インフォーマルサービスとは?介護における具体的な活用事例と効果

運営ノウハウ

経営

更新日:2024/10/21

介護サービスには、公的機関が提供するものとは別に「インフォーマルサービス」というサービスがあります。介護施設では扱うことのないサービス形態のため、利用者が希望したときの対処や付き合い方については知識が必要です。ここでは、インフォーマルサービスの概要や具体例、介護施設での取り扱い方についてご紹介しています。

⇒「稼働率・売上が上がらない事業所のよくある失敗と対処法」解説資料のダウンロードはこちらから

インフォーマルサービスとは

インフォーマルサービスとは、介護保険や医療保険といった形式に捉われるサービスではなく、保険外で行われるサービスのことを指します。

たとえば、以下のような内容がインフォーマルサービスです。

  • 家族、友人、近隣住民による生活の手助け
  • ボランティアスタッフによる傾聴サービス
  • 地域住民による合唱教室
  • 事業所による介護保険外(自費)サービス

介護保険や医療保険といった形式に捉われるサービスではなく、いわゆる介護保険外の自費サービス、ボランティア的なサービスがインフォーマルサービスです。

インフォーマルサービスは、地域コミュニティに根ざしているものが多く、受け手にとって親しみやすい特徴があります。また、サービス内容に柔軟性があることも特徴の1つでしょう。

インフォーマルサービスの役割の重要性は、公的なサービスだけではカバーしきれない部分を補える点です。日々の小さな相談や心の支え、緊急時の対応など、より個別的で親密な支援を提供できる強みがあります。

また、地域コミュニティの絆を強化し、社会的孤立を防ぐ効果もあるでしょう。

インフォーマルサービスのメリット

インフォーマルサービスのメリットは多岐にわたります。まず、受け手にとって身近な感覚でサポートを受けられる点がメリットとして挙げられます。

たとえば、家族や友人からのサポートは、心理的負担が比較的少なく、個別性の高いケアをしやすい場合が多いでしょう。

ボランティアスタッフによるサービスであれば、無料または低コストでサポートを受けられるケースも十分に考えられます。

信頼できる人からのインフォーマルサポートは、精神的な支えとしても重要で、心理的な安心感や幸福感を高める効果があります。

また、ボランティアや地域住民の社会活動といったインフォーマルサポートは社会的つながりや地域コミュニティの強化にも寄与し、孤独感の軽減にもつながります。

フォーマルサービスのメリット

フォーマルサービスは、医療保険や介護保険のような保険制度を用いた支援やサービスを指し、医療機関や社会福祉機関で行われる医療・介護サービスなどがそれに該当します。

フォーマルサービスの大きなメリットは、専門性と体系的な支援にあるといえるでしょう。

専門の知識と技術を持つスタッフによってサービスが行われるため、医療的なニーズや複雑なケアが要求される場合に適切な対応が可能です。

また、サービスの品質が一定の基準に基づいているため、安全性や信頼性が高いという利点があります。法的な保障やサポートも整っており、利用者の権利が守られやすい点もメリットとして挙げられます。

さらに、フォーマルサービスは長期的かつ継続的な支援を提供しやすい特性があるため、計画的かつ効果的な支援計画を立てやすいでしょう。

⇒「稼働率・売上が上がらない事業所のよくある失敗と対処法」解説資料のダウンロードはこちらから

インフォーマルサービスの種類

インフォーマルサービスには、様々な種類があり、それぞれが異なるニーズに対応しています。フォーマルサービスとは異なり、インフォーマルサービスは、地域社会や個人の関係の中で生まれるものが多いです。

