ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/11/05
10m歩行テストとは、高齢者の歩行速度・歩行時間をはかるためのスケールです。このテストにより歩行能力の低下や身体の変化などを読み取ることができます。この記事では10m歩行テストの測定方法やカットオフ値など、詳しいテスト方法について解説しています。
この記事の目次
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10m歩行テストは、歩行能力を評価するためのテストです。対象者に平坦な地面を10メートル歩行させ、歩行速度を測定します。比較的簡単に対象者の歩行能力や日常生活での活動レベルを評価できます。そのため、介護の現場でも活用しやすいテストになるでしょう。
10m歩行テストで評価できる内容は、歩行速度のみではありません。対象者の転倒リスクなどを評価することが可能です。ふらつきや歩行中の不安定な動きを評価することで、より詳細に分析することができるでしょう。
評価を行う際は、一般的に通常の歩行速度と最大歩行速度を測定します。
具体的には、被検者にスタートラインから10m先のゴールラインまで歩いてもらい、その所要時間をストップウォッチで計測します。継続的に評価を行うことで、リハビリテーションの進捗状況を把握し、対象者に適切なフィードバックを提供することが可能です。
ただし、10mの距離を確保する必要があることに加え、測定区間前後に助走距離と減速距離が約3mずつ必要な点に注意しましょう。
正確に測定するためには合計で約16mを用意する必要があり、室内での測定が困難な事業所は多々あるでしょう。
測定が難しい面もありますが、高齢者を対象にした研究が多く、介護現場におけるリハビリ計画の立案や効果の判定に役立ちます。
10m歩行テストでは、主に歩行速度を測ります。
歩行速度 | 至適(快適・通常)歩行速度 | 対象者が通常の速度で歩く際の歩行速度を測定します。 |
---|---|---|
最大(最速)歩行速度 | 対象者ができるだけ速く歩く際の歩行速度を測定します。 |
至適歩行速度を測定することで、対象者が日常生活でどの程度自立して歩行できるかを評価できます。日常的な買い物や家事を安全に行えるかどうかの判断材料になるでしょう 。
至適歩行速度が遅くなると、転倒リスクが高くなり、外を出歩くのも難しくなります。
たとえば、信号機は一般的に秒速1.0mで歩けば道路を渡りきれるように調整されています。
つまり、至適歩行速度が秒速1.0mで歩けない場合は信号機のある道を歩くのは容易ではありません。当然、無理をして急ぐことになれば、転倒する可能性も高くなるでしょう。
最大歩行速度の測定も至適歩行速度と同様に、日常生活の自立度を評価できます。対象者の年齢によって使い分けたほうが良い場合があります。
至適歩行速度と最大歩行速度は、それぞれ評価できるポイントが異なるため、評価したい項目に合わせて上手く活用しましょう。
参考:歩行者横断秒数の延長
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10m歩行テストのカットオフ値を以下の表にまとめましたのでご参考ください。
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評価項目 | 対象者 | カットオフ値 | 説明 | |
---|---|---|---|---|
至適(快適・通常)歩行速度 | 転倒リスク | 不明 | 1.0m/秒 | カットオフ値を下回ると、要介護者の割合が高くなる。転倒リスクが高くなる。 |
要介護・要支援認定を受け、通所介護を利用する高齢者 | 0.7m/秒 | カットオフ値以下で転倒発生が予想される
参考:フレイルとは? |
||
地域移動 | 不明 | 0.93m/秒 | カットオフ値を下回ると地域移動の制限があるとされる | |
0.49m/秒 | カットオフ値を上回ると地域移動可能とされる | |||
最大(最速)歩行速度 | 運動耐容能 | 周術期リハビリテーションを行ったガン患者 | 1.5m/秒 | カットオフ値を下回ると運動耐容能の低下があるとされる |
また、評価の参考になる値を以下にまとめました。
評価項目 | 対象者 | 値 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
至適(快適・通常)歩行速度 | 要介護 | 不明 | 1.0m秒 | 値を下回ると要介護者の割合が増加する |
