介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
運営ノウハウ
リスクマネジメント
更新日:2024/07/30
介護現場では、ヒヤリとしてハッとする場面にいく度か遭遇します。ヒヤリハットとは、重大な事故は起こらないものの、事故になってもおかしくない事例のことです。介護現場では、ヒヤリハット報告書を書いたり、事例を学ぶことで、未然に介護事故を防ぐことができます。今回はそんな介護現場のヒヤリハット事例や、報告書の書き方までをまとめてご紹介します。
この記事の目次
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ヒヤリハットとは、事故にまではならなかったものの、事故に直結してもおかしくない「ミス」や「冷やり」「ハッ」としたことを指します。
介護現場のヒヤリハットとは、介護事故にはならなかったものの、事故になってもおかしくないもの、仮に起こっていたら被害が発生したと予想されるものを示します。
現場でよくあるのは「ミス=よくないこと」という思い込みから本人が事実報告をためらってしまい、問題が先送りになったり、課題が大きくなったりしてしまうという、悪循環です。
心理的に隠したいと思うことは人間として無理のないことではありますが、職場のためにも、利用者のためにも、共に情報共有することの大切さを学び、介護の安全性を施設全体で高めていく努力が必要です。
ヒヤリハットを書くことは「罰」でもなく、反省として報告するものでもありません。あくまでも報告する目的は再発防止であり、そのために必要な情報共有なのです。
介護事故やヒヤリハット、インシデントなどの定義の違いについて理解しておきましょう。
事故が起こる可能性があるものを英語では「インシデント」と呼び、病院等では「インシデント報告書」として作成する場合があります。ヒヤリハットの語源は文字どおり「ヒヤリとした」「ハッとした」というものです。以下に詳細を確認しましょう。
インシデントとは | 客観的事実として事故に至る可能性があった事実(スタッフの発見の有無は関係ない。例えば、現場を見ていない経営者が発見した場合などはインシデントに当たります。) |
---|---|
ヒヤリハットとは | 介護現場にて「ヒヤリとした」とも「ハッとした」というように、事故に至る可能性のあった事実として発見した場合 |
介護事故とは | 文字どおり事故に至った場合に用います。ご家族様や担当ケアマネージャー、必要に応じかかりつけ医に速やかに報告を行います。 |
厚生労働省より「リスクマネージメントマニュアル作成指針」にも定義されていますので興味がある方はこちらもチェックしてみてください。
参照:厚生労働省保健医療局 リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成委員会「リスクマネージメントマニュアル作成指針」
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忙しい介護現場で落ち着いて仕事をしているスタッフは、さまざまなシーンや環境で予測ができています。つまり、多くのことが「想定内」になるのです。介護現場のヒヤリハットの事例を知ることで、介護現場で起こりそうな事故を「予測する力」を身につけることができます。
介護現場に潜む様々な危険を予測する力があると、急なことでも驚かずに行動することができます。また、対処方法まで把握していると、予め頭の中でシュミレーションしていた範囲内なので慌てず対応ができます。長年、介護現場で働いている先輩のように経験値がなくても「予測する・想定する」ことで、あなたも慌てず落ち着いて仕事ができるはずです。
実際に1件の大きな事故の裏には、29件の軽傷な事故、そして300件のヒヤリハットがあるとされています。これは「ハインリッヒの法則」といわれる労働災害における1つの考え方です。この法則に則ると、ヒヤリハット報告書を300事例出すことで、29件の軽傷な事故を未然に防ぎ、1件の大きな事故を防ぐことができるとされています。
それでは、「介護事故を防止する力」「予測する力」を付けるために、介護現場のヒヤリハット事例をご紹介していきます。
