QOLとADLの違いと関係性|介護における評価方法・生活の質向上のための考え方

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更新日:2024/10/17

ADLとQOLの関係性を知っていますか?ADLとQOLの関係についての先行研究から、食事動作ができるほど生活満足感があがることなどがわかっています。ADLは日常生活を送るために必要な基本的な動作のこと、QOLは人間らしく満足した生活を送れているかなどの生活の質を指します。今回は、ご利用者の満足度を高めるために必要なADLとQOLの考え方と関係性について解説します。

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ADLとQOLの違い・意味とは?

ADLとQOLの違い

医療用語や介護用語として活用されるADLとQOLとはどのような意味があるのでしょうか?

ADLとは

ADL(Activities of Daily Living)とは、日常生活動作と呼ばれ、食事やトイレ、入浴や整容、着替え、移動などといった日常生活を送るために必要な基本的な動作、日常的・習慣的に行なっている行動のことを指します。

ADLの内容や評価方法については以下の記事でご紹介しています。詳しくはこちらをご覧ください。
▶︎ADLの評価方法とは|介護・看護・医療で把握する目的・項目や書き方を徹底解説

ADLとIADLの違い

ADL(Activities of Daily Living) は、日常生活の基本的な動作を指し、自立した生活を営むために必要な基本的な能力を示します。具体的には、食事、排泄、入浴、着替え、移動など、基本的な生活動作が含まれます。

IADL(Instrumental Activities of Daily Living) は、ADLに加えて、より複雑で生活をより豊かにするために必要な能力を指します。具体的には、買い物、料理、洗濯、家計管理、薬の管理、公共交通機関の利用などが含まれます。IADLは、ADLが基本的な生活行動であるのに対して、社会生活や家庭内での独立した生活を維持するために重要な役割を果たします。

QOLとは

QOL(Quality of Life) とは、生活の質や人生の質を指し、身体的、精神的、社会的な健康状態を総合的に評価する概念です。単に健康であるだけでなく、幸福感や満足感、生活の意味なども含まれます。QOLは、その人の生活全体の充実度を反映する指標として、医療や福祉の分野で特に重視されます。

ADLとQOLの違い

ADL は、日常生活の基本的な動作を指し、主に身体的な機能に焦点を当てています。一方、QOL は、生活全体の質を評価するもので、身体的な健康だけでなく、精神的な幸福感や社会的なつながりも含まれます。ADLが日常生活の自立度を測る指標であるのに対し、QOLはその人の人生全体の充実度を示すものです。

QOLの考え方や評価方法について以下の記事でまとめています。詳しくはこちらをご覧ください。
▶︎QOLとは?|生活の質を表すQOLの意味と評価方法・QOL向上のためのヒント

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ADLとQOLにはどのような関係性があるのか?

ADL QOL 違い

高齢者にとって、ADLが自分でできるようになると生活の質(QOL)も高まります。逆に、寝たきりでADL能力が低い場合でも、ベッドで映画を見たり、親友や孫と話ができたりと「生きがい」や「やりがい」を見つけ、それに取り組むことで生活の質(QOL)が高まります。

このようにADLとQOLには深い関係があり、どちらも極めて重要であるといえます。

QOLの向上を目指すためには、まずADL能力を高めることが大切です。

特に、病気や怪我によって何かしらの障害を負った人は、同時に日常生活に制限を感じるようになります。そのため、どのようなことに不便さを感じているのかADLを評価することがQOLを考える上での第一歩となります。

ADLとQOLの関係についての先行研究

ADLとQOLの関係性について、伊勢崎らは以下のように報告しています。

生活満足感にはADLの食事動作が強く影響しており、各因子の影響を考慮したとき、食事動作ができるほど生活満足感が高かった。

このことからもADLは、日々の楽しみや家族や親しい友人などと関わりを保つ場としてQOLと密接な関係性があるといえます。

  • 参照:石原一成「老人保健施設入所女性のADLとQOL および身体機能との関連性」
  • 参照:伊勢崎 美和「高齢患者のQOLとADL(日常生活動作)との関係―主観的幸福感に焦点をあてて―

ADLとQOLの評価方法にはどんなものがあるのか?

