介護職員等処遇改善加算のポイント【2024年介護報酬改定で新設】

介護保険法

処遇改善加算

更新日:2025/02/25

【令和6年報酬改定対応】介護職員処遇改善加算とは、利用者に介護サービスを提供する介護職員の処遇改善を図るため、賃金改善や職場環境改善を目的に創設された加算です。令和6年の報酬改定によってこれまでの複数の処遇改善加算の制度が「介護職員等処遇改善加算」という名称で一本化されました。ここでは、最新の報酬改定に合わせた算定要件や加算額などを解説します。

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介護職員等処遇改善加算とは

令和6年度介護報酬改定にて「介護職員等処遇改善加算」が新設されました。

介護職員等処遇改善加算は、介護職員等の処遇改善を目的として、介護報酬に上乗せされる加算の一つです。令和6(2024)年度の介護報酬改定において、新たに創設されました。これまでの「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」の3つの加算が統合され、一本化された形となっています。

この加算は、介護職員をはじめとする職員の給与や労働環境の向上を目的としており、事業者が適切な配分計画を策定し、賃金改善に活用することが求められます。

令和6年4月から施行されましたが、円滑な移行のために一定の経過措置期間が設けられています。この期間中は、従来の加算も一定条件のもとで継続できるようになっています。

介護職員等処遇改善加算の目的

介護職員等処遇改善加算は、介護業界で働く職員の賃金向上や職場環境の改善を目的とした制度です。この加算により、介護職員の処遇を安定的に改善し、働きやすい環境づくりを支援することが期待されています。

対象外のサービス

介護職員等処遇改善加算の対象外となるサービスは以下のとおりです。

  • (介護予防)訪問看護
  • (介護予防)訪問リハビリテーション
  • (介護予防)福祉用具貸与
  • 特定(介護予防)福祉用具販売
  • (介護予防)居宅療養管理指導
  • 居宅介護支援
  • 介護予防支援

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これまでの処遇改善加算との変更点

令和6年度の介護報酬改定では、従来の処遇改善加算が一本化され、よりシンプルな制度に再編されました。これにより、事業所の手続き負担が軽減されるとともに、介護職員の処遇改善をさらに進めるための仕組みが整備されました。主な変更点は以下のとおりです。

加算の一本化

従来の「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つの加算が統合され、新たに「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。これにより、制度がシンプルになり、事業所の事務負担の軽減が期待されています。

加算率の引き上げ

新たな加算制度では、従来の3加算をすべて取得している場合よりも、さらに加算率が引き上げられています。例えば、訪問介護において新加算(Ⅰ)を取得する場合、現行の3加算の合計加算率22.4%に対し、新加算(Ⅰ)の加算率は24.5%となり、2.1%のプラスとなります。

配分ルール見直し

新たな加算では、職種ごとの具体的な配分割合が撤廃され、介護職員以外への配分も可能となりました。ただし、「介護職員への配分を基本とし、特に経験・技能のある介護職員に重点的に配分すること」が求められています。

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介護職員等処遇改善加算の単位数(通所介護)

出典:事業者向けリーフレット(厚生労働省)

新しい「介護職員等処遇改善加算」は、サービス類型ごとに加算率が決まっています。算定する単位数は、介護職員等処遇改善加算を除いた後の総報酬単位数に、加算率を掛けて算出されます。

通所介護・地域密着型通所介護の加算率は、新加算Ⅰ:9.2% 新加算Ⅱ:9.0% 新加算Ⅲ:8.0% 新加算Ⅳ:6.4%となっています。

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介護職員等処遇改善加算の算定要件

出典:事業者向けリーフレット(厚生労働省)

算定するために必要な3つの要件の詳細について解説します。

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キャリアパス要件

キャリアパス要件は、賃金体系や研修実施、昇給の仕組みなど、職員のキャリア設計を目的とした取組の要件です。

キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系)

以下の1.2.3.を満たすこと。
1. 介護職員の任用の際における職位、職責、職務内容等に応じた任用等の要件(介護職員の賃金に関するものを含む。)を定めていること。
2. 1.に掲げる職位、職責、職務内容等に応じた賃金体系(一時金等の臨時的に支払われるものを除く。)について定めていること。
3. 1.及び2.の内容について就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施等)

以下の1.2.を満たすこと。
1.介護職員の職務内容等を踏まえ、介護職員と意見を交換しながら、資質向上の目標及びa又はbに掲げる事項に関する具体的な計画を策定し、当該計画に係る研修の実施又は研修の機会を確保していること。
a.資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等(OJT、OFF-JT 等)を実施するとともに、介護職員の能力評価を行うこと。
b.資格取得のための支援(研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等)を実施すること。
2.1.について、全ての介護職員に周知していること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組み)

以下の1.2.を満たすこと。
1.介護職員について、経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けていること。具体的には、次のaからcまでのいずれかに該当する仕組みであること。
a.経験に応じて昇給する仕組み
「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組みであること。
b.資格等に応じて昇給する仕組み
介護福祉士等の資格の取得や実務者研修等の修了状況に応じて昇給する仕組みであること。ただし、別法人等で介護福祉士資格を取得した上で当該事業者や法人で就業する者についても昇給が図られる仕組みであることを要する。
c.一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
「実技試験」や「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組みであること。ただし、客観的な評価基準や昇給条件が明文化されていることを要する。
2.1.の内容について、就業規則等の明確な根拠規程を書面で整備し、全ての介護職員に周知していること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

