介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
運営ノウハウ
経営
更新日:2024/08/01
デイサービスの経営を理想的に行うためには介護報酬改定動向を意識しつつ、売上や人件費率(労務費率)などの経営指標を意識して運営しなければなりません。そこで今回は、デイサービス経営のための基礎知識として、売上・利益などの収入における黒字運営の境目や平成30年介護報酬改定の動向、その他の経営指標についてまとめてご紹介します。今後のデイサービス経営の戦略および経営課題の参考になれば幸いです。
この記事の目次
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デイサービスの経営を安定的に行っていくためには、経営指標(人件費率や稼働率)を正しく判断し、経営戦略や経営改善を立てる必要があります。また、介護保険のもとで行う事業なので、介護報酬改定を意識して運営をしていく必要があります。
大きな理由は2つです。
1つ目は、通所介護事業所は国から認められた公共性の高いものであり、介護保険のもとで行われる事業なので、売上の上限が決まり、制度に大きく左右されてしまいます。
2つ目は、社会保障費の財政難の影響があり、平成30年度介護報酬改定では改定率+0.54%と基本報酬の引き上げはほとんどありません。
これらの状況を鑑み、まずはデイサービスについて改めて理解し、平成30年度介護報酬改定のまとめと経営状況について考えていきましょう。
デイサービスの経営は介護保険のもとで行われ、国から認められた介護保険サービスです。利用者様を日帰りで迎え(送迎車による送迎あり)食事や入浴などの日常生活上の介護や機能訓練などのサービスを行います。大小様々ではありますが全国に43,000事業所以上があり、理想的な経営を行っていくためにはブランディングを意識し、特色のあるデイサービスを運営していく必要があります。
また、デイサービスの理想的な経営においては、稼働率アップと利用者様一人当たりの収益性を高めるための加算の算定が必要です。
特に、2018年の介護報酬改定では「自立支援・重度化防止」を軸とした経営が求められるようになり、通常規模〜大規模通所介護事業所においては、サービス提供時間の見直しにより大幅な基本報酬の引き下げが行われました。
さらに、2021年の介護報酬改定に向けて、2020年11月現在の社会保障審議会では、「科学的介護の実現を目指し、CHASEなどのアウトカム評価による質の高い介護に対するインセンティブを拡充する」ことが議論されており、アウトカム評価を用いた介護サービスの質の向上の波が急激に押し寄せています。
これによりデイサービスは、リハビリを提供しただけで報酬がもらえる時代は終わり、リハビリの効果に対する報酬がもらえる時代に突入します。
だからこそ、効果的なリハビリを実現する仕組みを構築し、効果を出せるデイサービスとして実績をつくることが、これから重要になってきます。
デイサービスの経営を正しく見ていくために、平均稼働率(デイサービスの稼働率の平均が58.8%を示す)を横軸、人件費を縦軸にしたグラフを見てみましょう。
青丸が黒字施設で、オレンジ丸が赤字施設を示しています。
※バブルチャートの大きさは、サービス活動増減差額比率の数値(絶対値)を示す
こちらのデータでは、デイサービスの稼働率が全国平均の60%を下回ると赤字となるケースが多く、デイサービスを安定的に経営するためには稼働率アップが絶対条件であることがわかるのではないでしょうか。また、稼働率が平均以上のエリアは黒字施設が多いものの、赤字施設も一定数分布していることがわかります。この調査では図の左上「A群」が小規模事業所、右上「B群」が通常規模以上の比較的大きい施設として分けられており、事業所規模別で売上アップのためには以下の対策をとる必要があることを示しています。
デイサービスの売上アップをする場合は、10名定員などの小規模デイサービスや通常規模や大規模デイサービスによって重要度が異なります。
小規模デイサービスの場合 | ・提供時間を長くする・加算を算定する |
---|---|
通常規模〜大規模デイサービスの場合 | ・労働生産性を高め人員配置を適正化する※過剰な人員ではなく少数精鋭で利用者様の満足度を高めていくことが重要です |
売上アップをする方法に、デイサービスからの営業方法などもオススメです。
