自立支援介護とは|4つの基本ケア・自立支援の重要性と考え方

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更新日:2024/05/16

近年は、「自立支援」に重点を置いた介護サービスが重要視される傾向にあります。政府も介護保険制度を通じて自立支援介護を推進し、重度化防止に取り組む方針を発表しています。本記事では、具体的なケアの内容や自立支援に従事する事業所、今後の課題について解説します。

自立支援介護とは

自立支援介護とは、介護を必要としている高齢者がその方らしく生活できるように、介護サービス事業所が支援を行うことです。

平成30年度の介護報酬改定では、「自立支援・重症化防止」を軸に介護報酬の見直しが行われ、従来の「お世話をする介護」から「自立を促進する介護」という考え方に重きを置かれるようになりました。

中でも重要視されているのが、介護の三大原則である「生活の継続性」「自己決定の原則」「残存能力の活用」です。この三大原則をより重視した個別性のある支援が大切といえます。 

厚生労働省が公表している「介護予防と自立支援の取組強化について」の資料の中で、「高齢化が進展する中で、高齢者の自立した日常生活の支援、介護予防、要介護状態などの軽減に向けた保険者の取組を一層加速化することが必要」と提唱されています。

団塊の世代が75歳以上になり、介護や医療費などの社会保障費の急増が懸念されている2025年問題に向けて、介護保険費用の抑制を目的とした自立支援介護の取り組みが自治体でも盛んになることでしょう。

参照:2040年を展望した社会保障・働き方改革本部のとりまとめについて(第94回社会保障審議会障害者部会 厚生労働省)
参照:介護予防と自立支援の取組強化について(平成28年度地域づくりによる介護予防推進支援事業 厚生労働省)
参照:介護保険制度の概要(令和3年5月 厚生労働省)
参照:健康寿命延伸プラン(令和1年5月 厚生労働省)

デイサービスの自立支援と関係がある加算に「個別機能訓練加算」というものがあります。詳しく知りたい方は以下の記事からぜひチェックしてください。

▶︎初心者でもわかる個別機能訓練加算【総論】算定要件や人員配置を解説

自立支援介護の「4つの基本ケア」

自立支援介護では、国際医療福祉大学大学院の竹内孝仁教授が提唱する「水分、食事、排便、運動」という4つの基本ケアが重要視されています。

これらの基本ケアは利用者の体調を整え、活動性を高めることを目的としています。

この4つの要素を適切にバランスよく取り入れることで、利用者の健康と自立した生活の向上につながるとされています。

以下にそれぞれのケアの詳細や実践ポイントについて解説しますので、ご参考ください。

1日1500mlの水分摂取

高齢者の健康維持には水分補給が非常に重要であり、特に高齢者は水分摂取が不十分になりやすく、脱水のリスクが高まります。

身体の中の水分の多くは筋肉に含まれているため、筋肉量が減少している高齢者は体内の水分も少なくなる傾向があります。さらに、加齢によって腎機能が低下し、排出に必要な水分量(尿)が増えることも影響するでしょう。

高齢者の必要な1日の水分摂取量は1500mlとされています。

体内の水分が成人よりも少ない高齢者の脱水症状を予防するためには、こまめな水分摂取が欠かせません。

高齢者は食事量が減少したり、トイレに行く回数を減らすために水分を控えることがあるかもしれません。しかし、これらの行動が脱水につながることもあります。

介護者は高齢者の水分摂取を見守り、適切なタイミングで水分補給をサポートすることが不可欠です。

参照:「健康のために水を飲もう」推進運動(厚生労働省)
参照:高齢者のための熱中症対策(令和4年7月 厚生労働省 経済産業省 環境省)

1日1500kcalの食事

高齢者においては、栄養バランスの取れた食事をよく噛んで食べ、1日1500kcal以上の栄養を摂ることが目標とされています。適切な栄養を摂取し、適度な運動を通して体力を保つことが重要です。

高齢者の場合、認知機能の低下や嚥下機能の低下から、食事動作に何らかの不自由を抱えている方も少なくありません。

自立支援介護における食事のケアでは、利用者が自らの能力を最大限に活かして安全に食事を摂取することをサポートする視点が重要です。

「食べる」ことは精神的健康感にも大きく影響し、美味しい・楽しいといった充足感や食事を介して家族や社会とのつながり等を感じることにより、高齢者自身が自尊感情も得ることもできます。

