【廃止】通所介護の介護職員処遇改善加算の算定要件・計算方法

介護保険法

処遇改善加算

更新日:2024/09/10

介護職員処遇改善加算とは、利用者に介護サービスを提供する介護職員の安定的な処遇改善を図るため、環境整備と賃金改善を目的に創設された加算です。これまでの複数の処遇改善加算の制度が「介護職員等処遇改善加算」という名称で一本化され、廃止になりました。この加算は給与を上げるためのお金が報酬という形で支給されるため、事業所にも職員にも大きなメリットがある加算でした。この記事では、廃止になった介護職員処遇改善加算の算定要件や計算式などを解説します。

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介護職員等処遇改善加算が新設され旧処遇改善3加算は新加算へ移行

令和6年6月から、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算の旧処遇改善3加算は、新設される「介護職員等処遇改善加算」に一本化されることとなりました。令和7年度以降に新加算Ⅰ〜Ⅳに完全移行するとされており、令和6年度中は経過措置として、新加算Ⅴ(1)~ Ⅴ(14)を設けられました。経過措置中は加算率は下がることはないですが、令和7年度以降の完全移行に向けて事業所としてどう対応するか検討が必要です。

介護職員等処遇改善加算については、知りたい方はこちらの記事をご一読ください
▶︎介護職員等処遇改善加算とは?算定要件や単位数などを解説【2024年介護報酬改定で新設】

※介護職員処遇改善加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています。

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介護職員処遇改善加算とは

介護職員処遇改善加算とは介護職員が安定した業務ができるように、環境を整えたり賃金を改善したりすることを目的とした加算です。

処遇改善加算は過去に算定要件や単位数について何度も見直されており、令和3年度の介護報酬改定でも職場環境等要件の内容が変更されました。

算定するために必要なこと

処遇改善加算を算定した場合、その算定額に相当する賃金改善を実施します。
さらに、取得する加算の区分に応じたキャリアパス要件と職場環境等要件を満たす必要があります。

これらの要件を満たすための費用は、賃金改善の実施にかかる費用には含まれません。 

介護職員処遇改善加算を取得する事業所は、介護職員研修の確保や雇用管理の改善などとともに、加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。

また、加算を取得する月の2ヵ月前の末日までに、介護サービス事業所等ごとに、当該介護サービス事業所等の所在する「都道府県知事等」に届出を提出する必要があります。

ただし、介護職員処遇改善計画書を複数作成する場合は、一括して都道府県知事等に届け出ることができます。また、年度の途中で加算を取得しようとする介護サービス事業者は、加算を取得しようとする月の前々月の末日までに、都道府県知事等に提出するものとされています。

介護職員処遇改善加算を取得する事業所は、介護職員研修の確保や雇用管理の改善などとともに、加算の算定額に相当する賃金改善を実施する必要があります。

また、加算を取得する年度の前年度の2月末日までに、介護サービス事業所等ごとに、当該介護サービス事業所等の所在する「都道府県知事等」に届出を提出する必要があります。

ただし、介護職員処遇改善計画書を一括して作成する場合は、一括して都道府県知事等に届け出ることができます。また、年度の途中で加算を取得しようとする介護サービス事業者は、加算を取得しようとする月の前々月の末日までに、都道府県知事等に提出するものとされています。

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について (2023年5月19日確認)

算定要件と単位数

デイサービスにおける介護職員処遇改善加算の算定要件と単位数を以下の表にまとめました。

 介護職員処遇改善加算(Ⅰ)
算定要件 
・以下の「キャリアパス要件」を満たす
①職位・職責・職務内容に応じた要件と賃金体系を整備する
②資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する
③経験・資格に応じて昇給する仕組み、または一定の基準にもとづいて定期的に昇給を判定する仕組みを設ける
・「職場環境等要件」である、賃金改善を除いた職場環境の改善に努める
単位数介護職員1人につき月額37,000円相当の加算
 介護職員処遇改善加算(Ⅱ)
算定要件・以下の「キャリアパス要件」を満たす
①職位・職責・職務内容に応じた要件と賃金体系を整備する
②資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する
・「職場環境等要件」である、賃金改善を除いた職場環境の改善に努める
単位数介護職員1人につき月額27,000円相当の加算
 介護職員処遇改善加算(Ⅲ)
算定要件・以下の「キャリアパス要件」のどちらか1つを満たす
①職位・職責・職務内容に応じた要件と賃金体系を整備する
②資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する
・「職場環境等要件」である、賃金改善を除いた職場環境の改善に努める
単位数介護職員1人につき月額15,000円相当の加算
 介護職員処遇改善加算(Ⅳ)
算定要件・以下の要件のどちらかを満たす
1)以下の「キャリアパス要件」のどちらか1つを満たす
①職位・職責・職務内容に応じた要件と賃金体系を整備する
②資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する
2)「職場環境等要件」である、賃金改善を除いた職場環境の改善に努める
単位数介護職員1人につき月額13,500円相当の加算
 介護職員処遇改善加算(Ⅴ)
算定要件「キャリアパス要件」と「職場環境要件」のいずれも満たさない
単位数介護職員1人につき月額12,000円相当の加算

処遇改善加算の「Ⅳ」と「Ⅴ」は、令和3年度で廃止。ただし令和3年度末時点で算定をしていた場合は、令和4年度末まで算定可能。

参考:令和3年度介護報酬改定の主な事項について (2023年5月19日確認)

