QOL(生活の質)とは?|意味・評価方法・QOL向上のためのヒント を解説

現場ノウハウ

評価

更新日:2024/10/30

QOLとは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、日本語では「生活の質」などと訳されます。「生きがい」や「満足度」という意味があり、特に医療や介護など患者・ご利用者の望む生活を支える上で重要な考え方です。QOLとADL・IADLの関係性、QOLについて考える時に必要なICFの考え方なども用いて、QOLを向上させるためにはどうしたらいいのか医療・介護のスタッフの基礎知識として紹介します。

⇒「職員の業務過多・残業の改善方法」解説資料のダウンロードはこちらから

QOLとは?

QOLとは

QOLとは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称で、日本語では「生活の質」や「生命の質」と訳されます。QOLは、心身の健康や良好な人間関係、やりがいのある仕事、満足のいく教育環境、楽しみとなる余暇、快適な住環境など、生活全般における充実度や満足度を総合的に評価する概念です。さらに、QOLは個人の自由や権利が保障される社会制度など、より広範な要素も含めて評価されることがあります。

QOLは医療や介護で活用されている言葉

QOLは、もともと医療とともに発展してきた考え方ですが、最近では「介護」や「福祉」の現場にも浸透してきてよく活用されている言葉になっています。

医療現場だけでなく、介護や福祉の現場では、ご利用者様のADLIADLのケアを大切にしていますが、障害があってもその人らしい満足いく生活が営めるように「生活の質=QOL」が重要視されるようになってきています。

ご利用者様の満足度を高めるために必要なADLとQOLの考え方と関係性について知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎ADLとQOLとは?ご利用者様の満足度を高める2つの関係性

QOLが低下するとどうなる?

QOLが低下すると、日常生活や精神面にさまざまな影響が現れます。例えば、QOLが低下すると身体的な活動量が減少し、体力の低下や痛みが増すことがあります。また、精神的な影響として、気分の落ち込み(抑うつ)や意欲の低下が起こりやすくなります​。

さらに、社会的なつながりが弱くなることで孤立感が高まり、周囲との関係が希薄になりがちです。こうした身体的・精神的な問題は、結果的に経済面や生活環境にも悪影響を与えることが多いです​。

QOLの低下は生活全般に深い影響を与えるため、身体的な健康維持だけでなく、精神的な支援や社会的つながりの強化が重要となります。

⇒「職員の業務過多・残業の改善方法」解説資料のダウンロードはこちらから

QOLの概念が作られた経緯とは?

QOLの概念は、医療とともに発展してきました。医療現場では、1980年に制定された「ICIDH(国際障害分類)」が主流で、人を診るものであり病気や怪我などによって起こった障害を機能障害→能力障害→社会的不利の3つのレベルに分けて捉える、治すという考え方でした。

この場合、病気や怪我の治療だけにとらわれるため、延命治療や数回に及ぶ手術や治療のため患者様への負担が激しくなってしまい、「自ら理想とする生き方」「人間らしい生活」を鑑みることができていませんでした。

そこで重要とされたのがQOLの考え方です!

QOLでは、患者様が自身の尊厳を保ち、その人らしい満足いく生活の実現を目的とした治療・援助を目指しています。このことを「QOL(生活の質)の向上」と呼ばれ、より患者様のご希望に寄り添った医療が行われるようになったのです。

介護現場においても、怪我や病気によって障害があってもその人らしい満足いく生活が営めるように「生活の質=QOL」が重要視されるようになってきています。

QOLと合わせて知っておきたいICFの考え方

患者様のQOLを考える場合には、「生活機能」と「障害」の状況を把握する「ICF」を知っていく必要があります。ICFの考え方は、人の生活を幅広い視点から把握することができ、より良い医療・介護のサポートをする一助となります。

国際生活機能分類を指すICFについて知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎ICF(国際生活機能分類)とは|考え方や目的、ICIDHとの違いについて

また、ICFの活動と参加の項目の違いや、どちらに区別するか迷った時の分類方法などについて知りたい方は、こちらの記事をご一読ください。
▶︎ICFの 活動 と 参加 の項目の違いの具体例 分類に迷った時の考え方

QOLとADL・IADLには関係性・関連性があるのか?