低栄養状態を予防・改善することは、内臓タンパク質と筋タンパク質量の低下を予防し、身体機能及び生活機能の維持・向上を通じて、要介護状態や疾病の重度化への移行を予防することに寄与するとされています。

参照:QOLと食事(厚生労働省 e-ヘルスネット)
参照:高齢者にとっての「食べること」の意義(厚生労働省)
参照: 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)

1日2kmの歩行運動

自立した生活を目指すには、運動が重要ですが、無理をせずに利用者の体力に合わせて少しずつ始めることが大切です。

たとえば、寝ている時間や車いすの移動が多い場合は、10秒だけ立ってみたり、歩ける方は自力で歩く機会を増やすことから始めるほうが良いでしょう。

利用者の運動後の様子を確認しながら、段階的にレベルアップし、毎日の運動習慣を身につけられるようサポートすることが大切です。

安定した歩行ができるようになれば、散歩など1日2㎞以上の歩行を目標にします。

歩くことで全身の筋力や体力が増し、自立した生活を目指せます。しかし無理をすると体調の崩れや怪我の発生につながりかねません。

日常の中で運動を取り入れ、利用者の生活の質向上と介護者の負担軽減を目指しましょう。

参照:運動プログラム作成のための原理原則(e-ヘルスネット 厚生労働省)
参照:高齢者に適したウォーキングとは(健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団)

3日以内の自然排便

口から摂取された食べ物が便として排泄されるまでの時間は約24時間から48時間とされており、自立支援介護における排便のケアでは、3日以内の自然排便が良いとされています。

以前は、便秘の方には下剤を使って解消させることが一般的でした。しかし、下剤に頼りすぎると自然な排便のリズムや自力で排便する筋力が弱まる可能性があります。

そのため、基本的には下剤を使わずに便秘を改善する方法を考えることが大切です。

たとえば、高齢者においては1日1500mlの水分摂取を心掛けるだけでも便秘が改善されることがあります。

便意や尿意に気付きにくくオムツが必要な方も、水分摂取をしっかりと行うことで尿意や便意を感じる機能が活性化されることもあるでしょう

また、適度な運動を行い腸の動きをよくすることや腹圧をかけやすい姿勢をとることを意識することも自然な排泄には関与します。

基本ケアの「水分」「栄養」「運動」「排便」はお互いに影響し合っており、全てをバランス良く取り組むことが重要です。

参照:健康長寿と腸と排泄の関連について(健康長寿ネット 公益財団法人長寿科学振興財団)

自立支援介護の目的とメリットとは

自立支援介護では、要介護状態を未然に防ぐことや、早期の支援によって機能低下を防止し、高齢者が自立した生活を送ることが目的とされています。

身体機能や認知機能の維持・向上を促進し、日常生活の中での自己決定を尊重することで、高齢者が自分らしい生活を営むことをサポートします。

一方で、自立支援介護による要介護状態の予防や寝たきりの高齢者を減らす取り組みは、社会保障費の削減にもつながります。

高齢者が自立している状態を維持できれば、介護サービスへの金銭的負担が軽減され、経済的な側面からも効果的なケアといえるでしょう。

さらに、健康的で充実した生活を送ることで、利用者のQOL(生活の質)の向上につながるとともに、健康な高齢者の増加による社会全体への貢献が期待されます。

下記に自立支援介護を受けることのメリットを記載しますので、ご参考ください。

参照:介護保険制度の概要(令和3年5月 厚生労働省)
参照:健康寿命延伸プラン(令和1年5月 厚生労働省)

利用者のQOLの向上・介護度改善

利用者のQOL(生活の質)の向上は、自立支援介護の重要な目標の一つです。

QOLの向上は、利用者の身体的・精神的健康、社会参加、自己決定の能力、日常生活の満足度など、さまざまな側面に影響を与えます。

身体的健康への影響として、自立支援介護は適切な栄養摂取や運動の促進を通じて、利用者の身体機能を維持・向上させます。

これにより、身体の不自由さや疲労感が軽減され、日常生活の動作がスムーズに行えるようになるでしょう。また、脳のトレーニングや趣味活動などが精神的健康に寄与し、認知機能の向上や心の安定につながります。

