暫定ケアプラン時のデイサービスの対応 要介護認定結果が確定する前の利用

介護保険法

基本報酬

更新日:2024/06/25

暫定ケアプランとは、要介護度の認定結果が確定する前に介護度を見込んで作成する居宅サービス計画です。デイサービスなどの介護保険事業では、ケアプラン無しにサービス提供が行われることのないようにということが大切です。要介護・要支援の認定で料金等が変わるため、新規申請を行い認定結果が出る前や、更新申請が遅れ、区分変更申請などのときに契約・通所介護計画書の日付・料金・請求などをどうするか対応方法のポイントをまとめました。

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暫定ケアプランとは

暫定ケアプランとは 居宅サービス計画の申請中

暫定ケアプランとは、要介護度の認定結果が確定する前に介護度を見込んで作成する居宅サービス計画のことを言います。

実際のケアプランをみてみると、居宅サービス計画書1表の右上の認定済・申請中で「申請中」になっているケアプランのことをいいます。

わかりやすくするために「暫定」というスタンプを押すなどしていることもあります。

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要介護認定結果が確定する前のデイサービス利用

要介護認定結果が確定する前のデイサービス利用

ご利用者の要介護認定結果が確定する前にデイサービスを利用したいと希望された場合どのように手続きをしたら良いか判断が難しいですよね。原則、デイサービスを利用する場合にはケアマネジャーが作成した居宅サービス計画(ケアプラン)にデイサービスの利用を掲載してもらう必要があります

介護保険事業では、ケアプラン無しにサービス提供が行われることのないようにということが大切です。

要介護度の認定結果が確定しない状態で作成されるケアプランを「暫定ケアプラン」と言います。

暫定ケアプランでデイサービスを利用するときに、ケアマネジャーはどのような手続きをして、デイサービス側ではどのような対応をしたら良いかについて一般的な流れを紹介します。

暫定ケアプランを作成するケース(新規申請・認定期間切れ・区分変更)

暫定ケアプランを作成するケースとしては、以下のようなケースがあります。

  • 被保険者が新規申請を行い認定結果が出るまでの間にサービスを利用する場合
  • 要介護認定の更新申請が遅れてしまい、更新後の認定結果が認定期間内にわからず認定がない状態が生じる場合
  • 要支援認定者が区分変更申請を行い認定結果が出るまでの間にサービスを利用する場合

暫定ケアプランはこのようなケースで作成されます。

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暫定ケアプランの介護度の見込み予測の方法

暫定ケアプランの介護度の見込み予測の方法

ケアマネジャーは、暫定ケアプランを作成する際には、一次判定に用いられる行為区分(食事・排泄・移動・清潔保持・間接ケア・BPS D関連・機能訓練・医療関連)の時間の合計時間数や、介護の手間にかかる項目、主治医意見書の内容、利用する介護サービスなどから介護度の見込みを予測します。ケアマネジャーがケアプランを作成に使用しているソフトなどに暫定の介護度を予測するツールなどがあり、活用して予測を行うケースもあります。

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要介護認定が決定する前に暫定ケアプランを作成する場合は居宅サービス計画作成依頼届を提出

要介護認定が決定する前に暫定ケアプランを作成する場合は居宅サービス計画作成依頼届を提出

暫定ケアプランについて考える時、その対象利用者が要支援になりそうか、要介護になりそうかによってデイサービス側の注意点も変わります。

暫定ケアプランを作成する場合には、ケアマネジャーは「居宅サービス計画作成依頼届」を区市町村に提出しなければなりません。区分変更や新規申請を行い暫定ケアプランを作成したその月の内に居宅サービス計画作成依頼書を提出していないと給付対象にならないことがあります。また居宅サービス計画作成依頼届を提出した時点(要介護や要支援の見込みなども含め)しか遡って処理することができないため、必要に応じて地域包括支援センターなどと連携しながらどの認定が出ても対応できる形で手続きしておく必要があります。

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地域包括支援センターは市町村が設置している施設で、要支援・事業対象者などの介護予防ケアマネジメントを行うこと、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが地域で暮らす高齢者の生活や権利をサポートするネットワークを回す役割や、ケアマネジャーの相談役として難しいケースなどについて一緒に考えることなどを行っている施設です。

デイサービスは予想外の介護度でも機能訓練や入浴で齟齬がないように

ケアマネジャーが暫定ケアプランを作成すればデイサービスの利用は開始できます。注意したいのは要介護になるか、要支援になるかが微妙なケースです。その場合には、介護予防(総合事業)と通所介護の両方の指定を受けている事業所をケアマネジャーが紹介すると思いますが、実際にご利用を始める前に契約や重要事項説明、通所介護計画書も2通りに対応できるように準備しておく方が良いです。