患者様やご高齢者のQOLを考える上で重要なこととして挙げられるのが「ADL」です。ADLとQOLは密接な関係性があり、特に病気を抱えたご高齢者のADL能力は、生活の質(QOL)を高めるために重要と言われています。

ADLとQOLの関係性について、伊勢崎ら(1999)は以下のように報告しています。

生活満足感にはADLの食事動作が強く影響しており、各因子の影響を考慮したとき、食事動作ができるほど生活満足感が高かった。食事を自力で摂る事ができるという喜びの他に家族、親戚や親しい友人等の生活を共有する人達との関わりを保持していく「場」として、介助されずに楽しみながら食事を摂れるということが、ひとつの社会活動として生活満足感に影響していた

その他にもQOLとADLの関係性について焦点を当てた論文は数多くあります。このことからも患者様・ご高齢者のQOLを考える上で、まずADLの能力を把握することが重要といえます。 

ADLについては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ADLの評価方法とは|介護・看護・医療で把握する目的・項目や書き方を徹底解説

参照:伊勢崎 美和「高齢患者のQOLとADL(日常生活動作)との関係―主観的幸福感に焦点をあてて―

QOL評価法にはどのようなものがあるのか?

QOLの評価法として代表的なものに、SF-36(MOS 36-Item Short-Form Health Survey)があります。

QOL評価法のSF-36の特徴について

QOLの評価であるSF-36の特徴について、3つご紹介します。

  1. 包括的尺度である
    健康関連QOLを測定する包括的尺度で、様々な疾患の健康関連QOLを測定することができ、疾病の異なる患者さん間のQOLの比較が可能です。
  2. 国民標準値との比較ができる
    SF-36v2は国民標準値(2007年)が公開されていますので、それを基準にして対象群の健康状態を検討することができます。 SF-36v2日本語版マニュアルに性別・年代別の国民標準値データ(2007年)が掲載されているほか、スコアリングプログラムを使用するとより簡単に比較ができるようになります。
  3. 国際的に最も普及している健康関連QOL尺度である
    SF-36は健康状態を測る調査票として、世界中で最も普及しているものです。これは、SF-36がシンプルかつ有用であり、計量心理学的に十分な特性を持ち、入手方法も容易で、十分な量のデータの蓄積があるため。

QOL評価のSF-36の項目や点数について

QOLを評価するSF-36は、以下の8つの健康概念を測定するために36問から構成されています。

  1. 身体機能
  2. 日常役割機能(身体)
  3. 体の痛み
  4. 全体的健康感
  5. 活力
  6. 社会生活機能
  7. 日常役割機能(精神)
  8. 心の健康 


※8つの下位尺度は、単独でも使用することができますが、下位尺度得点を算出するためには、1つの下位尺度に含まれる項目を全て使用することが必要です。

詳しい点数算出方法など、包括的なQOLの評価尺度のSF-36を活用する場合は、使用手続きが必要となります。QOL評価を活用する場合は下記にお問い合わせください。
▶︎Qualitest株式会社

QOL評価法の WHO QOL-26(WHO Quality of Life 26)

WHOのQOL評価指標のひとつに「QOL26」というスケールがあります。QOL26による人の幸福状態の検査では、評価対象を2週間前までに区切っていて、アンケートのような感じで気軽にQOLの状況を把握でき、経過観察もできます。
(QOLは、26項目の質問でできています。26問でQOLを評価するということでかなり抽象的な質問ですが、世界の国・文化・年代・性別などで共通した使用ができることが確認された数少ないQOL評価スケールです。)

QOLを向上させるためにはどうしたらいいのか?

では、実際にQOL(生活の質)をあげるにはどのようにしたら良いのでしょうか?

例えば、「心身が健康で入れることが何より幸せだ」と感じる方もいれば、「家庭円満」「やりがいのある仕事が続けられる」こと、楽しみである「遊び・余暇」ができることなどに満足感を感じる方もいるため、QOL(生活の質)の価値観は、一人一人によって異なります

そのため、QOLの向上を目指すためには、まずは「想いを聴取(情報収集)」を行ない、どのようなことを求めているのか深く知り、アセスメントする必要があります。その上で、その人が望む満足いく生活が営めるように検診的な看護・ケアを行っていくことが重要です。人により価値観が異なり、積極的にコミュニケーションをとって寂しさを補っていくことでQOLが上がる方もいれば、逆にストレスに感じて憂鬱な気持ちになりその結果QOLが下がってしまう方もいます。