介護現場のヒヤリハットの中でも、まずは、転倒につながりやすい「入浴」のヒヤリハットからご紹介します。入浴介助での事故の原因と対策方法を事例を学んで転倒予防をしていきましょう。
(内容)浴室内で滑って転倒してしまった
(原因)脱衣所と浴室の床の滑りやすさへの配慮が欠けていた
流し忘れた洗剤の泡が床にこぼれていた
(例文)普段独歩の方でも浴室内では脇の下に手を添えるなどの補助を行う
床の洗剤は随時流すように注意、滑り止めマットを敷く
(内容)髭剃り介助中にカミソリで切り傷を負った
(原因)利用者様が動いてしまい剃刀が横になってしまった
(例文)ひげ剃り介助中は顔に手を添えて顔が動かないようにして行う
(内容)シャワーの冷たい水、熱いお湯が体にかかってしまった
(原因)前の方が変更したシャワーの温度を確認していなかった
(例文)洗面器にお湯をためて使う
シャワーの出始めは温度変化があるのでスタッフが手で温度を確認する
(内容)車椅子とトイレの間、またはトイレのドアに足を挟んだ
(原因)車椅子から足先が出ていることを確認していなかった
(例文)足の位置を必ず確認して車椅子を操作する
(内容)目を離している間に一人で清拭をしようとして転落
(原因)認知症で立位が不安定であるにも関わらず一人にしてしまった
(例文)トイレ介助中は必ずそばで見守るようにする
(内容)トイレから車椅子の移乗時に転倒した
(原因)足元が濡れていた
手すりを持っていなかった
(例文)トイレを使用する前に足元が濡れていないか確認する
手すりや車椅子のアームレストを持ってもらうようにする
(内容)入れ歯をせずに食事を食べ始めた
(原因)入れ歯が装着されているか確認していなかった
(例文)食事前の確認事項として入れ歯がある方のチェックを行うようにする
(内容)他者と内服薬を間違えかけた
(原因)内服管理を一人のスタッフで行なっていた
(例文)スタッフ2名でダブルチェックをする
本人に名前の確認を行う
(内容)隣の人の食事を食べてしまった
(原因)重度の認知症の方をスタッフの目の届きにくい席に案内していた
(例文)スタッフが近くにいる席にご案内する
(内容)入れ歯の裏側に錠剤が残っていた
(原因)合わなくなった義歯をそのままにして装着していた
(例文)薬を飲む際に入れ歯を外してもらうようにする
家族に入れ歯の作り直しを依頼する
(内容)朝と昼の薬のセットが間違えていた
(原因)薬の保管方法が他の時間帯と混合し易い状態だった
本人管理に移行したばかりで看護師のチェックができていなかった
(例文)内服管理ボックスを色分けして一目で分かるようにする
(内容)薬を飲み忘れた
(原因)他看護師がチェックしていると思っていた
担当看護師も薬を渡しただけにしていた
(例文)薬の内服はダブルチェックにする
渡すだけでなく、飲んだかも確認する
(内容)靴下を履こうとして椅子から転落した
(原因)椅子に座った姿勢が不安定であった
(例文)靴下の着脱は前に倒れやすいので座る姿勢を整えてもらう
(内容)着替え中に服のファスナーで皮膚剥離を起こした
(原因)金属類のある衣服の確認をしていなかった
(例文)皮膚状態が悪い方には金属類がついていない衣服を家族に依頼する
(内容)着替えの介助中に内出血を見つけた
(原因)どのタイミングで内出血を起こしていたか確認が不十分であった
(例文)ご自身で起こしたのかスタッフ介助中に起きたのか不明であったが、着替えのタイミングで皮膚の状態も確認するようにする
(内容)装具をつけずに移乗しようとしてふらついた
(原因)装具の装着に手間がかかるのでそのまま移乗してしまった
(例文)装具を装着することの重要性を改めて説明する
装具なしの移乗練習を行い安全性を高める
(内容)フットレストを上げずに移乗したため車椅子ごと転倒しかけた
(原因)足元の確認ができていなかった
(例文)フットレストに目印をつけたり、動作の手順を再度確認して定着を図る
(内容)車椅子のフットレストから足が落ちたまま車椅子を押してしまった
(原因)足元の確認ができていなかった
(例文)車椅子のフットレストから足が落ちないようにカバーをつける
右片麻痺で重度の感覚障害があるためスタッフが足元を確認する
(内容)道端で急に座り込んでしまった
(原因)体調や体力を考慮した休憩場所を事前に準備していなかった
(例文)外出前に体調チェックを必ず行う
外出経路の休憩ポイントを事前確認しておく
