特定処遇改善加算の計算•分配方法 具体例でわかりやすく解説! 2019年介護報酬改定

介護報酬改定

更新日:2024/03/05

介護の仕事に関わる人ならみんな気になる「特定処遇改善加算」の計算方法・分配方法を、具体例でわかりやすく紹介します。2019年10月介護報酬改定で新設される特定処遇改善加算は、経験10年以上のリーダー級は月額8万円手当が付くなどの情報が一人歩きしていますが複雑な内容です。介護職員以外も対象者なのか、実際いくらもらえるのか、経営者がピンハネはできるのかなど、介護業界の仕事をしていたら気になるところを、厚生労働省のQ&Aなどからまとめました。

2019年10月からの介護職員特定処遇改善加算の算定要件

介護職員特定処遇改善加算は、介護職員処遇改善加算(I)・(Ⅱ)・(Ⅲ)を取得している介護サービス事業所で、おもに「勤続10年以上の介護福祉士」の処遇改善を行うための手当をになる原資を供給する加算とされています。

介護職員特定処遇改善加算については以下の3点が主な算定要件です。

・処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを算定している
・資質の向上・研修・処遇改善・ICT活用など職場環境向上の取り組みをしている
・処遇改善の取り組みをホームページなどで見える化している

これらの体制がある介護事業所は、賃金改善計画を提出して承認されることで「特定処遇改善加算」の算定ができるようになります。一度申請して承認されると、基本的には14月から3月の1年間算定できます。(令和元年10月からの新加算のため、初年については10月から令和2年3月まで)

これらの取り組みができている事業所でないと、特定処遇改善加算の算定はできないので、申請できない施設では10年以上の職員がいても特定処遇改善手当はありません。

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介護職員等特定処遇改善加算とは 通所介護の要件の概要(2019年介護報酬改定)

通所介護の特定処遇改善加算(Ⅰ)と特定処遇改善加算(Ⅱ)の違い

以下の3つの要件を満たしている場合、通所介護(デイサービス)では、加算率1.0%の特定処遇改善加算(Ⅱ)を算定できます。

  1.  処遇改善加算(Ⅰ)(Ⅱ)(Ⅲ)のいずれかを算定している
  2. 資質の向上・研修・処遇改善・ICT活用など職場環境向上の取り組みをしている
  3. 処遇改善の取り組みをホームページなどで見える化している

さらに、介護福祉士の配置比率などが算定要件となる

サービス提供体制加算(Ⅰ)・(Ⅱ)・(Ⅲ)」をすでに算定している事業所は、加算率1.2%の特定処遇改善加算(Ⅰ)を算定できます。

特定処遇改善加算の「勤続10年の考え方」とは

  • 勤続年数を計算するにあたり、同一法人だけでなく、他法人や医療機関等での経験等も通算して考えてよいことになっています。
  • すでに事業所内で設けられている能力評価や等級システムを活用するなど、10年以上の勤続年数でない人でも、業務や技能等を勘案して対象とするなど、各事業所の裁量により柔軟に設定可能です。

特定処遇改善加算の計算方法

特定加算の算定対象月は、現行加算と同様、原則として年度初めの4月から年度終わ りの3月までです。但し令和元年度については、10月から当該制度が開始されるため、 「令和元年10月~令和2年3月」となります。

特定加算の見込額(総額)の計算方法についても、現行の処遇改善加算と同様です。

「介護報酬総単位数×サービス別加算率(1単位未満端数四捨五入)×1単位の単価」

特定処遇改善加算(Ⅰ) 加算率 1.2%

特定処遇改善加算(Ⅱ) 加算率 1.0%

特定処遇改善加算の手当がもらえる対象者とは

特定処遇改善加算の算定をするためには、賃金改善の方法等について職員に周知をしなければなりません。周知の方法は、計画書を施設・事業所に掲示することや、全職員に通知すること等が示されており、周知していない場合には加算の申請ができません。
 

特定処遇改善加算の分配方法

経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善に要する費用の見込額が月額平均8万円以上、もしくは賃金改善後の賃金の見込額が年額440万円以上でなければなりません。

① 経験・技能がある認められる介護福祉士(目安10年以上経験)