以下の章からは、その主な種類と具体的な内容について紹介します。

身体的ケア を提供するインフォーマルサービス

身体的ケアとしてのインフォーマルサービスは

  • 自費のヘルパーのようなサービス
  • 友人、ボランティアによるもの

を含む、日常的な身体的支援です。

食事の準備、身体の清潔保持、薬の管理、移動の支援などが含まれ、要介護者の身体的健康維持に関与します。

また、公的な保険を使わずに自費で身体ケアをするサービスもインフォーマルサービスに当たります。

精神的ケアを提供するインフォーマルサービス

精神的ケアを行うインフォーマルサービスは、主に心の支えとなるコミュニケーションや共感を提供します。

たとえば、家族や友人、地域の住民による心温まる会話、共通の趣味や活動への参加、悩み事の相談などによってケアが行われます。

これらのインフォーマルサービスは、孤独感の軽減や精神的な安定、生活の質の向上に寄与することでしょう。

安心・安全な生活を支える見守りサービス

見守りのインフォーマルサービスについては、たとえば、地域住民や民生委員、家族による見守りがそれにあたるでしょう。

また、高齢者の自宅を定期的に訪問して安否を確認したり、緊急時の連絡体制を整えたりすることなどもサービス内容として挙げられます。

このサービスは、独居高齢者や要介護者の安全を確保し、万が一の事態への迅速な対応のために役立てられます。

日常生活で役立つ家事援助サービス

家事援助のインフォーマルサービスは、買い物、掃除、洗濯、料理などの家事を介護保険制度以外のサービスやボランティアで手助けすることです。

また、家事代行サービスも介護保険外の家事援助サービスとして挙げられるでしょう。

家事援助サービスは、なかなか外出できない利用者にとって、自立した生活を送るための大きな支援となります。

社会参加を促す活動支援サービス

社会参加を促すインフォーマルサービスは、利用者が地域社会や集団活動に参加することを支援するサービスのことを指します。

たとえば、趣味のクラブへの参加促進、地域のイベントや活動への誘い、ボランティア活動の機会の提供などが含まれるでしょう。

これらのサービスは、社会的孤立を防ぎ、生活に活力をもたらす重要な役割を果たします。

インフォーマルサービスの提供元と具体例

インフォーマルサービスは、日常生活における支援と心理的サポートを提供し、高齢者の生活の質を高める重要な役割を果たします。

以下に具体的な提供元や利用方法の例を示しますのでご参考ください。

参考:鳴門市 インフォーマルサービス

家族:日常生活の支援と心理的サポート

家族は、高齢者のインフォーマルサービスにおける最も身近な提供元です。

家族によるケアは、食事の準備や掃除、買い物などの日常生活の支援から、感情的なサポート、社会的なつながりの維持に至るまで、多岐にわたります。

家族の存在は、高齢者に安心感と愛情を提供し、孤立感を減少させます。

近隣住民:地域コミュニティによる支援

地域コミュニティは、高齢者にとっての重要な支援ネットワークを形成します。地域住民との交流や地元のイベントへの参加は、高齢者の社会参加の機会になり、活動性向上に役立ちます。

近隣住民との日常的な会話などは、高齢者の精神的健康を支え、地域内でのつながりを深めることでしょう。

地域内でのつながりが、生活の大きな支えになることもあります。

ボランティア団体:地域住民による協力

ボランティア団体による活動は、高齢者が快適に暮らすためのサポートを提供し、社会参加を促進するきっかけにもなります。

たとえば、ボランティア活動として食事の配達、家事の手伝い、交通手段の提供、衣類の洗濯などさまざまな内容が含まれます。

ただし、各ボランティア団体によって活動内容や活動範囲は異なるため、居住地域などで支援できる内容も異なるでしょう。

NPO(非営利団体):専門的なサポートとネットワークの提供

NPOは、組織的な資源を活用して、サービスを提供します。その中にインフォーマルサポートも含まれます。

たとえば、金銭管理サポートや外出サポートなどが挙げられるでしょう。

それだけではなく、NPOは高齢者のニーズに応じた多様なサービスを提供しており、生活を豊かにするためにも活躍しています。

参考:NPO法人 ひとり暮らし高齢者の笑顔をつくる会

インフォーマルサービスとフォーマルサービスの連携とは

インフォーマルサービスとフォーマルサービスの連携は、質の高いケアを提供する上で非常に重要です。

インフォーマルサービスは、家族や友人、地域コミュニティなどによる保険を用いない支援を指します。これに対し、フォーマルサービスは専門的な介護や医療サービスなど、公的な保険を用いたサービスを指します。

