誰でもわかる!通所介護の生活機能向上連携加算とは【2024年改定対応】

介護保険法

その他の加算

更新日:2024/11/28

【令和6年報酬改定対応】生活機能向上連携加算とは、デイサービスの職員と外部のリハビリテーション専門職が連携してアセスメントを行い、計画書を作成することで算定できる加算のことです。デイサービスや特養、グループホームなどさまざまな形態の介護施設で算定可能となりました。この記事では算定要件や単位数など生活機能向上連携加算の基本的な情報をお伝えします。

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生活機能向上連携加算とは

生活機能向上連携加算とは

生活機能向上連携加算とは、通所介護事業所の職員と外部のリハビリテーション専門職が連携して、機能訓練のマネジメントをすることを評価するものです。令和3年度の介護報酬改定では「生活機能向上連携加算(Ⅰ)」が新設されたほか、これまでの「生活機能向上連携加算」が「生活機能向上連携加算(Ⅱ)」に名称変更されました。

この記事では、生活機能向上連携加算について解説していきます。

生活機能向上連携加算の目的

生活機能向上連携加算の目的は、デイサービスの機能訓練にリハビリ専門職が介入することで、利用者の自立支援・重度化防止に資する介護の推進を図ることです。

また、デイサービスで算定することができる個別機能訓練加算において、「機能訓練指導員を配置することが難しい」という現場の意見があったため、機能訓練指導員の配置が難しいデイサービスでも、算定しやすいように改定されています。

対象になる介護施設の種類

これまでデイサービスで行っていた個別機能訓練加算では、機能訓練指導員不足が課題となっていました。そこで、自立支援や重度化防止のために機能訓練に注力できるよう、平成30年度の介護報酬改定によって対象施設が追加されています。

生活機能向上連携加算を算定できる介護保険サービスは次の通りです。

  • 訪問介護
  • 通所介護・地域密着型通所介護(デイサービス)
  • 認知症対応型通所介護(デイサービス)
  • 短期入所生活介護(ショートステイ)
  • 特定施設入居者生活介護・地域密着型特定施設入居者生活介護(有料老人ホームやケアハウスなど)
  • 介護老人福祉施設・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護(特別養護老人ホーム)
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

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通所介護における生活機能向上連携加算の算定要件・単位数

ここでは、通所介護における生活機能向上連携加算の算定要件について詳しく解説しています。

生活機能向上連携加算(Ⅰ)の算定要件

単位数 100単位/月※3カ月に1回を限度 ※(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定不可
対象 要支援、要介護
算定要件 ・訪問リハ、通所リハ、リハを行う医療機関の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師が加算を算定する事業所に訪問し、事業所の職員と共同でアセスメントを行い、個別機能訓練計画を作成すること
・理学療法士等は、機能訓練指導員等と共同で、3月ごとに1回以上、個別機能訓練の進捗状況等について評価した上で、機能訓練指導員等が利用者又はその家族に対して個別機能訓練計画の内容(評価を含む。)や進捗状況等を説明すること
・機能訓練指導員等は、各月における評価内容や目標の達成度合いについて、利用者又はその家族及び理学療法士等に報告・相談し、理学療法士等から必要な助言を得た上で、必要に応じて当該利用者又はその家族の意向を確認の上、当該利用者のADLやIADLの改善状況を踏まえた目標の見直しや訓練内容の変更など適切な対応を行うこと
・機能訓練に関する記録(実施時間、訓練内容、担当者等)は、利用者ごとに保管され、常に当該事業所の機能訓練指導員等により閲覧が可能であるようにすること

