ADLとIADLの違いとは |介護における定義・項目・アセスメント・評価の違い
現場ノウハウ
2024/11/06
現場ノウハウ
評価
更新日:2024/11/01
認知症テストで知られるMMSE(ミニメンタルステート検査)とは、認知機能の言語的能力や図形的能力(空間認知)を含め、簡易に検査できる30点満点のテストです。今回は、認知症のテストとして世界的に活用されているMMSEの評価方法やカットオフ値、点数(score)の採点ポイントについてご紹介します。
この記事の目次
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MMSE(ミニメンタルステート検査)とは、Mini Mental State Examinationの略語で、日本語では「精神状態短時間検査」と呼ばれる認知症のスクリーニングテストです。
MMSEはもともと世界的に最も広く使用されている認知症のスクリーニング検査であり、2006年に新たに日本版であるMMSE-J(翻訳・翻案:杉下守弘)が作成され、日本でも認知症の検査として広まりました。
MMSEの評価項目は全11問、約10〜15分程度で認知症の疑いを判断することができます。
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MMSEのメリット・デメリットについて紹介します。
MMSEは短時間で実施でき、15分程度で完了します。
MMSEは多くの臨床現場で使われ、広く標準化されているため、信頼性の高い診断ツールとして活用されています。
時間や場所の見当識、記憶、注意、計算、言語など、認知機能の複数の側面を評価することができます。
MMSEは認知症の初期段階や軽度の認知機能低下を早期に発見するのに有用です。
MMSEは簡易検査であるため、認知機能の細かな変化や特定の機能障害を詳しく評価することができません。
中・重度の認知機能障害の発見には有効ですが、軽度の認知障害を適切に把握できない場合もあります。
何度も同じ検査を行うと、被験者が問題に慣れてしまい、学習効果によってスコアが向上することがあり、正確な評価が困難になることがあります。
MMSEの評価項目は11項目の検査で構成されています。それぞれの項目に「時間の見当識、場所の見当識、即時想起、注意と計算能力、遅延再生(短期記憶)、言語的能力、図形的能力(空間認知)」といった7つの認知機能を評価するための重要な要素が含まれています。
【MMSEの評価項目】
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MMSEの点数とカットオフ値は以下の通りです。
21点以下/30点:認知症の疑いがあると判断
22〜26点/30点:軽度認知障害(MCI)の疑いがあると判断
ただし、MMSEはあくまでもスクリーニングテストであり、その役割は「認知機能の低下の早期発見」です。 上記のカットオフ値だけで認知症や軽度認知障害(MCI)と正式に診断されるものではありません。
また、不安であれば専門病院を受診し、血液検査や脳の CT・MRI で二次性の脳機能低下を除外しておきましょう。
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MMSEで評価をする前は、以下の物品を準備することですぐに検査を始められます。
MMSEを利用して評価する際は、以下のポイントに注意しましょう。
ここからはMMSE評価の11項目に沿って、具体的な評価方法・点数(score)を採点するポイントをご紹介します。
まず、「時間の見当識」の検査として以下の4つの質問を行います。
【 点数 | 問い 】
1点 or 0点:今日は何日ですか
1点 or 0点:今年は何年ですか
1点 or 0点:今の季節は何ですか
1点 or 0点:今日は何曜日ですか
1点 or 0点:今日は何月ですか
※最初の質問で、被験者の回答に複数の項目が含まれていても良い。その場合、該当する項目の質問は省く。
【MMSEの評価ポイント】
次に、MMSEの2つ目の評価項目の「場所の見当識」の質問を5つ行います。
【 点数 | 問い 】
1点 or 0点:ここは何県ですか
1点 or 0点:ここは何市(町・村・区など)ですか
1点 or 0点:ここはどこですか(施設や建物の名前など)
