介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
運営ノウハウ
経営
更新日:2024/10/17
「デイサービスを運営したいけど、赤字にならないの?」そんな不安をもつ方も多いでしょう。事実、経営に問題があっても改善点がわからず、なかなか赤字から脱却できない事業所も少なくありません。この記事では、デイサービスの運営状況と赤字から脱却する方法などを詳しく解説しています。
この記事の目次
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まず、デイサービスの経営実態を確認してみましょう。福祉医療機構の調査によると、2021年度のデイサービスの46.5%は赤字経営だとされています。
20年度は41.9%だったことを考えると、1年間で赤字経営となったデイサービスの割合は4.6%も増加した計算になります。
また、デイサービスを「地域密着型」「通常規模型」「大規模型(Ⅰ・Ⅱ)」の4つに区分したときの赤字事業所の割合を以下の表にまとめました。
地域密着型 | 通常規模型 | 大規模型(Ⅰ) | 大規模型(Ⅱ) | |
---|---|---|---|---|
2020年度 | 40.5% | 43.4% | 24.6% | 32.1% |
2021年度 | 44.3% | 48.5% | 37.2% | 34.3% |
このように、どの区分でも赤字の割合が増加していることがわかるでしょう。
参考:独立行政法人福祉医療機構|2021年度(令和3年度)通所介護の経営状況について(2024年2月12日確認)
独立行政法人福祉医療機構|2020年度(令和2年度)通所介護の経営状況について(2024年2月12日確認)
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赤字経営の原因にはどのようなものが考えられるのでしょうか。ここでは、おもな原因とその影響について解説します。
デイサービスの稼働率が安定していない、または低下しているのが赤字経営の原因の1つです。稼働率とは、事業所の定員数に対する実際の利用者数の割合を指します。
1日の稼働率を計算するときは、
「1日の利用者の人数 ÷ 1日の定員数」
で表します。
たとえば、1日の定員数が50名に対して40名の利用者がいた場合、その日の稼働率は80%です。利用者の人数が減少して稼働率が低下すると、その分売上が下がって赤字につながるのです。
介護報酬改定の影響や、加算の未取得も赤字の原因になります。デイサービスの売上の多くを占めているものは、介護保険からの介護報酬です。
介護報酬改定は3年ごとに見直され、報酬が増加することもあれば、減少することもあります。介護報酬が減少すれば、その分デイサービスの売上低下につながります。
また、デイサービスでは基本報酬だけでなく、要件を満たせば加算の算定が可能です。加算には「個別機能訓練加算」や「栄養スクリーニング加算」などのさまざまな種類があります。
加算を算定すれば、得られる報酬が増加します。しかし、加算の算定には追加の業務や手間がかかることがあるので、事業所によっては取得していない場合もあるでしょう。
算定できるはずの加算を取得しなければ、売上の増加も見込みにくくなります。
人件費の割合の高さも、経営を圧迫する原因となります。必要以上の人材を確保していると、人件費が増えて赤字につながります。
一方で、人件費を下げたいからといって少人数で業務を回そうとすると、人手不足で現場の負担が増えてしまうこともあるでしょう。
人件費をムダにしないためには、施設の人員基準や稼働状況を考慮して、適切な人数を確保することが大切です。
デイサービス同士の競争が激化することで利用者の確保が難しくなり、赤字になるケースもあります。
デイサービスは他の事業所よりも参入しやすい傾向にあるため、競争が激化しやすいです。現在は約43,000事業所程度が存在しています。
そのため、他の事業所と差別化を図れるような工夫をしないと、デイサービスとして売上を確保することが難しいと考えられます。
ここでは赤字経営のデイサービスが黒字転換を目指すために、やっておきたいポイントについて解説します。
