要介護認定とは?8段階の認定基準と調査項目の判断基準

介護保険法

基本報酬

更新日:2024/11/05

要介護認定では、介護保険サービスの利用に向けて各市町村からの調査などを受けた方が、現状の心身機能や生活能力に応じて自立、要支援1・2、要介護1〜5の8段階の区分で判定されます。今回は、認定調査票や主治医意見書の様式などを交え、判定基準や認定調査の手順、要介護区分について詳しく説明します。

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要介護認定とは

介護保険制度では、疾病による後遺症や認知症などにより常時介護を必要とする状態(要介護状態)、身支度や家事などの日常生活に支援が必要な場合(要支援状態)に介護保険サービスを受けることができます。

要介護認定とは、介護保険サービスを利用する場合に必要な認定を市町村から受けることです。

内容としては、要介護状態や要支援状態に該当するかどうか、要介護状態であればどの程度の介護が必要かを客観的に判定します。

要介護認定の区分は自立(非該当) から要支援1・2と要介護1〜5まで8つの区分に分けられており、単純には決まりません。

区分は、本人の生活能力や認知機能などを聞き取り調査と主治医意見書から総合的に判断して認定されます。

要介護認定は介護サービスの給付額にも結びつくことから、その判定基準は全国一律に定められています。

参考:【介護保険制度における要介護認定の仕組み】 厚生労働省

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介護保険の要介護認定の区分

要介護認定区分は「要支援1・2」と「要介護1~5」の8区分に分かれています。

要介護認定を受けることで、身体や精神の状態や生活能力に応じてそのいずれかに判定されることになります。

以下にそれぞれがどのような状態にあるか「自立」「要支援1・2」「要介護1〜5」の3つの項目に分けて説明しますので、ご参考ください。

【自立(非該当】

自立の状態とは一人で身辺動作が行え、介護や支援を必要としていない状態です。この段階では介護保険サービスは非該当であり、介護サービスを利用するにあたっても費用は全額自己負担となります。

経済的な面だけでなく施設や事業所の受け入れも異なるため、利用できる介護サービスには限りがあります。

【要支援1・2】

要支援は要支援1・2の2段階に分けられます。

要支援の状態とは、日常生活はご自身で行えるが、多少の支援が必要な状態です。たとえば、入浴は一人でできるが、浴室の掃除は行えず手伝いが必要といった状態などが挙げられるでしょう。

要支援では、状態の悪化を防ぐために生活機能の維持向上を目的とする「介護予防サービス」が利用できます。

この段階では要介護状態へと移行しないという目標のみでなく、生活機能を改善し、再度自立した生活を営むことを目指すケースも少なくありません。

【要介護1〜5】

要介護は1~5の5段階に分けられます。

要介護とは、日常生活上の基本的動作においても自身で行うことが難しく、何らかの介助を要す状態です。

日常生活のさまざまな側面での支援が必要となり、介護者の負担も多くなることが推察されるでしょう。介護者や家族の負担を軽減する為にも介護サービスを上手に活用することが望ましいとされています。

要介護区分は段階により心身機能や生活能力の状態が異なるため、提供される介護サービスの種類は多岐に渡ります。

要介護認定の判定の流れ 

要介護認定の判定を行うには、介護者(もしくは代行者)が各市町村の窓口へ介護認定の申請を行わなければなりません。

市町村へ介護認定の申し込みが終わると「市町村担当者による訪問調査」と「主治医の意見書の作成」が行われ、一次判定・二次判定を経て要介護度が判定されます。

以下に、それぞれの内容について説明しますのでご参考ください。

訪問調査

新規の要介護認定に係る認定調査については、市町村職員もしくは業務受託法人が訪問調査を行うことになります。調査の内容から、認定調査員は保健・医療・福祉に関しての専門的な知識を有している者が一般的に任命されます。

訪問調査は、一般的には「目に見える」「確認し得る」といった事実に基づいて、聞き取り方式で行われます。認定調査員は調査対象者本人と介護者の双方から聞き取りを行うように努めなければなりません。

調査内容は公平公正で客観的かつ正確に行うため全国共通となっており、原則として1名の調査対象者につき1名の認定調査員が1回で調査を終了することになっています。

訪問調査で確認する項目は以下の74項目となっていますのでご参考ください。

聞き取り調査の項目(74項目)

