【2021年の介護報酬改定】通所介護の生活機能向上連携加算の見直しについて

介護報酬改定

更新日:2024/03/13

生活機能向上連携加算は、外部の医療機関や理学療法士を始めとするリハビリテーション専門職と連携して、利用者の自立支援・重度化防止を目的とした設立されたものです。特に2021年度介護報酬改定のタイミングでは、ICTを活用して、外部の専門職が当該事業所に訪問せずとも利用者の評価・助言を行うことで評価できるような評価区分を新たに設けることになっています。本内容は2021年2月時点の厚生労働省の発表を元に作成しております。

2021年度の介護報酬改定の生活機能向上加算の見直しポイント

生活機能向上加算は、2018年の介護報酬改定で通所介護等にも適用範囲を拡大し、さらなる利用者の支援を目指したものでした。

ですが、厚生労働省が実施した「介護サービスにおける機能訓練の状況用にかかる調査研究一式」(集計年月:令和元年10月)によると、調査事業所の14万事業所のうち、同加算を実施しているのが全体の3.1%と低いものであることが判明しました。

ちなみに、通所介護事業所の4万事業所のうち、同加算を実施しているのは3.4%でした。

この算定率が低いことを受けて、厚生労働省では下記を軸として見直しを行うことを発表しています。

通所系サービス、短期入所系サービス、居住系サービス、施設サービスにおける生活機能向上連携加算について、訪問介護等における同加算と同様に、ICT の活用等により、外部のリハビリテーション専門職等が当該サービス事業所を訪問せずに、利用者の状態を適切に把握し助言した場合について評価する区分を新たに設ける。

引用:令和3年度介護報酬改定に関する審議報告(案) 社会保障審議会介護給付費分科会

単位数の変更点

通所介護の生活機能向上連携加算の単位数の変更点

<現行> 

生活機能向上連携加算 200単位/月

<改定後> 

生活機能向上連携加算(Ⅰ) 100単位/月(新設)

 →3ヶ月に1回を限度

生活機能向上連携加算(Ⅱ) 200単位/月

 →個別機能訓練加算を算定している場合は「100単位/月」

※(Ⅰ)と(Ⅱ)の併算定は負荷

算定要件の変更点

2021年の介護報酬改定で見直しが図られる通所介護の生活機能向上連携加算の算定要件をご説明します。

生活機能向上連携加算(Ⅰ)

今回新設される算定

  • 訪問・通所リハビリテーションを実施している事業所又はリハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士等や医師からの助言(アセスメント・カンファレンス)を受ける体制を構築し、助言を受けた上で、機能訓指導員等が生活機能の向上を目的とした個別機能訓練計画書を作成等すること
  • 理学療法士等や医師は通所リハビリテーション等のサービス提供の場又はICTを活用した動画等により、利用者の状態を把握した上で、助言を行うこと

生活機能向上連携加算(Ⅱ)

現行と同様の算定

  • 訪問・通所リハビリテーションの理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者宅を訪問して行う場合又は、リハビリテーションを実施している医療提供施設の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・医師が訪問して行う場合に算定

連携先については自治体が取りまとめてマッチングを行う予定ですが、(Ⅱ)ではICTの活用が認められておらず、事業所に訪問する必要があります。

※「医療提供施設」を病院とした場合、認可病床200床未満のもの又は当該病院を中有心とした半径4km以内に診療所が存在したものに限る

計画書作成や様式・届出について

既存の個別機能訓練加算と同様に「個別機能訓練計画書」を利用者ごとに作成が必要です。目標設定を行い、実施内容を記録します。

目標設定では、利用者やその家族の意向、ケアマネジャーの意見も踏まえて具体的に設定することが求められます。

現時点での生活機能向上連携加算の計画書作成や算定要件、厚生労働省のQAについては「初心者でもわかる生活機能向上連携加算」をご参照ください。

生活機能向上連携加算の課題

今回の見直しのポイントでもご説明したとおり、その算定率の低さが問題になっていましたが、なぜ算定率が低いのでしょうか?

ここでは、生活機能向上連携加算の算定を行っている事業所と行っていない事業所を対象に実施した「介護サービスにおける機能訓練の状況等に係る調査研究一式(結果概要)」の調査内容をご紹介したいと思います。

算定を行っていない理由

生活機能向上連携加算の非算定事業所(通所介護)に対して行った調査によると、算定を行っていない上位3つの理由がこちらです。

  1. 外部のリハ事業所等との連携が難しいため
  2. かかるコスト・手間に比べて単位数が割に合わないため
  3. 加算の算定に取り組む余裕がないため

このような理由を受けて、外部のリハ職や医療関係者等との連携がしやすいように、ICT活用を取り入れたものと思われます。

算定を行うメリットと実態

それでは、生活機能向上連携加算を取り組んでいる事業所はどのよなメリットがあると考えているのでしょうか?算定事業所と非算定事業所に対して行われた調査ご紹介してきまます。

まず、「生活機能向上連携加算の算定による利用者のメリット(通所介護)」に関する調査では、算定事業所と非算定事業所で「質の高い個別機能訓練計画が作成できているか」「ADLやIADL維持・向上につながっているか」という質問に対して、大きな差があることが分かりました。

また、外部との「連携による施設側のメリット」の調査では、算定を行っている事業所の4割以上が以下の点で効果を実感していると回答しており、介護サービスの質向上に寄与していると考えていることが分かりました。

  • 「機能訓練指導員のケアの質が向上した」
  • 「利用者の状態や希望に応じたケアの機会が増えた」
  • 「介護職員のケアの質が向上した」
  • 「事業所・施設が提供するケアの幅が広がった」 

次に、利用者側のメリットの調査としておこなった「リハ専門職等と連携し個別機能訓練計画等を作成したことによる利用者が享受したメリット」の結果では、以下のことが分かりました。(通所介護への調査より)

  • 「利用者の身体機能の維持・向上につながったこと」や「リハ専門職等が携わるため利用者・家族が安心したこと」と感じている事業所が多い
  • ただし、「利用者の生活上の活動や家庭や社会への参加につながったこと」や「利用者が希望した具体的な生活目標の達成に近づいたこと」については、効果を感じている事業所は少ない

このように、生活機能向上連携加算の算定を行っている事業所は、生活機能向上連携加算を行うことで介護サービスの質向上に寄与していると考えていることがわかりました。しかし、外部リハ職との連携や工数と見合わない単位数で実施を見送る事業所が多いのも事実です。

ですので、今回の介護報酬改定で変更になるICT活用により、どこまで実施難易度が下がるのかを見極める必要があります。

まとめ

今回新設される生活機能向上連携加算(Ⅰ)では、ICT(テレビ電話や動画など)を活用して、他事業所のリハ職や医療関係者等と連携しての実施が認められることになりました。

これにより、今まで対応できなかった事業所でも実施を検討できるようになったのではないでしょうか?

ただ、生活機能向上連携加算では、個別機能訓練計画を作成し、3月ごとに見直しを行う必要があります。これが難しい場合は、個別機能訓練加算の算定をご検討してもよいかもしれません。

個別機能訓練加算のメリットとして、機能訓練の実施者は「介護職員」でも可能である点が挙げられます。詳しくは、個別機能訓練加算の算定要件や実施方法についてをご覧ください。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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