生命予後 | 60歳以上の心疾患患者 | 0.94m/秒 | 値以下だと生命予後が悪いと判断できる | |
歩行自立度 | 不明 | 0.8m/秒 | 一般的に値を上回ると屋外歩行自立 | |
0.4m/秒 | 一般的に値を下回ると歩行の実用性は屋内 | |||
最大(最速)歩行速度 | 歩行自立度 | 65歳以上の高齢入院患者 | 1.20m/秒 | 値以上で全例が独歩自立していた。 |
0.60m/秒 | 値未満で独歩自立例の割合は2.3%であった。 | |||
0.55m/秒 | 独歩が自立した例の最大歩行速度の下限値。 |
10m歩行については、さまざまな研究が行われており、参考になる値が対象者によって異なることもあります。疾患や環境、年齢などに注意しましょう。
たとえば、60〜74歳の前期高齢者の場合、最大歩行速度の低下があるとADL障害の危険性が高まります。しかし、75歳以上の後期高齢者の場合、至適歩行速度の低下があるとADL障害の危険性が高まるというデータがあります。
参考になる値は数多くありますが、状況や対象者などによって上手く使い分け、複数の評価を活用するようにしましょう。
たとえば、転倒リスクを評価したい場合は10m歩行に加えてTUGテスト(Timed Up and Go Test)を用いるなど、評価を組み合わせることも大切です。
参考:転倒リスクと歩行の関連
10m歩行テストの評価方法は以下の通りです。
10m歩行テストに必要なものは以下の通りです。
※直線距離で16mが取れるスペースを準備する。部屋では必要な距離が取れない場合は廊下を利用する。
10m歩行テストの手順は以下の通りです。
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【測定の準備】
【テスト実施】
【結果の記録と評価】
10m歩行テストを行う際の注意点は以下の4つの観点から確認しましょう。
【安全管理】
【測定の一貫性】
【被検者への配慮】
【測定環境の管理】
これらの注意点を守ることで、10m歩行テストを安全かつ正確に実施し、信頼性の高いデータを得ることができるでしょう。
10m歩行テストでは歩行速度や歩行自立度などを主に評価しますが、それ以外にも以下の項目を評価することができるので、考慮すると良いでしょう。
1. 日常生活活動レベル | 歩行速度は、日常生活の自立度の指標となります。歩行速度が速いほど、自立した生活を送る能力が高いと判断できます。 たとえば、通常歩行速度が1.0mを下回ると、要介護の割合が高くなるとされています。 つまり、歩行速度低下により、日常生活に介護を要する方が増えると予想されます。 |
---|---|
2. 転倒リスク | 歩行速度や歩行中のふらつき、不安定さを観察することで、転倒リスクを評価できます。 たとえば、通常歩行速度が1.0mを下回ると転倒リスクが高まるとされていますが、複数回転倒する方は歩幅が小さくなるというデータもあります。 |
3. 下肢筋力 | 歩行速度の測定は、下肢筋力の評価にもつながります。リハビリ計画やケアの方針を決める際に活かすこともできるでしょう。 歩行周期の安定性と下肢筋力の間には関連するとされています。 また、フレイルやサルコペニアを判断する指標として、歩行速度が含まれています。 フレイルとサルコペニアの診断基準として、至適歩行速度1.0m/秒未満という項目が用いられています。 |
4. リハビリテーションの効果 | 継続的に10m歩行テストを実施することで、リハビリテーションの進捗をモニタリングでき、適切なフィードバックを提供することが可能です。 |
10m歩行時には以下の項目を同時に確認すると、より評価の精度を向上させることができるでしょう。
その他にも、歩行周期変動(歩幅ごとにかかる時間の各測定値の標準偏差)などを評価することで、さらに詳細な情報が得られるでしょう。
10m歩行テストは、歩行速度や安定性、耐久力などを評価するための重要なテストです。カットオフ値などを参考にしながら、対象者の歩行能力を評価することで、リハビリや介護の計画作成に役立てることができるでしょう。
ただし、10m歩行テストをする際には合計で約16mもの直線距離を確保しなければならないため、環境によっては測定が難しいことがあります。
安全に配慮し、適切な手順でテストを実施することで、さまざまな情報を得ることができるので上手く活用しましょう。
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