キャリアパス要件Ⅳ(改善後の賃金額)

経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金の見込額(新加算等を算定し実施される賃金改善の見込額を含む。)が年額440万円以上であること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置)

サービス類型ごとに一定以上の介護福祉士等を配置していること。具体的には、新加算等を算定する事業所においてサービス提供体制強化加算ⅠまたはⅡを算定していること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

月額賃金改善要件

次に、賃金改善要件は、介護職員等処遇改善加算として算定した金額のうち従業員の賃金改善に充てなければならない金額・割合についての要件が定められています。

月額賃金改善要件Ⅰ

新加算Ⅳの加算額の2分の1以上を基本給又は決まって毎月支払われる手当で賃金改善に充てること。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

月額賃金改善要件Ⅱ

令和6年5月31日時点で現に旧処遇改善加算を算定しており、かつ、旧ベースアップ等加算を算定していない事業所が、令和8年3月31日までの間において、新規に介護職員等処遇改善加算(新加算)ⅠからⅣまでのいずれかを算定する場合
初めて新加算ⅠからⅣまでのいずれかを算定し、旧ベースアップ等加算相当の加算額が新たに増加する事業年度において、当該事業所が仮に旧ベースアップ等加算を算定する場合に見込まれる加算額の3分の2以上の基本給等の引上げを新規に実施すること。
その際、基本的には当該基本給等の引上げは、ベースアップにより行うこと。
※令和6年5月以前に旧3加算を算定していなかった事業所及び令和6年6月以降に開設された事業所が、新加算ⅠからⅣまでのいずれかを新規に算定する場合には、月額賃金改善要件Ⅱの適用を受けないこととされています。

引用:介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方 並びに事務処理手順及び様式例の提示について

職場環境等要件

最後に職場環境等要件は、介護職員が安心して働きやすい職場環境を整えて、長期的な人材確保を目指すための要件です。令和6年度中と令和7年度以降の要件に違いがあるので注意が必要です。

令和7年度以降

出典:介護職員の処遇改善

令和6年度中


区分
内容
入職促進に向けた取組 ●法人や事業所の経営理念やケア方針・人材育成方針、その実現のための施策・仕組みなどの明確化
●事業者の共同による採用・人事ローテーション・研修のための制度構築
●他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築
●職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施
資質の向上やキャリアアップに向けた支援 ●働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等
●研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動
●エルダー・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入
●上位者・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保
両立支援・多様な働き方の推進 等の充実、事業所内託児施設の整備
●職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備
●有給休暇が取得しやすい環境の整備
●業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実
腰痛を含む心身の健康管理 ●介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施
●短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施
●雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施
●事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備
生産性向上のための業務改善の取組 ●タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減
●高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化
●5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備
●業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減
やりがい・働きがいの醸成 ●ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善
●地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施
●利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供
●ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

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介護職員等処遇改善加算を取得するための手続きのステップ

ステップ①:計画書の作成

まず、介護職員等の処遇改善に関する具体的な計画を策定します。この計画には、賃金改善の内容や実施時期、対象となる職員の範囲などを明記します。計画書の作成にあたっては、厚生労働省や各自治体が提供する様式やガイドラインを参照すると良いでしょう。

ステップ②:職員への周知

作成した計画書の内容を、全ての職員に周知します。具体的には、社内掲示板への掲示や会議での説明、書面での配布などの方法があります。職員が計画の内容を正しく理解し、安心して業務に取り組めるようにすることが重要です。

ステップ③:計画書の提出

計画書を都道府県や市町村などの行政機関に提出します。提出期限や提出方法は自治体によって異なる場合があるため、事前に確認が必要です。通常、年度の開始前や指定された期日までに提出することが求められます。

ステップ④:計画の実施

承認された計画に基づき、賃金の引き上げや職場環境の改善など、具体的な処遇改善策を実施します。計画通りに施策を進めることで、職員のモチベーション向上や離職防止につながります。

ステップ⑤:実績報告書の提出

計画期間終了後、実施した処遇改善の内容や効果をまとめた実績報告書を作成し、所管の行政機関に提出します。この報告書は、計画が適切に実行されたことを証明する重要な書類となります。提出期限や様式は自治体によって異なるため、最新の情報を確認してください。

【トピック】介護職員に一時金5.4万円支給へ

政府は2024年度の補正予算で、介護職員1人あたり約5.4万円の一時金を支給する方針を発表しました。 この補助金は、処遇改善加算を取得している事業所・施設が対象で、賃上げや職場環境の改善、生産性向上の経費に充てることが可能です。 申請書類は処遇改善加算と一体化され、事務負担の軽減が図られます。 

参考:介護ニュースJoint

まとめ

2024年の介護報酬改定で新設された「介護職員等処遇改善加算」は、介護職員の賃金や職場環境の改善を目的に、複数の既存加算を統合した制度です。令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%の給与改善を目的にしており、以前の加算と比較すると職員に対して柔軟に配分することが可能になりました。また暫定期間として令和6度中は移行期間が設けられ、介護事業所が新制度に対応しやすいように配慮されています。介護職員の処遇改善を図るためにも、この記事を参考に加算算定に取り組んでみてはいかがでしょうか。

キャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件という3つの要件について詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件・月額賃金改善要件・職場環境等要件

厚生労働省から出されているQ&Aについて知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎介護職員等処遇改善加算に関するQ&A全まとめ【厚働省の資料から抜粋】

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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