また、リハビリや入浴を希望する場合には、通所介護と介護予防で取り扱いが異なるためその違いについても説明をしておきます。

要支援と要介護でサービス内容や算定要件が異なる入浴や機能訓練は注意しましょう。

要支援になるか要介護になるか微妙な方でリハビリニーズの場合には、算定要件が多い、個別機能訓練加算の算定ができるよう、居宅訪問チェックシートや興味関心チェックシートなどの情報収集をした上で、運動器機能向上加算と個別機能訓練加算に対応する計画書を作りご利用者の同意を得て進めましょう。

介護度が確定したら、その介護度に合わせた手続きでサービスを提供していきましょう。

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要支援の認定の可能性が高いご利用者が暫定ケアプランでデイサービスを利用する場合

認定結果確定前でも、要支援の認定が濃厚な場合には要支援扱いとして地域包括支援センターもしくは地域包括支援センターから委託を受けている居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成し、デイサービスの利用について暫定ケアプランに掲載してもらう必要があります。

暫定ケアプランにおいても,仮に認定の結果が異なった場合でも利用者に給付がなされるよう介護予防サービス事業者・居宅サービス事業者の両方の指定を受けている事業者をケアプラン上は位置付けることが多いです。

介護予防(要支援)の指定を受けていない通所介護の場合には、もし要支援の認定が確定してしまった場合に利用を継続できないため注意しましょう。

要支援の認定で確定した場合には、地域包括支援センター等のケアマネジャーは本プラン(介護度決定後の介護予防サービス計画)を作成して、デイサービスでも内容を確認します。

要介護の認定の可能性が高いご利用者が暫定ケアプランでデイサービスを利用する場合

要介護の認定が濃厚な場合には、暫定で見込んだ要介護度で担当者会議を開催の上、ケアマネジャーが暫定ケアプランを作成・交付しています。

そのまま要介護で確定すれば、担当者会議やケアマネジャーへの確認の上、介護度確定後のケアプランをデイサービス側でも確認します。給付管理業務もそのまま居宅介護支援事業所のケアマネジャーが行います。デイサービスとしては、要介護認定が確実なご利用者の場合には、現在は暫定的な対応であり、要介護度により料金が変わることなどを十分に説明しておく必要があります。

デイサービスとして実務的な手続きと記録

暫定的な対応でデイサービスを利用する場合、介護度がまだ出ていない理由や通所介護利用の必要性・援助方針・経緯、担当者会議の記録(暫定的な計画内容)、暫定ケアプラン(居宅サービス計画)の確認もしくはケアマネへの照会などを、相談支援記録のような形で流れがわかるように記録しておき、暫定的なプランに沿った日付設定で計画書等を作成・同意の手続きが行われます。

※要支援・事業対象者など違う区分になる可能性がある場合で心配なケースなどは、ケアマネジャーに相談してその後想定される対応を確認しておきます。

暫定ケアプランに沿った通所介護計画書・機能訓練計画書

ケアマネジャーはケアプランを変更する場合には原則担当者会議を開きますが、ケースバイケースで対面した会議でなく確認連絡のみで省略することもあります。それでも、認定がまだの理由、ご利用者の利用経緯、支援の方針や目標・日付などは確認する必要があり、通所介護側はケアマネに確認した期間や方針に沿って通所介護計画や個別機能訓練計画などを作成してご利用者に説明を行います。説明の際には暫定的であり、決定した介護度により、料金やサービス内容が変わる可能性があることをご利用者に説明して同意を得て、その内容も記録をとっておきます。

介護度確定後に作成する通所介護計画書・機能訓練計画書

介護度確定後の担当者会議、作成された本ケアプランに沿って、通所介護計画や個別機能訓練計画を作成します。介護度が決定していない期間の確認や記録があれば、日付はさかのぼったりしなくても良いという指導が多いです。暫定的なものが作成されて同意をもらった上で提供をしているので、立てていた計画と大幅に変わることがない場合は、計画の策定日やご利用者への説明同意日も確定後に実際に行った日付を記入します。

手続きがわかるように、相談支援記録のような形で、担当者会議の記録やケアマネとの連絡を記録します。介護請求については、ケアマネと相談の上、介護度が確定してから行います。

