痛みの評価スケール|VAS・NRS・FRSを始めとしたスケールの評価・診断方法

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更新日:2024/04/17

施設の利用者は体に痛みを抱えている人も少なくなく、利用者から痛みを訴えることも少なくありません。この記事ではVAS、NRS、FRS、神経障害性疼痛スクリーニング質問票、PDAS、炎症所見の5兆候も解説しています。関節痛や神経痛などの痛みを評価する方法や、痛みによる運動の中止基準の指標として疼痛の簡易的な評価スケールなども紹介していますので、ぜひ現場で活かしてください。

先日、デイサービスで働く機能訓練指導員が理解しておきたい「運動の中止基準」についてという記事を書き、Twitterに公開をしました。そうしたところ、関節痛や神経痛についての運動基準はないか?とお話をいただき、今回記事にさせていただきました。


但し、痛みの評価というのは非常に難しいので、これが基準です。と言うことはできません。しかしながら、簡易的な評価バッテリーというのは存在するので、デイサービスでうまく活用できそうな評価をまとめましたのでご紹介させていただきます。

最後に、簡易的疼痛評価用紙のフォーマットを無料でダウンロードできるようにしてありますので、ご自由にご活用ください。

視覚的に確認できる痛みの検査

まずデイサービスで働く機能訓練指導員が痛みの評価をする上で、詳細に情報を得ることは極めて困難です。

というのも、痛みというのは非常に複雑であり、且つ評価が極めて難しいということがあります。また、医療機関ではないため、レントゲンやMRIなどの検査機器で詳細に原因を追求することはできません。

例えば、単純な腰痛があったとします。

腰痛なので、筋肉系の痛みや筋膜系の痛みなどの軟部組織の痛みかもしれませんし、腰椎椎間板ヘルニアやすべり症などが存在するかもしれません。

脊椎圧迫骨折のリハビリの基本|機能訓練でやってはいけないこと・注意点という記事でも書きましたが、腰が痛いなと思ってなかなか改善しない場合、脊椎の圧迫骨折だったということも珍しくありません。

これらを詳細に理解することは非常に難しいということが前提にあります。ですが、痛みの評価でスクリーニング検査として行える方法がいくつかあります。

ここで紹介するのは、視覚的に確認することができる方法なので、機能訓練指導員でも十分に対応できます。お互いに痛みの情報共有ができるため、信頼関係も築きやすいのではないでしょうか。

それでは以下にご紹介していきます。

Visual Analog Scale(VAS)による痛みの評価方法

まずはじめにご紹介するのは、Visual Analog Scale(以下、VAS)です。VASは痛みの評価としては非常にメジャーな方法です。

痛みの評価 Visual Analog Scale(VAS)評価用紙
全く痛みがないのが0、とにかく耐え難い最高の痛みを10又は100とし、上記10㎝の線上に今の痛みがどの程度なのか縦線を書いてもらいます。

痛みの評価 Visual Analog Scale(VAS)の評価方法

とても主観的な評価になるので、コミュニケーションをとりながら、その後再度チェックしていく時に同じような形で誘導できるようにしておくことがポイントとなります。

Numerical Rating Scale(NRS)による痛みの評価方法

NRSもVASと似たような検査であり、簡易的に行えます。

Numerical Rating Scale(NRS)の痛みの評価用紙
NRSは0~10までの11本の縦線があり、VASと同じように全く痛みがない場合は0、耐え難い最高の痛みが10に分けてどの程度の痛みかを把握します。

Face Rating Scale(FRS)による痛みの評価方法

FRS(フェイススケール)の評価は、顔の表情を痛みの判断材料としています。

Face Rating Scale(フェイススケール、FRS)の痛みの評価用イラスト

例えば、VASやNRSはかなり主観的な要素なので、お答えできない・イメージが湧かないという方がいらっしゃいます。特にデイサービスに通われる利用者さまの中には、うまく表現できない方もいますので、そういった場合にFRSは顔で表現していますので活用しやすいという側面があります。

痛みの性質を評価するスクリーニング検査

痛みを評価するのは非常に難しいのですが、

  • ズキズキする
  • しびれる
  • 針でさされるような
  • 電気が走るような


等々、どのような痛みなのかを理解することはとても重要です。これらは質問で情報収集できることなので、痛みがあるという場合、「どのような痛みですか?」「ズキズキするような痛みですか?」など、少し深掘りして痛みの質問をしてみてると有効です。

痛みの性質を理解するのはとても参考になるので、数多くの質問表が発表されています。今回この記事では、日本で開発された質問表をご紹介したいと思います。

神経障害性疼痛スクリーニング質問票

図の×印をつけた部分で、あなたが感じる痛みはどのように表現されますか?

