介護書類の保管方法と管理の基本|法的義務を守るための保存期間とは

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更新日:2025/04/07

介護書類の保管方法と保存期間について、法的義務を守るための基本をお伝えします。物理的・電子的な保管方法や地域ごとの保存期間、書類の廃棄方法、トラブル回避策などを詳細に解説。介護施設や事業所で適切な書類管理を実践するためのポイントを紹介します。

介護書類の保管方法について

介護の現場では、利用者の個人情報やサービス提供に関する多くの書類を取り扱います。これらの書類は法令で定められた保存期間の間、正しく保管する義務があります。誤って廃棄したり、第三者に漏れたりしないように、日頃から適切な保管方法を実践することが大切です。

ここでは、物理的な保管と電子的な保管の両面から管理方法を詳しくしますので、ぜひご一読ください。

参考:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン

物理的な保管方法

介護書類を紙で保管する場合は、整理とセキュリティの両立が求められます。まず基本となるのがファイルとキャビネットの活用です。

書類は内容ごとに分けてリングファイルやクリアファイルに綴じ、ラベルで識別できるようにすることが効果的です。たとえば「利用者別」「サービス種類別」「年度別」など、分類方法をあらかじめ決めておくと管理しやすくなるでしょう。

綴じたファイルは施錠可能なキャビネットや棚に保管し、用事の無い人が触れられないようにしましょう。キャビネットにはラベルを貼って中身が一目でわかるようにし、定期的に見直しと整理を行うことも重要です。

全ての事業者に一律で「鍵のかかる場所で保管すること」を義務づけられてはいませんが、事業規模や取扱う情報の機微性に応じて施錠やICカード入室管理等の対策を検討し、適切な管理を行う必要があるとされています。 

また、火災や水害に備えて耐火性のある保管庫や、書類を湿気から守る防湿剤の活用も推奨されています。ファイルの背表紙には作成年月と保存期限を記載しておくと、廃棄時期の判断がスムーズになるでしょう。

複数のスタッフが閲覧する書類は、閲覧記録や管理責任者を明確にしておくことで、紛失や情報漏れのリスクを下げることができます。

参考:「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」【各論】

電子的な保管方法

ICTの進展により、介護現場でも書類の電子化が進んでいます。紙に比べてスペースを取らず、バックアップも可能なため、導入を始めている事業所は少なくありません。

電子的な保管をする方法として、書類をスキャンしてPDFなどの形式で保存するなどが例として挙げられます。保存後は、パソコンや外付けハードディスクにフォルダ分けして管理すると良いでしょう。フォルダ名やファイル名は「サービス名_利用者名_年月日」などのルールを決めて統一すると、検索しやすくなります。

さらに進んだ管理方法としては、クラウドストレージの活用が挙げられます。「Google Drive」「Dropbox」「OneDrive」などの一般的なサービスや、介護業務に特化した専用ソフトウェアも活用できる可能性があるでしょう。

これらのクラウドサービスを使えば、複数の端末から同時に必要な情報にアクセスが可能となります。また、クラウドには自動バックアップ機能やアクセス制限を設定できるため、データの消失や漏えいリスクを抑えることができるでしょう。

ただし、電子データの保存には電子帳簿保存法や個人情報保護法に準じた適切な管理体制が必要です。厚労省の個人情報ガイドラインでは、長期保存する個人データは劣化防止に努めるとともに、索引を整備するなど検索可能な状態で保存するよう求めています。

近年では、マイナンバー対応やセキュリティ対策が強化されたソフトもあり、厚生労働省もICT活用を推進しています。電子化を進めることで業務が効率化し、職員の働きやすさにもつながるため、まずは紙媒体と併用する取り組みから始めるのも良いでしょう。

参考:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン

介護書類の保存期間について

介護施設や事業所では、日々多くの書類を扱っています。これらの書類は、法令に基づいた期間、適切に保存しなければなりません。

保存期間を守らない場合、監査や指導の際に指摘を受けたり、トラブル発生時に必要な情報が確認できなかったりする可能性があります。

介護保険法に基づくサービス提供記録や、介護給付費請求に関わる書類の管理は、特に重要です。以下で、それぞれの保存期間を詳しく解説します。

サービス提供記録の法的な保存期間

介護サービス提供記録の保存期間は法令で定められており、原則「サービスが完結した日から2年間」保存しなければなりません 。これは介護保険法施行規則に基づくもので、事業者は運営規程や契約書等にこの期間を遵守する必要があります。