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デイサービスの経営を安定的に行っていくためには、経営指標を見ながら経営戦略を立てる必要があります。ここからは、デイサービス経営に重要なさまざまな経営指標についてご紹介していきます。
デイサービスの稼働率とは「事業所ごとに利用できる最大人数に対して何%利用されているか」を示すものであり、売上高に大きく影響します。デイサービスの稼働率の計算式は上記で示すように「1ヶ月の延利用者数÷利用定員数×1ヶ月の営業日数」となっており、利用率が低い場合は、地域のニーズ、営業体制、競合他社の把握が必要になります。
全国の通所介護(デイサービス)の稼働率の平均は68.6%
【事例】
定員40名の事業所で1月(営業日数25日)の利用者数が900名だった場合
稼働率=900/(25×40)=0.9
となり、稼働率90%の超優良施設であることがわかります。
参照:平成27年度老人デイサービスセンターの経営状況について
デイサービス(通所介護)の人件費率(人件費割合,労務費率)を見てみると、介護事業収益に対する人件費割合は平均55.8%となっています(介護事業経営実態調査、平成26年)が60%前後が最も良いとされています。
【計算方法】
スタッフの人件費×100/サービス活動収益(売上高)
デイサービス経営において、労働生産性は極めて重要な経営指標の一つです。というのも、従事者1人がどれだけの付加価値を生み出すかを見る指標であり、労働生産性が高ければ、各々の従事者が効率よく価値を生み出し、円滑な運営管理が行われているといえます。
労働生産性=付加価値額/労働投入量※付加価値額:営業利益+人件費+減価償却費 ※労働投入量:労働者の人数×時間※営業利益=「売上総利益」ー「販売費および一般管理費」※販売費=販売手数料、広告宣伝費など※一般管理費=人件費、減価償却費、租税公課、交際費、旅費交通費など※「減価償却費」は、将来に対してどれほどの設備投資を行っているかの目安 |
■なぜ労働生産性が重要なのか
人を採用すれば、一人当たりの業務負担が減りスタッフの労働量は減ります(それが下記で示す利用者一人当たりの人件費です)。しかし、長期的な視点で見てみると一人当たりの労働生産性は落ちているので、長期的に見るとスタッフの給与が上がりづらくなる要因になりかねません。少数精鋭という言葉の通り、配置基準を満たす人員かつ労働生産性を高める事業所こそ、経営的にもスタッフのためにも、利用者様のためにも良いサービスが展開できると期待しています。
通所介護の経営において平均要介護度は売上高にも影響するため、適切に把握する必要があります。要介護度の平均値の把握をしっかりと行うことで、適切な人員配置およびサービス内容の計画を行いましょう。他方、平均要介護度が高いということは、一人当たりの収益性が高くなる一方で、介助が必要な方も多くなるため、スタッフ配置も考慮しなければなりません。
【計算方法】
(要支援等の人数×0)+(要介護度1の人数×1)+ (要介護度2の人数×2)+(要介護度3の人数×3)+ (要介護度4の人数×4)+(要介護度5の人数×5) /利用者合計
デイサービスの経営において利用者様一人当たりの人件費の算出は、どの程度の人的資源が充てられているかを示す指標となります。値が著しく小さい場合、サービスに必要な人員に不足が生じている、または労働条件に課題が生じている可能性があります。一方、著しく値が大きい場合 は、業務効率や職員構成に課題が生じている可能性があるでしょう。
【計算方法】
人件費÷平均利用者数
利用者一人当たりに要したサービス活動費用は適切なサービスを提供する上で必要な資源配分がなされているか、それに見合う費用が発生しているか、費用が過大となって効率性に課題がないかを判断する際の基本となる指標となります。
【計算方法】
サービス活動費用計(売上高) ÷ 平均利用者数
通所介護経営において収益性を把握する上で欠かせないのが、利用者一人当たりのサービス活動収益(売上高)です。この指標は、利用者様一人当たりの収益規模を示す指標である。前述の「利用者様一人当たり人件費」や「利用者様一人当たりのサービス活動費用」と比較することで、利用者一人当たりのサービス活動収益とサービス活動費用を対比して理解することができます。
【計算方法】
サービス活動収益計÷平均利用者数
