共生型サービスとは?制度の概要と対象者、導入のポイントをわかりやすく解説
運営ノウハウ
2025/03/31
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更新日:2025/03/27
高齢者の筋力向上や日常生活動作の改善に役立つパワーリハビリテーションについて解説します。導入を検討している介護職や家族向けに、メリット・デメリットもご紹介。パワーリハビリの効果を最大限に引き出すポイントを知り、適切なリハビリを実践しましょう。
この記事の目次
パワーリハビリテーションとは、加齢や病気などによって低下した身体機能を回復し、日常生活動作(ADL)の向上を目指すリハビリテーション方法の1つです。
パワーリハビリテーションとは、加齢や疾患によって使われなくなった筋肉や神経の働きを再び呼び覚まして「動ける体」を取り戻すことを目指す運動療法です。日常生活の中で徐々に使われなくなった筋群に軽い負荷をかけ、再び活性化させることで、身体機能を向上させることを目的としています。
従来のリハビリテーションは、たとえば脳卒中後の麻痺や骨折後の回復を目的とし、理学療法士や作業療法士が個別にプログラムを作成するケースが多く見られます。手技(徒手療法)を用いたリハビリや、日常動作の練習を繰り返し行う方法が中心です。
一方、パワーリハビリテーションは低負荷・高頻度のトレーニングを行いながら、普段使われていない筋肉を再活性化を目指します。専用のトレーニング機器を使うことで、関節や筋肉に過度な負担をかけることなく、安全に運動を継続できる点が従来のリハビリテーションとの違いになるでしょう。
また、通常の筋力トレーニングとは異なり、軽い負荷で行う点も大きな違いです。これにより心肺機能への負担を抑えつつ、筋持久力や動作の円滑さを改善することができます。
高齢者になると、筋力の低下だけでなく、身体を動かす機会そのものが減少し、動作のぎこちなさや、転倒リスクの増加が問題になります。特に、長期間動かしていない筋肉は次第に働きが弱まり、日常生活での不自由さにつながる可能性は否めません。
パワーリハビリテーションを取り入れることで、高齢者が自分の力で動ける範囲を広げ、介護を必要としない生活を維持しやすくなります。また、フレイル(加齢による虚弱)やサルコペニア(加齢性筋肉減少症)の予防にもつながることが報告されています。
さらに、無理せずに運動を続けることで意欲や自信の向上、社会参加の促進といった心理的な効果も期待できるでしょう。
パワーリハビリテーションは、低負荷・高頻度での運動を行うことで、衰えた神経・筋機能を回復させ、身体の動きをスムーズにすることを目的としています。
以下で、詳細を解説しますので参考にしてください。
高齢になると、筋力だけでなく神経と筋肉の連携が上手くいかなくなります。たとえば、歩行時にスムーズに足が出ない、立ち上がるときに力が入らないといった症状が現れることがあるでしょう。このような症状については、普段使われない筋肉が脳からの指令をうまく受け取れなくなることが原因と考えます。
パワーリハビリテーションでは、こうした「動かしづらい筋肉を再び使えるようにする」ことを目的としており、筋肉を鍛えるだけでなく、脳と筋肉の連携を再学習することが重要視されます。
パワーリハビリテーションの大きな目的の一つは、日常生活動作をスムーズにすることです。たとえば、以下のような場面での動作改善が期待されます。
このような生活に直結する動作を改善するためにパワーリハビリテーションは行われます。
参考:高齢患者の歩行パラメーターと下肢筋力およびADL能力との関連
身体機能が改善されることで、自分でできる生活動作が増え、生活の満足度が向上します。
たとえば、これまで外出が難しかった高齢者が散歩に行けるようになったり、家事ができるようになったりすることで、社会とのつながりが増え、心身の健康にも良い影響を与えます。
また、身体機能の低下による転倒の恐怖等が軽減されるため、自信を持って生活しやすくなるでしょう。
パワーリハビリテーションを継続的に行うことで、要介護状態の進行を遅らせる効果が期待されます。筋力や動作能力が維持・向上することで、介護サービスへの依存度が下がり、自立した生活を続けられる可能性が高まります。
さらに、介護者の負担軽減にもつながるため、家庭内介護や施設でのケアの質の向上にも貢献するでしょう。
パワーリハビリテーションは単なる筋力向上ではなく「使えていなかった筋肉を再び使えるようにする」ことで、日常生活の自立を支援するリハビリです。高齢者自身の生活の質が向上し、介護負担の軽減にもつながりやすいため、デイサービスや介護施設でも導入が進んでいます。
参考:高齢者における筋力増強運動を含む機能的トレーニングが生活機能に及ぼす影響