対象者の興味や関心があること、望んでいることを聴取する方法に「興味関心チェックシート」があります。このシートは、対象者が望んでいる日常生活動作や家事動作、趣味・余暇活動、スポーツ、社会参加などを把握することができるチェックシートです。情報収集が苦手な方はこちらのシートの活用がお勧めです。

高齢者のQOL改善・向上のために日頃から取り組めること

高齢者が健康的で充実した日常を送るためには、身体的・精神的な健康を維持することが重要です。ここでは、日々の生活に取り入れることで高齢者のQOLを改善・向上させる具体的な方法を紹介します。

栄養バランスの取れた食事を摂る

栄養バランスの良い食事は、体の健康だけでなく心の健康にも影響を与えます。特に高齢者は筋肉の減少や骨の脆弱化が進むため、たんぱく質やカルシウム、ビタミンDなどの栄養素を意識的に摂取することが大切です。また、食事の際に楽しく食べられる環境を整えることも、食欲を増進させる重要なポイントです。

口腔機能を鍛える

食べる、話す、笑う、呼吸するなどの口腔機能は、高齢者のQOLに深く関わります。これらの機能を維持するためには、日常的に口周りの筋肉を鍛えることが効果的です。口腔体操などのトレーニングは、嚥下機能や発音の改善に寄与し、コミュニケーション能力の向上にもつながります。また、口腔ケアの実践は誤嚥性肺炎のリスクを低減するため、衛生管理にも意識を向ける必要があります。

適度な運動・筋トレをする

筋力低下を防ぐためには、日常的な運動が欠かせません。ウォーキングや軽い筋力トレーニングを取り入れることで、身体機能を維持し、転倒リスクを減少させることができます。特に下肢の筋力を強化することは、立ち座りや移動の負担軽減に役立ち、日常生活の自立をサポートします。無理のない範囲で、継続的な運動習慣を持つことがポイントです。

さまざまな人と良好なコミュニケーションを取る

社会的なつながりを持ち続けることは、精神的な安定に繋がります。家族や友人、地域のコミュニティと定期的に交流し、他者との関わりを持つことは、孤立感を防ぎ、心の健康を維持するために非常に重要です。

趣味など好きなことに没頭できる時間を作る

趣味に没頭する時間は、心の充実感やリフレッシュに繋がります。例えば、手芸や絵画、ガーデニング、音楽鑑賞など、好きな活動を続けることは、ストレスの軽減や自己表現の場となり、認知機能の維持にも効果があります。定期的に楽しい時間を作ることは、生活に彩りを与える大切な要素です。

良質な睡眠を取る

良質な睡眠は、身体の回復や認知機能の維持に欠かせません。適切な寝具や睡眠環境を整え、規則正しい生活リズムを保つことが、深い睡眠を促します。日中に適度な運動を取り入れることで、夜の眠りが深まり、翌日の活力につながります。睡眠の質を高めることは、全体的な生活の質を向上させるための基本です。

QOLについてのまとめ

医療や介護現場で働く私たちスタッフの役割は、ご利用者様が心身ともに健康で、満足いく生活が営めるように支援することです。介助の技術やケアの技術、コミュニケーション技術ももちろん大切なことですが、その根本はご利用者様のQOLの向上にあります。

そのため、今回ご紹介したようにQOLの考え方を理解した上でADLの把握、興味関心の聴取を行ない、ご利用者様が望む生活が送れるようにQOLの向上を目指した関わりができるようにしていきましょう!

加算算定、書類業務でお困りならRehab Cloudがおすすめ

日々の加算算定業務や記録業務などで苦労されている人も多いのではないでしょうか?科学的介護ソフト「Rehab Cloud」であれば、現場で抱えがちなお悩みを解決に導くことができます。

例えば、加算算定業務であれば、計画書作成や評価のタイミングなど、算定要件に沿ってご案内。初めての加算算定でも安心して取り組めます。さらに、個別性の高い計画書は最短3分で作成できます。

記録した内容は各種帳票へ自動で連携するため、何度も同じ内容を転記することがなくなります。また、文章作成が苦手な方でも、定型文から文章を作成できるので、簡単に連絡帳が作成できるなど、日々の記録や書類業務を楽にする機能が備わっています。

⇒資料のダウンロードはこちらから

<!-- --> <!-- -->

この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

関連記事