訪問介護や通所介護など、どのようなサービス形態であっても、提供したサービス内容の記録は「完結の日から2年間」保存する必要があります。

ここでいう「完結の日」とは、原則として介護サービスの提供が完了した日、またはそれに関連する業務が完了した日を指します。介護保険法施行規則に基づく保存期間は、この「完結の日」から起算される点に注意しましょう。

介護給付費請求書・介護給付費明細書の保存期間

介護給付費に関する書類には、サービス提供記録とは異なる保存期間のルールが定められています。

なかでも「介護給付費請求書」や「介護給付費明細書」については、事業所が5年間保存する義務があります。

この保存期間の根拠は、以下の2点に基づいています。

地方自治法 第236条 地方公共団体の債権(介護給付費の返還等)の時効は5年とされており、それに対応する保存期間として5年間が必要です。
厚生労働省の事務連絡
(平成13年9月19日付)
請求関連書類について「最長5年間の保管が望ましい」と明記されています。

このような法的根拠により、介護給付費の請求に関する書類は、いつ監査や調査があっても提出できるよう、適切に保管しておくことが求められています。保存を怠ると、会計検査院や自治体の監査で不備を指摘され、返還請求や行政処分の対象となる恐れもあるでしょう。

具体的には、次のような書類が5年間の保存対象です。

  • 国保連合会に提出した介護給付費請求書
  • 介護給付費明細書(請求控え)
  • 電子請求を行った場合のデータ(CSV形式やXML形式など)
  • 返戻通知書や過誤申請に関する通知書類

電子請求を行っている事業所では、データの保存場所やバックアップ体制の整備も重要です。誤った請求や修正が発生した際に、内容を検証できる状態を維持することが求められます。

地域別の介護書類保存期間

介護保険法では、サービス提供記録の保存期間は原則として「完結の日から2年間」と定められています。この2年という保存期間は全国共通の法的基準ですが、実際の運用では地域ごとに異なる保存期間が求められることがあります。

たとえば、一部の自治体では条例や運営指導マニュアルにより、サービス提供記録の保存期間を5年間と定めているケースがあります。このような違いが生じる背景には、自治体ごとの監査体制や介護サービスの管理方針の差異があります。たとえば、保存期間の起算日を「サービス提供日の翌々々月の1日」と明示し、そこから5年間の保存を義務づけているケースもあります(例:3月24日のサービス→6月1日を起算日)。このように、起算日の考え方まで詳細に定めている自治体もあるので留意する必要があるでしょう。

また、加算の有無や事業所種別によっても保存期間が異なる場合があります。さらに、紙媒体・電子媒体などの保存形式に関しても、自治体独自の指導が行われていることがあるため、保存方法についても確認する必要があるでしょう。

以上のように、書類の保存期間については介護保険法の基準だけでなく、各自治体の条例や運営指導マニュアルをあわせて確認することが不可欠です。特に指定更新や監査の前には、最新の情報を自治体のホームページで確認したり、必要に応じて介護保険課や指導監査担当部署に問い合わせたりすることが、正確な対応につながります。

介護書類の管理に関する注意点

介護書類は、ただ保管するだけでなく「どの書類を」「いつまで」「どのように管理するか」を理解しておく必要があります。記録漏れや保存期間の超過、不要書類の放置などが発覚すると、運営指導や報酬返還の対象となることもあるでしょう。ここでは、書類の廃棄方法とトラブルを防ぐポイントを紹介します。

書類の廃棄方法

介護事業所で保存期間を満了した書類を廃棄する際は、物理的書類も電子データも復元不可能な方法で処分することが重要です。

紙の書類は一般的にシュレッダー裁断や焼却処分などで内容を判読不能にします。たとえば、専門業者による溶解処理サービスを利用すれば紙を溶かして再生困難にでき、処分証明書の発行も可能です。

機密性の高い介護記録には、こうした確実な処分方法を採用し情報漏えいリスクを低減させる必要があるでしょう。また電子データの場合は単にファイルを削除するだけでなく、専門ソフトによるデータ消去や記憶媒体の物理破壊が推奨されます。