自立支援介護によって、利用者が自己決定のできる生活を営むことで、主体性を持った「その人らしい生活」の実現につながることでしょう。

参照:高齢者のQOL(令和4年7月 公益財団法人長寿科学振興財団)

家族の介護負担軽減

自立支援介護の目的は、利用者がより自立した生活を送ることにありますが、同時に家族の介護負担を軽減することも重要な視点のひとつです。

高齢者が自分らしい生活を送るために、家族の支援が不可欠ですが、その過程で家族が介護に負担を感じることは少なくありません。

利用者が自立することで、家族にとって介護にかかる時間や費用を減らせることができ、仕事や趣味・休息などの時間が取れるようになるでしょう。

また、 家族が介護について抱えている不安やストレスを現場のスタッフと共有することで、より課題が明確化し、目標を持った自立支援介護の提供へつながることでしょう。

参照:家族介護者支援マニュアル(平成30年3月 厚生労働省)

経済的な負担軽減

自立支援介護は、介護費や医療費を抑制するという観点からも重要な役割を果たしています。

介護サービスには公的介護保険を利用できますが、1・2・3割の自己負担が必要です。

自立支援介護では、適切な栄養摂取や運動、精神的な健康状態のサポートを行うことで、要介護状態の予防や早期の支援を行います。

この予防的な取り組みによって、病状の悪化や合併症の発生を防ぐことができ、介護費や医療費の増加を抑える効果が期待されます。

また、内閣府による「QOL向上などの成長の「質」を考慮した経済と社会保障のシミュレーション」では、高齢者がより健康的で自立した生活を送るために、自立生活支援の取り組みなど早期の介入や適切な支援を行うことが介護費の抑制につながるという仮説を検証しています。

2040年頃には、いわゆる団塊ジュニア世代が高齢者となり、高齢者人口がピークを迎える一方、現役世代が急激に減少します。

このような中で「全世代型社会保障」を実現していくためには、自立支援介護などの予防・健康づくりを強化していくことも重要な視点といえるでしょう。

参照:QOL向上などの成長の「質」を考慮した経済と社会保障のシミュレーション(令和3年6月 内閣府経済社会総合研究所)
参照:健康寿命延伸プラン(令和1年5月 厚生労働省)

デイサービスにおける自立支援への取り組み

介護保険領域では「自立支援」がより重要視されてきています。

特にデイサービスにおいて自立支援を考えた際に、機能訓練や機能訓練指導員の役割は非常に重要です。

自立支援の考え方やアプローチ方法は、利用者一人ひとりの心身状況・ADL・健康状態・生活環境などを踏まえ、目標や支援方針が変わります。

また、自立支援に取り組む際に原動力の一つとしても期待されているのがICTの活用です。

ICTの積極的な活用により、書類の作成や利用者のモニタリングなどの関連業務における課題解決に役立つことが期待されています。

以下に自立支援に従事しているデイサービス事業所の取り組みやICT(RehabCloud リハプラン)導入の経緯などをご紹介しますので、ご参考ください。

参照:超高齢社会におけるICT活用の在り方(​平成25年版 情報通信白書)

ケース① 有限会社栃木ケアーズ 「デイサービスまごころ」

栃木県栃木市にある有限会社栃木ケアーズ「デイサービスまごころ」は、地域密着型の通所介護事業所です。

14名の職員のうち機能訓練指導員を兼ねた看護職員が3名在籍しています。「他所行きの姿ではなく本当の自分の姿でデイサービスに通ってもらいたい」との想いを大切にしながら日々、利用者と向き合っておられます。

2022年7月から利用者の自立支援を目指し、個別機能訓練に取り組んでおられます。2023年に開業20周年を迎え、近隣に特化型のデイサービスが増えたことと新しい取り組みを始めようとしたタイミングでのRehabCloud リハプラン導入に至りました。

