清拭の効果と目的・最適な温度とは?介護初心者のための豆知識

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介助

更新日:2024/10/15

全身や体の一部分の拭く清拭(せいしき)は、お風呂に入れない方の清潔を保つために必要なケアの1つです。いつも当たり前に行なっている清拭ですが、どのような効果・目的があるか知っていますか?今回は、清拭の効果とその目的、清拭の最適な温度について詳しくご紹介します。介護初心者の基礎知識としてご覧ください。

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清拭とは

一般的に清拭(せいしき)とは、身体の一部または全身を拭くことで身体の清潔を保持するケアとして医療や介護現場で行われています。

清拭は、主に全身浴やシャワー浴ができない全介助の方や創傷(皮膚に生じた傷)がある方などに行われます。

清拭の手順と注意点についてはこちらにてまとめてご紹介しています。
▶︎清拭はどうすればいいの?清拭の手順と注意点の基礎知識

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清拭の効果について

ご高齢者や患者様に全身を拭く「清拭」をすることで、さまざまな効果があるとされています。ここでは、清拭の効果についてご紹介します。

  • 皮膚の清潔を保持する効果
  • 皮膚トラブルの早期発生
  • 悪化を予防する効果
  • 入浴での疲労感を最小限にする効果
  • リラクゼーション効果

このような効果がある清拭は、看護や介護のケアとして行われます。このようなケアを行うためには「看護計画」や「サービス計画」にその目的を明確に記載しておかなければなりません。


▼足を洗ったり、拭いたりする清拭の1つに足浴があります。足浴の効果と最適な温度については以下の記事でご紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。

【関連記事】
足浴の効果と最適な温度とは?介護初心者のための豆知識
足の清拭の方法である「足浴」の効果と最適な温度について簡単に解説します。

清拭の目的について

医療や介護の現場で患者様やご利用者様にケアを行う場合は、「看護計画」や「サービス計画」にそのケアの目的を記載する必要があります。そこで、ここでは計画の参考になる清拭の目的をご紹介します。

  • 全身状態の観察(発赤・発疹・褥瘡・浮腫・乾燥・掻痒感・創部の状態・出血の有無・痛みの有無・腹部症状など)
  • 皮膚に付着する細菌、汚れを落とし、清潔を保持する
  • 皮膚機能を円滑に保ち、血液循環を良くする
  • 褥瘡などの皮膚トラブルの早期発見
  • 感染の予防
  • ストレスの緩和、気分転換
  • QOL(※1)の保持

(※1)Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)=QOLとは、人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念です。詳しくは下記の記事をご覧ください。

【関連記事】
QOLとは?患者様が求める生活を支援するQOLの基礎知識
QOLの考え方や評価方法について簡単にご紹介します。

清拭の最適な温度とは

では実際に、清拭を行う場合の最適なお湯の温度についてご紹介します。

清拭の最適な温度について、野村ら(1992)は以下のように報告しています。

爽快感を得る、身だしなみを整える、外観を美しく保つという心理面への影響については、湯の温度や拭く速度との関係が報告されているが充分な結果とはいえなかった。

このことからも明確なお湯の温度は定められていないものの、「清拭でタオルを絞った温度が、お湯の温度よりも8〜10℃低下する」また「タオルは一回拭く毎に1℃低下する」を考慮すると、清拭で準備するお湯の温度は『50〜55℃』が適温と考えられます。

つまり、50〜55℃のお湯を準備し、タオルを浸して絞ると清拭を行うときには冷めて「約40〜42℃」となり、心地よい温度のタオルで拭くことができます。

また、清拭で使用するタオル(ウォッシュクロス)は、一回拭く毎に1℃低下するため、体温より温度が下がらないように「3回」ほど拭いたら、再度、お湯につけてタオルを温めて使用するようにしましょう!

参照:野村志保子, et al. “看護技術を支える知識に関する一考察: 全身清拭の文献を通して.” 順天堂医療短期大学紀要 3 (1992): 1-12.(平成29年11月2日アクセス)

まとめ

清拭の効果と目的、最適な温度は理解していただけましたか?

清拭は、心臓疾患など身体への負担がかけれない方、体が思うように動かせずお風呂に入ることのできない方にとって全身の皮膚の清潔を保つために重要なケアです。 

日々、時間に追われる医療・介護現場ですが、ご利用者様が羞恥心なく、気持ちよく清拭をしてもらえるように介護士や看護士が正しい知識を持ってご利用者様のケアにあたっていただけると幸いです。


▼清拭は、入浴方法の1つです。清拭の知識と合わせて「入浴介助の方法」について学んでみませんか?詳しくはこちら。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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