意識消失時に行うべき介護職の対応とは|介護の緊急時の対応・マニュアル整備

コラム

症状・病気

更新日:2024/03/22

介護の現場では、利用者の意識消失に対応する場面があります。意識消失とは、なんらかの理由で意識がなくなったり遠くなったりする状態のこと。全く反応しない場合は医療面のケアが必要になることもあります。この記事では、意識消失した際の対応や救急時の対応方法などを紹介しています。  

意識消失とは

意識消失とは、一時的な意識の消失を指し、一般的には気絶や失神とも呼ばれます。意識がなくなる時間は、数秒から長くても数分程度です。

意識消失を起こす原因は多岐にわたります。主な原因を以下に挙げますのでご参考ください。

  1. 姿勢の問題
    「寝ている状態から起き上がる」「座っている状態から立ち上がる」など、頭部が持ち上がった瞬間に意識消失する場合があります。たとえば、起立性低血圧が例として挙げられます。
  1. 心臓の問題
    心臓の異常や不整脈が原因で脳に血液が十分にいきわたらず、意識消失する場合があります。たとえば、虚血性心疾患が例として挙げられます。
  1. 血管や血流の問題
    心臓から脳へ血液を送り届ける血管の一部が詰まっていたり、血流が悪くなったりすることが原因で、脳へ酸素がいきわたらずに意識消失する場合があります。たとえば、一過性脳虚血発作が例として挙げられます。
  1. 血糖値の問題
    血糖値が急激に低下すると、脳に必要なエネルギーがいきわたらずに、意識消失する場合があります。たとえば、糖尿病薬服用による低血糖が例として挙げられます。
  1. 自律神経の問題
    自律神経が反射的に働いて心拍数や血圧が急激に変化し、脳への血流が低下することによって意識を消失する場合があります。たとえば、迷走神経反射や過度なストレスが例として挙げられます。

起立性低血圧のように立ち上がった瞬間に突発的に意識消失する場合もありますが、少し眠っているような状態から徐々に意識がなくなる場合もあります。

意識消失の前には、次のような状態が観察されることがあります。

  • 「うとうと」と眠っているように見える
  • 顔面が蒼白している
  • 冷や汗をかいている
  • 目の前が白くなったり、暗くなったりする
  • 吐き気がする
  • あくびがでる

症状を確認したら安全の確保を行いましょう。「立っている場合は座ってもらう」「何かの活動中の場合は、即座に活動をやめてもらう」など意識消失しても、転倒や外傷を負わないように対応しましょう。

また、主疾患や既往歴を把握しておくことも重要です。意識消失はあくまで症状のため、意識消失が起きた原因に対して適切に対応することが大切です。

疾患によっては意識消失ではなく、意識障害の可能性も考えられます。その場合、直ちに医療機関への受診などをする必要があります。

重症度に合わせた対応が必要です。利用者の持つ疾患を把握した上で対応できるように努めましょう。
日ごろの利用者の様子を観察し、違和感に気づくことができるようにしておくことが大切です。