(内容)木ノ実や花を口に含んでしまった
(原因)認知機能の低下がある方に対してスタッフの目が届かない状態であった
(例文)空腹感のある時間帯の外出は極力避けるようにする
スタッフが近くで付き添える環境を作っておく
(内容)段差に車椅子が引っかかり転落しそうになった
(原因)車椅子のスピードを出し過ぎていた
歩道の段差を確認していなかった
(例文)屋外は不整地となるため車椅子のスピードを緩める
歩道の段差には十分に注意を払う
ヒヤリハット報告書にはどのような書き方をすればいいのかお悩みの方も多いのではないでしょうか。今回は、上記添付画像をベースにヒヤリハット報告書の買い方についてお伝えしていきます。
ヒヤリハット報告書の書き方のポイントは「5W1H」で記述することにあります。
【場面】①いつ(When) 記載例:今日の朝10時頃②どこで(Where) 記載例:脱衣所③誰が(Who) 記載例:XXX様 【出来事】④何を(What) 記載例:椅子に座って靴下を脱ごうとしていて、前に倒れそうになった。 【理由】⑤どうして?(Why) 記載例:椅子が固定されておらず、椅子ごと前に倒れかかった。 【対策】⑥今後どのように対応するか(How) 記載例:椅子を重りで固定する。 |
これに加えて大事なのが「再評価」です。
ヒヤリハット事例が起きて、せっかく対策を立てたのにも関わらず、その効果測定をしないのでは意味がありません。予防策がうまく機能しているかどうかを把握するために、必ず再評価を行うようにしましょう。もしもうまくいってないのなら、次は事故になる可能性があるので、必ず再度対策する必要があります。
ヒヤリハット報告書はその日、その場で事例をたくさん書いて、みんなで情報をシェアすることが重要です。目標は300事例です。介護現場でたくさん書いて行こうという雰囲気作りが重要です。
ヒヤリハットを数多く書いて、社内で共有することが大切です!そのため、ヒヤリハット報告書を作成する場合は、一枚あたりに書く「文章の量」を最低限に減らしておきましょう。
1つあたりのヒヤリハットの内容をたくさん書くことはネガティブなことではありませんが、忙しい介護業務が終わっての書類作業です。記載する量が多くなれば、書くこと自体が億劫になってしまいます。情報をシェアすることを目的とする場合は、先ほどの「5W1H」を参考に最低限の文章にしておきましょう!
介護現場の事故を防止する方法として、介護現場のヒヤリハット事例を活用したリスクマネジメントがあります。リスクマネジメントは、介護現場のリスクを把握し、「組織的に管理する」ことで事故を未然に防ぐことを目的とした活動です。
リスクマネジメントでは、現場のスタッフが報告したヒヤリハットを集約し、その原因を分析した上で対策や方針を定めていきます。その上で業務マニアルの整理や職員研修などを実施していきます。
介護現場ではご利用者様「安心・安全」を確保することが大前提にありますが、リスクマネジメントに取り組むことで職員を守ることにも繋がります!その手順を簡単にご紹介します。
介リスクマネジメントの重要な取り組み方について知りたい方は以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひご一読ください。
▶︎介護現場のリスクマネジメント・事故防止【研修会資料まとめ】
今回は、介護現場の事故を防ぐヒヤリハット事例やヒヤリハット報告書の書き方、組織として取り組むためのリスクマネジメントの手順についてご紹介しました。
介護現場では、一瞬「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりする場面はたびたびあるのではないでしょうか? 事故にならなかったから「まあいいか」としておくと今後同じようなケースがあった場合に事故を引き起こす可能性が高くなります。
これらを徹底して行うことが重要です。
介護現場ではご利用者様「安心・安全」を確保することが大前提にあります。その1つとして「ヒヤリハット」と「リスクマネジメント」に取り組んでいきましょう!
現場のスタッフの方も、介護現場で起こるヒヤリハットをシュミレーションすることで、どんな時も落ち着いて仕事がデキる人を目指していきましょう!
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