※(回答が地名の場合、この施設の名前は何ですか、と質問を変える。正答は建物名のみ)
1点 or 0点:ここは何階ですか
1点 or 0点:ここは何地方ですか
【MMSEの評価ポイント】
次に、MMSEの3つ目の評価項目の「即時想起(記銘)」の課題を1つ行います。
【問い】
⑴私がこれから言う言葉を繰り返し言ってください。
例)「『さくら、ねこ、電車』はい、どうぞ」
※テスターは3つの言葉を1秒に1つずついう。その後、被験者に繰り返させ、この時点でいくつ言えるかで得点を与える
※正答1つにつき1点、合計3点満点
⑵今の言葉は、後で聞くので覚えておいてください。
【点数】
1点 or 0点:桜
1点 or 0点:猫
1点 or 0点:電車
【MMSEの評価ポイント】
続いて、MMSE評価の中でも「注意と計算能力」を評価する課題を行います。
【問い】
⑴「100から順に7をくり返し引いてください」
※5回くり返し7をひかせて、正答1つにつき1点。合計5点満点
正答例:93 86 79 72 65
⑵ 答えられたら「それからまた7を引くと?」と5回繰り返す
【点数】
1点 or 0点:93
1点 or 0点:86
1点 or 0点:79
1点 or 0点:72
1点 or 0点:65
【MMSEの評価ポイント】
次に、「遅延再生(短期記憶)」を評価するMMSEの課題を行います。
【問い】
さっき私が覚えてもらった言葉は何でしたか?
※設問3で覚えてもらった3つの言葉
【点数】
1点 or 0点:桜
1点 or 0点:猫
1点 or 0点:電車
【MMSEの評価ポイント】
次に、「物品呼称」を評価するMMSEの課題を行います。
【問い】
⑴時計(又は鍵)を見せながら「これは何ですか?」
⑵鉛筆を見せながら「これは何ですか?」
※正答1つにつき1点。合計2点満点
【点数】
1点 or 0点:時計または鍵
1点 or 0点:鉛筆またはペン
【MMSEの評価ポイント】
続いて「読字・復唱」を評価するMMSEの課題を行います。
【問い】
今から私が言う文章をくり返して言ってください「みんなで、力を合わせて綱を引きます」
※口頭でゆっくり、はっきりと言い、繰り返させる。1階で正確に答えられた場合1点
【点数】
1点 or 0点:みんなで、力を合わせて綱を引きます
【MMSEの評価ポイント】
続いて、MMSEの8つ目の「言語理解」の課題を実施します。
【 点数 | 問い 】
1点 or 0点:右手にこの紙を持ってください
1点 or 0点:それを半分に折りたたんでください
1点 or 0点:それを私にください
※紙を前に置いた状態で指示を始める
【MMSEの評価ポイント】
続いて、MMSEの9つ目の課題である「文章の理解」を実施します。MMSEの評価項目のうち、9問目、10問目、11問目は用紙を相手に提示する設問のため別用紙として印刷しておくとよいでしょう。
【問い】
この文を読んで、この通りにしてください「目を閉じてください」
【点数】
1点 or 0点:実際に目を閉じれば1点を与える
【MMSEの評価ポイント】
音読でも黙読でも構わない。
続いて「文章構成」の課題を提示します。
【問い】
「ここに何か文章を書いてください」と指示し、MMSEの評価用紙と鉛筆を渡します。
【点数】
1点 or 0点:文章が書ければ1点を与える
【MMSEの評価ポイント】
最後に、MMSEの11項目である「図形的能力(空間認知)」の課題を実施します。
【問い】
「この図形を正確にそのまま書き写してください」と指示し、MMSEの評価用紙と鉛筆を渡します。
【点数】
1点 or 0点:図形が正しく書ければ1点を与える
【MMSEの評価ポイント】
認知症検査を行う際には、被験者の心理的・身体的な状況に配慮し、検査の進行において適切な環境や態度を保つことが重要です。以下に、検査時に配慮すべき点について説明します。
検査前には必ず被験者の体調を確認し、無理をさせないようにします。特に疲労やストレスがある場合は、検査結果に影響が出ることがあるため、必要であれば検査のタイミングを調整します。
検査を行う環境は、静かで集中できる場所を選ぶことが重要です。外部からの音や人の出入りが少なく、被験者がリラックスして検査に臨める環境を整えます。
検査は被験者が不安や抵抗を感じている場合、強制的に実施してはいけません。被験者がリラックスして自然な形で検査を受けることができるよう、適切な説明と配慮を持って進行します。