パワーリハビリテーションでは、専用のトレーニング機器を使用して、筋肉に軽い負荷をかけながら動作を繰り返します。関節や筋肉に無理のない範囲で行います。
パワーリハビリテーションで主に使用される機器の一部の使い方を紹介します。
レッグプレス (下肢の筋力向上) |
座った状態で、足を専用のフットプレートにしっかり置きます。シートやレッグレストの位置を調整し、膝が約90度になるようにセットしてください。操作時は、足で押し出す際に膝が内側に入らないよう注意しながら、ゆっくりと足を伸ばし、元の位置に戻す動作を繰り返します。 |
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チェストプレス (上半身の筋力向上) |
座った状態で、背もたれにしっかり寄りかかり、ハンドルを両手で握ります。シートやアームレストの位置を調整し、腕が適切な角度になるようにセットします。両手で前方に押し出し、ゆっくりと戻す操作を行い、動作中は肩や肘に無理のない範囲で行ってください。 |
ローイング (背中・腕の強化) |
シートに座り、背筋を伸ばして背もたれに寄りかかります。ハンドルを両手で握り、スタート位置で腕を伸ばしましょう。引く際は、肘を後方に引き寄せ、背中の筋肉を意識しながら、ゆっくりとハンドルを体寄りに引きます。その後、コントロールしながら元の位置に戻します。 |
パワーリハビリテーションは重い負荷をかけるのではなく、軽い負荷を設定してスムーズな動作を繰り返すことが大切です。適切な負荷設定を行わなければ、関節や筋肉に過度な負担をかけずに安全なトレーニングを継続できません。
過度な負荷をかけてしまうと関節や筋肉へのストレスが増し、痛みや疲労、さらには怪我のリスクを高める可能性は否定できません。活動性が低下している高齢者は筋肉や関節が硬くなっていることが多く、急激な負荷の増加は筋損傷や関節痛の原因になりやすいため、特に注意が必要です。
リハビリの効果を最大限に引き出すには、継続しやすい負荷設定が重要です。負荷が高すぎると「疲れる」「痛い」「怖い」といった理由でトレーニングを続けられなくなり、途中で挫折してしまうかもしれません。無理なく動作を繰り返せるように調整することで、トレーニングの継続が容易になり、結果として機能回復の効果が高まるのです。
以下の手順で負荷を設定すると安全に運動が行えるでしょう。
初回評価 | トレーナーや理学療法士が、筋力、関節可動域、既往歴を確認します。無理のない可動範囲を設定し、最適なトレーニングプランを作成します。 |
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試し動作 | 初回は軽い負荷(自重または最低負荷)で動作を確認します。 |
負荷量の設定 | 10回以上スムーズにできるかをチェックします。 |
定期的な見直し | 2〜4週間など期間を設定して、定期的に負荷や回数を見直します。 |
運動負荷の適切な設定は、安全かつ効果的なトレーニングを実施する上で重要です。指標としてボルグスケール(RPE)と1RM(Repetition Maximum)を活用すると良いでしょう。
ボルグスケールは、主観的運動強度を評価する尺度であり、6〜20の数値で表されます。パワーリハビリテーションでは本人が「楽である」と感じる、(RPE 10〜12)の軽負荷が基本とされています。
1RMとは、1回だけ持ち上げられる最大重量を指し、トレーニングの負荷強度を客観的に決定する指標として広く活用されます。
高齢者の筋力向上には70〜79% 1RMの強度が効果的とされていますが、パワーリハビリテーションでは低負荷高頻度トレーニングが推奨されるため、その負荷で運動は行われません。その代わりに、1RMの概算値をもとに30~50% 1RMの負荷で8~12回×3セットといったプログラムを設定し、軽負荷であっても適切な反復回数を確保することで筋力向上が可能とされています。
また、30% 1RM以下では筋肥大効果が認められにくいとの報告もあり、筋力増強を目的とする場合には30%以上の負荷が必要となる可能性があります。このため、負荷設定の際にはRPE(主観評価)と1RM(客観評価)を併用し、適切な強度を見極めることが重要になるでしょう。
パワーリハビリテーションは、デイサービスでも導入しやすい運動プログラムです。機器の特性上、それぞれの高齢者の状態に合わせて負荷を設定しやすいことから、多くの施設で活用されています。以下、実際のデイサービスでの実施例を紹介します。
