介護のリスクマネジメント・事故防止【勉強会・研修会資料用】
運営ノウハウ
2024/10/31
運営ノウハウ
リスクマネジメント
更新日:2024/10/21
介護の現場では、利用者の意識消失に対応する場面があります。意識消失とは、なんらかの理由で意識がなくなったり遠くなったりする状態のこと。全く反応しない場合は医療面のケアが必要になることもあります。この記事では、意識消失した際の対応や救急時の対応方法などを紹介しています。
この記事の目次
意識消失とは、一時的な意識の消失を指し、一般的には気絶や失神とも呼ばれます。意識がなくなる時間は、数秒から長くても数分程度です。
意識消失を起こす原因は多岐にわたります。主な原因を以下に挙げますのでご参考ください。
起立性低血圧のように立ち上がった瞬間に突発的に意識消失する場合もありますが、少し眠っているような状態から徐々に意識がなくなる場合もあります。
意識消失の前には、次のような状態が観察されることがあります。
症状を確認したら安全の確保を行いましょう。「立っている場合は座ってもらう」「何かの活動中の場合は、即座に活動をやめてもらう」など意識消失しても、転倒や外傷を負わないように対応しましょう。
また、主疾患や既往歴を把握しておくことも重要です。意識消失はあくまで症状のため、意識消失が起きた原因に対して適切に対応することが大切です。
疾患によっては意識消失ではなく、意識障害の可能性も考えられます。その場合、直ちに医療機関への受診などをする必要があります。
重症度に合わせた対応が必要です。利用者の持つ疾患を把握した上で対応できるように努めましょう。
日ごろの利用者の様子を観察し、違和感に気づくことができるようにしておくことが大切です。
意識消失したその場に居合わせなければ、居眠りをしているだけのように見える可能性があるため、確認する必要があります。
意識消失が発生した場合、その状態を適切に評価し、必要な対応を迅速に取ることが重要です。以下に対応をまとめましたのでご参考ください。
意識消失を確認した場合、まず最初に行うべきことは身体的な接触と声掛けです。具体的には次のように対応します。
ただし、利用者を強く揺さぶったり、強く叩いたりすることは避けましょう。重要なことは利用者の接触や声かけによる刺激に対する適切な反応です。
意識がしっかりとしている場合は触られた方向を見たり、声掛けに適当な返答が得られたりします。また、少し眠っているだけの場合は目を覚まして反応するでしょう。
適切な反応が得られない場合は、呼吸や脈拍などのバイタルチェックを行い、利用者の安全を確保しましょう。
接触や声掛けに適切な反応がなかった場合、大きな声で他のスタッフを呼びましょう。
他のスタッフへ「呼びかけに反応しないこと」を伝え、看護師への連絡とバイタルチェックのための測定機器を持ってきてもらうように依頼します。
発見者は、その場を離れないようにしましょう。
バイタルチェックは正常値を参考に判断します。
以下に高齢者の正常値と観察のポイントなどを挙げます。
高齢者の場合はバイタルサインの個人差が大きいです。利用者の日ごろの健康状態を把握することが重要になるでしょう。
また、意識消失を「居眠り」として見逃さないよう、緊急時を意識した対応を心掛けておくことが大切です。
参照:バイタルサインとは|目的と測定の仕方、基準値について | ナース専科
デイサービスにおいて、意識消失や他の緊急事態が生じた場合、迅速に対応しなければなりません。
そのため、救急対応マニュアルを事前に準備しておくことが重要です。
また、バイタルチェックを迅速に行い、何が原因で意識消失しているか確認することも重要です。適切な対応をとることで意識は回復する可能性はありますが、対応を怠るとより重篤な状態に陥るかもしれません。
ただし、何が原因で意識消失したかが明確に判断できないときもあるでしょう。自己判断せず、看護師や他の職員と連携しながら対応することが大切です。
意識消失やその他の緊急事態に対応するための救急対応マニュアルの作成が必要です。
マニュアルは具体的で段階に応じた対応手順を明記し、全職員がそれを理解し実行できるようにしておく必要があります。
基本的に発見者はその場を離れないようにしましょう。前述した身体的な接触や声掛けで利用者の異常を把握します。また、以下のように他の職員へ協力を依頼しましょう。