黒字転換するためには、業務を見直して効率化し、労働環境の改善をしましょう。業務が効率化できていないのは、人員が多すぎるのも原因の1つです。
黒字の事業所は、赤字事業所よりも人件費率が低い傾向にあるとされています。そのため、人件費を見直したうえで、少ない人数で効率的に業務を回せるような工夫も大切です。
現在の業務内容や配置にムダがないかを見直し、作業効率を高められる方法を検討してみましょう。
人材教育を行い、職場の定着率を高めることで赤字の防止につながります。デイサービスをはじめとした介護業界は、スタッフの離職率が高い傾向にあります。
スタッフが離職して人員が不足すれば、利用者の受け入れ人数が制限されて売上が低下する恐れもあるでしょう。
また、離職にともなってスタッフを募集するとなると、採用コストもかかります。業務効率化や労働環境の改善と並行して人材教育を行い、スタッフの職場に対する働きがいを高めていくことが大切です。
スタッフ向けに研修を開く場合は、ぜひこちらの記事を参考ください。
▶︎介護の内部研修テーマ|ケアスキルを向上させる面白い勉強会ネタ一覧
新規利用者の獲得やサービス利用回数を増やして実利用回数を増やすことも、黒字と赤字を分ける大きな要因です。
新規利用者を増やすためには、居宅支援介護事業所や地域包括支援センターなどへの営業、ネットでの発信活動などが重要です。
デイサービスの知名度が高くなれば、利用者を紹介してもらえるきっかけを作れます。
また、利用者のニーズに応じたサービスを提供して、満足度を高めるのも大切です。利用者にとって居心地の良い環境を作れば、利用頻度の増加も期待できます。
このように、稼働率を上げて経営の安定化につなげていきましょう。
稼働率アップについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
▶デイサービスの稼働率をアップさせるための方法 欠席対策についてもご紹介!
算定条件を満たしている加算があれば、収入面と業務面を鑑みて、可能な限り算定しておきましょう。そのためには、デイサービスではどのような加算を算定できるのかを確認することが大切です。
調べてみると、「今まで算定できていた加算をずっと取りこぼしていた」ということも珍しくありません。加算の算定は申請に手間がかかりやすいデメリットもありますが、その分メリットも多いといえます。
経営安定のために、積極的に加算の算定をしていきましょう。
デイサービスで算定できる加算は以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
▶通所介護(デイサービス)の加算・減算の種類一覧
さらに経営改善を目指すのであれば、以下のような施策を実施してみましょう。
ここではそれぞれの施策について詳しく解説します。
デイサービスの売上を上げるためには、他の事業所と差別化を図れるようなサービスを提供し、ブランディングを高める戦略が重要です。
他の事業所にはない独自のサービスを作れば、利用者の増加が期待できます。
そのためには、その地域で不足しているサービスは何か、利用者はどんなニーズがあるかをリサーチすることが大切です。
独自のサービスが地域の利用者に周知してもらえるように、営業や発信活動も並行して進めていきましょう。
業務の効率化を図るために、経営指標を把握するのも大切です。
経営指標は稼働率の他にも、以下のような項目があげられます。
人件費率とは、売上に応じた人件費の割合のことです。
人件費率は、
「(人件費 ÷ 売上)×100」
で計算が可能です。デイサービスでは、人件費は60%ほどが良いとされています。
実際に、医療福祉機構の調査では黒字事業所の人件費率の平均は「61.3%」、赤字事業所の平均は「77.9%」という結果でした。
労働生産性は、スタッフ1人あたりの付加価値のことです。労働生産性は、スタッフが多いほど低くなります。
労働生産性を高めるためには、業務を見直したうえで必要なスタッフのみを配置することを意識しましょう。
平均要介護度は、利用者の要介護度の平均のことです。
平均要介護は高くなるほど介護報酬が増加する傾向にありますが、その分介護を要するので多くの人員が必要となります。平均要介護度が高い場合は、スタッフの人数についてよく考慮する必要があります。
