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運営指導とは?実地指導から名称変更
令和4年度に実地指導が運営指導に名称変更されました。厚生労働省は、今まで実地で行われていた指導をオンラインでも認めていく予定を打ち出しています。
そのため、必ずしも実地で指導するものでは無くなるため、実地指導の名称は運営指導に変更されました。
運営指導は、以下の3つの内容について行われます。
- 介護サービスの実施状況指導
- 最低基準等運営体制指導
- 報酬請求指導
上記の3つのうち「最低基準等運営体制指導」と「報酬請求指導」においてはオンライン等を活用できると「介護保険施設等の指導監督について(通知)の送付について」にて記載されました。
運営指導は、原則、実地にて行わなければならないとされています。ただし、実地でなくても確認できる内容についてはオンラインを活用できるようになったため、実地指導から運営指導に名称が変更されました。
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介護保険施設等に対する運営指導の標準化・効率化のポイント
令和4年3月に発表された「介護保険施設等運営指導マニュアル」における標準化・効率化のポイントは以下のとおりです。
- 集団指導は、基本的には介護保険施設等の管理者等を一か所に集合させて行うことを想定しているが、オンライン等の活用、つまり自治体のホームページへの資料の掲載や説明動画の配信等による実施も可能。
- 運営指導は実地で行うことを想定しているが、施設・設備や利用者の状況以外の実地でなくても確認できる内容の全部又は一部事項にかかる確認については、情報セキュリティの確保を前提としてオンライン等(オンライン会議システムや自治体ホームページ等)を活用することが可能。
- 「介護サービスの実施状況指導」「最低基準等運営体制指導」「報酬請求指導」の指導はこれまでと同様に、通常は同時に実施することを想定しているが、指導事務の効率化や効果、緊急性等を勘案し、それぞれ別の時期に実施することも可能。
- 継続して業務省力化や効率化の観点からも、書面から得られる情報のみを根拠とした指導は行わない。
- 運営指導においては、確認すべき内容を確認項目及び確認文書に絞ることや加算報酬について自己点検を励行する等により、介護保険施設等当たりの所要時間の短縮につながるよう工夫する。
- 運営指導においては、運営指導を行う年度の前年度から直近(おおむね1月程度前まで)の実績に係るものを対象に確認することとしており、状況に応じ、その範囲の中で一部の期間のみを対象とすることも可能である。
- 利用者へのサービスの質を確認するため、その記録等を確認する場合は、特に必要と判断する場合を除き、対象は原則として3名以内とするとともに、居宅介護支援事業所については、原則として介護支援専門員1人あたり 1名〜2名の利用者についてその記録等を確認する。
- 介護保険施設等における事務負担軽減の観点から、事前や当日に提出を求める資料(いわゆる事前提出資料や勤務表等の写し等)については、行政機関の指導担当者の人数分を用意させるようなことはしないようにし、提出さ れた文書等の保存に係る文書管理の観点からも、提出は1部のみとすることを 徹底するとともに、自治体が既に保有している文書(新規指定時、指定更新時 及び変更時に提出されているもの等)については、運営指導にあたり確認が必要であれば既に保有している文書等を確認することとし、改めて提出を求めない。
- 運営指導においては、介護保険施設等において作成、保存等が行われている各種書面について、当該書面に代えて電磁的記録により管理されている場合は、ディスプレイ上で内容を確認することとし、別途、印刷した書類等の準備や提出は求めない。
- 運営指導においては、文書等を電磁的記録により管理している場合(電磁的記録として文書等を作成するが、全て印刷した紙媒体で通常管理している場合を除く)は、行政機関の担当者が介護保険施設等側の担当者から説明を受けながら、ディスプレイ上に映し出された文書等を閲覧する方法で内容を確認する。
- 同一所在地や近隣に所在する介護保険施設等に対する運営指導については、介護保険施設等の側の都合を十分に考慮し、できるだけ同日又は連続した日程で行う等、効率的な実施計画が策定される。
- 特に介護保険の事業所として指定を受けていない有料老人ホーム等に併設した訪問介護等の事業所がある場合や、事業グループを形成するなどして同一敷地又は近隣に事業所がある場合は、人員の兼任状況等、確認すべき事項があるので、いくつかの事業所を併せて実施するよう計画される。
- 老人福祉法に基づく一般監査等、介護保険法に関連する法律に基づく指導・監査についても、自治体内で調整できれば、同時実施が可能であるため、検討する。
