介護のハラスメント問題:具体的な事例・相談窓口や対策を徹底解説

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更新日:2024/04/09

介護施設の利用者からのハラスメントに対しては、ここ数年で問題意識が高まり、施設での対策や予防法、対処方法などが周知されるようになりました。しかし、まだまだこの問題が解決したわけではなく、悩みを持つ方も少なくないでしょう。この記事では、ハラスメントが起こる原因から対処法、相談窓口まで幅広く解説しています。  

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介護のハラスメント問題の現状と背景

ハラスメントとは、困らせるような行動や発言などをすることで、相手に身体的・精神的な苦痛を与える行為です。介護現場でも、介護士と利用者の間でハラスメントが起こることがあります。

利用者が介護士に対して叩く、蹴るなどの暴力行為をする、暴言を吐くなどがおもな例です。

利用者が介護士にハラスメントを起こす原因はさまざまで、身体が衰えることによるストレスや焦り、介護士の配慮不足などがその一例です。

介護士は利用者のサポートする立場でもあるため、ハラスメントを我慢することも珍しくありません。認知症をはじめとした病気によってハラスメントが起こることもあるので、上司や周囲に言い出しにくい風潮もあります。

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介護のハラスメントの具体的な形態

介護のハラスメントには、おもに以下の3つの形態があります。

  1. 身体的暴力
  2. 精神的暴力
  3. セクシュアルハラスメント

ここでは、それぞれの形態について詳しく解説します。

身体的暴力

身体的暴力とは、身体的な力によって相手に危害を与える行為のことです。身体的暴力にあたる行為の例は以下の通りです。

  • コップを投げつける
  • 叩く・蹴る
  • つねる
  • 引っ掻く
  • 唾を吐く
  • 衣服を破る

精神的暴力

精神的暴力とは、言葉や態度によって相手の尊厳・人格を傷つける行為のことです。精神的暴力にあたる行為の例は以下の通りです。

  • 大声で怒鳴る
  • 威圧的な態度をとる
  • 嫌がらせをする
  • 理不尽なことを要求する
  • 批判的な言葉を浴びせる

セクシュアルハラスメント

セクシュアルハラスメント(以下:セクハラ)とは、相手の意に沿わない性的な誘いや嫌がらせなどの行為のことです。

セクハラに該当する行為は以下の通りです。

  • 意味もなく手や足に触れる
  • 抱きしめる
  • 性的な話をする
  • 性的な写真を見せる

このように、何かしらの手段によって相手に身体的・精神的な苦痛を受けた場合、ハラスメントと判断されます。

参考:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省(2023年10月16日確認)

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認知症を持つ方への正しいアプローチとは

認知症を持つ利用者によってハラスメントが起こるケースがあります。その場合、ハラスメントとして扱うのではなく、医療的なアプローチを行う必要があります。

たとえば、認知症の利用者が「もの盗られ妄想」を起こして暴力・暴言などの行為を起こした場合、それを防ぐためのケアの手段を考える必要があるでしょう。

いずれにせよ、暴力・暴言行為がある以上、職員の安全を配慮することに変わりはありません。暴力・暴言を受けた場合は、1人で抱え込まずに上司や周囲に共有することが大切です。

情報を共有することで、どのようなアプローチをすればよいのかについてのヒントにつながるでしょう。

参考:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省(2023年10月16日確認)

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実際にあったハラスメント例

ここでは介護施設で実際に起きたハラスメント例についてご紹介します。

  • 介助を行っている最中に腕をつねられた
  • 離床を促したときに拒否され、大きな声で怒鳴られた
  • サービス外の要求をされて断ったところ、「○○さんならやってくれるのに」と怒られた
  • 仕事や経歴について見下され、バカにされるような発言を受けた
  • 入浴介助中に必要以上に身体を触られて、性的な発言を受けた
  • 会話中に性的な誘いをしつこくされた

