサービスの自然災害BCPの内容と手順は、以下の通りです。

  • 平時対応
  • 災害が予想される場合の対応
  • 災害発生時の対応

平時からの対応では、サービス提供中に被災した場合に備えて固定電話やメールなどの連絡先を把握しておきます。

また利用者の安否確認の方法について居宅介護支援事業所と共有しつつ、地域の避難方法や避難所の情報をおさえておきましょう。

災害が予想される場合、サービス縮小、休業も検討し、そのための基準を定めておく必要があります。災害発生時は利用者の安否確認をして、利用中の場合は帰宅を支援します。

サービスを長期間休業する場合、必要に応じて居宅介護支援事業所と連携して、利用者に別のサービスに変更してもらうか検討してもらいましょう。

参考:介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン(厚生労働省老健局)

BCPのガイドラインとひな型

BCPのガイドラインとひな形については、厚生労働省の「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」のページから確認が可能です。

BCPのひな形は詳細にわかりやすく作られているので、ぜひ活用してみてください。

参考:介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

BCP策定は利用者と事業を守るためのもの

BCPとは「事業継続計画」のことであり、BCPの策定は利用者の安全の確保や事業の継続をするための重要なものです。

また、将来に備えて事業所の信頼性を高める役割も担っています。デイサービスのBCP策定では、感染症や自然災害の両方を考慮する必要があります。

災害発生に迅速な対応をとり、地域とスムーズに連携ができるような準備・確認も事前にしておくこともおすすめです。安心で安全な介護サービスを提供できるように、BCPの策定を進めていきましょう。

加算算定、書類業務でお困りならRehab Cloudがおすすめ

日々の加算算定業務や記録業務などで苦労されている人も多いのではないでしょうか?科学的介護ソフト「Rehab Cloud」であれば、現場で抱えがちなお悩みを解決に導くことができます。

例えば、加算算定業務であれば、計画書作成や評価のタイミングなど、算定要件に沿ってご案内。初めての加算算定でも安心して取り組めます。さらに、個別性の高い計画書は最短3分で作成できます。

記録した内容は各種帳票へ自動で連携するため、何度も同じ内容を転記することがなくなります。また、文章作成が苦手な方でも、定型文から文章を作成できるので、簡単に連絡帳が作成できるなど、日々の記録や書類業務を楽にする機能が備わっています。

⇒資料のダウンロードはこちらから

この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

関連記事