利用者1人あたりの人件費は、
「人件費 ÷ 平均利用者数」
で計算できます。
この数値が小さいと利用者に対して人員が不足している可能性があります。反対に、数値が大きすぎると業務効率が悪いことを表しているので注意が必要です。
利益率は、売上から税金を差し引いた最終的な利益のことです。利益率は5〜10%が良いとされています。
損益分岐点とは、収入と支出が差し引きゼロになるポイントのことです。
損益分岐点は、
「固定費 ÷ {(売上高 − 変動費)÷ 売上高」}」
で計算できます。
損益分岐点がどこなのかを把握し、黒字経営を目指すことが大切です。
参考:独立行政法人福祉医療機構|2021年度(令和3年度)通所介護の経営状況について(2024年2月12日確認)
デイサービスで算定できる加算のうち、おすすめなのが「介護職員処遇改善加算」です。
介護職員処遇改善加算とは、環境調整や賃金を改善して、介護職員が安定して仕事ができるようにすることを目的とした加算です。
処遇改善加算を算定できれば、スタッフの賃金アップや学習の機会を増やせるでしょう。
処遇改善加算は(Ⅰ)から(Ⅲ)までの3種類あります。事業所に当てはまる種類を確認して、処遇改善加算の算定を検討してみましょう。
介護職員処遇改善加算については以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
▶介護職員等特定処遇改善加算とは 通所介護の要件の概要(2019年介護報酬改定)
参考:厚生労働省|処遇改善に関する加算の職場環境等要件(2024年2月12日確認)
他の事業所との差別化を図る、ブランディングを高めるなどの大きな営業戦略の他にも、以下のようなこともおさえておくと良いでしょう。
地域にデイサービスをアピールするために、営業ツールを拡充しておくのがおすすめです。
用意しておきたい営業ツールは、以下の通りです。
インターネットが普及している時代ですが、チラシやパンフレットなどの現物も十分に活用できます。自身でチラシやパンフレットを作成するのが難しい場合は、制作会社に依頼してみましょう。
ホームページやSNSなどのインターネットでの営業を実施する際は、デイサービスの特徴をわかりやすく発信することが大切です。
デイサービスの利用者を増やすためには、営業先の選定も重要です。デイサービスの代表的な営業先は、以下の4つです。
居宅介護支援事業所にはケアマネジャーが在籍しています。
ケアマネジャーの紹介でデイサービスを利用する利用者も多いため、地域の居宅介護支援事業所の信頼を得ることは大切です。
地域包括支援センターは、高齢者の健康面や生活全般に関する相談を受け付け、地域の総合相談窓口ともいえます。
地域の高齢者の状況を把握しているので、営業すれば利用者を紹介してくれるケースもあります。
病院では、おもに入院中や退院後の支援をしている医療ソーシャルワーカー(MSW)に営業を行います。
MSWにデイサービスを認知してもらえば、患者が退院してから受けるサービスとして紹介してくれる場合があります。
ケアマネジャーやMSWなどを介すのではなく、地域住民に直接認知してもらうことも大切です。営業活動以外にも、ボランティアや交流会など、地域住民と関われる方法は多くあります。
地域住民の認知や信頼を得て、利用者から「このデイサービスを利用してみたい」と思われるようにしていきましょう。
利用者獲得に悩まれているのであれば、現役ケアマネによる座談会記事をぜひご一読ください。
▶︎【現役ケアマネ座談会】利用者を紹介したいデイサービスの特徴と営業の秘訣
デイサービスを開業するうえで注意しておきたいのが、赤字のリスクです。デイサービスでは年々赤字経営の割合が増えているので、黒字化を目指すための戦略を立てることが重要です。
黒字経営を安定させるためには、労働環境を見直す、積極的に加算を算定するなどの工夫をする必要があります。また、他の事業所との差別化を図り、デイサービスとしてのブランディングを高めることも欠かせません。
ぜひ今回の記事を参考にして、赤字から脱却する方法をおさえておきましょう。
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