1 身体機能・起居動作 2 生活機能 3 認知機能
1-1 麻痺(5) 2-1 移乗 3-1 意思の伝達
1-2 拘縮(4) 2-2 移動 3-2 毎日の日課を理解
1-3 寝返り 2-3 えん下 3-3 生年月日をいう
1-4 起き上がり 2-4 食事摂取 3-4 短期記憶
1-5 座位保持 2-5 排尿 3-5 自分の名前をいう
1-6 両足での立位 2-6 排便 3-6 今の季節を理解
1-7 歩行 2-7 口腔清潔 3-7 場所の理解
1-8 立ち上がり 2-8 洗顔 3-8 徘徊
1-9 片足での立位 2-9 整髪 3-9 外出して戻れない
1-10 洗身 2-10 上衣の着脱  
1-11 つめ切り 2-11 ズボン等の着脱  
1-12 視力 2-12 外出頻度  
1-13 聴力    
4 精神・行動障害 5 社会生活への適応 6 その他
4-1 被害的 5-1 薬の内服 特別な医療について(12)
4-2 作話 5-2 金銭の管理  
4-3 感情が不安定 5-3 日常の意思決定  
4-4 昼夜逆転 5-4 集団の不適応  
4-5 同じ話をする 5-5 買い物  
4-6 大声を出す 5-6 簡単な調理  
4-7 介護に抵抗    
4-8 落ち着きなし    
4-9 一人で出たがる    
4-10 収集癖    
4-11 物や衣類を壊す    
4-12 ひどい物忘れ    
4-13 独り言・独り笑い    
4-14 自分勝手に行動する    
4-15 話がまとまらない    

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主治医意見書の作成

要介護認定の申請を受けた市町村は、申請者の「身体上又は精神上の障害(生活機能低下)の原因である疾病又は負傷の状況等」について、主治医から意見を求めることになっています。

原則として、申請者にかかりつけ医がいる場合、主治医が意見書を作成します。

審査判定に用いられる資料において、長期間にわたり医学的管理を行なっている主治医の意見書の役割は重要です。

一方、訪問調査の調査項目と主治医意見書の記載内容とでは選択基準が異なることもあり、類似の項目であっても両者の結果が一致しないケースも少なくありません。

両者の結果が一致しない場合、要介護認定に影響を与えることもあるでしょう。しかし、主治医意見書と訪問調査での選択根拠が異なることにより、申請者の状況を多角的に捉えることができるといった利点もあります。

一次判定 認定調査員による調査票を元にコンピューターで算出

出典:厚生労働省 認定調査票(概況調査)

認定調査票に基づく聞き取り調査

市区町村の担当者や認定調査員による「聞き取り調査」や「主治医意見書」を基に、コンピューターが介護にかかると想定される時間(要介護認定等基準時間)を客観的に推計して算出、7つのレベルに分類します。

要介護認定の基準とは

要介護認定等基準時間の分類

直接生活介助入浴、排せつ、食事等の介護
間接生活介助選択、掃除等の家事援助等
問題行動関連行為徘徊に対する探索、不潔な行為に対する後始末等
機能訓練関連行為歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練
医療関連行為輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助

要介護認定等基準時間の分類

要支援上記5分野の要介護認定等基準時間が 25分以上 32分未満またはこれに相当する状態
要介護1上記5分野の要介護認定等基準時間が 32分以上 50分未満またはこれに相当する状態
要介護2上記5分野の要介護認定等基準時間が 50分以上 70分未満またはこれに相当する状態
要介護3上記5分野の要介護認定等基準時間が 70分以上 90分未満またはこれに相当する状態
要介護4上記5分野の要介護認定等基準時間が 90分 110分未満またはこれに相当する状態
要介護5上記5分野の要介護認定等基準時間が110分以上またはこれに相当する状態

要介護の認定では、主に「要介護認定等基準時間(申請者を介護する際の手間や労力を時間に換算した指標)」を基に介護度が判定されます。

厚生労働省による要介護認定の基本設計では、申請者の状態を把握するために調査項目では「能力」「介助の方法」「障害や現象(行動)の有無」といった3つの評価軸が設けられています。

一次判定ソフトにおいては、申請者の「能力」に関わる情報や「介助の方法」及び「障害や現象(行動)の有無」といった状態に係る調査結果情報を入力することで「行為区分毎の時間」と「要介護認定等基準時間」が算出される設計になっています。

複数の疾患を抱える高齢者も多くいますが、要介護認定と病気の重さが比例するとは限りません。

身体機能が高く身の回り動作がおおむね自身で行える状態にあっても、認知症の症状による徘徊や異常行動により常に目が離せないような場合には介護度が重くなることもあります。

