介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
運営ノウハウ
経営
更新日:2024/09/13
高齢者の医療・介護支援を提供するために地域一帯が取り組むための仕組みのことを「地域包括ケアシステム」といいます。この記事では地域包括ケアシステムの理解を深めたい方のために、概要や背景、構成要素や具体的事例などを多数紹介しています。
この記事の目次
「地域包括ケアシステム」とは、要介護状態になっても地域内で自分らしく暮らし続けられるサービス体制を指します。
具体的には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる2025年をめどに「住まい」「生活支援」「介護予防」「介護」「医療」が一体的に提供される仕組みづくりのことです。
「医療」「介護」などの公的サービスや、「配食サービス」「地域のボランティア」の民間人材によるサービスが滞りなく提供されることで高齢者は安心して地域で生活できるでしょう。
現在の地域包括ケアシステムの課題には「一般的な認知不足」「人材不足」「地域の内情によるサービス格差」などがあげられます。
地域包括ケアシステムは、こうした地域ごとの課題に応じて、保険者が主体的につくり上げていかなければなりません。
地域包括ケアシステムのメリットは「可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるようになること」です。具体的には下記の4つがあげられます。
地域包括ケアシステムが普及することで、介護・医療の連携が強まり、医療ケアが必要なケースでも在宅で安心した生活が可能になると考えられます。
また、一般の方の理解が深まれば、地域活動をはじめとした社会参加もしやすくなるでしょう。
地域包括ケアシステムを導入することで、それぞれの地域の内情にあったサービスが生まれます。これは介護・医療などの公的なサービスだけではありません。民間事業者、ボランティアなどの民間人材の活用も地域包括ケアシステムの要です。
また、「認知症サポーター」「認知症サロン」など、民間による認知症の方をサポートする動きもあり、地域全体でこうした取り組みをすることで高齢者・家族の安心した生活につながるでしょう。
地域包括ケアシステムは、高齢者の増加にともない医療・介護の需要に対応するためはじまった政策です。
国勢調査によると、65歳以上の割合は2000年時点で17.4%(2,204万人)でした。2020年に28.6%(3,603万人)、11.2%(1,399万人)の増加となっています。
こうした高齢化率増加による「要介護認定者の増加」「介護人材の不足」は社会の課題とされています。
そこで、公的なサービスだけでなく、地域の力を活用して高齢者を支えるために考えられたのが「地域包括ケアシステム」です。
2005年の介護保険改正にともないはじめて「地域包括ケアシステム」が組み込まれ、システムの中核として「地域包括支援センター」が創設されました。
現在は、地域包括ケアシステムの構築・運用にあたり自治体や、NPO法人・民間事業者などによる生活支援・介護予防サービス支援の体制づくりが行われています。
こうした仕組みづくりにより、要支援者をはじめとした高齢者にさまざまな形での支援を可能にするために生まれたのが「地域包括ケアシステム」なのです。
地域包括ケアシステムは、上記の画像のように6つの要素で構成されており、すべてが相互に作用して高齢者を支えます。
土台となる植木鉢(「すまいと住まい方」)に、良質な土(「介護予防・生活支援」)があることで、丈夫な葉(「医療・介護」「介護・リハビリテーション」「保健・福祉」)が生えます。
また、それらを支える基礎(「本人の選択と本人・家族の心構え」)は、根幹の部分であり、これがなければすべては成り立ちません。
それぞれの構成要素について詳しく見ていきましょう。
参考:地域包括ケアシステムの捉え方|厚生労働省
地域包括ケアシステムにおける「すまい」とは、自宅や介護施設など高齢者が人生の最期まで暮らす場所を指します。
単純な居住環境だけでなく、契約における保証人の手続きの支援も地域包括ケアシステムに含まれています。
具体的な施策は、住まいの確保として空き家の活用や、高齢者住宅の拡充などです。
地域包括ケアシステムを支える要素のひとつが「医療・看護」です。