MMSEの結果だけで認知症と判断することはできません。これはあくまで1つの指標であり、他の診断方法や検査結果と併せて総合的に判断することが必要です。
MMSEの他にも認知症のテストとして類似する検査に、HDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)があります。
主な違いは以下の通りです。
MMSE | HDS-R | |
---|---|---|
検査項目 | 11項目 | 9項目 |
検査内容 | 見当識即時想起注意と計算能力遅延再生(短期記憶)言語的能力図形的能力(空間認知) | 見当識即時記憶計算力遅延再生(記憶力)視覚記憶語想起・流暢性 |
判定方法 | 21点以下/30点満点が認知症の疑い22〜26点/30点満点が軽度認知障害(MCI)の疑い | 20点以下/30点満点が認知症の疑い |
MMSEの場合、検査に図形模写などの動作性のテストを含むため、ペンを握ったり字が書けることが前提となります。HDS-Rは口頭での回答だけで検査ができるので比較的容易にテストをすることができます。
さらに、評価項目の違いを見てみると、MMSEは「口頭指示」「書字」「図形模写」など、言語機能や空間認知機能を必要とする項目があります。これらの認知機能の低下は、主に脳血管性認知症などに現れやすい項目のため、MMSEの点数が極端に低い場合は、脳血管性認知症の疑いがあると考えることができます。
一方、HDS-Rは「記憶力」を中心とした質問形式で構成されています。そのため、HDS-Rの点数が低い場合は、アルツハイマー型認知症の可能性を疑うことができます。
HDS-R は認知症に特化した検査、MMSEは脳血管性認知症の疑いも現れる検査、と位置付けることができるでしょう。
HDS-Rの詳しい評価項目や診断基準は、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。
▶︎【認知症検査】長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは|MMSEとの違い・評価項目・診断基準
MMSEの評価以外にもさまざまな認知症の評価・判定方法があります。その一部をご紹介します。
テスト名 | 詳細 |
---|---|
Mini-Cog | Mini-Cogは、3語の即時再生と遅延再生と時計描画を組み合わせたスクリーニング検査です。所要時間は2分程度。カットオフ値は2点以下で認知症疑いが判定されます。 |
MoCA | MoCAまたはMoCA-J(Japanese version of MoCA)は、視空間・遂行機能、命名、記憶、注意力、復唱、語想起、抽象概念、遅延再生、見当識を組み合わせたスクリーニング検査です。所要時間は10分程度。カットオフ値は、25点以下がMCI(軽度認知症)と判定されます。MoCAはMMSEよりも糖尿病患者の認知機能障害を見出すことができるのが特徴です。 |
DASC-21(地域包括ケアシステムにおける認知症アセスメントシート) | DASC-21は、認知機能障害と生活機能障害(社会生活の障害)に関連する行動の変化を評価する尺度で、21項目の質問の検査です。※所要時間は5〜10分程度です。 |
名前 | 詳細 |
---|---|
認知症高齢者の日常生活自立度 | ご高齢者の認知症の状態について、日常生活の自立度を9段階で簡単に判断する評価です。「障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)」とともに、介護保険の要介護認定などの認定調査や主治医意見書などに活用されています。 |
MMSEの評価項目やカットオフ値について詳しくご紹介しました。
日本の高齢化率は2025年に向かって増え続け、それに伴って認知症の数もどんどん増えていくと思われます。そのためこれらの介護現場ではMMSEを活用して、認知症の早期発見に務めていくことも重要となるでしょう。
認知症対応型通所介護の特徴とサービス内容について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎認知症デイサービス(認知症対応型通所介護)とは?他のデイサービスとの違い
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