ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/07/29
高齢者を対象としたサービスであれば誰しも懸念するのが転倒事故ではないでしょうか。バランス障害は病気の影響以外に、加齢による全身的な運動機能の低下によっておこると言われています。今回は、そんな高齢者の機能低下の原因と評価するポイント、バランス訓練について具体的にご紹介します。
この記事の目次
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厚生労働省老健局(平成22年)の調査によると、介護保険非認定者の23.3%の方が過去1年間で転倒経験があったと報告しています。つまり、1/5名以上の確率で転倒していることになります。
一般的なご高齢者のバランス能力の低下は、脳血管障害などにより平衡感覚が障害された疾患の障害とは異なり、加齢による全身的な運動機能の低下によって起こるとされています。その全身的な運動機能の衰えによって転倒する危険性が高くなるのです。
高齢者の運動機能の低下には、 ⑴姿勢の変化、⑵重心動揺の変化、⑶加齢的変化の大きく3つが関係しています。ご高齢者の転倒の要因でもあるこの3つの特徴を理解して転倒を予防していきましょう!
次章より、この3つの特徴について詳しく解説していきます。
参照:厚生労働省老健局 平成22年「日常生活圏域ニーズ調査 モデル事業・結果報告書」老振発第0327第2号
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高齢者の約30%が背中が丸くなる「猫背」の姿勢になります。これは、筋力が弱くなったり、骨がもろくなったりすることが原因です。猫背になると、次のような問題が起こります。
【歩幅の減少】
猫背になると、股関節の動きが制限されて歩幅が小さくなります。歩幅が小さくなることで歩行が不安定になり、転びやすくなります。
【重心の後方シフト】
背中が丸まることで、体の重心が後ろに移動します。これにより、わずかな動きでもバランスを崩しやすくなり、転倒のリスクが高まります。
参照:大高洋平. “高齢者の転倒予防の現状と課題.” 日本転倒予防学会誌 1.3 (2015): 11-20.
姿勢の変化を評価する際のポイントについて紹介します。
【側面からの観察】
【正面・背面からの観察】
次に、「重心動揺」について解説します。
重心動揺とは、人が立っている時に体の重心が揺れ動くことを指します。完全に静止しているように見えても、実際には体の重心は微妙に動いています。
姿勢を保つためには、まず情報を集めることが重要です。目で見て体の位置や周囲の状況を把握し、内耳の感覚器官が頭の動きや体の傾きを感じ取ります。また、足の裏や関節の感覚が地面との接触を感じ取り、これらの情報を脳がまとめて体の姿勢を評価します。その後、脳からの指令で筋肉が適切に働き、姿勢を保ちます。
高齢者になると、重心動揺が大きくなることがあります。感覚が低下し、目、内耳、足の裏や関節の感覚を感じにくくなったり、筋力が低下するため、姿勢を維持することが難しくなるためです。さらに、体の揺れを修正する反応が遅くなるために転倒のリスクも高まります。
重心動揺の変化を評価する際のポイントについて紹介します。
【静止立位】
【動的評価】
次に、「加齢的変化」について解説します。
加齢による身体機能の変化には、さまざまな要因が関係しています。まず、皮膚感覚や深部感覚の低下は、年齢を重ねることで一般的に見られる現象です。皮膚感覚の低下は、触覚や痛覚の鈍化を意味し、外部からの刺激に対する反応が遅れたり、感じにくくなったりします。深部感覚の低下は、筋肉や関節の動きや位置を感じ取る能力が低下することを指します。これにより、身体の位置や動きを正確に把握することが難しくなり、バランスを取るのが困難になります。
また、視覚も加齢によって大きく影響を受けます。老眼や白内障は高齢者によく見られる視覚障害で、視力の低下や視野の狭窄を引き起こします。視力が低下すると、足元の段差や障害物に気づきにくくなり、これが転倒の原因となることがあります。
さらに、加齢に伴う筋力の低下も、バランスの維持に影響を及ぼします。筋力が低下すると、身体を支える力が弱くなり、立ち上がる、歩く、座るといった基本的な動作が困難になります。特に脚の筋力低下は、歩行中のふらつきやつまずきを引き起こしやすくなり、転倒のリスクを高めます。
以上のような身体機能の変化が重なることで、高齢者のバランスは不安定になりやすく、転倒の危険性が増します。したがって、高齢者の生活環境を整える際には、これらの要因を考慮し、安全な環境を提供することが重要です。具体的には、段差をなくしたり、十分な照明を確保するなどの対策が有効です。
【加齢変化と転倒の危険性】
加齢的変化を評価する際のポイントについて紹介します。