- 毎年定期的に提出又は報告等を求めているような事例、例えば社会福祉法人現況報告に準拠したものや、介護サ ービス事業者からの現況の報告等については、その必要性や有用性の有無について検討し、既存の資料や情報で代替又は収集可能、若しくはそもそも不要な情報である場合は、提出を課している報告等の内容の見直しや廃止を検討する。
参考:介護保険施設等運営指導マニュアル
これらの標準化・効率化をとおして、より多くの事業者を指導し、サービスの質の確保と利用者保護につなげていく方針となっています。
運営指導と監査の違いについて知りたい方は以下の記事もチェックしてみてください。
▶運営指導(旧 実地指導)とは|監査との違いを理解しよう
介護保険施設等運営指導マニュアルについて
介護保険施設等への指導は、制度を適切に運用するために重要なものです。指導は、介護保険施設等への支援を提供することを基本としていますが、最近では特に指導の方法の標準化と効率化が求められています。
そのため、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室は介護保険施設等の指導指針の内容を補完し、適切な指導を行うための参考となる「介護保険施設等運営指導マニュアル」を作成しました。
「介護保険施設等運営指導マニュアル」は、令和2年度の老人保健健康増進等事業に関する調査研究報告書を基にしています(令和3年3月、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターが公開)。
「介護保険施設等運営指導マニュアル」では「基本編」で指導に関する基本的な考え方を説明し、「実践編」では具体的な指導の方法について解説されています。
今後、自治体からの意見や具体的な実施例などを検討し、随時マニュアルの内容に反映させる予定であり、継続的に確認することが大切になるでしょう。
また、介護保険施設等実地指導マニュアルについて(平成19年2月7日付け老指発第0207001号厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長通知)及び介護保険施設等実地指導マニュアル(改訂版)について(平成22年3月31日付け老指発0331第1号厚生労働省老健局総務課介護保険指導室長通知)は、令和4年3月31日に厚生労働省老健局総務課介護保険指導室からの通知により廃止されました。
デイサービス(通所介護)の運営指導で確認する項目・必要書類チェックリスト
令和4年3月に運営指導の標準化・効率化等の運用指針が示され、各自治体において「標準確認項目」及び「標準確認文書」を検討の上、適宜反映させるものとされています。
従来の通所介護の運営指導では、確認する大まかな内容は決まっていましたが、全国での標準化はできていなかったため、実地指導者によって事業所の現地で様々な書類や設備等を確認したり、サービス内容や管理体制に対してどこまで指導項目であるのか、どこからが指導者個人の意見であるのかが不明瞭な内容もありました。徐々に「標準確認項目」以外の項目は、特段の事情がない限り行わないものとされ、「標準確認文書」以外の文書も原則求めないとされています。
ただし、運営指導を進める中で、不正が見込まれる等、詳細な確認が必要と判断する場合は、指導から監査に切り替え、「標準確認項目」及び「標準確認文書」に限定せずに、必要な文書を確認するよう指針が公表されています。
参照:介護保険施設等運営指導マニュアルについ(厚生労働省2022年3月)
デイサービスの実地指導で確認する項目・必要書類チェックリスト
介護保険施設等運営指導マニュアル指導でデイサービス(通所介護)に対して示された確認項目・確認書類をこちらで紹介します。
参照:介護保険施設等運営指導マニュアル別添1 確認項目及び確認文書(2022年3月、厚生労働省老健局総務課介護保険指導室)
通所介護における標準確認項目と標準確認文書
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の一部を改正する省令
個別サービスの質に関する事項
設備及び備品等(第 95 条)
確認項目
- 平面図に合致しているか【目視】
- 使用目的に沿って使われているか【目視】
確認文書
内容及び手続きの説明及び同意(第 8 条)
確認事項
- 利用申込者又はその家族への説明と同意の手続きを取っているか
- 重要事項説明書の内容に不備等はないか
確認文書
- 重要事項説明書(利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの)
- 利用契約書
心身の状況等の把握(第 13 条)
確認項目
- サービス担当者会議等に参加し、利用者の心身の状況把握に努めているか