参考:【要介護認定 認定調査員テキスト2009 改訂版】(厚生労働省)

1分間タイムスタディ・データとは

要介護度判定は「どれ位、介護サービスを行う必要があるか」を判断するものです。

これを正確に行うために介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等の施設に入所・入院されている3,500人の高齢者について、48時間にわたり、どのような介護サービス(お世話)がどれ位の時間にわたって行われたかを調査した結果から導き出されたデータを「1分間タイムスタディ・データ」と呼んでいます。

二次判定 特記事項を元に介護の手間を審議

二次判定は、コンピュータによって判定された一次判定の結果をもとに介護認定審査会が判定を行います。

介助が不足している場合や介助の質に問題ある場合、それに関する情報が主治医意見書や特記事項に記載されていれば二次判定審査会で詳細に調査し要介護度が判定されます。

参考:【要介護認定はどのように行われるか】(厚生労働省)

介護度認定区分の基準となる状態の目安

要介護認定が下りた場合は、7段階のうちいずれかの区分に分類されます。区分ごとに症状や利用できる介護保険サービスの内容、費用面も異なります。

要介護認定に関する研究や要介護認定結果の傾向を踏まえて分類されていますが、それぞれの分類の違いについては大まかな状態像でしか定められていません。

以下に各分類の違いを解説しますのでご参考ください。

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要支援1の基準
日常生活の基本的な動作をほとんど自分で行えるが、身の回りのことに対して一部支援が必要な状態です。
たとえば、トイレや入浴はご自身で行えるが、調理や掃除など一部の家事動作に手助けを要する状態などが挙げられます。

要支援2の基準
日常生活の基本的な動作において、状況によって安全に行うための配慮や手伝いを必要とする状態です。
たとえば、椅子からの立ち上がりや歩行などに不安定さがあるため入浴時の浴槽の出入りに配慮を要する状態などが挙げられます。
また、日常生活には大きな支障がない程度の物忘れ症状も基準として認められます。

要介護1の基準
日常生活の身辺動作に若干の介助を要する状態です。たとえば、座った状態からの立ち上がり時や歩行などに不安定さがあり、入浴や排泄に一部の介助が必要な状態などが挙げられます。
家事や趣味活動(IADL)の能力低下が見受けられ、認知機能面では物忘れなどがあり理解力の低下をきたしているケースも少なくありません。

要介護2の基準
要介護1より介護を要す場面が多い状態です。具体的には立ち上がりだけでなく、起き上がり、歩行の一部もしくはすべてにおいて介助が必要となります。
排泄や入浴、着替えなどの身の回りの動作に加え、料理や洗濯などのIADLにも部分的な介助を要します。また、認知機能の低下があり、記憶が曖昧であり他者との円滑な会話が難しくなるケースもあるでしょう。

要介護3の基準
立ち上がりや歩行を自力では行うことができず、ADL及びIADLが著しく低下している状態です。
日常生活では、全般的に介助が必要になります。認知症の症状も認められ、自分の生年月日や名前が言えなくなるなど日常生活に支障が生じます。

要介護4の基準
著しく身体能力の低下があり、排泄や入浴、着替えなどの日常生活動作全般において介助なしでは行うことができない状態です。
理解力の低下も顕著に見られ、意思疎通が取れないことも頻繁にある状態も認められます。

要介護5の基準
基本的な動作が極めて困難となり、全ての日常生活動作に全面的な介助が必要となります。いわゆる寝たきりの状態で、言葉や物の理解も著しく低下し意思疎通が困難な状態です。

参考:【介護保険制度における要介護認定の仕組み】(厚生労働省)

要介護認定の認定期間・有効期間 

介護保険法では申請する区分によって、設定する有効期間が定められています。
要介護認定は申請区分が以下の3つに分けられています。

①新規申請
初めて申請をする場合を指します。新規申請の場合の有効期間は原則として6ヵ月です。
新規申請では病状が落ち着かない時期に申請をされる方も少なくなく、病状が落ち着いた段階で再度介護の必要度を確認するために有効期間が短く設定されています。
ただし、市町村が認める場合は3〜12ヵ月の間で、月を単位として区市町村が定める期間とされています。

