ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/10/31
認知症テストで知られる長谷川式認知症スケール(HDS-R)評価方法、点数の付け方、カットオフなどを知っていますか?HDS-Rは、年齢、見当識、記憶、計算、逆唱、語想起などの評価項目を質問する認知症テストです。ここでは、日本の医療・介護現場で幅広く活用されている長谷川式認知症スケール(HDS-R)の評価方法、MMSEとの違いなどをご紹介します。
この記事の目次
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HDS-R((長谷川式簡易知能評価スケール)とは、認知症の疑いや認知機能の低下を早期に発見することができるスクリーニングテストです。
1974年に長谷川氏が開発し、1991年に「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」として質問項目と採点基準等を改訂、現在の評価項目となりました。
以前は認知症のことを痴呆症と呼んでいましたが、認知症という言葉に統一したことに伴い、現在は「長谷川式認知症スケール」という名称となり、日本では「長谷川式」や「エイチディーエスアール(HDS-R)」と呼ばれていることが多いようです。
※文献等では現在も長谷川式簡易知能スケールという名称が使用されているため、記事上も混在しています。
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HDS-Rの所要時間は、5分〜10分程度です。
医療現場で働く医師だけでなく、介護現場で働く看護師やリハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、介護職員などが評価を行うなどいろいろな領域で活用されています。比較的短時間で検査できるため、幅広い分野で採用されているのが特徴といえるでしょう。
HDS-R(長谷川式)とともに認知症のスクリーニング検査として知られている評価方法に「MMSE」があります。
MMSEとはミニメンタルステート検査(Mini Mental State Examination)の略称で、見当識・記憶力・計算力・言語能力・図形的能力を含めた認知機能をテスト形式で30満点で評価します。
「全11問」、所要時間は「10〜15分」程度で認知症の疑いを判断できるテストです。
MMSEは世界標準のテストとして普及しているのが大きな特徴です。日本ではHDS-R(長谷川式)とMMSEの2つの認知症テストが医療・介護現場で活用されています。
MMSEについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
▶︎MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?認知症テストのやり方・評価項目・注意点
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HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、9つの評価項目から構成されています。それぞれの項目に見当識や記憶、計算など認知機能を評価するために重要な要素が含まれています。
上図のHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)のひな形はこちらからダウンロードできます。ぜひご活用ください。
▶︎【HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)ひな形】はこちらからダウンロード
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HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は、全9項目の30点満点で採点します。
カットオフ値は以下の通りです。
20点以下/30点:認知症の疑いがあると判断される
※ただし、この点数だけで認知症と診断されるものではありません。あくまでも疑いがあるというスクリーニングテストとしての判断ができるだけです。もしも、認知症の疑いがあれば、医療機関できちんと診断してもらうことをお勧めします。
重症度別平均得点は以下のようになっています。
論文の中でこのような記載はあるものの、HDS-Rは認知症のスクリーニングを目的に作成されたものであり、得点による重症度分類は行わないとされています。そのためこの点数の扱いは慎重に行う必要があるでしょう。
参考文献:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成 加藤伸司他 老年精神医学雑誌 2 (11) 1339-1347, 1991.