特定処遇改善加算の手当がもらえる対象者は、介護福祉士の資格を有している介護職員で、経験・技能を有していると認められる職員となります。 この経験・技能のある介護職員の考え方については、所属する法人等における「勤続年数10年以上の介護職員」が基本とされていますが、 同一法人のみではなく、他法人や医療機関等における経験等も通算して考えて良いとされています。 事業所で既に設定している能力評価や等級システムを活用する等により、10年以上の経験がない者についても、技能がある職員を支給の対象にしてもよい(経験・技能がある基準については計画に明記して提出)など、各事業所の裁量により柔軟に設定することができるものになっています。 

② 技能・経験がある介護職員以外はもらえないのか

経験・技能のある介護職員の賃金改善の見込額(支給見込額)の半額以内ならば、技能・経験がある介護職員以外の介護職員も支給対象にできます。(事業所ごとに決められます)

③ 介護職員以外(生活相談員・看護職員・機能訓練指導員など)はもらえるのか

介護職員以外(生活相談員・看護職員・機能訓練指導員など)は、技能・経験がある介護職員以外の介護職員の賃金改善の見込額(支給見込額)の半額以内ならば支給対象にできます。

ただし、既に賃金が年額440万円を上回っている職員は、特定処遇改善加算手当の対象外です。また、特定処遇改善加算手当の支給で、介護職員以外の職種の賃金の見込額が年額440万円を上回るような配分設定はできません。

月8万円?実際いくら支給されるのかの具体例

特定処遇改善加算手当は実際いくら支給されるのかについての例を上げます。

処遇改善の原資(見込額)の計算の例

ある通所介護を例にして特定処遇改善加算(Ⅰ)の見込額(原資)を計算してみます。

(例)1回利用平均700単位で、1月のべ利用数600名が利用する通所介護(1単位10円で計算)

「420,000単位 × サービス別加算率 1.2% ×10円」= 月の加算見込額 50,400円

職員構成の例

①経験・能力あり介護福祉士 2名
②その他介護職員 5名
③その他職種(生活相談員・機能訓練指導員・看護職員) 4名  計11名

分配の具体例

どのように分配するかは事業者が柔軟に設定できます。例えば①に全て割り当てることで1名を年収440万円以上にするという手法もありますし、その他職種まで割り当てることもできます。もしも全ての職種にいきわたるように手当を付ける場合には、③は②の半額まで、②は①の半額までという条件があります。

職員みんなにいきわたるような分配設計にした場合の例 支給額(手当)

もっとも職員みんなにいきわたるような分配設計にした場合には ①:②:③ に属する人がそれぞれ配分される支給額は ①4:②2:③1の比率になります。

① 4×2名 :② 2×5名 :③ 1×4名

原資 50,400円を上記の分配を合算した22で割ると2,291円(1番低い支給額の人)

 ↓

①Aさん→9,164円 ①Bさん→9,164円

②Cさん→4,582円 ②Dさん→4,582円 ②Eさん→4,582円 ②Fさん→4,582円 ②Gさん→4,582円

③Hさん→2,291円 ③Iさん→2,291円 ③Jさん→2,291円 ③Kさん→2,291円

経験・能力がある介護職員のみに分配する場合の1月あたりの支給額(手当)

①Aさん→25,200円 ①Bさん→25,200円

②Cさん→0円 ②Dさん→0円 ②Eさん→0円 ②Fさん→0円 ②Gさん→0円

③Hさん→0円 ③Iさん→0円 ③Jさん→0円 ③Kさん→0円

分配方法によりますが、上記のような分配となる計算です。

この分配方法については、特定処遇改善加算の算定をする申請前に職員に周知されている必要があります。

特定処遇改善加算は事業者・経営者がピンハネできる?

特定処遇改善加算は、原則ピンハネのようなことはできません。

しかし、賃金改善計画は前年の売り上げなどをもとに作成されるため売り上げが少なければ下振れの可能性はあります。

また、新聞やテレビなどで広まってしまった「10年目の介護職員に月8万円の賃金改善」という内容を実現できる事業所は限られており、実質上記のような金額の賃金改善程度になることもあります。経営者がピンハネしている訳ではなく、設計上の問題なので誤解がないよう説明が必要かもしれません。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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