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現場ノウハウ
2025/02/26
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介助
更新日:2025/02/19
この記事では、高齢者の健康を支える、介護現場でのマッサージについて解説します。訪問マッサージ、施設内マッサージなど、種類や効果、資格、保険適用、注意点まで網羅的にご紹介します。高齢者へのマッサージに興味がある方は必見です。
この記事の目次
介護の現場では、高齢者や要介護者の健康維持や生活の質(QOL)向上を目的として、さまざまな種類のマッサージが取り入れられています。主に、利用者の自宅で受けられる訪問マッサージと、デイサービスや特別養護老人ホーム(特養)などの施設内で提供される施設でのマッサージに大別されます。
訪問マッサージは、介護が必要な方や体の不自由な方が自宅で専門的な施術を受けられるサービスです。医療保険が適用され、国家資格を持つ施術者が個々の体調に合わせてマッサージを行います。
訪問マッサージは、医療保険を適用して利用できるサービスです。歩行が困難な方や寝たきりの方など、医師の同意を得た要介護者や障害者の方が対象者になります。国家資格であるあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師が施術を行います。
参考:あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(通称:あはき師)について 厚生労働省
訪問マッサージでは、以下のような施術が行われます。
施術は利用者の体調に合わせて行われます。
訪問マッサージには、自宅で専門的な施術を受けられるため、移動の負担がないという利点があります。特に歩行が困難な方や寝たきりの方にとって、外出せずに済むことで体への負担を軽減できることは大きなメリットになるでしょう。
また、医療保険が適用されるため、自己負担が少なく経済的な負担を抑えられるのもメリットです。継続的な施術によって筋肉の緊張緩和や血行促進が期待できます。
訪問マッサージを利用するには、医師の同意書が必要であり、取得するためには主治医への相談や手続きが必要です。手続きに時間がかかることがあり、医療機関の状況によっては発行まで数週間かかる場合もあります。
訪問マッサージの施術者は国家資格を持つ必要があり、地域によっては人材に限りがあるでしょう。地方では、希望してもすぐに受けられないことも考えられます。さらに、医療保険の適用範囲が限定されており、痛みの緩和や機能維持が目的の場合のみ保険適用されます。リラクゼーション目的の施術は保険適用外です。
訪問マッサージは、以下のように細かく料金が定められています。一般的に医療保険が適用されるため、負担割合に応じて金額の1〜3割を利用者が負担します。
訪問施術料1(同一日・同一建物で施術を行った患者数が「1人の場合」の患者1人あたりの料金) | ・1局所:2,750円 ・2局所:3,200円 ・3局所:3,650円 ・4局所:4,100円 ・5局所:4,550円 |
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訪問施術料2(同一日・同一建物で施術を行った患者数が「2人の場合」の患者1人あたりの料金) | ・1局所:1,600円 ・2局所:3,200円 ・3局所:3,650円 ・4局所:4,100円 ・5局所:4,550円 |
訪問施術料3(同一日・同一建物で施術を行った患者数が「3〜9人場合」の患者1人あたりの料金) | ・1局所:910円 ・2局所:1,360円 ・3局所:1,810円 ・4局所:2,260円 ・5局所:2,710円 |
訪問施術料3(同一日・同一建物で施術を行った患者数が「10人以上場合」の患者1人あたりの料金) | ・1局所:600円 ・2局所:1,050円 ・3局所:1,500円 ・4局所:1,950円 ・5局所:2,400円 |
温罨法を併施 | 1回につき180円加算 |
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温罨法を併施+電気光線器具使用 | 1回につき300円加算 |