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価は、事前に以下の物品を準備することですぐに検査を始めることができます。
実際にHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の評価を行う場合は、以下の点に注意して進めていきましょう。
それでは、ここからはHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)評価の9項目に沿って具体的な評価方法を解説していきます。
【問い】
「年齢はいくつですか?」と質問する(2年までの誤差は正解)
【点数】
1点 or 0点:本人の年齢が答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
以前は3〜4年の誤差も正答とみなしていましたが、基準が曖昧なため、現在は2年までの誤差を認めています。誕生日や干支を言えるが年齢を答えられない場合は、まずそれを認めた上で再度質問します。データによると、非認知症の方は正答率が100%、認知症の方は45%となっています。
【問い】
⑴今日は何年ですか
⑵何月ですか
⑶何日ですか
⑷何曜日ですか
【点数】
1点 or 0点:年が答えられたら正解
1点 or 0点:月が答えられたら正解
1点 or 0点:日にちが答えられたら正解
1点 or 0点:曜日が答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
日時の見当識を確認する際は、「今日は何年の何月何日何曜日ですか」と一度に聞くのではなく、年・月・日・曜日をそれぞれ分けてゆっくりと質問します。機械的に質問するとテストのように感じさせるため、「今日は何曜日ですか?」や「今日は何月何日ですか?」のように順番を変えて聞く方が抵抗感が少ないです。特に、入院中や施設で生活する人は日時の見当識が曖昧になりやすいですが、週の活動予定などから曜日を把握している場合もあるため、細かく評価します。
【問い】
「私たちが今いるところはどこですか?」と質問する
【点数】
2点:自発的に正解する
1点:家ですか?病院ですか?施設ですか?などのヒントより選択して正解する
0点:いずれも間違える
【HDS-Rの評価ポイント】
入院患者や施設利用者は、場所の名前を答えられない場合もありますが、病院や施設、自宅などを理解していれば正答とします。質問の意図を十分に伝えることが重要で、必要に応じてヒントを出しますが、ヒントは必ずしも「家・病院・施設」にこだわる必要はありません。
【問い】
⑴「これから言う3つの言葉を言ってみてください」と指示し「桜・猫・電車」または「梅・犬・自動車」を提示する
⑵答え終わったら「後でまた聞きますのでよく覚えておいてください」と指示する
【点数】
1点 or 0点:「桜」と答えたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
もし正解できなければ、正しい答えを教え、覚えてもらいます。覚えられない場合、最大3回まで提示します。再検査時には異なる系列を使うことが推奨されますが、これらの言葉は置き換えてはいけません。
【問い】
⑴「100から7を順番に引いてください」と指示する
⑵計算ができたら「それからまた7を引くと」と指示する
【点数】
1点 or 0点:「93」と答えられたら正解
1点 or 0点:「86」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
最初の計算で間違えた場合は終了し、次の問題に進みます。計算問題は検査らしく感じさせないために、「簡単な引き算をします」と柔らかい表現で始めるとよいです。この問題は、短期記憶とワーキングメモリーを評価し、アルツハイマー型認知症では2回目の質問で誤答が増えます。
【問い】
「私がこれから言う数字を逆から行ってください」と指示します。
⑴「6-8-2」
⑵「3-5-2-9」
【点数】
1点 or 0点:「2-8-6」と答えられたら正解
1点 or 0点:「9-2-5-3」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
練習として「1-2-3を逆から言うと?」と質問するとよいです。もしそのまま「1-2-3」と答えた場合は、「そうですね、では逆から言ってみましょう」と再度練習させます。逆唱ができない場合は、問題を終了して次に進みます。
【問い】
「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と問4で覚えてもらった「桜、猫、電車」または「梅、犬、自動車」を答えてもらう。
【点数|問い】
1点 or 0点:「桜」と答えられたら正解
1点 or 0点:「猫」と答えられたら正解
1点 or 0点:「電車」と答えられたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
ヒントは「植物の名前」「動物の名前」のように1つずつ与え、まとめて出してはいけません。また、HDS-Rでは、第4問(言葉の記憶)、第5問(計算問題)、第6問(数字の逆唱)、第7問(遅延再生)は、順番通りに進める必要があります。
【問い】
「これから5つの品物を見せます、それを隠しますので何があったか言ってください」と指示し、5つ物品を提示します。
【点数|問い】
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
1点 or 0点:5つのうち1つの物品名を思い出せたら正解
【HDS-Rの評価ポイント】
品物は必ずしも「時計、タバコ、ペン、硬貨」でなくてもよく、相互に無関係なものを選びます。品物を並べながら名前を言い、被験者にも復唱させます。被験者が別の名称で答えた場合、そのままその言葉を使用します。
【問い】