生活機能向上連携加算(Ⅱ)の算定要件

単位数 200単位/月※個別機能訓練加算算定の場合、100単位/月
対象 要支援、要介護
算定要件 ・指定訪問リハビリテーション事業所、指定通所リハビリテーション事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設(病院にあっては、許可病床数が200床未満のもの又は当該病院を中心とした半径4キロメートル以内に診療所が存在しないものに限る。)の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士又は医師(当加算において「理学療法士等」という。)が、当該指定通所介護事業所を訪問し、当該事業所の機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員その他の職種の者(当加算において「機能訓練指導員等」という。)と共同して、利用者の身体の状況等の評価及び個別機能訓練計画の作成を行っている。
・個別機能訓練計画の作成にあたっては、理学療法士等が、機能訓練指導員等に対し、日常生活上の留意点、介護の工夫等に対する助言を行っている。
・個別機能訓練計画に、利用者ごとにその目標、実施時間、実施方法等の内容を記載している。目標については、利用者又はその家族の意向及び当該利用者を担当する介護支援専門員の意見を踏まえ作成することとし、当該利用者の意欲の向上につながるよう、段階的な目標を設定するなど可能な限り具体的かつ分かりやすい目標としている。個別機能訓練計画に基づき、利用者の身体機能又は生活機能の向上を目的とする機能訓練の項目を準備し、機能訓練指導員等が利用者の心身の状況に応じて計画的に機能訓練を適切に提供している。
・機能訓練指導員等は、各月における評価内容や目標の達成度合いについて、利用者又はその家族及び理学療法士等に報告・相談し、理学療法士等から必要な助言を得た上で、必要に応じて当該利用者又はその家族の意向を確認の上、当該利用者のADLやIADLの改善状況を踏まえた目標の見直しや訓練内容の変更など適切な対応を行っている。理学療法士等は、3月ごとに1回以上指定通所介護事業所を訪問し、機能訓練指導員等と共同で個別機能訓練の進捗状況等について評価した上で、機能訓練指導員等が、利用者又はその家族に対して個別機能訓練計画の内容(評価を含む。)や進捗状況等を説明し記録するとともに、必要に応じて訓練内容の見直し等を行っている。
・機能訓練に関する記録(実施時間、訓練内容、担当者等)は、利用者ごとに保管され、常に当該事業所の機能訓練指導員等により閲覧が可能であるようにしている。

その他介護施設の生活機能向上連携加算の算定要件・単位数

通所介護だけでなく、短期入所系・居住系・施設サービスにおいても、ICTの活用などにより、外部のリハビリテーション専門職などと連携し、助言した場合について評価する区分として「生活機能向上連携加算(Ⅰ)」が新設されています。

また、訪問系、多機能系サービスの(Ⅱ)の区分では、カンファレンスを実施することで要件を満たすことが明確化されました。

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 
・訪問リハビリテーション事業所、通所リハビリテーション事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士等が、ICTの活用等により利用者のADL及びIADLに関する状況について把握して助言を行い、助言に基づいてサービス提供責任者が行った生活機能アセスメント
・生活機能の向上を目的とした訪問介護計画の作成及び計画に基づくサービス提供

生活機能向上連携加算(Ⅱ) 
・訪問リハビリテーション事業所、通所リハビリテーション事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士等とサービス提供責任者が、利用者の居宅を訪問する際にサービス提供責任者が同行する又は理学療法士等及びサービス提供責任者が利用者の居宅を訪問した後に共同してカンファレンスを行い、共同して行った生活機能アセスメント
・生活機能の向上を目的とした個別サービス計画の作成及び計画に基づくサービス提供

介護事業所種別ごとの単位数は以下の通りです。

グループホーム

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月

訪問介護

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月(個別機能訓練加算を算定している場合100単位/月)

ショートステイ

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月(個別機能訓練加算を算定している場合100単位/月)

介護福祉施設(特別養護老人ホーム含む)

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月(個別機能訓練加算を算定している場合100単位/月)

小規模多機能型居宅介護

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月
生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月

ICT活用で算定可能な生活機能向上連携加算(Ⅰ)

令和3年度の介護報酬改定により、生活機能向上連携加算(Ⅰ)はICTを活用できるようになりました。ただし、ICTを活用するにはデジタルデバイスやインターネットの環境整備や基本知識の習得が必要です。施設によってはすぐに活用できない場合もあるので、余裕を持って準備しましょう。

<具体的なICT活用方法>

・ビデオ通話
ビデオ通話によって、当該利用者と介護事業所のサービス提供責任者、外部の理学療法士などがリアルタイムでコミュニケーションを取る方法です。ビデオ通話を用いることで外部の理学療法士などが利用者のADLやIADLの状況を把握できます。ビデオ通話は通信時間の調整を行い、利用者の自宅(生活の場・介護現場)にて実施します。

・動画の共有
訪問介護事業所のサービス提供責任者が、利用者の自宅(生活の場・介護現場)の環境状況や一連の動作などがわかる動画を撮影し、理学療法士などと共有する方法です。

<ICT活用時の注意点>

ICT活用時は、セキュリティ面への配慮が必要です。情報を安全に管理するには、一般社団法人保健 医療福祉情報安全管理適合性評価協会(HISPRO)が公表している「医療情報連携において、SNS を利用する際に気を付けるべき事項」を参考に適切な対策を講じる必要があります。

また、電子カルテなどを含む医療情報システムと共通のネットワーク上の端末を利用して行う場合には、厚生労働省 「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第5版)」(平成 29 年5月)に 対応している必要があるので注意しましょう。

個別機能訓練加算と生活機能向上連携加算の違い

個別機能訓練加算とは機能訓練指導員を配置し、利用者ごとに個別機能訓練計画書を作成したうえで計画に基づいた機能訓練を実施し、効果や実施方法を評価することで算定できる加算です。