②区分変更申請
介護保険の要介護認定をすでに受けている方が状態の変化に応じて区分変更申請をした場合を指します。区分変更申請の場合の有効期間の上限は12ヵ月となります。
ご注意いただきたい点は、更新申請した方が更新後の有効期間が24ヵ月であったとしても、有効期間の途中で状態変化等の理由で区分変更申請した場合です。
区分変更申請後の要介護度が変化すると、有効期間は上限12ヵ月と短くなります。

③更新申請
有効期間満了後も要介護状態が続くと見込まれる場合に引き続き認定を受けることを指します。更新申請の場合の有効期間は原則として12ヵ月です。
ただし、市区町村が認める場合は3〜最大48ヵ月の間で月を単位として市区町村が定める期間とされています。

介護保険の要介護認定の申請方法

要介護認定は、どのように申請すれば良いのでしょうか?申請方法の流れをご紹介します。

【申請する場所】
本人が住んでいる市区町村の窓口で申請します。

【申請する人】
基本的に申請は本人、またはその家族が行います。しかしながら、家庭内の事業で本人または家族が申請に行くのが難しい場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者に代行してもらうこともできます。

 【申請で準備するもの】
印鑑
要介護(要支援)認定申請書
介護保険被保険者証(65歳以上の場合)
健康保険被保険者証(40歳~64歳の場合)
主治医の意見書

※主治医に報告すれば、市区町村から主治医に意見書の作成を依頼してくれます。
※市区町村によっては「マイナンバーカード」が必要ですので、役所の情報を確認してください。

【訪問調査】
各市区町村から一次判定に必要な訪問調査の日程連絡があり、希望の日時を決めます。
申請者が住んでいる場所へ担当者が出向き、本人及び介護者への聞き取り調査を行います。

【一次判定】
各市区町村の担当者または委託された介護支援専門員が訪問し、聞き取り調査を実施した後、市町村からの依頼によりかかりつけ医が主治医意見書を作成します。
聞き取り調査の結果と主治医意見書をもとにソフトにて判定されます。

【二次判定】
必要書類・一次判定内容・主治医の意見書を参考に、介護認定審査会が要介護認定区分を判定します。

【認定結果の通知】
申請から約30日以内に、認定結果と介護保険被保険者証が郵送されます。

介護保険の要介護認定の更新方法

要介護認定の更新をする場合は、有効期間が満了する日の「60日前〜満了日」までに行います。また、認定有効期間中に、状態が良くなった、悪くなったなど介護状態が明らかに変わった場合も随時、介護認定の更新手続きをすることができます。(区分変更申請)

要介護認定の更新の手順は、要介護認定を申請する時とほとんど同じです。

異なる部分は、最初に要介護(要支援)認定更新申請書を提出するという点のみです。その後は、初回の要介護認定申請と同様なので留意する点はありません。

一般的には介護保険の有効期限の約60日前に市町村から案内が届きますが、更新手続きには時間がかかるため、有効期限を確認し、遅れないように手続きを済ませましょう。

要介護認定のまとめ

要介護認定の申請から認定までの流れをまとめてご紹介します。

【要介護認定までの流れ】

  1. 市区町村への書類提出
    要介護(要支援)認定申請書
    65歳以上の場合は、介護保険被保険者証
    40歳~64歳の場合は、健康保険被保険者証
  1. 介護保険資格者証の受け取り
    要介護申請を行なった方が市町村から認定結果が通知されるまでの間に、暫定的な被保険者証として受け渡されます。
  1. 訪問調査の日程調整
    各市区町村から一次判定に必要な訪問調査の日程連絡があり、訪問調査を行う希望の日時を決めます。
  1. 一次判定
    各市区町村の担当者または委託された介護支援専門員が訪問し、聞き取り調査を実施します。
    市町村からの依頼によりかかりつけ医が主治医意見書を作成します。聞き取り調査の結果と主治医意見書をもとにソフトにて判定されます。
  1. 二次判定
    必要書類・一次判定内容・主治医の意見書を参考に、介護認定審査会が要介護認定区分を判定します。
  1. 認定結果の通知
    申請から約30日以内に、認定結果と介護保険被保険者証が郵送されます。

要介護認定は、介護保険制度において高齢者や身体的・精神的に支援が必要な人々に介護サービスを提供するための重要なプロセスです。

全国一律に定められている認定を受けることで、その方に必要な介護の度合いが評価され、介護保険サービスを受ける資格が付与されます。

2025年の超高齢化に向かって要介護認定者はますます増加していくことが予想されます。要介護認定希望者だけでなく、医療・介護に携わるスタッフもこの申請方法は把握しておきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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