介護度が想定できない場合の契約や計画作成の対応

要介護認定か要支援認定か判断ができない場合には2種類の契約を行い、双方の仕組みや料金について説明して利用いただく方が良いです。

なお、デイサービスを2箇所利用する計画になっている場合には、仮に要支援の認定が確定した場合には、一方の利用ができないため注意が必要です。

暫定ケアプランで緊急の利用の場合も担当者会議などは必要か

例えば、独居のご利用者などで入浴や衛生管理の必要性など、デイサービスを早急に利用したいが要介護の認定を受けていなかったという場合に、ケアマネジャーとデイサービスはどのような手続きを踏んだら良いかということについて解釈通知が出ています。

介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者の課題分析、サービス担当者会議の開催、居宅サービス計画の作成、居宅サービス計画の実施状況把握などの居宅介護支援を構成する一連の業務を行うことが基本ですが、緊急時には担当者会議などの順序が違ってしまっても大丈夫ということになっています。(省略してもよいということではない)

デイサービス側としては、ケアマネに十分確認の上、暫定的なケアプランの説明を受けた上で、利用前に通所介護計画を作成しましょう。

暫定ケアプランの場合もデイサービスで受け入れるにあたっては担当者会議を経て、課題や方針、今後の動きについて共有した上で契約やサービス提供を行なっていくようにしましょう。また、介護度が確定したら、原則本ケアプランについての担当者会議が必要になりますので覚えておいてください。担当者会議の内容やケアマネとのやりとりは記録に残しましょう。

指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準ついて

第二 指定居宅介護支援等の事業の運営に関する基準
3 運営に関する基準
(7) 指定居居宅介護支援の基本方針及び具体的取扱方針
基準第13条は、利用者の課題分析、サービス担当者会議の開催、居宅サービス計画の作成、居宅サービス計画の実施状況把握などの居宅介護支援を構成する一連の業務のあり方及び当該業務を行う介護支援専門員の責務を明らかにしたものである。

引用元:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準について, 平成 11 年7月 29 日老企発第 22 号厚生省老人保健福祉局企画課長通知


解釈通知老企22号

なお、利用者の課題分析(第六号)から居宅サービス計画の利用者への交付(第十一号)に掲げる一連の業務については、基準第一条に掲げる基本方針を達成するために必要となる業務を列記したものであり、基本的にはこのプロセスに応じて進めるべきものであるが、緊急的なサービス利用等やむを得ない場合や、効果的・効率的に行うことを前提とするものであれば、業務の順序について拘束するものではない。
ただし、その場合にあっても、それぞれ位置づけられた個々の業務は、事故的に可及的速やかに実施し、その結果に基づいて必要に応じて居宅サービス計画を見直すなど、適切に対応しなければならない。

引用元:解釈通知老企22号, 2012年3月

暫定ケアプランのときデイサービス利用料の請求

請求についてはケアマネジャーとも相談して決めていくことが多いです。

具体的には、介護度が決定しないうちは請求を行わず、介護度が確定した上で月遅れで請求をするという形をとるケースがみられます。

暫定の介護度で請求を行なってしまって確定した介護度が違うとサービスコードや単位が異なり過誤請求となりますので、注意が必要です。

要支援と要介護で見込みと違ってしまった場合には、ケアマネジャーとしては用意していたケアプランは利用者のセルフプラン扱いとなり、その月の居宅介護支援費(居宅サービス等を適切に利用することができるように作成する居宅サービス計画費)の請求ができなくなります。

デイサービス側としては、確定したのちに通常通りの請求となります。

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まとめ

暫定ケアプラン

介護度が確定しない暫定ケアプランでデイサービスの利用を開始する場合には、見込んだ介護度にならなかった場合にも対応できるように準備しておくことが大切です。

介護度が決定しない場合には、ケアプランなしでデイサービスを利用して確定してからケアプランをもらうと誤解されていることもあるのでご注意ください。

ケアプランなしでサービスを提供することはほぼありませんので、要介護認定が確定する前でもサービス担当者会議は原則必要です。あとから確認できるように、できない場合にはできなかった理由、ケアマネに確認した記録などを残しておくことが大切です。暫定ケアプランの場合もデイサービスではそのケアプランに沿って通所介護計画を作成した上で提供すること、契約や書類については万が一介護度が違って認定されても対応できるように暫定であることを伝えた上で2通り作るなどの対応をしましょう。

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料金等も暫定の介護度ならばこの料金ですが、実際に介護度が確定した時には料金が変わるかもしれないということをわかりやすく伝えましょう。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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