参照:意識障害 | 健康長寿ネット

意識消失に気づいたときの初期対応

意識消失したその場に居合わせなければ、居眠りをしているだけのように見える可能性があるため、確認する必要があります。

意識消失が発生した場合、その状態を適切に評価し、必要な対応を迅速に取ることが重要です。以下に対応をまとめましたのでご参考ください。

身体的な接触と声掛け

意識消失を確認した場合、まず最初に行うべきことは身体的な接触と声掛けです。具体的には次のように対応します。

  • 利用者の肩や腕に軽く触れるか「トントン」と軽くたたく
  • 利用者の名前を呼んだり、大きな声で「大丈夫ですか?」や「起きてますか?」など声をかける

ただし、利用者を強く揺さぶったり、強く叩いたりすることは避けましょう。重要なことは利用者の接触や声かけによる刺激に対する適切な反応です。

意識がしっかりとしている場合は触られた方向を見たり、声掛けに適当な返答が得られたりします。また、少し眠っているだけの場合は目を覚まして反応するでしょう。

適切な反応が得られない場合は、呼吸や脈拍などのバイタルチェックを行い、利用者の安全を確保しましょう。

バイタルチェックの実施

接触や声掛けに適切な反応がなかった場合、大きな声で他のスタッフを呼びましょう。

他のスタッフへ「呼びかけに反応しないこと」を伝え、看護師への連絡とバイタルチェックのための測定機器を持ってきてもらうように依頼します。

発見者は、その場を離れないようにしましょう。
バイタルチェックは正常値を参考に判断します。

以下に高齢者の正常値と観察のポイントなどを挙げます。

  1. 呼吸
    「呼吸の有無」「回数」「リズム」「深さ」を観察していきます。呼吸数の正常値は、12〜20回/分とされています。一定のリズムで呼吸しているかなども確認します。
  1. 脈拍
    手首の動脈を触って「回数」「リズム」を確認していきます。脈拍数の正常値は60〜100回/分とされています。さらに、一定のリズムで脈を打っているかを確認します。
  1. 血圧
    血圧の正常値は最高血圧が120mmHg未満、最低血圧が80mmHg未満とされています。高齢者の場合は血管が硬くなっているため、これよりも若干高い場合もあります。測定した姿勢によって血圧は変わるため、どの姿勢で測定したかも覚えておくと良いでしょう。
  1. 体温
    体温の正常値は36〜37度とされています。非接触型体温計は本来の体温が高くても、外気の影響で低く表示される場合があるため、脇の下で測定する体温計を使用しましょう。
  1. 飽和酸素濃度
    正常値は95%以上です。飽和酸素濃度を測定するパルスオキシメーターは、指が冷たかったり血行が悪かったりすると正しく測定できません。測定する指を変えたり、温めてから測定すると測りやすいので留意しましょう。

高齢者の場合はバイタルサインの個人差が大きいです。利用者の日ごろの健康状態を把握することが重要になるでしょう。

また、意識消失を「居眠り」として見逃さないよう、緊急時を意識した対応を心掛けておくことが大切です。

参照:バイタルサインとは|目的と測定の仕方、基準値について | ナース専科

デイサービスにおける意識消失の対応

デイサービスにおいて、意識消失や他の緊急事態が生じた場合、迅速に対応しなければなりません。

そのため、救急対応マニュアルを事前に準備しておくことが重要です。

また、バイタルチェックを迅速に行い、何が原因で意識消失しているか確認することも重要です。適切な対応をとることで意識は回復する可能性はありますが、対応を怠るとより重篤な状態に陥るかもしれません。

ただし、何が原因で意識消失したかが明確に判断できないときもあるでしょう。自己判断せず、看護師や他の職員と連携しながら対応することが大切です。

救急対応マニュアルの確認と活用

意識消失やその他の緊急事態に対応するための救急対応マニュアルの作成が必要です。
マニュアルは具体的で段階に応じた対応手順を明記し、全職員がそれを理解し実行できるようにしておく必要があります。

  1. 対応手順

基本的に発見者はその場を離れないようにしましょう。前述した身体的な接触や声掛けで利用者の異常を把握します。また、以下のように他の職員へ協力を依頼しましょう。

  • 他の職員の応援
  • 看護師への連絡
  • バイタル測定機器などの必要物品

救急対応は必ず他のスタッフと連携し、迅速な対応をするよう努めましょう。

  1. 連絡手段

多層階に及ぶ建物や併設施設の医師・看護師の応援を呼ぶ場合は、館内放送方法や電話を使用することもあります。館内放送の使用方法や併設施設の電話番号は、目に見える場所に掲示し、迅速に連絡ができるようにしておくことが大切です。

また、急変時に使用する文言をあらかじめ決めておくことも大切になるでしょう。伝達内容に統一性を持たせ、迅速な対応が可能になります。

たとえば「〇〇で急変です。お手すきのスタッフは至急応援をお願いします。」など、文言を決めておくと良いでしょう。

  1. 機材などの保管場所の明記

血圧計や体温計などを保管する場所を決めておくと迅速な対応がしやすいでしょう。普段使用するものとは別に、急変時用に一式準備することも有効的です。

また、送迎車など、普段から使用する場所にも常備しておくと不測の事態に迅速な対応ができます。AEDや吸引器などの医療機器の設置場所も確認しておくと良いでしょう。

  1. 救命処置の方法

呼吸停止や心停止の場合は、直ちに救命処置が必要になります。心肺蘇生法やAED使用方法を理解しておく必要があります。また、模擬訓練も行っておくと良いでしょう。

看護師や他の職員との連携

看護師がいる場合は、看護師を中心とした多職種連携の緊急時対応を決めておくことが重要です。看護師が医療的な対応を行い、他の職員は急変した利用者の安全確保や他の利用者への説明、救急車の手配などを行うのが一般的です。