厚生労働省の通知でも、国保連伝送などで保存した磁気媒体は支払処理終了後にデータを抹消する措置を講じてから廃棄するよう求められています。ハードディスクやUSBメモリ等はデータを完全消去した上で廃棄するか、ドリルで穴を開ける・プレス機で潰すなど物理的に破壊するといった方法が安全策として挙げられます。

また、廃棄の記録(証跡)も適切に残しましょう。個人情報を含む書類を廃棄した場合は、その廃棄実施の記録(削除・廃棄した日付、方法、担当者など)を残すことがガイドラインで求められています 。

たとえば、マイナンバー指針では特定個人情報を廃棄した際に「削除または廃棄した記録を保存する」ことが明示されており、委託業者に処分させた場合も処分証明書などで確実に確認する必要があるとされています 。

介護記録等についても、自主的な内部ルールとして廃棄台帳を備え、何をいつ誰がどのように廃棄したかを記録しておくことが望ましいでしょう。文書管理規程の例でも、文書管理者が廃棄作業の経過を文書管理台帳に記録や保管することが定められているケースもあります。こうした証跡を残しておけば、いざという時に適切な廃棄を証明でき、トラブル防止につながります。

書類管理のトラブル回避

介護事業所でのトラブルを防ぐためには、まず保存期間を正しく守ることが基本です。

たとえば、サービス提供記録などは介護保険法で「完結の日から2年間」保存とされていますが、自治体によっては条例で5年間の保存を求めているケースもあります。また、介護給付費の請求書や明細書といった書類は、国の基準で5年間の保存が必要です。

事業所が所在する自治体のルールを確認し、契約書や運営規程で定めている保存期間が最新の法令や条例と一致しているかを定期的に見直しましょう。

介護事業所には、自治体による運営指導が定期的に入ります。確認されるのは、書類の保管状況です。以下のような点がチェックされます。

  • 必要書類が揃っているか(例:計画書、サービス提供記録、契約書、給付管理票など)
  • 署名や押印が正しくあるか
  • 保存期間を過ぎた書類を適切に保管しているか
  • 書類の保管方法が安全か(施錠管理、電子保存であればパスワードやバックアップの整備)
  • 個人情報の取扱いが適正か

保存すべき書類が足りない場合や保存方法に問題がある場合は、改善指導や行政処分の対象になる可能性があります。ただし、必要な記録が無い場合であっても、即時的に返還になるわけではありません。

厚生労働省の運営指導マニュアルでは、記録が不備でもすぐに報酬返還にはならず、サービスが本当に提供されていなかったと判断された場合に返還命令の対象になるとされています。

とはいえ、記録不備は運営基準違反であり、是正勧告や業務改善命令が出ることはあります。最悪の場合、指定取り消しや事業停止処分に至るケースもあるでしょう。

こうしたトラブルを未然に防ぐには、次のような体制づくりがポイントです。

  • 文書管理の責任者を明確にする
  • 保存期間の一覧表を作成し、全スタッフに共有する
  • 保管から廃棄までのルールをマニュアル化する
  • 文書管理台帳を活用して記録の移動や廃棄を記録する
  • 定期的にスタッフ研修を行い、保存ルールを浸透させる

また、文書保存規程を整備し、文書を「永久保存・10年・5年・3年・1年」と分類して管理する。台帳で履歴を残し、保存期間を過ぎたら適切に廃棄するなどの対応が考えられるでしょう。

近年は、介護記録や同意書などの電子保存が認められるようになりました。これにより、一定の条件を満たせば紙で保管しなくてもよいケースも増えています。

ただし、電子保存には注意が必要です。

  • 電子帳簿保存法などの関連法と整合しているか
  • タイムスタンプや検索機能、訂正履歴の管理機能があるか
  • 帳票はPDFで保存できるか
  • バックアップ体制やセキュリティが整っているか

これらを満たしていないと、データ保存が認められない場合があります。なお、自治体によってはローカルルールが存在している可能性もあるため、事前確認が必要です。

適切な保管と管理で介護書類の信頼性を守ろう

介護書類は、サービスの記録や法的義務を果たすうえで欠かせない重要な情報です。紙・電子のいずれの形式でも、環境や法令に合わせた管理が必要になります。保存期間については、全国一律の基準だけでなく自治体ごとの規定にも注意が必要です。

トラブルを防ぐためには、日頃からの点検や廃棄方法の確認も欠かせません。法的リスクを避けるためにも、確実で効率的な書類管理体制の構築が求められます。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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