肘関節の屈曲・伸展の筋肉に作用する運動|前腕・肘の筋力トレーニング

機能訓練

上肢

更新日:2024/08/19

前腕と肘の筋肉は、肘関節の屈曲・伸展をスムーズに行うために重要です。この記事では、前腕・肘のトレーニングに重要な筋肉をまとめ、それぞれの筋肉を鍛えるための具体的なトレーニング方法を紹介します。肘関節の屈曲・伸展に関連する筋肉を理解し、適切なトレーニングを行うためにお役立てください。

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前腕・肘のトレーニングに重要な「筋肉」のまとめ

前腕・肘関節のトレーニングをご紹介する前に、前腕・肘に付着する「筋肉」について整理しておきましょう。前腕・肘関節には、2関節筋(肩〜肘、肘〜手)と関節筋が存在します。詳細は以下の通りです。

2関節筋「肩〜肘」

関節筋である肩から肘について紹介します。

上腕二頭筋

上腕二頭筋は、腕の前面にある「力こぶ」として知られる筋肉で、肘を曲げたり腕を持ち上げたりする時に使います。この筋肉は「長頭」と「短頭」の2つの部分に分かれていて、それぞれが腱となり肩甲骨に付いています。

特に、上腕二頭筋の長頭腱は、上腕骨に巻き付くように走っており、結節間溝と横靭帯からなるトンネルを通ります。この構造により、上腕骨頭をしっかりと関節窩に押さえつける役割を果たし、肩の安定を保つ助けとなっています。

上腕三頭筋(長頭)

上腕三頭筋(長頭)は、上腕の後ろ側に位置し、肩甲骨から肘まで伸びる筋肉です。この筋肉は、肘を伸ばす(伸展)動作に関与し、肩関節の動きにも関与しています。特に、腕を後方に引く動作や腕を体の側面に近づける動作で活躍します。上腕三頭筋は、長頭、外側頭、内側頭の3つの部分で構成されており、長頭はその中で最も長く、肩関節にも影響を与える唯一の部分です。

上腕筋

上腕筋は、上腕の前側に位置し、上腕骨の中部から肘の前方にある尺骨に付着します。この筋肉は、肘を曲げる(屈曲)動作に特化しており、前腕の回旋には関与せず、単純に肘を曲げる力を発揮する筋肉です。上腕二頭筋とともに肘の屈曲を行いますが、上腕筋は特に前腕の位置に関係なく、純粋に肘を曲げる動作で重要な役割を果たします。

2関節筋「肘〜手」

関節筋である肘から手の筋肉の内側部について解説します。

橈側手根屈筋

橈側手根屈筋は、前腕の内側に位置し、手首を曲げたり、前腕を内側にひねる動作をサポートする筋肉です。日常生活では、字を書く時やお箸を使う時、手に持ったモノの向きを調整する動作などに関与しています。

長掌筋

長掌筋は、前腕の内側に位置し、手首を曲げる動作を補助する筋肉です。また、この筋肉は、手のひらの皮膚を緊張させ、手のグリップ力を高める役割も持っています。手の動作や手を開閉する際に重要な筋肉です。

尺側手根屈筋

尺側手根屈筋は、前腕の内側に位置し、手首を内側に曲げる動作に関与する筋肉です。特に手首を内側に曲げる動作や手を握り締める際に活躍し、手の細かな動作を支えています。

2関節筋「肘〜手」(外側部)

関節筋である肘から手の筋肉の外側部について解説します。

腕橈骨筋

腕橈骨筋は、前腕の外側に位置し、肘を曲げる動作をサポートする筋肉です。この筋肉は、特に前腕が回内や回外のどちらでも、肘を曲げる役割を果たします。前腕の回転に合わせて機能するため、力を発揮する場面が多い筋肉です。

長橈側手根伸筋

長橈側手根伸筋は、前腕の外側に位置し、手首を伸ばし、手首を外側に倒す動作に関与する筋肉です。この筋肉は、物をつかむ際や手首を固定する際に重要な役割を果たします。手首の安定性を保つためにも働きます。

短橈側手根伸筋

短橈側手根伸筋は、長橈側手根伸筋のすぐ隣に位置し、手首を伸ばす動作をサポートします。この筋肉は手首の安定性を保つ役割があり、特に物を持ち上げたり押し出したりする動作で重要な役割を果たします。

総指伸筋

総指伸筋は、前腕の後面に位置し、手首を伸ばし、指を広げる動作に関与する筋肉です。すべての指を同時に伸ばす動作において主要な役割を担い、手の細かい動作や物を掴んだり離したりする時に使われます。