地域包括ケアシステムにおける「医療」とは、急性期病院、回復期リハビリ病院、かかりつけ医や地域の連携病院などすべての医療機関が該当します。
また、住み慣れた地域で生活するには、医療と介護の連携が重要です。傷病発生から在宅(または施設)へ復帰して生活を継続するためには、医療から介護への切れ目のないサービス提供が必要でしょう。
そこで大切なのが「看護」です。地域包括ケアシステムの「看護」は、医療と介護の橋渡し的な役割が求められています。
具体的には、在宅における医療ケアの提供をはじめとした介護現場での医療的なサポート、介護職と医師の橋渡しなどが考えられます。
地域包括ケアシステムにおける「介護・リハビリテーション」は、具体的な例として地域リハビリテーションが該当します。
「地域リハビリテーション」とは、対象者が住み慣れた場所で安全に暮らすため、さまざまな専門職や地域住民がリハビリテーションの立場から行うすべての活動です。
利用者の状況により行われるリハビリテーションは異なり、内容も多岐に渡ります。
たとえば、「デイサービスでの外出イベント(社会参加)」「作業療法士による自宅での家事訓練(IADL向上)」などが該当します。定義の幅は広く、さまざまな活動が地域包括ケアシステムでの「介護・リハビリテーション」に該当するでしょう。
地域包括ケアシステムにより地域住民の主体性が重要視される中で、大切なのが「保健・福祉」です。
健康管理の指導や、健康意識の向上、セルフケアマネジメント知識を普及させるのは、保健師をはじめとした専門職の重要な役割でしょう。具体的な取り組みとしては下記が考えられます。
また、高齢化率の増加により「介護が受けられない単身の高齢者」「経済的な不安を抱えた高齢者世帯」など、さまざまな課題を抱えた高齢者が増えることが予想されます。こうした課題のためにも社会福祉の専門性を活かしたソーシャルワークも重要です。
「医療」「介護サービス」以外で重要なのが在宅生活のための生活支援サービスです。「カフェ・サロンの運営」「配食サービス」「安否確認・見守りサービス」などが該当します。
こうしたサービスは医療・介護と比較して専門的な知識を必要としない分野です。自治体、NPO法人、ボランティアなど幅広い参加を呼びかけるのが大切です。
また、「要支援者」に対する介護予防サービスもここに該当します。地域交流、社会参加の機会提供など、さまざまな社会資源を活用して高齢者の生活を支えましょう。
ここまでの項目を支える要素として最も重要な部分が「本人の選択と本人・家族の心構え」です。
核家族化がすすみ、高齢の夫婦のみ、高齢者単身世帯が増えるなかで「どのような生活を送りたいか」「それについて家族はどう思うか」を考えて心構えを持つことが大切です。
どれだけ良いサービスがあっても、本人が納得しなければサービス提供は難しいでしょう。こうした選択や心構えをうながせる環境づくりも重要なのです。
出典:地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」|厚生労働省
地域包括ケアシステムには下記の4つの「助」が必要です。
これらは、独立する形ではなくそれぞれが連動して成り立っています。4つの「助」の役割や、地域包括ケアシステムとの関係性を見ていきましょう。
なお、「4つの助」の詳細は下記の記事でも解説します。
▶自助・互助・共助・公助って何?地域包括ケアシステムの基本と「4つの助」の関係性とは
自助は「自分で自分を助けること」です。
自分の力で、住み慣れた地域で健康に暮らすために自発的に行う活動が該当します。たとえば以下です。
自助は、介護・医療分野の負担軽減にもつながるため、地域包括ケアシステムの基盤となる考えだといわれています。
互助は「家族や友人、近隣住民など個人的なつながりの人間同士により生活課題を解決していく力」です。たとえば以下が該当するでしょう。
「近隣住民のちょっとした気遣い」「友人同士の声の掛け合い」など、組織以外でのつながりからくる気遣いも互助に当てはまります。
共助は、制度化された相互扶助サービスです。
該当するのは「年金」「介護保険」「医療保険」などです。
制度により地域住民による「自助」をサポートして、「公助」の負担を軽減します。また、自主防災組織をはじめとした災害にそなえて活動する地域コミュニティも共助に当てはまります。
公助は、自助・互助・共助で対応できない「生活困窮者に対して行政が行う生活保障制度や社会保障制度」です。
