24年度介護報酬改定を見据えたデイサービスの生き残り経営戦略 【セミナーレポート】
介護報酬改定
2024/10/09
介護報酬改定
更新日:2024/09/12
令和6年度(2024年度)の介護報酬改定ADL維持等加算はどうなるのでしょうか。最新動向がわかり次第、この記事を更新していきます。令和6年度介護報酬改定について気になる方はぜひご参考ください。
この記事の目次
介護報酬改定は、介護報酬の適正化を図るため、国の財政やその時々の社会情勢・環境の変化、介護サービスの事情などを踏まえて、3年に一度のサイクルで行われる見直しのことです。
収益の大部分を介護給付で賄っている介護サービス事業所が多いため、介護報酬改定は決して他人事ではありません。基本報酬の減額で収益減につながる恐れがあり、その反対に新しい加算の創設によって収益増となることも見込めます。
新しいサービス区分の創設や廃止によって施設運営に大きな影響があるため、早めに情報収集し対応策を考えておくことが大切です。
介護分野における介護報酬と同じく定期的に見直しされている社会制度の中に、医療分野の診療報酬があります。介護報酬改定は3年ごと、診療報酬改定は2年ごとに行われているため、2つの報酬改定が重なる「ダブル改定」が6年ごとに訪れます。
介護報酬・医療報酬ともに被保険者からの保険料徴収と税金を財源としており、その財源をもとに介護保険制度では介護サービスの給付、医療保険制度では治療・投薬等の医療サービスが給付されています。
医療保険制度・医療保険制度は全く別々のものではなく、連携体制のもとサービス提供されていると考えて良いでしょう。ダブル改定は連携強化のための大切な機会ととらえて間違いなさそうです。
平成30年度(2018年)のテーマは「医療と介護の連携」でした。医療・介護は施設から在宅や地域でケアしていく、という方針が色濃く出た改訂だったといえるでしょう。
平成30年度(2018年)の介護報酬改定は2017年4月26日から介護給付費分科会で議論が開始され、2018年4月より改定となっています。改定率は介護サービス全体で+0.54%となり、2015年の-2.27%を大きく上回っています。具体的な内容は以下の通りです。
令和6年度(2024年)の改定では、より医療・介護の連携が強化されることが予想されます。介護報酬改定で焦点となるのは以下の項目です。
【緩和・推進される項目】
居宅のケアマネも総合事業(要支援)のプランを扱えるようになる
医療情報と合わせた情報のデータ共有に向けた新しいプラットフォームの推進、各種申請書類の電子化を含むICT化の推進
地域包括支援センターの有資格者配置要件の緩和
【慎重な議論・議論延長されている項目】
要介護認定の有効期間拡大
「介護助手」の法制度上の明確化
特養の要介護1・2受け入れ幅拡大
老健・介護医療院の多床室の室料負担(前向きだが議論延長)
その他給付と負担全体の見直し(議論延長)
令和6年の介護報酬改定の現在決まっているスケジュールは以下の通りです。
【令和5年】
※地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う。
↓
令和6年度政府予算編成
↓
【令和6年】
過去の介護報酬改定においても同じようなスケジュールで進められており、令和6年においても大幅な流れの変更はないでしょう。
介護報酬改定の全体像が見えてくるのは令和5年の12月ごろになりそうです。
参考:令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)
ここでは、令和6年度の介護報酬改定の方向性についてご説明します。
令和6年度の介護報酬改定では、令和3年度の介護報酬改定で打ち出された科学的介護の推進が引き継がれ、科学的介護の推進が加速します。自立支援介護に向けてケアプランやケアマネジメントの質を向上させるのが大きな狙いです。
居宅介護支援事業所においても、ケアプランの情報を利活用させるためにLIFEの提出が必要になってきます。ケアマネジャーは経験則ではなく、データベースやガイドラインに基づいたケアプランの作成、提出を求められます。
そのためには、他職種が連携してADLを評価するBI(バーセルインデックス)や認知症の周辺症状を評価するDBD13、口腔・栄養や褥瘡などさまざまな評価を定期的に実施する必要があるでしょう。
また、LIFEへのデータ提出も必須になると考えて間違いなさそうです。利用者の適切なアセスメントと担当者間の共有、フィードバックというPDCAサイクルを循環させるためにも、LIFEの活用は欠かせないといえます。
平成30年度の介護報酬改定で新設されたADL維持等加算はこれまでの算定状況と結果を受けて、要件緩和と単位の増加を行い、算定を拡充させていき、介護サービスの質の評価を更に進めたいという意向がありました。
そのため、令和3年度に行われた介護報酬改定では算定条件が見直しの対象となり、算定要件の緩和や単位数がおよそ10倍になるなど、ポジティブな改定を遂げています。
令和3年時の改訂前と改定後の単位数がどう変更されたかも振り返っておきましょう。
改訂前 | 改定後 | |