確認文書
居宅介護支援事業者等との連携(第 14 条)
確認項目
- サービス担当者会議等を通じて介護支援専門員や他サービスと連携しているか
確認文書
居宅サービス計画に沿ったサービスの提供(第 16 条)
確認項目
- 居宅サービス計画に沿ったサービスが提供されているか
確認文書
- 居宅サービス計画
- 通所介護計画(利用者及び家族の同意があったことがわかるもの)
サービス提供の記録(第 19 条)
確認項目
- 通所介護計画にある目標を達成するための具体的なサービスの内容が記載されているか
- 日々のサービスについて、具体的な内容や利用者の心身の状況等を記録しているか
- 送迎が適切に行われているか
確認文書
通所介護計画の作成(第 99 条)
確認項目
- 居宅サービス計画に基づいて通所介護計画が立てられているか
- 利用者の心身の状況、希望および環境を踏まえて通所介護計画が立てられているか
- サービスの具体的内容、時間、日程等が明らかになっているか
- 利用者又はその家族への説明・同意・交付は行われているか
- 目標の達成状況は記録されているか
- 達成状況に基づき、新たな通所介護計画が立てられているか
確認文書
- 居宅サービス計画
- 通所介護計画(利用者又は家族の同意があったことがわかるもの)
- アセスメントシート
- モニタリングシート
個別サービスの質を確保するための体制に関する事項
従業者の員数(第 93 条)
確認項目
- 利用者に対し、従業者の員数は適切であるか
- 必要な専門職が揃っているか
- 専門職は必要な資格を有しているか
確認文書
- 勤務実績表/タイムカード
- 勤務体制一覧表
- 従業者の資格証
管理者(第 94 条)
確認項目
- 管理者は常勤専従か、他の職務を兼務している場合、兼務体制は適切か
確認文書
- 管理者の雇用形態が分かる文書
- 管理者の勤務実績表/タイムカード
受給資格等の確認(第 11 条)
確認項目
- 被保険者資格、要介護認定の有無、要介護認定の有効期限を確認しているか
確認文書
利用料等の受領(第 96 条)
確認項目
- 利用者からの費用徴収は適切に行われているか
- 領収書を発行しているか
- 医療費控除の記載は適切か
確認文書
緊急時等の対応(第 27 条)
確認項目
- 緊急時対応マニュアル等が整備されているか
- 緊急事態が発生した場合、速やかに主治の医師に連絡しているか
確認文書
運営規程(第 100 条)
確認項目
運営における以下の重要事項について定めているか
- 事業の目的及び運営の方針
- 従業者の職種、員数及び職務の内容
- 営業日及び営業時間
- 指定通所介護の利用定員
- 指定通所介護の内容及び利用料その他の費用の額
- 通常の事業の実施地域
- サービス利用に当たっての留意事項
- 緊急時等における対応方法
- 非常災害対策
- 虐待の防止のための措置に関する事項
- その他運営に関する重要事項
確認文書
勤務体制の確保等(第 101 条)
確認項目
- サービス提供は事業所の従業者によって行われているか
- 資質向上のために研修の機会を確保しているか
- 勤務表の記載内容は適切か
- 認知症介護に係る基礎的な研修を受講させるため必要な措置を講じているか
- 性的言動、優越的な関係を背景とした言動による就業環境が害されることの防止に向けた方針の明確化等の措置を講じているか
確認文書
- 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書
- 研修計画、実施記録
- 勤務実績表(勤務実績が確認できるもの)
- 方針、相談記録
個別サービスの質を確保するための体制に関する事項
業務継続計画の策定等(第 30 条の2)
確認項目
- 感染症、非常災害発生時のサービスの継続実施及び早期の業務再開の計画(業務継続計画)の策定及び必要な措置を講じているか。
- 従業者に対する計画の周知、研修及び訓練を実施しているか
- 計画の見直しを行っているか
確認文書
定員の遵守(第 102 条)
確認項目
確認文書
非常災害対策(第 103 条)
確認項目
- 非常災害(火災、風水害、地震等)対応に係るマニュアルがあるか
- 非常災害時の連絡網等は用意されているか
- 防火管理に関する責任者を定めているか
- 避難・救出等の訓練を実施しているか
確認文書
- 非常災害時対応マニュアル(対応計画)
- 運営規程
- 避難・救出等訓練の記録
- 通報、連絡体制
- 消防署への届出
衛生管理等(第 104 条)
確認項目
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を講じているか
- 必要に応じて衛生管理について、保健所の助言、指導を求め、密接な連携を保っているか