小指伸筋

小指伸筋は、総指伸筋に並んで位置し、特に小指を伸ばす動作をサポートする筋肉です。この筋肉は、小指を独立して動かす際に重要で、手の細かい動作や指の表現力を高める役割を持っています。

尺側手根伸筋

尺側手根伸筋は、前腕の内側に位置し、手首を伸ばし、手首を内側に倒す動作に関与する筋肉です。この筋肉は、手首の安定性を保ちつつ、力を加える動作で重要な役割を果たします。手を握ったり、物を押すときにも働きます。

関節筋

関節筋について解説します。

肘筋

肘筋は、肘関節の後ろ側に位置し、肘を伸ばす動作をサポートする筋肉です。この筋肉は、肘を伸ばす際に主に上腕三頭筋と共に働き、肘関節の安定性を保つ役割も果たします。特に肘をロックするような動作で重要な役割を担っています。

回外筋

回外筋は、前腕の外側に位置し、前腕を回外(手のひらを上向きに回す動作)する筋肉です。この筋肉は、前腕を回転させる動作を行う際に重要で、特に物をひねって開ける動作や、ドアノブを回すような動きで使われます。

円回内筋

円回内筋は、前腕の内側に位置し、前腕を回内(手のひらを下向きに回す動作)する筋肉です。この筋肉は、前腕を内側に回転させる際に働き、特に手のひらを下に向ける動作や、物をひねって閉める動作で使われます。

上腕三頭筋(内・外側頭) 

上腕三頭筋の内側頭と外側頭は、上腕の後ろ側に位置し、肘を伸ばす動作を担う筋肉です。これらの筋肉は、特に力強い肘の伸展を行う際に重要で、腕を押し出す動作や、体を支える動作などで主要な役割を果たします。内側頭は腕の内側に、外側頭は腕の外側に位置しており、全体として肘の動きを安定させ、力を伝達する役割を持っています。

参考・引用著書:中村隆一・齋藤宏・長崎浩(著)医歯薬出版株式会社「基礎運動学 第6版」(平成28年12月14日アクセス)

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前腕回内のトレーニングをしよう

セルフエクササイズ指導でも活用できるトレーニングをご紹介していきます。

こちらの運動は、ダンベルを使用した前腕の回内のトレーニングです。

前腕の回内運動では「円回内筋」「方形回内筋」の筋力を鍛えることができます。

「円回内筋」は前腕回内時の筋力が大きいと考えられています。瓶の蓋を開ける、ドライバーを回すようなより強い力が必要な回内では「方形回内筋」が優位に働くとされています。

参考・引用著書:河合 良訓 (著)「肉単~語源から覚える解剖学英単語集~」

前腕回外のトレーニングをしよう

前腕の回外運動では、「回外筋」「上腕二頭筋」の筋肉を鍛えることができます。

ダンベルを使用したトレーニング以外にも、ペットボトルやセラバンドなどを活用することもできます。

肘関節屈曲のトレーニングをしよう

こちらの運動は、肘関節屈曲のトレーニングです。

肘関節の屈曲によって「上腕二頭筋」「上腕筋」「腕橈骨筋」の筋力を鍛えることができます。

「上腕二頭筋」は、前腕の回外位や肘関節屈曲60°〜100°の間で最大の力を発揮します。

「腕橈骨筋」は前腕の回内位と中間位で最大の力を発揮します。

肘関節伸展のトレーニングをしよう|その1

こちらの運動は、肘関節伸展のトレーニング〜その1〜です。

肘関節の伸展によって「上腕三頭筋」「肘筋」の筋力を鍛えることができます。

肘関節伸展のトレーニングをしよう|その2

続いて、上腕三頭筋のトレーニング〜その2〜のご紹介です。

「上腕三頭筋」は、長頭と内側頭、外側頭の3つの線維に分かれており、内側頭は肩関節最大伸展位での肘関節伸展で最大の力を発揮します。

一方「肘筋」は、肘関節伸展の力は非常に小さく、肘関節屈曲0°位の外反運動時に力を発揮するとされています。

一般的には同じ運動のトレーニングでも、前腕や肘、肩の角度を意識することでターゲットマッスル(狙った筋肉)にピンポイントで運動をすることができますので、参考にしてみていかがでしょうか。

まとめ

今回のこの記事では、前腕と肘に関わる筋力トレーニングの方法についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

デイサービスなどの介護現場でもうまく活用できる内容になっていると思いますので、現場で個別機能訓練に従事する担当者の方は、是非この記事を参考にしていただけたらと思います。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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