---|---|---|
ADL維持等加算(Ⅰ) | 3単位/月 | 30単位/月 |
ADL維持等加算(Ⅱ) | 6単位/月 | 60単位/月 |
(Ⅰ)(Ⅱ)ともに単位数が10倍になっており、ADL維持等加算が重要視されているのがわかります。
それでは現在(令和3年報酬改定)のADL維持等加算の簡単な算定要件を紹介します。
ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
単位数 | 30単位/月 | 60単位/月 |
対象者 | ・要介護者(通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護) ・利用者(該当する事業所の評価対象利用期間が6月を超える者)の総数が10名以上 |
|
算定条件 | ・利用者全員(要介護者)のバーセルインデックスを、BI研修を受けた者が評価し、その後LIFEへデータ提出を行こと ・利用者の総数が10人以上であること(評価対象利用期間が6ヵ月を超える者) |
|
ADL利得1以上 | ADL利得2以上 | |
評価対象者 | ・評価対象者全員について、利用開始月と該当月の翌月から起算して6ヶ月目において、バーセルインデックスを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省にLIFEを活用して提出する。 ・利用開始月の翌月から起算して6ヶ月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じて一定の値を加えたADL利得(調整済ADL利得)の上位及び下位それぞれ1割の者を除く評価対象利用者のADL利得を平均して得た値が1以上(Ⅰ)もしくは2以上(Ⅱ) |
|
提出頻度 | 評価対象者全員について、利用開始月と7ヶ月目(7ヶ月目にサービスの利用がない場合は利用があった最終月)に、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した月ごとにLIFEに提出していること(BIの項目ごとに提出) | |
算定期間 | 評価対象期間の満了日が属する月の翌月か12ヶ月間 |
令和4年3月サービス提供分のADL維持等加算の通所介護事業所の算定率は以下になっています。
通所介護の算定状況
ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
単位数 | 30 | 60 |
算定事業所数 | 298 | 618 |
算定率(事業所ベース | 1.2% | 2.5% |
算定回数・日数 (単位:千回・千日) | 16.8 | 39.1 |
算定率 (回数・日数ベース) | 0.1% | 0.3% |
算定単位数(単位:千単位) | 505 | 2,346 |
※ *は日数を算定 ※ 算定事業所数:介護保険総合データベースについて任意集計を実施。 ※ 算定率(事業所ベース):各加算算定事業所数/通所介護算定事業所数 ※ 算定回数・日数:介護給付費実態統計(月報・第9表/令和4年3月サービス提供分) ※ 算定率(回数・日数ベース):各加算算定回数・日数/通所介護算定総回数
ADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)ともに事業所ベースでそれぞれ1.2%、2.5%と算定率は非常に低く、算定条件の緩和や作業負荷の軽減が大きな課題といえます。
令和3年の介護報酬改定で単位数が10倍になったにもかかわらず算定率が低いため、今回の介護報酬改定では、より算定しやすい加算になることが求められそうです。
地域密着型通所介護の算定状況
ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) | |
---|---|---|
単位数 | 30 | 60 |
算定事業所数 | 128 | 184 |
算定率(事業所ベース | 0.7% | 1.0% |
算定回数・日数 (単位:千回・千日) | 3.3 | 6 |
算定率 (回数・日数ベース) | 0.1% | 0.2% |
算定単位数(単位:千単位) | 99 | 363 |
※ *は日数を算定 ※ 算定事業所数:介護保険総合データベースについて任意集計を実施。 ※ 算定率(事業所ベース):各加算算定事業所数/地域密着型通所介護算定事業所数
※ 算定回数・日数:介護給付費実態統計(月報・第9表/令和4年3月サービス提供分) ※ 算定率(回数・日数ベース):各加算算定回数・日数/地域密着型通所介護算定総回数
地域密着型通所介護でもADL維持等加算(Ⅰ)(Ⅱ)ともに事業所ベースでそれぞれ0.7%、1.0%と算定率は非常に低く、ここでも算定条件の緩和や作業負荷の軽減が大きな課題といえそうです。
※ADL維持等加算に関する課題や論点はまとめられていません。
日本作業療法士協会、日本言語聴覚士協会、日本理学療法士協会による「地域包括ケアシステムのさらなる深化・推進に向けたリハビリテーションに関わる取り組みの充実」によると、以下のような要望が出されています。
要望事項一覧(P21)