看護師が不在の時間帯がある場合は以下の2点に留意しましょう。

  • 看護師の所在がわかるようにしておく
  • 専用の携帯電話を常に携帯する

また、送迎時に看護師がいない場合があるかもしれません。

意識消失状態の利用者を発見した場合は焦らず、安全な場所に車を停車してから利用者の状態を確認します。その上で看護師へ連絡し、指示を仰ぎながら適切に対応しましょう。 

利用者が高齢者のデイサービスにおいて、意識消失は稀なことではありません。「送迎」「入浴」「レクリエーション」「排泄」など様々な状況を想定し、それぞれ適切な対応を模擬訓練で行っておくことが重要です。

参考:慌てず冷静になることが大切!病棟の急変対応の流れについて | nastea(ナスティ)

他職種連携の大切さについて知りたい方は以下の記事からチェックできますので、ぜひご一読ください。
▶︎介護における他職種連携の必要性を3つの事例から読み解く

家族への報告と救急車の手配基準

意識消失はほとんどの場合、数分程度で回復します。ただし「バイタルチェックで異常があった」「意識消失以外の症状が続いた」場合などは、救急搬送や医療機関への受診を迅速に行う必要があるでしょう。

救急車を呼ぶのが適切かどうか判断できない場合は、「#7119」で相談すると、適切な対応方法を示してくれます。

たとえば、次のような状態では救急搬送や医療機関への受診を行うことを勧めます。

  • 心停止や呼吸停止など重篤な状態
  • 意識が回復しきれずに、長時間ぼーっとしている
  • 頭痛、嘔吐などの症状が緩和せずに継続する
  • バイタルサインの異常が続く(呼吸が荒い、著明な不整脈が続くなど)
  • 明らかにいつもの本人の様子と違う状態が続く 

救急対応マニュアルを活用し、かかりつけ医や看護師の指示を仰ぎ、救急搬送や医療機関への受診の判断を行いましょう。

どのような判断になるかは利用者の重症度などによっても変わります。マニュアルをスタッフ間で共有し、適切な対応ができるように準備しておくことが大切です。

救急搬送する場合は、家族への連絡も重要です。受け入れ可能な病院を確認したら、次の内容は最低限伝えるようにしましょう。

  • 搬送先の病院名
  • 利用者の状態
  • 搬送先への大まかな到着予定時刻

連絡するスタッフは冷静にゆっくりと伝えるようにしましょう。

連絡を聞いた家族は、心配や不安からパニックに陥る可能性は否定できません。不安を助長しないように注意しつつ、連絡前に再度連絡事項を確認し、家族へ的確な情報を伝えられるようにしましょう。

また、家族へ連絡がつながらないリスクを抑えるために第2連絡先まで確認すると良いでしょう。それでも連絡がつながらない場合は、留守番電話にメッセージを残し、時間がたってから再度連絡するようにしましょう。

参考:もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

意識消失を含む救急対応には準備が大切になる

介護現場での意識消失時や救急時の対応について解説しました。

意識消失を含む救急時の対応は、突然おとずれます。準備を怠っていると、いざというときに適切な対応ができません。当事者意識を持ち、事前に想定した模擬訓練を行うことが大切です。

意識消失を発見したときに焦らず、適切に対応できるように日ごろから十分な準備を行いましょう。

Rehab Cloudに待望の「レセプト」が新登場

リハビリ・LIFE加算支援の決定版「リハプラン」と記録、請求業務がスムーズにつながり、今までにない、ほんとうの一元管理を実現します。

日々お仕事をするなかで、「介護ソフトと紙やExcelで同じ情報を何度も転記している」「介護ソフトの操作が難しく、業務が属人化している」「自立支援や科学的介護に取り組みたいが余裕がない」といったことはありませんか?

科学的介護ソフト「Rehab Cloud(リハブクラウド) 」』なら、そういった状況を変えることができます!

ぜひ、これまでの介護ソフトとの違いをご覧頂ければと思います。



リハブクラウドでは、デイサービスの方向けに無料のメールマガジンを配信しております。日々のお仕事に役立つ情報や研修会のお知らせなどを配信します。ぜひメルマガ購読フォームよりご登録ください。

この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

関連記事

他のテーマの記事をみる