施設内での実施方法 | 1.ウォーミングアップ椅子に座った状態で、軽いストレッチや関節可動域訓練を行う。2.パワーリハ機器を使用したトレーニング利用者ごとのメニューに基づき、2〜4種類の機器を使ったトレーニングを実施。1セット10回以上を目安に、無理のない範囲でセットを繰り返す。3.クールダウン立ち上がりや歩行動作を確認しながら、ストレッチを行う。 |
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週1~3回の頻度で実施する | デイサービスでは、利用者の体力や負担を考慮し、週1~3回の頻度で継続するのが一般的です。週1回でも筋力低下の予防には効果が期待でき、週2~3回の継続で日常生活動作の改善がより促進されます。 |
効果的な組み合わせをする | パワーリハビリテーション単独でなく、歩行訓練や脳トレなどと組み合わせることで、より効果的なプログラムが作れます。・機器トレーニング後に歩行訓練を実施し、筋力向上と歩行安定性を両立。・認知機能向上を目的とした脳トレ(計算、しりとりなど)を取り入れ、総合的なケアを実施。 |
デイサービスでパワーリハビリを導入することにより、利用者の「できる動作」を増やし、自立支援につなげることができます。
パワーリハビリテーションは、軽い負荷を繰り返す運動により高齢者の筋力やバランス能力を安全に向上させ、自立支援や転倒予防、生活の質の改善に効果が期待できます。
パワーリハビリテーションは、低負荷・高頻度の運動によって高齢者の筋力やバランス能力を向上させるリハビリ手法です。加齢に伴い筋力が低下すると、特に下肢の衰えが進み、転倒リスクが高まります。しかし、パワーリハビリでは 軽い負荷を繰り返し筋肉にかけることで、安全に筋力を維持・向上させることができます。
また、筋力の向上に伴いバランス能力の改善も期待できるでしょう。歩行時の安定性や姿勢保持機能を高めることで転倒リスクを軽減できます。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者が適切な運動を継続することで、転倒の予防や生活機能の改善が期待できるとされています。
高齢者の生活の質(QOL)は、単に筋力をつけるだけでなく「立ち上がる」「歩く」「物を持つ」などの日常動作をスムーズに行えるかどうかに大きく関わります。パワーリハビリは日常生活動作に必要な筋力を鍛えられるため、自分で行えることが増えやすく、QOLの改善も期待できるでしょう。
また、パワーリハビリを通じて 「自分で動ける」という自信が生まれると、外出の機会も増え、社会参加の促進やフレイル(虚弱)の予防にもつながることでしょう。
高齢者が自立して動けるようになると、介護者の負担も軽減されます。たとえば、ベッドから車椅子への移動などを自分で行えるようになれば、介護者が介助を行う必要性が減ります。
さらに、パワーリハビリを継続することで 転倒や寝たきりのリスクを抑えることができれば、長期的に見ても介護負担の軽減につながることでしょう。
パワーリハビリテーションは高齢者の自立支援に効果的ですが、適用対象や実施体制に注意が必要です。導入前に課題を把握しましょう。
パワーリハビリテーションは、廃用症候群や軽度の運動機能低下を抱える高齢者を対象としたリハビリ手法です。しかし、全ての高齢者に適しているわけではありません。以下で、適用制限の一例を紹介します。
重度の認知症を抱えている方 | 指示の理解が困難で、安全なトレーニングができない場合があります。 |
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重篤な心疾患 (心不全、不整脈など) |
運動負荷が原因で症状が悪化するリスクがあります。 |
進行性の神経疾患 (筋萎縮性側索硬化症など) |
運動が逆効果に働いて筋力が低下したり、症状が悪化する場合があります。 |
適応判断は、医師や理学療法士の評価をもとに慎重に行うことが重要です。
パワーリハビリテーションは即効性のあるリハビリではなく、継続的な取り組みにより徐々に効果が現れるものです。おおよそ週2〜3回の頻度で3〜6ヵ月以上の継続が推奨されており、個人差はあるものの効果が見込まれるとされています。
そのため、短期間での変化を期待する利用者にとっては効果を実感しにくい場合があり、途中で中断すると筋力や動作能力が低下するリスクが高まる可能性もあるでしょう
効果を最大限に引き出すには運動を継続しやすい環境づくりが重要です。家族や介護スタッフの励まし、仲間と一緒に取り組める場の存在がモチベーションの維持に役立つと報告されています。
パワーリハビリテーションは、専用のトレーニングマシンを使用することが基本です。そのため、デイサービスや介護施設で導入する場合、以下のような課題が生じます。
設備投資が必要 | マシン1台あたり数十万円〜100万円以上かかることがあり、複数台導入するとなると大きなコストがかかります。 |