ADL QOL 評価

ご利用者様のADLやQOLを把握する方法としてどのような評価方法があるか知っていますか?ここでは、ADLとQOLの評価方法についてご紹介します。

ADLの評価方法・評価スケール

FIMFIMは、実際にどれくらいの介助量が必要なのか本人が「しているADL」を評価します。運動項目と認知項目の2つに分類され、126点満点で採点します。この点数が高いほどADLが高い(=介護の必要性が低い)という結果になります。
BIBI(バーセルインデックス)は、FIMとは異なり本人が「できるADL」を評価します。BIの評価項目は全10項目で、各項目が自立度(自立・部分介助・全介助など)に応じて0~15点(2~4段階)で評価され、100点満点で採点します。

しているADLの評価方法であるFIMについては下記の記事で詳しく解説しています。FIMの評価方法を学ぶにはこちらがおすすめです。
▶︎FIMとは|FIMの評価方法と点数付けに必要な基礎知識【総論】

できるADLの評価方法であるBIについては下記の記事で詳しく解説しています。通所介護のアウトカム評価指標としても活用されるバーセルインデックスについて、評価の特徴から評価項目、採点方法までかんたんに解説します。
▶︎バーセルインデックスとは?評価項目と基準・評価する人・評価方法など

QOLの評価方法・評価スケール

SF-36QOLの評価方法の代表に、SF-36があります。SF-36は、8つの健康概念を測定するために36問から構成されています。特徴として、健康関連QOLを測定する包括的尺度で、様々な疾患の健康関連QOLを測定することができ、疾病の異なる患者さん間のQOLの比較が可能です。さらに、SF-36v2は国民標準値(2007年)が公開されていますので、それを基準にして対象群の健康状態を検討することができます。 SF-36v2日本語版マニュアルに性別・年代別の国民標準値データ(2007年)が掲載されているほか、スコアリングプログラムを使用するとより簡単に比較ができるようになります。

詳しくは「QOLとは?|生活の質を表すQOLの意味と評価方法・QOL向上のためのヒント」で紹介しています。

QOL・ADL向上のための具体的な取り組み

介護現場において、QOLとADLの向上を目指した自立支援は、利用者の豊かで自立した生活を支えるために不可欠です。自立支援は、身体的サポートに留まらず、精神的・社会的な側面にも配慮し、利用者の生活全体を向上させることを目指します。具体的な取り組みを以下に紹介します。

QOL・ADL向上を目指した自立支援をする

QOLとADLの向上を目指す自立支援は、介護現場において非常に重要な取り組みです。これにより、利用者がより豊かで自立した生活を送ることが可能になります。自立支援は、単に身体的なサポートに留まらず、精神的・社会的な側面にも焦点を当て、利用者の生活の質全体を向上させることを目指します。

被介護者の主体性を尊重する

自立支援を行うにあたり、利用者の主体性を尊重することは極めて重要です。利用者が自分自身で意思決定を行う機会を提供することで、自信を持って、自己肯定感を高めることができます。主体性の尊重は、利用者のQOLを向上させるための重要な要素です。

適度な運動と栄養の良い食事を心がける

適度な運動(機能訓練)と栄養の良い食事は、QOLとADLの向上に欠かせない要素です。運動は身体機能の維持向上を促し、日常生活の自立度を高める効果があります。また、バランスの取れた栄養は、身体の健康を支えるだけでなく、心身の活力を保つためにも重要です。これらの要素を組み合わせることで、利用者の生活の質を全般的に向上させることができます。

行事など交流ができる場を作る

利用者が他者と交流できる場を提供することも、QOLの向上に寄与します。交流の場は、社会的なつながりを深め、孤独感を和らげるだけでなく、精神的な健康を促進する効果があります。行事やレクリエーション活動を通じて、利用者が他者と積極的に関わる機会を増やすことは、精神的な満足感や生きがいを高めるための有効な手段です。

QOL・ADL向上のために正しく理解しておこう

ADL QOL 違い まとめ

今回は利用者の満足度を高めるために重要なADLとQOLの関係性についてご紹介しました。

利用者により良い日常を送ってもらうためには、ADL(日常生活活動)とQOL(生活の質)の考え方が重要視されます。どちらの方が優先的に重要なのかは問えませんが、ADLの向上においても本人が望む生活を送る(QOLの向上)という概念が念頭にあってこそです。

そのため私たちスタッフが、ADLとQOLの関係性を学びご利用者様が満足できるサービスを提供していけるようにしましょう!

ADLとQOLについて学んだあとは、IADLについても学んでみませんか?IADLについてこちらの記事がオススメです!
▶︎IADLの評価方法とは|ADLとの違い・定義や評価項目・介護の評価表などを解説

デイサービス運営において必要な「評価・測定」について、一挙にまとめていますので、必要に応じて活用していただければと思います。
▶︎【完全保存版】デイサービスで活用できる評価・測定に関する記事まとめ|随時更新

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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