以前はトレーニングマシンを設置するスペースがなかったという課題を抱えておられました。現在は100歳の利用者の身体状態が劇的に改善するなど充実した機能訓練を提供できているそうです。

ケース② 有限会社深井シーリング 「ココトレ」

静岡県静岡市にある株式会社深井シーリング「ココトレ」は、定員数18名の地域密着型の通所介護事業所です。

半日型2回転で1回3時間の利用のなかで、15分のマッサージと15分の個別機能訓練を提供している手厚いサービス内容が特徴のデイサービスです。

2022年8月に開業したタイミングからICTを積極的に取り入れ、現在は個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)、口腔機能向上加算(Ⅰ)(Ⅱ)、科学的介護推進体制加算に取り組まれています。

RehabCloud リハプラン導入により、毎月の提出業務に追われることなく、しっかりと利用者の自立支援に向き合うことができています。

ケース③ ライフケアいこま 「たけおかの郷」

鹿児島県鹿児島市にある株式会社ライフケアいこま「たけおかの郷」は、定員10名で午前、午後の2回転の通所介護事業所です。

職員数は10名で、理学療法士と柔道整復師兼鍼灸師がそれぞれ1名、柔道整復師2名、看護師1名が在籍しています。

特色は3つあり、「熱烈」「二人徒手」「カメレオン介護」とのことです。「熱烈」は、熱心な徒手を通して2大ニーズの痛み緩和と動作能力回復を図ること。「二人徒手」は常駐する2名の機能訓練指導員の視点からの評価とアプローチによる徒手を提供すること。

「カメレオン介護」は利用者一人ひとりの好みに合わせた介護サービスを提供すること。

代表取締役の生駒一樹さんが「自分が通いたいと思える介護施設を作りたい」と考え抜いた結果、3つの特色が生まれました。

個別機能訓練加算や口腔機能向上加算、LIFEの提出にもRehabCloud リハプランを積極的に活用したことで、残業時間の削減につながりました。

自立支援介護の課題と今後の方針について

厚生労働省は、これまでの団塊の世代が75歳以上となる2025年を目処に重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築の実現を目指した取り組みを推進してきました。

これまでの自立支援や介護予防に関する主な動きとしては、平成30年度の介護報酬改定において、自立支援・重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現に向けた改定が行われました。

そして、令和3年度の介護報酬改定における自立支援・重度化防止では、前回の取り組みに対して評価、見直しを行い、さらなる推進に向けて適正化を図ることが狙いとなっています。

自立支援介護の基本の考えとなっている地域包括ケアシステムは、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に確保するものであり、高齢者の健康と福祉を総合的にサポートする仕組みです。

より一層、認知症高齢者の増加が予測されることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも自立支援介護をはじめとする「自立を促進する介護」の構築が重要といえるでしょう。

一方で、地域による高齢化の進展状況の大きな差が課題となっています。

たとえば、人口が横ばいで75歳以上の人口が急増する大都市部や、高齢化が進む中で人口全体が減少している町村部では同じようには進みません。

自立支援介護を行う事業所だけでなく、地域包括ケアシステムを推進する上では、家族や地域住民、関係機関のマンパワーの面においても地域差が生じる可能性が懸念されています。

今後は介護業界が大きな展開をむかえるといわれている2025年・2040年に向けて、高齢者の健康状態のモニタリング、予防活動の推進などが重要な要素となります。

さらに、高齢者が自立した生活を送るための社会的なサポートや環境整備も重要な課題です。

これらの取り組みによって地域包括ケアシステムが実現し、自立支援介護や予防活動を通じて、高齢者のQOL(生活の質)向上や医療・介護費の抑制につながることが期待されます。

自立支援はその人らしく生きるための取り組み

今回は、自立支援介護の「基本となる4つのケア」や「今後の課題」「デイサービスにおける取り組み」についてまとめてご紹介しました。

自立支援介護の成功には利用者本人の意欲や取り組みも欠かせません。自分らしい生活を送るためには、日常の中でできる範囲での努力と習慣化が不可欠です。

基本ケアである水分補給、栄養摂取、運動、排便ケアを適切に行い、健康的な身体機能の維持・向上に努めるのが良いでしょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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