介護職員処遇改善加算を計算するための3ステップ

介護職員処遇改善加算は、1ヵ月の基本報酬と各種加算・減算を合計した単位数に加算率を掛けることで算定されます。

ここでは以下の条件を例にしながら、処遇改善加算を計算するためのステップを3つに分けて解説します。

提供サービス通常規模型通所介護
サービス提供時間7時間以上8時間未満
要介護度要介護1(上記の時間の場合、655単位/回)
取得加算サービス提供体制強化加算Ⅰ(22単位/回)
介護職員処遇改善加算の区分加算Ⅰ(加算率5.9%)
地域区分5級地(10.45円)
1ヵ月の利用回数6回

ステップ1:総単位数

1つ目のステップとして、1ヵ月あたりの総単位数を計算してみましょう。
総単位数を導くための計算式は、以下の通りです。

【1ヵ月あたりの総単位数の計算式】

基本サービス単位数 + 加算と減算の合計 = 総単位数

655(単位) × 6(回)= 3,930(基本サービス単位数)

22(加算)× 6(回)= 132(加算と減算の合計)

3,930 + 132 =4,062(総単位数)

この計算式の結果、1ヵ月あたりの総単位数は「4,062」となります。

ステップ2:加算率を乗算

2つ目のステップでは、1つ目でわかった総単位数に加算率を乗算します。
このときに算出された数値が「介護職員処遇改善加算」の総単位数です。

また、計算結果に端数が生じた場合は、単位未満の数字を四捨五入します。
このときの計算式をみていきましょう。

【加算率を乗算するときの計算式】

4,062(総単位数)×5.9%(加算率)= 239.658

乗算したときに出た数値を四捨五入すると、処遇改善加算の総単位数が「240」となります。

ステップ3:金額へと換算する

最後のステップでは、処遇改善加算の総単位数を金額へと換算します。
このときの計算式は以下の通りです。

【総単位数を金額に換算する計算式】

処遇改善加算の総単位数 × 地域区分 = 処遇改善加算の総額

240(総単位数)× 10.45(地域区分)= 2,508(処遇改善加算の総額)

この計算の結果、処遇改善加算を金額に換算すると「2,508」となります。

ここで注意したいのが、上記の計算では「小数点以下は切り捨て」となる点です。
ステップ2と同じように、四捨五入しないように気をつけましょう。

職場環境等要件の内容

介護職員処遇改善加算の職場環境等要件では、キャリアアップのための取り組みやネットワークの活用による生産性の向上が求められています。

要件は以下の6つの区分に分けられており、それぞれを満たすための具体的な内容が定められています。

  1. 入職促進に向けた取り組み
  2. 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
  3. 両立支援・多様な働き方の推進
  4. 腰痛を含む心身の健康管理
  5. 生産性向上のための業務改善の取り組み
  6. やりがい・働きがいの醸成

処遇改善加算を算定するには、上記のうちから1つ以上取り組むことが必要です。

詳しい内容に関しては各論の「介護職員処遇改善加算のキャリアパス要件・職場環境等要件」を参考にしてみてください。

参考:処遇改善に関する加算の職場環境等要件 (2023年5月19日確認)

キャリアパス要件とは

キャリアパス要件とは、介護職員のキャリアアップを促すために必要な賃金体系や労働環境の条件のことです。

キャリアパスには「Ⅰ」から「Ⅲ」までの3種類に分けられています。
ここではそれぞれの要件について解説します。

キャリアパス要件Ⅰとは

キャリアパス要件Ⅰでは、以下を満たす必要があります。

  1. 介護職員の職位や職責、職務内容に応じた賃金の任用要件を定めている
  2. 職位や職責、職務内容に応じた賃金体系について定めている
  3. 上記の内容を就業規則等に記載しており、すべての介護職員に周知している

キャリアパス要件Ⅱとは

キャリアパス要件Ⅱでは、以下を満たす必要があります。

  1. 介護職員の職務内容を踏まえたうえで、意見交換をしながら資質向上のための目標と、以下のいずれかの項目の具体的な計画を立てている
    1. 研修機会の提供または「OJT」や「OFF-JT」などの技術指導を実施し、介護職員の能力評価を行う
    2. 勤務シフトの調整や費用の援助など。資格取得のための支援を実施する
  2. 上記についてすべての介護職員に周知している

キャリアパス要件Ⅲとは

キャリアパス要件Ⅲでは、以下の項目を満たす必要があります。

  1. 経年や資格に応じて昇給する仕組み、または一定の基準で昇給をする仕組みを設けている(具体的には以下のいずれかに該当している)
    1. 勤続年数や経験年数に応じて昇給する仕組み
    2. 資格の取得によって職有する仕組み
    3. 実技や人事評価などの一定の基準にもとづいて昇給する仕組み
  2. 上記の内容を就業規則等に記載しており、すべての介護職員に周知している

参考:介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算及び介護職員等ベースアップ等支援加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について (2023年5月19日確認)

職員のキャリア・介護の質を担保するための加算

介護職員処遇改善加算は、職員のキャリアや介護の質の担保につながる重要な加算です。

加算の算定には計算が必要なので、わかりにくい点も多いと思いますが、ポイントを押さえればスムーズに算出できるでしょう。

十分な介護サービスを提供しつつ職員の定着化を図るためにも、処遇改善加算を積極的に算定できるような体制を整えておくと良いでしょう。

※介護職員処遇改善加算は令和6年の介護報酬改定で廃止になりました。記事は記録としてそのまま残しています。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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