(3)介護施設等におけるADL低下予防のさらなる推進
1. ADL維持等加算の取り組みのさらなる推進
具体的な内容はまだこれからというところですが、ADL維持等加算については加算の継続・さらなる推進が求められているといえるでしょう。
令和5年10月11日に開かれた第227回社会保障審議会介護給付費分科会で、令和6年度介護報酬改定に向けて基本的な視点(案)が出ました。
出典:令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)概要 資料2-1(社保審-介護給付費分科会 第227回)
基本的には、多様化する介護ニーズや地域特性に合わせた地域包括ケアシステムの深化・推進、令和3年介護報酬改定から推進されてきた自立支援・重度化防止に資するサービスの提供を引き続き推進していくこと、などが主軸と言えるでしょう。
また、良質なサービス提供と人材確保のため働きやすい職場環境づくりや柔軟なサービス提供の取組みにも言及されています。
現役世代の急速な減少や介護分野からの人材流出がみられる中、総合的な人材確保の取組みは喫緊の課題として考えられているようです。
令和5年11月1日に開かれた財政制度分科会(財務省)では、これまでの介護報酬改定の総括と、これから(令和6年度以降)の提言がなされました。
出典:財務省 財政制度分科会参考資料(令和5年11月1日開催)
財政制度分科会では、介護報酬改定については主に下記3つについての提言がされています。
この中でも特に通所介護に関係の深いところは「担い手の確保」の部分です。
介護現場の生産性向上と業務効率化は、業界全体の喫緊の課題であり、ICT機器・介護ロボットの利活用の上での人員基準の緩和も検討されているところです。
また他の産業に比べ、介護業界においてソフトウェア投資額の伸びが小さいことにも言及されており、業界全体をあげて業務効率化のために取組みたい考えが示されています。
財務省からの提言なので、コストパフォーマンスを最大限に高めるのが重要とされています。これからはこの提言を踏まえた上で介護報酬改定の議論が進んでいくと思われます。
加算については、制度開始から種類が増加し体系が複雑化されたことが課題とされています。算定率ゼロ・算定率の低い加算については前回に引き続き加算の整理が行われる可能性があるでしょう。
令和6年1月22日の介護給付費分科会において、ADL維持等加算の単位について以下の通り議論されています。
ADL加算も単位数の変更はありませんが、(Ⅱ)の算定要件が厳格化されたため、この加算を取得することがデイサービスとしての差別化の方法にもなりえるのではないかと考えられます。
【ADL維持等加算(Ⅱ)】
ADL利得が2以上→3以上に変更
出典:社会保障審議会介護給付費分科会(第239回)資料1令和6年1月22日
ここでは、令和6年度介護報酬改定の最新動向をお伝えします。
令和5年12月11日に開かれた第235回社会保障審議会介護給付費分科会では、取りまとめに向け令和6年度介護報酬改定審議報告(案)が提示されました。
以下はADL維持等加算に関する項目を抜粋しています。
※【】内は対象サービス・介護予防についても同様の措置を講ずる場合には★を付記
アウトカム評価の充実のための ADL 維持等加算の見直し
【通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護】
ADL 維持等加算について、自立支援・重度化防止に向けた取組をより一層推進する観点から、ADL 維持等加算(Ⅱ)における ADL 利得の要件について、「二以上」を「三以上」と見直す。また、ADL 利得の計算方法の簡素化を行う。
引用:令和6年度介護報酬改定に関する審議報告(案)資料2(社保審-介護給付費分科会第 235 回)
令和5年11月27日の介護給付費分科会において、ADL維持等加算について現状と課題が議論されています。
ADL維持等加算に関しての課題は、「加算の算定要件がわかりにくい」「調整済みADL利 得の計算方法がわかりにくい」「利用者の状態の評価に手間がかかる」ことなどと言えるでしょう。
ADL利得値に影響を与えない範囲で要件の簡素化を行うこと、ADL維持等加算(Ⅱ)の算定要件で設定するADL利得のカットオフ値である2以上に該当している事業所は約3〜6割、3以上に該当している事業所は約1〜3割であったことから、カットオフ値の変更も検討されています。
出典:社会保障審議会介護給付費分科会(第232回)令和5年11月27日 資料4
令和5年10月11日に開かれた第227回社会保障審議会介護給付費分科会では、介護報酬改定の施行時期が令和6年度4月から6月になるという議題も出ています。
すでに診療報酬の改定は6月1日からということになっています。それに合わせるのか、介護報酬は4月にするのかは今後待たれる議論です。
参考:介護報酬改定の施行時期について 資料3(社会保障審議会 介護給付費分科会 第227回)
引き続き続報をお待ちください。
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