- 感染症又は食中毒の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会を 6 か月に1 回開催しているか
確認文書
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための対策を検討する委員会名簿、委員会の記録
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための指針
- 感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修の記録及び訓練の記録
秘密保持等(第 33 条)
確認項目
- 個人情報の利用に当たり、利用者(利用者の情報) 及び家族( 利用者家族の情報)から同意を得ているか
- 退職者を含む、従業者が利用者の秘密を保持することを誓約しているか
確認文書
広告(第 34 条)
確認項目
確認事項
苦情処理(第 36 条)
確認項目
- 苦情受付の窓口があるか
- 苦情の受付、内容等を記録、保管しているか
- 苦情の内容を踏まえたサービスの質向上の取組を行っているか
確認文書
・苦情の受付簿
・苦情者への対応記録
・苦情対応マニュアル
事故発生時の対応(第 104 条の 3)
確認項目
- 事故が発生した場合の対応方法は定まっているか
- 市町村、家族、居宅介護支援事業者等に報告しているか
- 事故状況、対応経過が記録されているか
- 損害賠償すべき事故が発生した場合に、速やかに賠償を行うための対策を講じているか
- 再発防止のための取組を行っているか
確認文書
- 事故対応マニュアル
- 市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録
- 再発防止策の検討の記録
- ヒヤリハットの記録
虐待の防止(第 37 条の 2)
確認項目
- 虐待の発生・再発防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、従業者に周知しているか
- 虐待の発生・再発防止の指針を整備しているか
- 従業者に対して虐待の発生・再発防止の研修及び訓練を実施しているか
- 上記の措置を適切に実施するための担当者を設置しているか
確認文書
- 委員会の開催記録
- 虐待の発生・再発防止の指針
- 研修及び訓練計画、実施記録
- 担当者を設置したことが分かる文書
引用:厚生労働省 介護保険施設等運営指導マニュアルについて 別添1 確認文書・確認項目一覧
確認文書
- 事故対応マニュアル
- 市町村、家族、介護支援専門員への報告記録
- 再発防止策の検討の記録
- ヒヤリハットの記録
運営指導で引っかかると監査に切り替わるので注意!
運営指導を中止して直ちに監査に切り替える必要があるとされるのは以下のようなケースとされています。
- 人員、施設設備、運営基準に従っていない状況が著しいと認められる場合又はその疑いがある場合
- 介護報酬請求について不正又は不正の疑いがある場合
- 不正の手段による指定等又はその疑いがある場合
- 高齢者虐待等がある又はその疑いがある場合
明らかな法令違反や不正、虚偽報告などがある場合、当然ながら監査へ変更されます。また、「疑い」がある場合についても監査の実施が不可欠とされています。
ただし、少しでも誤りがあった時点で監査へ変更される訳ではありません。同様の誤りが何度も続いたり、基準違反が長期に渡ったりする場合、監査に切り替わるので注意しましょう。
監査に切り替わった場合、立居入り検査の権限が行使され、事実関係の確認が行われます。
デイサービスの運営基準や人員基準、実地指導対策について知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
▶通所介護(デイサービス)の運営基準と実地指導対策
▶通所介護(デイサービス)の人員基準と設備基準・運営基準
介護記録を適切に残し、運営指導(旧 実地指導)から監査への変更を避けよう
令和4年度より、実地指導が運営指導に名称変更されました。そのタイミングで、運営指導(旧 実地指導)の時にチェックする項目や記録・書類・マニュアルなどが示され、確認する際の観点が公開されています。また、効率的な運営指導の実施がされるために参考となる内容も含まれています。事業者側としてはこれらのポイントに沿って運営や書類管理体制を整えていくことで、経営者も働く人も安心でき、ご利用者に良いサービスを提供する時間的・精神的余力が生まれることでしょう。
介護記録などに不備があり、不正等が疑われる場合は運営指導から監査に切り替わることがあります。日々の丁寧な記録や適切なデイサービスの運営が大切です。
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