たとえば下記が公助に該当します。
公助は「税」によって成り立っており、少子高齢化社会である現状を考えると、大きな拡充は見込めないといわれています。
各市町村区は、2025年を目処に高齢者が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしが送れるよう地域包括ケアシステムを構築することになっています。
なお、地域包括ケアシステムを構築・運営するにあたって各市町村区の内情は異なります。たとえば、「人口減少と高齢化がすすむ過疎地域」と「生産年齢人口が増加している都市」では、抱えている地域の課題も異なるでしょう。
そのため地域包括ケアシステムの構築は全国で画一的には行えません。それらをふまえて、地域包括ケアシステムを構築する大まかな流れをご紹介します。
まず、地域ごとにどのような課題(ニーズ)があるか把握することが大切です。的確な対策を打ち出すために「住民が何を求めているか」を調査します。
地域包括支援センターで個別事例を検討し、「見える化システム」を活用して他市町村と比較検討しましょう。
また、地域での社会資源の現状を知るのも重要です。介護事業所、医療機関、生活支援に関わるNPO法人、民間事業者が地域にどれくらいあるかを把握しましょう。
「見えるかシステム」とは:都道府県・市町村における介護保険事業(支援)計画の策定・実行を総合的に支援するための情報システム。地域包括ケアシステムの構築に関する様々な情報が本システムに一元化されている。
「地域ケア会議」は、地域包括ケアシステム構築のための会議です。地域包括支援センターもしくは市町村が主催・運営して開催されます。
地域の課題に対して開催され、関係者により需要に沿ったサービス資源が開発されます。また、保健・医療・福祉・民間企業などの多職種が集まり交流・情報交換することでネットワークを連携させる場でもあるのです。
地域包括支援センターにより「単身高齢者の事例」「高齢者の心身の健康や権利が侵害されている事例」などの困難事例が検討されるケースもあります。
市町村は「地域ケア会議」により決まった内容を、社会資源として介護保険事業計画に位置づけられます。
地域包括ケアシステムの運用にあたっては、前述した流れを繰り返して内容のブラッシュアップが必要です。
評価のためには、定期的に実施される「日常生活圏域ニーズ調査」や、地域ケア会議における「個別事例の検討を通じた地域のニーズの把握」によりチェックしていきましょう。
地域包括ケアシステムは、地域ごとにさまざまな事例があります。うまくシステムを構築・運用していくためにはするためには、こうした事例を参考にするのが重要です。
なお、地域包括ケアシステムの導入例については厚生労働省のページからも検索可能です。
横浜市では、地域密着型サービスの整備目標の実現に向け、事業者とのコミュニケーションに積極的に取り組んできました。
横浜市は、市民の約7割が「住み慣れた地域でできるかぎり暮らし続けたい」という意向を持っている地域です。住民のニーズを実現して安心して地域で生活してもらうためには地域密着型サービスの導入が必要でした。
課題としてあがったのが当時新しいサービスだった「定期巡回・随時訪問型訪問介護看護」の導入です。介護保険事業計画で導入目標数を決めて下記の取り組みを行いました。
こうした取り組みから、事業者連絡会を通じて、事業者同士、事業者と保険者がコミュニケーションしやすくなっています。また、当時はじまったばかりだった地域密着型サービスに対する理解が広まりました。
鶴岡市が行ったのは、鶴岡地区医師会が運営するツールを用いた医療・介護の連携です。舞岡市の課題は介護と医療の連携でした。
介護支援専門員の研修の中で医療との連携について「病院側の看護師等から情報が得られない」「介護の実情を理解して貰えない」などの不満の声があがっていました。
こういった意見をきっかけに介護・医療連携について行われた取り組みが下記です。
こうした取り組みから医療側・介護側の双方が、互いの立場や業務内容を理解し「相手のために何をすればよいか」という考え方が生まれるようになりました。
結果として、介護支援専門員から、医療側へ情報発信するための仕組みが構築されたのです。
南砺(なんと)市が行ったのは地域全体で医療人材の育成です。南砺市はもともと医師不足が進み、診療科の休止、病棟閉鎖、診療所の休止などが相次ぐ地域でした。