変形徒手矯正術 | 1肢1回につき470円 |
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特別地域加算(特別地域に居住する患者への施術) | 1回につき250円 |
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往療診(突発的な往療養) | 1回につき2,300円 |
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施術報告書交付料 | 480円 |
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上記の表が、あん摩マッサージ指圧の料金であり、はり・きゅうについても上記の表のように 施術に対する料金が決まっています。
具体的な費用の例を次に挙げてみましょう。たとえば、医療保険の負担割合が1割の利用者が居住している一軒家に訪問マッサージに来てもらい、3局所のマッサージと温罨法を受けるとします。その場合、訪問施術料1の3局所(3,650円)と温罨法を併施(180円)した合計価格の1割を負担することになり、利用者の支払う費用は3,830円の1割である383円になります。
参考:あはき療養費の令和6年度料金改定(案)について 厚生労働省
訪問マッサージと混同されやすいサービスに訪問リハビリがありますが、それぞれのサービスには以下のような違いがあります。
項目 | 訪問マッサージ | 訪問リハビリ |
---|---|---|
施術者 | あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師 | 理学療法士・作業療法士 |
目的 | 筋緊張の緩和、血行促進、疼痛緩和など | 歩行訓練や運動指導、生活動作の訓練など |
保険適用 | 医療保険 | 医療保険・介護保険 |
医師の指示 | 必要 | 必要 |
参考:一般向け情報|公益社団法人 日本あん摩マッサージ指圧師会
老人ホームなどでもマッサージが行われることがあります。治療目的の訪問マッサージと異なり、リラクゼーションや介護予防を目的とした施術が多いのが特徴です。
サービスの一例 | 概要 |
---|---|
デイサービスや入居施設でのマッサージ | デイサービスや入居施設で行われるマッサージは、利用者のリラックスやストレス軽減、健康維持、関節可動域の維持・向上等を目的としています。施術は、柔道整復師や介護スタッフが簡単なマッサージを行うこともあれば、施設によっては専門のマッサージ師が担当する場合もあるでしょう。また、理学療法士や作業療法士による機能訓練と組み合わせて実施されることもあり、利用者の身体機能の維持・改善に役立てられています。 |
イベント・レクリエーションとしてのマッサージ | 施設内で行われるイベントやレクリエーションとしてのマッサージは、利用者のリラックスやストレス軽減、日常生活における楽しみの提供等を目的としています。主に介護スタッフなどが担当し、アロマオイルを使用したハンドマッサージなどがレクリエーションの一環として実施されることもあり、心身のリフレッシュに役立てられています。 |
介護施設で行うマッサージは、法律上「医療類似行為」とされ、施術者には制限がかかります。医療行為とみなされる施術(強い刺激を与える指圧など)は、あん摩マッサージ指圧師の資格を持つ者しか行えません。
施設スタッフが行える範囲は軽いもみほぐしや手足のマッサージ程度に限られます。資格を持たない者が強い刺激を与えるマッサージを行うと医師法違反となる可能性があるため、施術の範囲には十分な注意が必要です。
マッサージは、単なるリラクゼーションにとどまらず、身体機能の維持・向上や精神的な安定にも寄与します。
マッサージは、高齢者の身体にさまざまな影響をもたらします。以下のような具体的な効果が期待できます。
血行促進 | マッサージによって血管が刺激されると血流が促進され、体温が上昇します。冷えの改善につながるため、寒さを感じやすい高齢者に有効です。たとえば、長時間の座位が続くことで足が冷えてしまい寝つきが悪くなっていたAさんがいたとしましょう。定期的なマッサージを取り入れることによって足先の冷えが改善し、夜の寝つきが良くなる可能性があります。 |