それぞれ特性が大きく異なるため、両者の最適な組み合わせがケアの質を向上させるための鍵となるでしょう。

たとえば、家族による日常生活の支援と訪問看護師による定期的な健康チェックの組み合わせをしたケースを考えてみましょう。

その場合、家族支援による日常的なケアだけでなく、専門職による健康支援があることで確かな技術による支援も得られます。

また、地域コミュニティとの交流を通じて社会的なつながりを保ちつつ、専門の介護施設での適切なケアを受けることも、利用者にとって非常に有益です。

インフォーマルサービスは、環境によって変わりやすく、必ずしも持続するとは限りません。そのため、フォーマルサービスによるつながりを持っておくことが健康維持の重要な要素となることもあるでしょう。

両方のサービスを適切に組み合わせることで、きめ細やかなサポートが実現し、より充実した介護サービスが提供できます。

介護事業者におけるインフォーマルサービスの付き合い方

介護事業者がインフォーマルサービスと効果的に付き合うためには、ケアプラン作成時の配慮と、事業運営上の戦略の2点が重要になります。

ケアプラン作成時の対処

ケアプラン作成時に利用者からインフォーマルサービスの希望があった場合、事業者はその希望を尊重し、ケアプランに組み込むことが重要です。

たとえば、家族による日常生活の支援や、地域のボランティア団体との連携、コミュニティへの参加などの内容をケアプランに組み込むことが考えられるでしょう。

利用者の家族や地域コミュニティとの連携を明確化して促進することで、フォーマルサービスとインフォーマルサービスのバランスを取り、利用者の生活の質を高めることができます。

ただし、公的なサービスではないものをプラン内容に組み込む場合、それぞれの人間関係や得られる情報の不安定さなどに注意する必要があります。

ケアプランについては基礎知識を以下の記事で紹介しています。基本的な作成方法などを頭に入れておきましょう。
ケアプランとは?介護計画との違い・作成の流れをわかりやすく解説

事業運営上の付き合い方

インフォーマルサービスを斡旋することで直接的な利益にはつながらないかもしれませんが、間接的に事業の質の向上に寄与します。

事業者は、ケアプランにインフォーマルサービスを位置付けるなどといったサービスの斡旋を通じて、利用者やその家族、友人との信頼関係を築くことができるでしょう。

質の高いケアの提供は顧客満足度と事業所の高評価につながり、利用者や家族との信頼関係を強めます。また、インフォーマルサービスを通じて得られる情報は、サービスの質を改善し、よりニーズに合ったケアを提供するための重要なフィードバックとなるでしょう。

さらに、インフォーマルサービスを通して地域社会との連携を深めることで、事業者は地域における自事業所の認知度と評判を高めることができます。これにより、新たな顧客層の獲得や、地域社会における事業の存在感を高めることが期待できます。

介護事業者はインフォーマルサービスを利用者との信頼関係構築の手段と捉え、事業運営の一環として取り入れることで、利用者にとっても事業者にとっても有益な結果を生み出せるでしょう。

インフォーマルサービスをバランス良く組み合わせることが大切

インフォーマルサービスについて、フォーマルサービスとの連携を含めて細かく解説しました。

インフォーマルサービスのメリットは、フォーマルサービスでは行えない保険適用外の細かな部分の支援や精神的なケアの側面を持つことにあるでしょう。

介護事業者としてもインフォーマルサービスと上手く付き合うことはメリットになり得ます。

重要なのは、バランス良く組み合わせて、ケアや生活の質を高めることです。さまざまな組み合わせの中から、一人ひとりに合ったバランスを見つけましょう。

加算算定、書類業務でお困りならRehab Cloudがおすすめ

日々の加算算定業務や記録業務などで苦労されている人も多いのではないでしょうか?科学的介護ソフト「Rehab Cloud」であれば、現場で抱えがちなお悩みを解決に導くことができます。

例えば、加算算定業務であれば、計画書作成や評価のタイミングなど、算定要件に沿ってご案内。初めての加算算定でも安心して取り組めます。さらに、個別性の高い計画書は最短3分で作成できます。

記録した内容は各種帳票へ自動で連携するため、何度も同じ内容を転記することがなくなります。また、文章作成が苦手な方でも、定型文から文章を作成できるので、簡単に連絡帳が作成できるなど、日々の記録や書類業務を楽にする機能が備わっています。

⇒資料のダウンロードはこちらから

この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

関連記事