ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い

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更新日:2025/02/25

ADLとは日常生活動作、IADLとは手段的日常生活動作ですが、どちらも日常生活動作を示す用語のため違いがわからない方も多いのではないでしょうか? ADLとIADLの具体的な項目の違い、アセスメント・評価方法・評価スケール(FIM・BIなど)、訓練内容についてそれぞれの違いをご紹介します。医療・介護スタッフの基礎知識として言葉の違いを理解していきましょう。

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ADLとIADLの定義の違い

ADLとIADLの定義の違いとは

まず、ADLとIADLの定義の違いを理解しておきましょう。

医療・介護業界で当たり前のように使われる言葉の1つである「ADL」と「IADL」ですが、その違いについて詳しく説明することはできますか?

ADL(日常生活動作)とは

ADLは「日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作」と定義されています。ADL(日常生活動作)とは、Activities of Daily Livingの頭文字を略した言葉で、ADLのAはアクティビティー(動作)、Dはデイリー(日常)、Lはリビング(生活)の意味を持ちます。
主なADL項目には、食事やトイレ、入浴や整容、着替え、移動などがあります。私たちが日常生活を送るために必要な基本的な動作、日常的・習慣的にしている行動と理解してもよいでしょう。

IADL(手段的日常生活動作)とは

IADLとは、Instrumental Activity of Daily Livingの略で、日本では「手段的日常生活動作」と呼ばれ、ADLより高度なものです。
主なIADL項目には、買い物や洗濯、家事全般、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用といった動作・行動があります。

定義上、ADLは日常生活を送るために必要な「基本的な動作」に対して、IADLは日常生活動作の中でも「複雑で高度な日常生活動作」ということがご理解いただけたと思います。

つまり、能力低下はまずIADLから起こり、次にADLに起こることになります。

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ADLとIADLの項目の違い

ADLとIADLの内容の違い

具体的にADLとIADLにはどのような内容があるのでしょうか?

ADLとIADLの項目の違いをご紹介します。

ADLの項目とは

  • 起居動作(寝返り、起き上がり、立ち上がりなど)
  • 食事
  • 整容(歯磨き、髭剃り、化粧など)
  • 入浴(体洗、洗髪、浴槽移乗など)
  • 更衣(ズボンや上着、下着の着脱など)
  • トイレ
  • 車椅子または歩行(杖歩行や歩行器歩行など)
  • 階段
  • 移乗(トイレ移乗、ベッド移乗など)

IADLの項目とは

厚生労働省では以下の8項目をIADLの尺度の指標としています。

  • 電話を使用する能力(自分で番号を調べて電話をかけるかなど)
  • 買い物(すべての買い物を自分で行うかなど)
  • 食事の準備(自分で献立を考え準備・給仕までするかなど)
  • 家事(日常的な範囲のことをすべて自分で行うかなど)
  • 洗濯(すべて自分で行うかなど)
  • 移送の形式(自分で運転したり公的機関を利用して旅行するかなど)
  • 自分の服薬管理(適正な量の薬を規定の時間に飲めるかなど)
  • 財産取り扱い能力(銀行手続きやお金の出し入れ等、お金の管理をすべて自分で行うなど)

ADLとIADLのアセスメント・評価方法の違い

ADLとIADLのアセスメント・評価方法の違いとは

続いては、ADLとIADLのアセスメントについてご紹介します。

医療や介護現場では、利用者様がこれらの日常生活動作をどれくらい自分でできるのかを把握してサービス計画(支援する内容)を検討します。
実際の現場では、計画に沿ったケアを行い、その結果どうだったかのアセスメントを考察するために必要であり、共通言語として活用することも多い指標です。

ADLの評価・アセスメント方法について

FIM

FIMは、実際にどれくらいの介助量が必要なのか本人が「しているADL」を評価します。運動項目と認知項目の2つに分類され、126点満点で採点します。この点数が高いほどADLが高い(=介護の必要性が低い)という結果になります。

ADLの介助量を評価するための方法(FIM)についてて知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎FIMとは|FIMの評価方法と点数付けで知っておきたい基礎知識【総論】

BI(バーセルインデックス)

BI(バーセルインデックス)は、FIMとは異なり本人が「できるADL」を評価します。BIの評価項目は全10項目で、各項目が自立度(自立・部分介助・全介助など)に応じて0~15点(2~4段階)で評価され、100点満点で採点します。

バーセルインデックスについては以下の記事で詳しく紹介していますので、こちらをご一読ください。
バーセルインデックス(BI)の評価基準|自宅内・事業所内のどちらで評価?

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Kats Index(カッツインデックス)

Kats Index(カッツインデックス)は、ADLを評価する指標の一つです。BI(バーセルインデックス)と同様に、高齢者やリハビリテーション患者のADLを評価するために広く用いられています。

Kats Indexは、6つの項目(入浴、着衣、トイレ動作、食事、移乗、整容)について、それぞれ3段階(自立、一部介助、全介助)で評価します。

各項目の評価を点数化し、合計点数によってADLの自立度を判定します。

Kats Indexは、BIと比較して評価項目が少なく、簡便に評価できるという特徴があります。

DASC-21

DASC-21(地域包括システムにおける認知症アセスメントシート)は、認知症高齢者の包括的な評価を目的としたツールです。認知機能、生活機能、精神症状、介護状況など、21項目について評価します。