そこで、医師不足を前提として、住民同士のつながりによって地域医療を支えるという意識改革が必要となったのです。また、在宅医療をすすめるなかで、それらを支える総合医の養成や、専門職同士の連携が必要でした。
そこで行った取り組みは下記です。
平成25年までに「人材育成のための講座」の卒業生210人となりました。うち、地域住民の卒業生は 30〜40人です。結果として、地域医療のために「自分たちに何ができるか」という意識が生まれ、自主的な活動が活発になりました。
また、「地域包括医療・ケア局」の設置により、施策の方向性の決定・実行に移すときの意思決定が早くなっています。
地域包括支援センターとは、介護・医療・保健・福祉など地域のさまざまな社会資源を高齢者が活用できるよう、総合的に相談に応じる機関です。
ケアマネジャー、社会福祉士、保健師(看護師)などの専門職を配置して、市区町村単位で設置されています。
もともと、地域包括支援センターの前身は「在宅介護支援センター」であり、高齢者やその家族が専門職より相談・援助を受けるための機関でした。
そこから、2005年の介護保険法改正により「地域包括支援センター」が誕生しています。運営を、在宅介護支援センターの運営元である社会福祉法人、医療法人などに委託することも可能で、徐々に数を増やしていきました。
地域包括支援センターの目的は、地域包括ケアシステム実現です。業務内容は「地域の高齢者の総合相談」「権利擁護」「介護予防・ケアマネジメント」などです。利用者を行政機関、保健所、医療機関などさまざまなサービスとつなぐことで多面的な支援を実現します。
そもそも地域包括ケアシステムの構築は市町村の責務です。市が運営する(もしくは市に委託された法人)地域包括支援センターは地域包括ケアシステム構築の中核的な存在にあたります。
なお地域包括支援センターについては下記の記事でも詳しく解説しています。
▶地域包括支援センターとは|相談方法・業務内容などを詳しく解説
最後に地域包括ケアシステムの現状と抱えている課題について解説します。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
地域包括ケアシステムの認知度はまだまだ低く、システムを運用していくために一般的な認知度を上げるのが課題となっています。
地域包括ケアシステムの運用には介護事業者はもちろん、NPO、ボランティアなどの民間人材の協力も必要です。
地域全体で情報を共有して、後述する人的資源を補うためにも、啓蒙活動や協力依頼を進めていかなければなりません。
地域包括ケアシステムを運用するためにはさまざまな人材が必要です。高齢者が増加する一方でこうした人的資源は不足しています。
必要な人材とは、行政の人材、医療・介護などの専門職、ボランティアやNPOといった民間人材などがあげられます。
こうした人材を確保する一方で、介護事業者や地域の関係者の適切な連携で取組みを進めていく体制を構築することが重要です。そのための人材育成にも力を入れる必要があるでしょう。
介護業界の人材不足に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
▶介護業界の人手不足の原因|5つの手段と採用対策・定着成功事例・解消方法
地域包括ケアシステムは、地域の主体性をもとにつくり上げていく仕組みです。地域による財源やマンパワーは異なり、そこで起こるサービス格差が課題となっています。
また、地域ごとの内情も異なります。たとえば「少子高齢化があきらかな地域」「人口が増えている都市部」では、それぞれ抱えている課題はまったく異なるでしょう。
こうした違いから同じ制度をつくるのは難しく、サービス格差が生まれやすくなります。それにともなって、サービスが充実した地域に人が流れるといったことも考えられるでしょう。
この記事では、地域ケアシステムについて下記を解説しました。
地域包括ケアシステムは、要介護状態になっても地域内で自分らしく暮らし続けられるサービス体制を指します。システム構築・運営には行政、医療・介護事業者、民間事業者などが主体的かつ相互に関連しながら取り組むことが大切です。
いくつかの課題はありますが、システムを構築・運営している地域の事例もあります。地域差もありますが、こうした事例を参考に地域包括ケアシステムを運営しましょう。
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