一方、生活機能向上連携加算は医療提供施設の医師や理学療法士などと連携して、機能訓練の評価と実施と評価を行います。

どちらも機能訓練という点では同じですが、個別機能訓練加算は機能訓練指導員を配置する必要があり、事業所の事情によっては人員配置が難しく、加算できない場合もあります。それに対し、生活機能向上連携加算は医師や理学療法士と連携することで算定できる加算ですので、新たな人員配置の必要はありません。

医師や理学療法士と連携する体制を整える必要はありますが、新たな人員配置が難しい事業所にとっては、大きなメリットがある加算と言えるでしょう。

個別機能訓練加算については、以下の記事で詳しく解説しています。

個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロの算定要件【2021年介護報酬改定】

個別機能訓練加算と生活機能向上加算の併算ができないケース

個別機能訓練加算を算定している場合、生活機能向上連携加算(Ⅰ)は算定できず、(Ⅱ)は月100単位を加算できます。ただし、生活機能向上連携加算(Ⅰ)(Ⅱ)の併算定はできません。個別機能訓練加算を算定していると算定単位数が少なくなる場合もあるため、注意が必要です。

生活機能向上連携加算の計画書と記入例

生活機能向上連携加算を算定するには、計画書を作成する必要があります。生活機能向上連携加算の計画書の様式は、個別機能訓練加算の計画書と同様です。個別機能訓練計画には、利用者ごとにその目標、実施時間、実施方法などの内容を記載しておきます。

機能訓練指導員は、各月の評価内容や目標達成の度合いを利用者や家族、リハビリの専門職員に報告・相談を行い、利用者や家族の意向を確認します。それと同時にリハビリの専門職員から助言を得ながら適切な計画を立てていかなければなりません。

また、機能訓練に関する記録は利用者ごとに保管し、機能訓練指導員などが常に閲覧できるようにする必要があります。

生活機能向上連携加算の算定状況

厚生労働省の「介護サービスにおける機能訓練の状況等に係る調査研究事業」の結果によると、生活機能向上連携加算の算定割合は、2019年10月時点で3.1%という低い算定率となっています。

参考:介護サービスにおける機能訓練の状況等 に係る調査研究一式 (結果概要)(案)

生活機能向上連携加算が算定できない理由

生活機能向上連携加算が算定できない理由は次の通りです。

  • 外部連携が難しい
  • 連携先に報酬がないので依頼しづらい
  • 助言を受けられるのが医療機関のみに限られている
  • 毎月助言してもらう必要がある

これまで機能訓練指導員の配置が難しく個別機能訓練加算を算定できなかったデイサービスも、外部のリハビリ専門職と連携することで算定できるようになりましたが、連携先の医療機関の確保が難しいという課題も残っています。

令和3年度介護報酬改定によって、生活機能向上連携加算(Ⅰ)では新たにICT活用による加算が認められたため、算定率の向上が期待されます。

参照:平成30年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査 (令和2年度調査)

通所介護の生活機能向上連携加算に関するQ&A

(問35)指定通所介護事業所は、生活機能向上連携加算に係る業務について指定訪問リハビリテーション事業所、指定通所リハビリテーション事業所又は医療提供施設と委託契約を締結し、業務に必要な費用を指定訪問リハビリテーション事業所等に支払うことになると考えてよいか。
(答)貴見のとおりである。なお、委託料についてはそれぞれの合議により適切に設定する必要 がある。

引用:平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.1)(平成30年3月23日)

(問36)生活機能向上連携加算は、同一法人の指定訪問リハビリテーション事業所若しくは指定通所リハビリテーション事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設(原則として許可病床数200床未満のものに限る。)と連携する場合も算定できるものと考えてよいか。
(答)貴見のとおりである。なお、連携先について、地域包括ケアシステムの推進に向けた在宅医療の主たる担い手として想定されている200床未満の医療提供施設に原則として限っている趣旨や、リハビリテーション専門職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)の有効活用、地域との連携の促進の観点から、別法人からの連携の求めがあった場合には、積極的に応じるべきである。

引用:平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.1)(平成30年3月23日)

専門家によるリハビリ作りが利用者のメリットに

生活機能向上連携加算には、リハビリの専門的視点を踏まえた、質の高い個別機能訓練計画を作成できるというメリットがあります。

また、機能訓練指導員の配置が難しい事業所でも算定できるため、事業所にとってもメリットの大きい加算と言えるでしょう。

外部機関との連携をとるのは簡単ではありませんが、より良い機能訓練を実施するために、生活機能向上連携加算を上手に活用するのがおすすめです。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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