DASC-21は、以下の5つの領域で構成されています。

  • 認知機能:見当識、記憶力、計算力など
  • 生活機能:食事、着替え、入浴、移動など
  • 精神症状:抑うつ、不安、焦燥、幻覚、妄想など
  • 介護状況:介護者の負担、介護サービス利用状況など
  • その他:既往歴、服薬状況など

各項目は、4段階で評価され、合計点数によって認知症の重症度を判定します。

DASC-21は、認知症の早期発見や重症度評価などに活用されています。

IADLの評価・アセスメント方法について

Lawtonの手段的日常生活動作(IADL)尺度

IADLを評価するLawtonのIADL評価尺度では、8つの評価項目を3~5段階の選択肢の中から選び、その動作が「できる:1点」か「できない:0点」で採点します。

老研式活動能力指標

IADLを評価する老研式活動能力指標は、地域に住む高齢者の生活能力を測定することを目的にしています。主に「手段的自立」「知的能動性」「社会的役割」の項目について質問形式で「はい」「いいえ」を回答してもらう、合計13点満点の評価です。退職後の高齢者を想定していることから「仕事・生産活動」の項目はありません。

Frenchay Activities Index(FAI)

IADLを評価するFAIは、日常生活の中でも応用動作や社会生活における活動の全15項目を評価します。面接調査で、3か月間または6か月間の行動を評価するものです。対象者は、住み慣れた地域で生活できているご高齢者のIADLを評価するために用いられます。

DASC-21

DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート)は、認知症高齢者を包括的に評価するためのツールであり、認知機能、生活機能、精神症状、介護状況など21の項目を通して評価を行います。主な特徴として、認知機能だけでなく生活機能や精神症状、介護状況といった認知症高齢者に関わる多岐にわたる側面を評価できること、買物、調理、金銭管理といったIADLに関する項目も含まれており軽度認知症における生活機能障害の早期発見に役立つこと、各項目4段階で評価できるため短時間で評価を完了できることなどが挙げられます。

ADLとIADLの訓練内容の違い

では、具体的にADLとIADLの訓練内容の違いについてご紹介します。

ADLの訓練内容について

ADL訓練 更衣動作
ADL訓練 更衣動作

まず、こちらはADL訓練です。

ADLの訓練内容は、食事やトイレ、入浴や整容、着替え、移動など日常生活を送るために必要な基本的な動作の獲得を目的とした訓練を実施します。


その中でもこちらの訓練は、「着替え」の模倣訓練です。着替えを行うためには、ズボンの上げ下げや靴下の着脱がスムーズにできなければなりません。特に、脳梗塞後遺症で片麻痺がある人や股関節・脊椎疾患などで可動域制限がある人への下衣着脱訓練として実施されています。

IADLの訓練内容について

IADLの家事動作に必要な「台拭き」の模倣訓練

続いては、IADL訓練をご紹介します。

IADLの訓練内容は、ADLより高度で複雑な買い物や洗濯、家事全般、金銭管理、服薬管理、交通機関の利用などの獲得を目的とした訓練を実施します。

その中でもこちらの訓練は、家事動作に必要な「台拭き」の模倣訓練です。台拭きは、掃除動作などのIADLの獲得として非常に重要な動作です。特に、脳梗塞後遺症で片麻痺がある人や肩関節周囲炎などで肩が動かしにくい人への家事動作訓練として実施されています。

ADL・IADLを低下させないための予防方法

ADLとIADLの低下は、生活の質(QOL)を大きく損なう要因となります。ADL・IADLを維持・向上させるためには、適切な予防策を講じることが重要です。

QOLを向上させる

ADL・IADLの維持・向上には、QOLの維持・向上が不可欠です。QOLを高めるためには、以下の点に注意しましょう。

  • 適度な運動: ウォーキングや軽い体操など、無理のない範囲で体を動かすことは、心身機能の維持に繋がります。
  • バランスの取れた食事: 栄養バランスの偏った食事は、生活習慣病を引き起こし、ADL・IADLの低下を招く可能性があります。
  • 趣味や社会参加:趣味活動や地域活動への参加は、心身の活性化に繋がり、ADL・IADLの維持に貢献します。
  • 十分な睡眠:良質な睡眠は、心身の疲労回復を促し、ADL・IADLの維持に繋がります。

介護をし過ぎない

過度な介護は、ADL・IADLの低下を招く原因の一つです。できることは自分でやってもらうように促し、ADL・IADLの維持を支援しましょう。

  • 見守り: 常に付き添うのではなく、必要な時にサポートする姿勢が大切です。
  • 役割を与える: 役割を持つことは、意欲や自信に繋がり、ADL・IADLの維持に貢献します。
  • 自助具の活用: 状況に応じて、自助具(らくらく箸や靴べらなど)を活用することも有効です。

生活環境を整える

安全で快適な生活環境は、ADL・IADLの維持に不可欠です。以下の点に注意し、生活環境を整えましょう。

  • 整理整頓: 家の中を整理整頓し、転倒のリスクを減らしましょう。
  • バリアフリー化: 段差の解消や手すりの設置など、バリアフリー化を進めることで、安全な移動をサポートします。
  • 照明: 明るい照明は、視力低下を補い、安全な行動を促します。

まとめ

ADLとIADLの違いはご理解いただけましたか。

ADL、IADLは、どちらも複雑な動作が組み合わさっていますが、ADL訓練に比べ、IADL訓練はより複雑な動作のため、目的の動作を細分化して訓練していく必要があります。

医療・介護スタッフの基礎知識としてADLとIADLの違いを明確にしておきましょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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