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筋肉の緊張の緩和 | 寝たきりの方や車椅子利用者は、筋肉の緊張が高まりやすいため、マッサージによる筋肉の弛緩が役立ちます。たとえば、ベッドを中心とした生活を送っており、首の筋肉が過度に緊張していたBさんがいたとしましょう。定期的なもみほぐしとストレッチを組み合わせたマッサージを行うことによって、首の筋肉の緊張が和らぐだけでなく、飲み込む動作がスムーズになる可能性があります。 |
関節の可動域改善 | 関節が硬くなると、転倒のリスクが高まるだけでなく、着替えや食事動作が難しくなることがあります。マッサージや関節可動域運動などを組み合わせることで、拘縮の予防や動作のしやすさの向上が期待できます。たとえば、不動によって肩関節の可動域が狭まり、腕を動かすことが困難なCさんがいたとしましょう。マッサージとストレッチなどの運動を継続することで、肩の可動域が改善し、食事の際にスプーンを口に運ぶ動作がスムーズになる可能性があります。 |
疼痛緩和 | 慢性腰痛などの疼痛を抱える高齢者は少なくありません。マッサージを行うことで筋肉の緊張を和らげ、痛みを緩和できる可能性があります。たとえば、肩関節周囲炎によって肩の痛みが生じて着替えが難しくなっているDさんがいたとしましょう。マッサージを継続して行うことで、痛みを軽減でき、着替えがスムーズに行えるようになる可能性があります。 |
むくみ改善 | 血行不良やリンパの流れの停滞により、高齢者の足はむくみやすくなります。マッサージにより、リンパの流れを促進することで、むくみが軽減されます。たとえば、足のむくみで靴がきつく感じるEさんがいたとしましょう。継続的にふくらはぎから足首に向かって優しくマッサージを行うことで足の腫れが和らぎ、靴が履きやすくなる可能性があります。 |
マッサージは身体面だけでなく、精神面の安定やコミュニケーションの促進にもつながります。
リラックス効果・ストレス軽減 | タッチケアとしてのマッサージには、副交感神経を優位にする効果があり、心身の緊張をほぐしてリラックス効果をもたらします。 |
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気分転換 | 施設でのマッサージは、日常生活に変化をもたらし、気分転換のきっかけ作りにもなるでしょう。 |
コミュニケーションの促進 | マッサージを通じたスキンシップにより、施術者と利用者の間に信頼関係が生まれやすくなります。言葉によるコミュニケーションが難しい認知症の方にとって、触れられることで安心感を得られるケースもあります。 |
介護現場では、高齢者や要介護者の身体機能維持や生活の質(QOL)向上を目的に、さまざまな資格を持つ専門職が活躍しています。マッサージに関わる資格については、国家資格から介護現場でのケアの質向上に役立つ民間資格まで多岐にわたります。
あん摩マッサージ指圧師は、厚生労働大臣が認定する国家資格で、訪問マッサージを提供する際に必要な資格です。あん摩マッサージ指圧師の資格があることで施術が法的に認められ、保険請求ができます。
資格取得には、厚生労働省認可の養成施設(専門学校や大学)で3年以上学ぶ必要があり、独学では取得することはできません。視覚障害者向けの特別な養成施設も存在し、就労支援の役割も担っています。
養成施設では解剖学、生理学、あん摩、マッサージ、指圧の技術を体系的に学びます。卒業後、国家試験に合格すると資格を取得できます。
あん摩マッサージ指圧師は、高齢者や障害者の身体機能改善を目的とした重要な役割を担う資格です。
参考:あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(通称:あはき師)について
介護リハビリセラピストは、介護現場でのリハビリ支援やマッサージ技術向上を目的とした民間資格です。国家資格の理学療法士やあん摩マッサージ指圧師とは異なり、介護職員等が日常ケアで身体機能維持・改善をサポートするための資格です。
取得には指定の研修プログラム受講が必要であり、解剖学や生理学、簡単なマッサージ技術、関節可動域の維持方法などを学びます。研修プログラムは講義だけではありません。実技指導もあり、現場で役立つスキルを身につけられます。