1)針で刺されるような痛みがある
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
2)電気が走るような痛みがある
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
3)焼けるようなひりひりする痛みがある
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
4)しびれの強い痛みがある
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
5)衣類が擦れたり、冷風に当たったりするだけで痛みが走る
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
6)痛みの部位の感覚が低下していたり、過敏になっていたりする
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある
7)痛みの部位の皮膚がむくんだり、赤や赤紫に変色したりする
□全くない □少しある □ある □強くある □非常に強くある


痛みの性質に加えて、その痛みが日常生活に及ぼす要因を知ることがより重要です。例えば、膝がズキズキと痛んで外出することが困難になっている。などということは情報を得る上では非常に重要です。

こういった内容を知ることで、デイサービスでの個別機能訓練計画書の内容に反映させることができますし、適切な目標設定にも活かすことができます。
 

Pain Disability Assessment Scale(PDAS)による痛みの評価

痛みの状況が日常生活にどう影響するか、これを簡易的に評価する「Pain Disability Assessment Scale(PDAS)」というものがあります。質問するだけなので、こちらを活用するというのもおすすめです。

Pain Disability Assessment Scale(PDAS)の質問項目

1.掃除機かけ、庭仕事など家の中の雑用をする
2.ゆっくり走る
3.腰を曲げて床のものを拾う
4.買い物に行く
5.階段を登る、降りる
6.友人を訪れる
7.バスや電車に乗る
8.レストランや喫茶店に行く
9.重いものをもって運ぶ
10.料理を作る、食器洗いをする
11.腰を曲げたり伸ばしたりする
12.手を伸ばして棚の上から重いもの(砂糖袋など)を取る
13.体を洗ったり、拭いたりする
14.便座に座る、便座から立ち上がる
15.ベッド(床)に入る、ベッド(床)から起き上がる
16.車のドアを開けたり、閉めたりする
17.じっと立っている
18.平らな地面の上を歩く
19.趣味の活動を行う
20.洗髪する

炎症所見(5兆候)

炎症は血液検査などの所見に加えて、特徴的な5兆候というものがあります。この5兆候は目で見て触って簡易的に理解できることです。機能訓練指導員の方が覚えておくと非常に役立つので、合わせて理解しておくことをおすすめします。

  1. 発赤
  2. 熱感
  3. 腫脹
  4. 疼痛
  5. 機能障害


この5つが5兆候となります。例として、「膝が痛い」という方を挙げます。

発赤について、膝の痛みを訴えているところが赤くなっていないか確認します。熱感は実際に触って患部に熱を持っていないか確認をします。この時、逆側の同じところと比較してどうか確認をするとわかりやすいです。

腫脹については、患部が腫れていないかを確認します。腫脹についても、逆側の同じ場所と比較するとわかりやすいです。

疼痛はまさにそのままで、痛みがあるかどうか。膝であれば膝のどの辺りが痛いかを聞くようにしましょう。機能障害については膝のどういう動きで痛いのか。その痛みで動かすことができないのか。このようなことを確認していきます。

ボディチャートのようなものを活用すると非常に便利だと思います。

いつもどういった状態かを理解しておく必要がある

ここまで痛みのこと、簡易的な検査方法について説明をしてきましたが、一番大事なことはいつもその方がどういった状態にあるのか。ということです。

普段の状況を理解しておけば、痛みの訴えがあったときなど比較することができます。その状況次第で運動をいつも通り継続するのか、もしくはいつもの運動内容を変更するのか、無理せずにお休みにするのか、状態によっては医師の診察をしてもらうのか。

こういったことを助言することができます。

もし判断がつかない場合は、医師の指示を仰ぐことが大事です。

評価用紙の無料ダウンロード

今回この記事では、デイサービスで働く機能訓練指導員が理解しておきたい「痛みの評価」についてご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。

痛みを詳細に評価するのは専門家でもとても難しいものです。ですが、機能訓練に従事する担当者は痛みということについてよく直面する機会も多いかと思います。

その時は、できる範囲で痛みの評価を行い、必要に応じて診察するよう助言したり、医師の指示を仰ぐことがとても重要です。この記事が少しでも役に立てば嬉しく思います。

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この記事の著者

作業療法士  大屋 祐貴

作業療法士として、回復期リハビリテーション病院や救急病院、訪問リハビリに勤務し、医療・介護現場の幅広い分野を経験。現場のリハビリテーション技術を高めるために研修会の立ち上げ等を行う。

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