加齢的変化を評価する際のポイントは、主に身体機能、認知機能、精神・心理状態、日常生活活動、環境、全身状態の6つに注目することです。特に重要な身体機能では、感覚機能、運動機能、バランス能力の評価が重要です。視覚や聴覚の変化、筋力や柔軟性の低下、バランス能力の低下が、日常生活にどのように影響しているかを確認しましょう。
ご高齢者の転倒予防のためのバランス評価は、ご利用者の転倒の危険性を判断するためのテストです。様々なバランス評価がある中で、今回はバーグバランススケール(BBS)をご紹介します。
バーグバランススケールは、最大スコアは56点で、カットオフ値(※1)は、0-20点でバランス障害あり,21-40点で許容範囲のバランス能力,41-56点で良好なバランス能力とされ、信頼性も高いテストです。しかし、評価項目が14項目で評価に10〜15分を要すため理学療法士などの専門職に評価してもらう必要があります。
【カットオフ値】
【病棟でのカットオフ値】
(※1)カットオフ値とは、転倒の危険性の高い郡と危険性の低い郡をわける値です。
転倒のリスクは、「身体的なもの」「認知・心理・行動的なもの」「環境的なもの」「課題や動作によるもの」など様々あり、高い精度で転倒を予測していくことは困難です。そのため、理学療法士などの専門職と共にいくつかのテストを組み合わせることで転倒の予測精度を高めていくことをお薦めします。
ご高齢者の転倒の危険性を判断するバランス評価については以下の記事でご紹介しています。もっと詳しく見たい方はこちらの記事をご覧ください。
▶︎Berg Balance Scale(バーグバランススケール)の評価方法とカットオフ値の基礎知識
ここからはご高齢者に向けたバランス訓練のやり方について詳しくご紹介して行きます。
まずご紹介するご高齢者向けのバランス訓練は、つまづく・ふらつく・滑るなどの状況において瞬時に足を踏み出したり、片脚で体重支持したり、位置を修正するための身のこなしができるためのバランス能力を獲得することが目標となります。運動の際は、バランスを崩さない範囲で足を開き、重心を「前後移動」「左右移動」させましょう。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
次にご紹介するご高齢者のためのバランス訓練は、片脚立位です。目を開けた状態での片足立ちでは、14秒以下になると運動器不安定症のリスクが高まるとされています。バランスが不安定な方は、壁や椅子などに手を添えて行うことをお勧めします。また、開眼立位が可能であれば、次に閉眼立位と難易度を高めて取り組むこともお勧めします。足をあげる際は、背中が丸くならないように意識しましょう!
【目標回数】
15秒以上×5回を目安に運動を行いましょう。
こちらのバランス訓練は、タンデム歩行と呼ばれる運動です。バランス評価の一つでもあり、治療プログラムとして応用できるトレーニングです。運動の際は、かかととつま先を付けて歩くように意識します。可能であれば、床にラインを引くなど目印を付けて訓練することをお勧めします。
【目標回数】
10歩を目安に行いましょう。
こちらのバランス訓練は、足を前後左右に一歩踏み出す「ステッピング」と呼ばれる訓練です。主に体の体重を支える太ももとお尻の筋力アップとバランスを鍛えることができます。ステップを伴うダイナミックな運動になるため、膝や股関節に痛みがない方にお勧めします。より実践的なバランス訓練として活用してみてはいかがでしょうか。
【目標回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
最後にご紹介する、ご高齢者のためのバランス訓練は、段差昇降の運動です。段差昇降は、片足で体重を持ち上げる力やバランスを鍛えることのできる応用動作です。まずは手すりを使用して安全に運動していきましょう。自宅に上がり框や階段がある方には、ぜひ取り組んでいただきたい訓練です。
【目標回数】
5往復を目安に行いましょう。
他にもバランス維持・向上に役立つトレーニングをたくさん紹介しています。いろんなバリエーションに取り組んでいきましょう。
▶【理学療法士監修】器具なしでできるバランストレーニング|高齢者のバランス能力の維持・向上に役立つ運動17選
今回は、ご高齢者のバランス評価と運動方法についてご紹介しました。
高齢者の身体機能の特徴を十分に理解した上で、少しでも根拠のある運動を選択し、運動指導をして頂ければ幸いと思います。
リハプランでは、今回ご紹介したご高齢者のバランス評価など身体機能評価について詳しくご紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。
デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。
▶︎【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新
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