「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」と指示する。
【点数|問い】
0点:0〜5個以内しか答えられない場合
1点:6個を答えられた場合
2点:7個を答えられた場合
3点:8個を答えられた場合
4点:9個を答えられた場合
5点:10個を答えられた場合
【HDS-Rの評価ポイント】
この問題は、野菜の知識ではなく、言葉がスムーズに出てくるかを評価します。被験者の言葉を途中で遮らず、重複や野菜以外の名前が出ても「どんどん言ってください」と促します。正確さにこだわらず、検査後には「野菜はお好きですか?」と会話を続け、検査の緊張を和らげることが大切です。
認知症検査を行う際、検査者は被験者に対していくつかの重要な配慮をする必要があります。以下に、具体的な配慮点を説明します。
検査を行う前に、被験者の体調や疲労度を確認し、無理をさせないようにします。体調が悪いと正確な結果が得られないことがあるため、体調に合わせて柔軟に対応することが重要です。
検査を行う場所は、被験者が落ち着いて集中できる環境であることが求められます。静かでリラックスできる場所を選び、外部からの雑音や他者の介入がないようにすることが大切です。
検査は、被験者が嫌がっている場合や不安を感じている場合に強制的に行わないことが重要です。無理に行うと、正確な結果が得られないだけでなく、被験者にストレスを与える可能性があります。
HDS-Rは認知症のスクリーニング検査のため、検査結果だけで認知症と判断することはできません。あくまで検査は1つの指標であり、他の要因や診断結果と総合的に判断する必要があります。
HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)の他にも認知症のテストとして類似する検査に、MMSEがあります。
主な違いは以下の通りです。
MMSE | HDS-R | |
---|---|---|
検査項目 | 11項目 | 9項目 |
検査内容 | 見当識即時想起注意と計算能力遅延再生(短期記憶)言語的能力図形的能力(空間認知) | 見当識即時記憶計算力遅延再生(記憶力)視覚記憶語想起・流暢性 |
判定方法 | 21点以下/30点満点が認知症の疑い22〜26点/30点満点が軽度認知障害(MCI)の疑い | 20点以下/30点満点が認知症の疑い |
MMSEの場合、検査に図形模写などの動作性のテストを含むため、ペンを握ったり字が書けることが前提となります。そういった面では、HDS-Rは口頭での質問事項で検査ができるので比較的容易にテストをすることができます。
さらに、評価項目の違いを見てみると、MMSEは「口頭指示」「書字」「図形模写」など、言語機能や空間認知機能を必要とする項目があります。これらの認知機能の低下は、主に脳血管性認知症などに現れやすい項目のため、MMSEの点数が極端に低い場合は、脳血管性認知症の疑いがあると考えることができます。
一方、HDS-Rは「記憶力」を中心とした質問形式で構成されています。そのため、HDS-Rの点数が低い場合は、アルツハイマー型認知症の可能性を疑うことができます。
HDS-R は認知症に特化した検査、MMSEは脳血管性認知症の疑いも現れる検査、と位置付けることができるでしょう。
MMSEの詳しい検査方法や評価項目は、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
▶MMSE(ミニメンタルステート検査)とは?認知症テストのやり方・評価項目・注意点
HDS-RやMMSEの他にも認知症テストがあります。ここでは、その他のさまざまな認知症テストをご紹介します。
Mini-Cogは、3語の即時再生と遅延再生と時計描画を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は2分程度です。カットオフ値は、2点以下で認知症疑いが判定されます。
MoCA(Montreal Cognitive Assessment)またはMoCA-J(Japanese version of MoCA)は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識を組み合わせたスクリーニング検査で、所要時間は10分程度です。カットオフ値は、25点以下がMCI(軽度認知症)と判定されます。MoCAはMMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害を見出すことができるのが特徴です。
DASC-21 ( 地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート ) は、認知機能障害と生活機能障害(社会生活の障害)に関連する行動の変化を評価する尺度で、21項目・所要時間は5〜10分程度です。
※これらの認知症テストは、いずれもスクリーニング検査のため、検査の目的、所要時間などの施設の状況に応じて検査を選択してください。
認知症の判定基準に「認知症高齢者の日常生活自立度」があります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
▶︎認知症高齢者の日常生活自立度とはなに?初心者でも分かる判定基準
HDS-Rの評価方法やMMSEとの違いはご理解いただけましたか?
団塊の世代が75歳以上を迎える2025年には、日本の高齢化率はますます高くなります。それに伴い認知症の疑いを検査するHDS-RやMMSEの検査の頻度も増えてくることが予想されます。今のうちから正しい評価方法を理解して、現場で測定できる力をつけていきましょう。
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▶【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新
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