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設置スペースの確保 | マシンを使用するためには広いスペースが必要であり、特に小規模な施設では導入が難しい場合があります。 |
維持管理の手間 | 定期的なメンテナンスが必要であり、修理や保守にコストがかかることも考慮しなければなりません。 |
これらの問題を解決するために、リース契約の活用などの工夫が必要になります。
パワーリハビリテーションは、高齢者の身体機能や疾患に配慮した適切な負荷調整が求められるため、専門知識を持つスタッフが必要です。理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が関与することが理想的ですが、介護施設で十分な人員を確保できるか留意する必要があるでしょう。
また、マシンの正しい使用方法や安全管理の知識も必要です。誤ったフォームでのトレーニングは、転倒や関節への過負荷につながるリスクがあるため、利用者ごとの適切な指導が欠かせません。
パワーリハビリテーションを導入するためには、専用のトレーニング機器が必要です。以下で、代表的な機器とその価格帯を紹介します。
価格はメーカーや機能によって異なりますが、機能や品質、ブランドによる違い等が影響していると考えられます。
レッグプレス | 座った状態で足を押し出す動作を行う機器。価格は、数十万円〜200万円程度。 |
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チェストプレス | 座位でハンドルを押し出すことで、胸や腕の筋力を鍛える機器。価格は、数十万円〜150万円程度。 |
バックエクステンション | 背もたれに寄りかかるように体を動かし、背中の筋力を鍛える機器。価格は、数十万円〜150万円程度。 |
施設に導入する際は、機器の購入費用に加え、設置スペースの確保やメンテナンス費用も考慮する必要があります。以下のようなコストが発生する可能性があるでしょう。
機器導入費用 | 機器の種類や台数により異なりますが、1台あたり数十万円〜数百万円となっています。 |
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定期メンテナンス費 | 機器の種類や使用頻度により異なりますが、修理も含めて年に数万円〜数十万円程度かかることもあるでしょう。 |
スタッフ研修費 | 後述の資格取得費用が必要となります。 |
スペース確保 | 専用ルームを用意する場合、改装費がかかることもあります。 |
一部の機器はレンタルやリース契約も可能で、初期費用を抑える方法として活用されることがあります。
日本自立支援介護・パワーリハ学会では、スタッフ育成のための研修制度と、それに基づく資格認定制度を設けています。
要件を満たすことで以下の資格を取得できます。これらは、学会による施設認証制度(一定の水準を満たしていますと公式に認める制度)の人的条件にもなります。
パワーリハビリテーション指導員 | パワーリハビリテーション上級指導員 | |
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申請条件 | ・指導員研修会の修了・学会の会員(個人A・施設・法人)であること・3機種以上の推奨機器を使った6か月以上の実務経験 | ・上級指導員研修会の修了・指導員資格取得後、3機種以上の推奨機器による1年以上の実務経験・学会の会員(個人A・施設・法人)であること |
認定期間 | 2年 | 4年 |
更新要件 | 活動報告書の提出+学術大会参加や講師実績などのいずれか | 活動報告書の提出+学術大会や講師実績など複数の条件 |
費用 | 発行手数料 2,000円(個人会員)、施設・法人会員は無料 | 発行手数料 2,000円(個人会員)、施設・法人会員は無料 |
※2025年3月時点情報
パワーリハビリテーションは高齢者の筋力向上だけでなく、生活動作の改善や自立支援にも役立つ取り組みやすい運動療法です。デイサービスや介護施設で導入されている所も少なくなく、適切に実施すれば、利用者の生活の質を向上させる効果も期待できます。
一方で、導入時には設備コストやスタッフの教育や対象者の適性判断など、慎重に検討すべきポイントは少なくありません。リハビリの効果を最大限に引き出すには、利用者の身体機能に合わせたプログラムを設定し、継続的に支援することが重要になります。パワーリハビリテーションの導入を検討する際は、導入のメリット・デメリットを理解し、適切な運用方法を選びましょう。
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