介護リハビリセラピスト資格は、介護職員やデイサービススタッフが利用者のADL(日常生活動作)向上や転倒・拘縮予防に効果的なケアを行う際に役立つでしょう。ただし、あん摩マッサージ指圧師のような治療目的のマッサージは行えません。
介護現場でマッサージやリハビリを提供する際に活きる資格は、あん摩マッサージ指圧師に限らず、数多くあります。
たとえば、介護福祉士は介護職の基本となる国家資格であり、日常生活動作(ADL)の支援や簡単なストレッチ、関節可動域の維持を目的とした介助を安全に行う知識と技術を持っています。
次に、理学療法士は歩行訓練や筋力強化、関節可動域の改善を専門的に指導することができるでしょう。また、作業療法士は日常生活の作業遂行を目的としたリハビリを専門的に指導できます。どちらも介護施設等で重要な役割を果たしており、利用者との関わりの中でマッサージを実施することも少なくありません。
さらに、柔道整復師は骨折や捻挫などの外傷に対応し、機能回復やマッサージ技術も習得しています。
このように、多様な資格がマッサージを活用しながら利用者と関わっています。
介護現場でマッサージを行う際は、利用者の健康状態に合わせた施術が重要です。高齢者は心疾患、骨粗鬆症、糖尿病などの持病を抱えていることが多く、誤った方法で施術すると健康被害を引き起こす可能性があります。
たとえば、骨粗鬆症の方に無理な刺激を与えたりすると、骨折のリスクが高まるため注意が必要です。施術前には医療職と連携し、体調に応じた支援を心がけましょう。
また、マッサージには避けるべき禁忌事項があります。骨折や捻挫などの外傷部位、深部静脈血栓症、皮膚感染症、悪性腫瘍がある部位への施術は禁忌です。誤って施術を行うと、症状の悪化や命に関わるリスクを招く可能性があるため、事前の状態確認を怠らないようにしましょう。
さらに、無資格の介護員による施術には限界があることも理解しておく必要があります。治療目的のマッサージは、あん摩マッサージ指圧師などの国家資格保持者のみが実施可能です。介護員が行えるのは、リラクゼーション目的の軽いマッサージやタッチケアに限られ、痛みの緩和や治療を目的とした施術は違法となる場合があります。
マッサージを提供する際は、利用者の状態確認、禁忌事項の把握、法的ルールの遵守を徹底することが、安全で質の高いケアの提供につながります。
【Q1. マッサージに介護保険は適用されますか?】
A. 訪問マッサージは、医師の同意に基づき、国家資格を持つあん摩マッサージ指圧師等が行う場合、医療保険が適用されます。一方、介護施設内で提供されるマッサージは、機能訓練の一環として行われる場合など、介護保険が適用されるケースもありますが、リラクゼーション目的の場合は基本的に介護保険適用外となります。保険適用の範囲や内容については施設に確認することをおすすめします。
【Q2. マッサージの頻度はどの程度が良いですか?】
A. 一般的に、訪問マッサージの場合は週2〜3回程度の頻度で行われることが多いです。しかし、最適な頻度は利用者の身体状況、目的、体調によって異なります。
重要なのは、施術後の体調変化を観察しながら調整することです。また、医療職や理学療法士との連携を図ることで、より安全で効果的な施術計画が立てられます。
参考:在宅医療マッサージに関する調査研究 患者および施術の実態と要介護度の認定状況の変化に関する調査
【Q3. 訪問マッサージを利用するための手続きはどうすれば良いですか?】
A. 訪問マッサージを利用するには、まず医師の同意書が必要です。手続きの流れは次の通りです。
医療保険の適用には同意書が必須であり、3〜6か月ごとに更新が必要です。また、同意書の取得にかかる費用は、医療機関によって異なるため事前に確認しておくと安心です。
介護業界におけるマッサージは、それぞれ目的や施術内容、必要な資格が異なります。訪問マッサージは医療保険の適用が可能で、あん摩マッサージ指圧師の資格が必須です。一方、施設でのマッサージはリラクゼーションや介護予防を目的とし、提供者の資格や施術範囲に法的な制約があります。
利用者の健康状態やニーズに応じて、安全で効果的なマッサージを選択することが重要です。適切な知識と理解を持ち、介護現場でのマッサージを有効に活用しましょう。
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