救急対応は必ず他のスタッフと連携し、迅速な対応をするよう努めましょう。
多層階に及ぶ建物や併設施設の医師・看護師の応援を呼ぶ場合は、館内放送方法や電話を使用することもあります。館内放送の使用方法や併設施設の電話番号は、目に見える場所に掲示し、迅速に連絡ができるようにしておくことが大切です。
また、急変時に使用する文言をあらかじめ決めておくことも大切になるでしょう。伝達内容に統一性を持たせ、迅速な対応が可能になります。
たとえば「〇〇で急変です。お手すきのスタッフは至急応援をお願いします。」など、文言を決めておくと良いでしょう。
血圧計や体温計などを保管する場所を決めておくと迅速な対応がしやすいでしょう。普段使用するものとは別に、急変時用に一式準備することも有効的です。
また、送迎車など、普段から使用する場所にも常備しておくと不測の事態に迅速な対応ができます。AEDや吸引器などの医療機器の設置場所も確認しておくと良いでしょう。
呼吸停止や心停止の場合は、直ちに救命処置が必要になります。心肺蘇生法やAED使用方法を理解しておく必要があります。また、模擬訓練も行っておくと良いでしょう。
看護師がいる場合は、看護師を中心とした多職種連携の緊急時対応を決めておくことが重要です。看護師が医療的な対応を行い、他の職員は急変した利用者の安全確保や他の利用者への説明、救急車の手配などを行うのが一般的です。
看護師が不在の時間帯がある場合は以下の2点に留意しましょう。
また、送迎時に看護師がいない場合があるかもしれません。
意識消失状態の利用者を発見した場合は焦らず、安全な場所に車を停車してから利用者の状態を確認します。その上で看護師へ連絡し、指示を仰ぎながら適切に対応しましょう。
利用者が高齢者のデイサービスにおいて、意識消失は稀なことではありません。「送迎」「入浴」「レクリエーション」「排泄」など様々な状況を想定し、それぞれ適切な対応を模擬訓練で行っておくことが重要です。
参考:慌てず冷静になることが大切!病棟の急変対応の流れについて | nastea(ナスティ)
他職種連携の大切さについて知りたい方は以下の記事からチェックできますので、ぜひご一読ください。
▶︎介護における他職種連携の必要性を3つの事例から読み解く
意識消失はほとんどの場合、数分程度で回復します。ただし「バイタルチェックで異常があった」「意識消失以外の症状が続いた」場合などは、救急搬送や医療機関への受診を迅速に行う必要があるでしょう。
救急車を呼ぶのが適切かどうか判断できない場合は、「#7119」で相談すると、適切な対応方法を示してくれます。
たとえば、次のような状態では救急搬送や医療機関への受診を行うことを勧めます。
救急対応マニュアルを活用し、かかりつけ医や看護師の指示を仰ぎ、救急搬送や医療機関への受診の判断を行いましょう。
どのような判断になるかは利用者の重症度などによっても変わります。マニュアルをスタッフ間で共有し、適切な対応ができるように準備しておくことが大切です。
救急搬送する場合は、家族への連絡も重要です。受け入れ可能な病院を確認したら、次の内容は最低限伝えるようにしましょう。
連絡するスタッフは冷静にゆっくりと伝えるようにしましょう。
連絡を聞いた家族は、心配や不安からパニックに陥る可能性は否定できません。不安を助長しないように注意しつつ、連絡前に再度連絡事項を確認し、家族へ的確な情報を伝えられるようにしましょう。
また、家族へ連絡がつながらないリスクを抑えるために第2連絡先まで確認すると良いでしょう。それでも連絡がつながらない場合は、留守番電話にメッセージを残し、時間がたってから再度連絡するようにしましょう。
参考:もしものときの救急車の利用法 どんな場合に、どう呼べばいいの? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
介護現場での意識消失時や救急時の対応について解説しました。
意識消失を含む救急時の対応は、突然おとずれます。準備を怠っていると、いざというときに適切な対応ができません。当事者意識を持ち、事前に想定した模擬訓練を行うことが大切です。
意識消失を発見したときに焦らず、適切に対応できるように日ごろから十分な準備を行いましょう。
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