このように、介護現場でもさまざまなハラスメントが起こる可能性があります。ハラスメントを我慢していると、さらなる被害を被ることもあるでしょう。

利用者からハラスメントを受けた場合は、1人で抱え込まずに職場の同僚や上司に相談して、対策を立てるようにしましょう。

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介護のハラスメント問題:具体的な対策

介護現場でハラスメントが起きたときのために、どのような対策を立てるべきなのでしょうか。ここでは、その具体的な対策について解説します。

職場全体でハラスメントについて認識する

まずは、ハラスメントに対しての認識を職場全体に浸透させることが大切です。ハラスメント行為は職員への権利侵害です。

そして、ハラスメントと判断する基準は、被害にあった職員の感じ方によって左右されることを理解しておきましょう。

そのような点を認識したうえで、介護サービスの質を高めた取り組みを行い、ハラスメントの防止につなげることが大切です。

初期対応に注意し、要因を分析する

ハラスメントが起きた場合、初期対応とその後の分析がポイントです。

ハラスメント発生時に不適切な対応をすると、その後に関係性が悪化したり、さらなる被害にあったりする恐れもあります。

そのため、なるべく丁寧な対応を心がける必要があります。そして、ハラスメントが起きた要因を分析し、それに応じた対策を共有して予防に努めましょう。

ハラスメントが起きたら共有を徹底する

ハラスメントが起きた場合、決して1人で抱え込まずに共有を徹底しましょう。

1人で抱え込むと職員の精神状況の悪化につながるだけでなく、全体で対策が立てられないため、ハラスメントの解決が難航する恐れもあります。

ハラスメント、あるいはその恐れがある場合は、迷わずに共有することを心がけましょう。また、施設内での対応に限界がある場合は、外部の団体や機関などと連携することも検討してください。

ハラスメントによる契約解除は正当な理由が必要なことを認識する

まず前提として、サービスの提供にあたり、利用者や家族に対して重要事項を十分に説明し理解してもらったうえで、契約解除とならないように取り組むことが大切です。

これはハラスメント対策に限らず、事業を運営するにあたって重要なポイントです。

そしてハラスメントが原因で、やむを得ずに契約解除を行った場合、施設側は正当な理由を用意しておく必要があります。

契約解除の際に発生するトラブルを防ぐためにも、どのような基準があり、どのようなケースで有効となるのかを明確にしておきましょう。

参考:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省(2023年10月16日確認)

介護のハラスメント問題:予防する方法

介護現場でのハラスメントを予防するためには、どのような取り組みが必要なのでしょうか。ここでは具体的な予防対策について解説します。

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ハラスメントにおける基本方針を決めてマニュアルを作成する

まずはハラスメントに対してどのような基本方針で進めるのかを決定したうえで、それに対応したマニュアルを作成しましょう。

基本方針を決めるためには、ハラスメントに対してどのような考え方を持っているのかを確認し、それを共有し合うことが大切です。

その方針を固めておくことで、マニュアル作成時に管理者の役割や発生したハラスメントの対処法などが明確となります。

相談しやすい職場環境を整える

職員が必要以上にトラブルやリスクを抱え込まないように、ハラスメントに関して相談しやすい職場環境を作りましょう。

ハラスメントの相談ができる窓口を設置しておくと、対応もしやすく事業所内の風通しも良くなるでしょう。

またハラスメントに限らず、さまざまなトラブルに対応できるように、個人面談をはじめとした相談しやすい場を設けておくこともおすすめです。

提供サービスの目的と範囲を理解しておく

提供する介護サービスの目的と、対応できる範囲を周知しておくことも大切です。対応できる範囲が不明瞭の場合、職員によってサービスの内容が変わってしまう恐れがあります。