通所介護経営において収益性を高める要因の一つ加算として「サービス提供体制加算」があります。同加算は介護福祉士の比率によって評価される加算であり、適正に配置することで事業所の質の担保を図り、かつ利用者一人当たりのサービス活動収益を高めることができます。
【計算方法】
介護福祉士の人数÷従業員人数
通所介護において入浴加算を算定している事業所であれば、水道光熱費のコスト管理を行う必要があります。サービス活動収益(売上高)に対して5%程度以下が良いとされています。
補足:サービス活動収益(売上高)に対して賃借料比率は10%程度以下が良いとされています
通所介護の経営において利益率(売上高純利益率)は、売上高に対する純利益の割合を示す税金を控除した後の指標で、会社の最終的な収益力、会社の実力を示す基本指標である。サービス活動収益(売上高)に対して5-10%程度が良いとされています。これより大きく高ければ人件費率が適切かどうかのチェックを行い、大きく低ければ無駄がないかをチェックしていきましょう。
通所介護(デイサービス)の重要な経営指標としては損益分岐点(BEP)があります。損益分岐点とは収益の額と費用の額とが等しくなる売上高であり、投下した費用が回収できる売上高です。つまり、定期的に収益がコストを上回っている状態を確認するため経営指標と言えます。開業したばかりであれば、キャッシュフローの状態もマイナスであることから、利益性を追求することは正しいことかもしれません。一方で、利用者様を獲得するための経営指標にフォーカスしたいと思う経営者もいるかもしれません。ただ、通所介護というビジネスモデルにおいて収益と費用が均衡する損益分岐点について何も考えていないというのはあまりにも責任がなさすぎるように思われます。損益分岐にたどり着くことができなければ、お金と時間を無駄にすることもありますし、従業員にも迷惑をかけてしまうこともあります。経営指標として重要視しつつ、取り組んでいきましょう。
【計算方法】
損益分岐点売上高=固定費÷{(売上高−変動費)÷売上高}
変動費 | 売上高が0円の時、0円となる費用。 売上高が増えれば、増える費用。 例) 材料費、仕入、販売手数料など |
---|---|
固定費 | 売上高が0円の時、0円とならない費用。 売上高の増減に、関係しない費用。 例) 人件費、地代家賃、車やプリンターなどのリース料など |
通所介護の経営を安定的に行うためには、上図に示すような平均値との乖離について経営分析すること第1歩です。
その上でそれぞれの経営指標をもとにコスト管理を行いつつ、デイサービスの経営を行っていく必要があります。
特に平成30年度介護報酬改定では、「自立支援・重度化防止」を合言葉として、国策として「利用者様の生活(個人)を支援するデイサービス」が求められるようになりました。今後デイサービスの経営を安定的に行うためには、①人件費率(機能訓練指導員の配置により個別機能訓練加算がとれることでより高まります)②利用者様一人当たりのサービス収益率③稼働率の3点が最も重要です。少数精鋭で行うための「人件費の最適化」「利用者様一人当たりの売上高を上げるための個別機能訓練加算や中重度ケア加算、認知症加算などの加算算定」、そして「稼働率向上を目指した営業」が重要です。
この数値を高めるための工夫とコスト管理を徹底して行うことで、デイサービスの経営指標は劇的に改善します。
参照:平成26年度老人デイサービスセンターの経営状況について
デイサービス経営のための基礎知識についていかがでしたか。
デイサービスの経営を理想的に行っていくためには、取れる加算をしっかりと取ること、余剰な人員配置は減らし業務効率化をすること、稼働率を上げるための営業対策を行うことが重要です。
経営者としては「従業員には働く仕組みを、お客様には満足のいくサービスを」と事実論ベースに関わりたいものです。あなたのデイサービスに関わると「ご利用者様は楽しい、笑顔になる」「スタッフは心も豊かになり、お金も貯まる」という活動が理想的なのではないでしょうか。また、「現場の忙しい」という声ではなく、「忙しいけれども、働いていて楽しい」「自分がいる価値がここにある」このように従業員の方に思ってもらえる工夫こそ、オーナーシップを生み出し、より事業所は活性化します。今一度、経営を見つめる際に参考になればと思います。
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