サービスの範囲が明確であれば、「○○さんはやってくれた」「○○さんはやってくれないのか」などのクレームやハラスメントの予防につながります。

ハラスメントに関して利用者・家族に理解してもらう

職員だけでなく、利用者・家族にもハラスメントに関する事項を共有しておきましょう。

どのような行為がハラスメントに該当するのか、ハラスメントが起きた場合はどのような対応をするのかなどを説明し、理解してもらうことが大切です。

サービス契約時にあらかじめハラスメントに関して説明することで、トラブルの発展防止につながります。

収集した情報をもとに職員の配置を工夫する

サービスの利用開始前に、ケアマネジャーによるアセスメントをもとに、利用者の情報を収集することになります。

利用者の性格や性別、身体状況などの情報をもとに、介護面だけでなくハラスメント発生の可能性についても考えておきましょう。

ハラスメントの可能性が高いと判断した場合は、職員への共有とともに、配置の工夫をすることが大切です。

ハラスメントのリスク要因を把握したうえで対策する

介護施設で起きやすいハラスメントの要因を把握し、その対策をあらかじめ決めておきましょう。

たとえば、以下のような対策が挙げられます。

  • 入浴介助中にセクシャルハラスメントが起こるのであれば、職員を男性に変更する
  • 1対1の状況で暴力行為が起きやすいのであれば、その状況にならないように職員を配置する

このように、サービスの特徴にあわせて対策を練ることが重要です。

利用者や家族からのクレームに適切に対応する

利用者や家族からクレームが入った場合は、丁寧かつ迅速な対応が求められます。

利用者や家族からのクレームに不適切な対応をとると、不信感・不満が募ってハラスメントに発展する恐れがあるからです。

クレーム対応は職員個人に任せるのではなく、全体でどのような行動をすべきなのかを周知させておきましょう。

クレーム対応を統一化することで、クレーム後の不信感・不満の軽減につながり、ハラスメントの発展予防となります。

参考:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省(2023年10月16日確認)

ハラスメントが発生した場合の対処

ここでは実際にハラスメントが発生した場合に、どのような対処をすべきかについて解説します。

迅速な対応とその後の再発防止策の検討を徹底する

ハラスメントが発生した場合、迅速な対応を心がけ、再発防止策を検討しましょう。管理者は職員の安全を確保したうえでハラスメントの状況を確認し、その後の対応・指示をする必要があります。

ハラスメントが発生したときのマニュアルを用意し、共有しておけば、すぐに対応しやすくなります。対応後は発生したハラスメントの背景や原因などをできる限り具体化して、対策の見直しをすることが大切です。

同じ事例が複数発生しないように、PDCAサイクルを回して再発防止策を徹底しましょう。

管理者・職員への負担の抱え込みを防止する

ハラスメントが生じた場合、当事者である職員やフォローを担当する管理者の負担が高まりやすい傾向にあります。このときに、管理者や職員が過度に負担を抱え込まないように配慮しましょう。

個人ではなく組織や多職種でハラスメントに対応する、ケアマネジャー・包括支援センターなどにも相談するなどもおすすめです。

このように、ハラスメントの発生でメンタルが低下し、仕事に悪影響が出ないようにするためには、負担を分散させるような工夫が重要です。

参考:介護現場におけるハラスメント対策マニュアル|厚生労働省(2023年10月16日確認)

介護のハラスメントの相談窓口

介護現場のハラスメントに関して、地域ごとに相談窓口が設けられている場合があります。

東京都のページではハラスメントに当たる行為や、ハラスメントに該当しない行為(認知症による症状等)が記載されています。

ハラスメントかどうかの見極めの際に、ぜひ参考にしてください。利用者・家族からのハラスメントについて悩みがある場合は、各地域の相談窓口に相談してみるのも1つの手段です。

参考:介護現場における利用者やご家族等からのハラスメント相談窓口(2023年10月16日確認)

事業所全体でハラスメント対策を取り入れることが大切

介護現場で発生するハラスメントには、身体的暴力や精神的暴力、セクハラなどの形態が存在します。

このようなハラスメントの発生をおさえるには、予防・対策・対処をセットで考え、事前に行動しておくことが大切です。

職員だけでの対処では防止が難しいので、マニュアルを用意する、相談窓口を設置するなど、事業所全体で動くことが大切です。

今回の記事を参考にして、ハラスメントが起きないような対策を取り入れていきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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