介護利用者のわがままにどう対応する?適切な対応方法を具体的に解説

現場ノウハウ

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更新日:2024/08/02

施設利用者のわがままに悩んでいる介護スタッフは少なくありません。対応は施設や現場のスタッフにまかされており、現場ごとにやり過ごされている、というのが実情でしょう。この記事では、介護利用者の繰り返されるわがままや過度な要求に対する、適切な対応について解説しています。

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利用者が「わがまま」を言う背景とは?

高齢者がわがままを言う原因は、本人の性格によるものだけではありません。

介護利用者のわがままな要求や行動がみられる場合、その背景にはさまざまな理由が存在します。そのため、わがままな要求や行動の理由を正しく把握し、理解することが重要になるでしょう。

以下に、考えられる原因をいくつか解説します。

抱えている病気・疾患などが原因となることもある

高齢者がわがままとされる行動を取る背後には、抱えている病気や疾患が大きく関わっている場合があります。

たとえば、認知症やうつ病、パーキンソン病などは、利用者の判断力や情緒を不安定にさせ、普段と異なる行動を引き起こすことがあります。

病気や疾患が原因となっている場合は、本人の意志ではコントロールが難しいため、病気や疾患を理解して対応するだけでなく適切な医療支援が必要になるでしょう。

もともとの性格や価値観の影響

人はそれぞれ異なる価値観を持っており、性格も同じではありません。介護施設の利用者も例外ではなく、もともとの価値観や性格が「わがまま」と捉えられる行動に影響していることがあります。

たとえば、以下のようなケースが考えられます。

  • 社長業を長年営んでいて自立心が強く自分の意見をはっきりと言う人
  • 美容への興味がもともと高く、整容にこだわりがある人
  • 長期間、他人との関わりが少ない環境で生活しており、コミュニケーションが難しい人

このようにさまざまな背景を持つ利用者がおり、それぞれの生活の中では当たり前だったことが、別の人にとってはそうではないケースが多々あります。

当然、介護スタッフから見ても、わがままな要求をしているように見えることもあるでしょう。

しかし、それぞれの要求はその人らしい生活を求めるニーズの表れでもあります。そのため、できる限り個々の価値観や性格に寄り添った対応が求められます。

将来の不安や孤独感・環境変化による戸惑い

高齢になると、体力の衰えや環境の変化、将来への不安などから孤独感や戸惑いを感じることが増えます。介護利用者のわがままな行動の背景には、これらのマイナスな感情があることが多いです。

たとえば、以下のようなケースが考えられるでしょう。

  • 介護施設への入所後、雰囲気や環境になじめずに不安を感じている
  • 子どもや孫になかなか会えなず、孤独感を感じている
  • 進行性の疾患を抱えていて、健康面に不安を感じている

これらの感情がストレスとなり、他人に八つ当たりする形でストレス発散を図っている可能性も考えられます。それぞれの利用者の背景を理解し、共感を示しながら支援することが大切になります。

介護のコミュニケーションに関しては以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご一読ください。
介護現場のコミュニケーションのコツ|高齢者との意思疎通の効果と重要性

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介護施設でのわがままな利用者との関わり方とは

介護施設で働くスタッフにとって、わがままな利用者との関わり方は、悩みの種になることでしょう。しかし、適切な接し方を理解して実践することで、利用者と良好な関係を築ける可能性はあります。

ここでは、介護現場で直面することの多い「わがまま」とみなされる行動に対して、効果的に関わる方法やポイントを解説します。

利用者の性格・行動パターンの把握

信頼関係を築くためには、利用者一人ひとりが持つ性格や行動パターンを把握することが大切です。

それぞれの性格や好み・日常の行動パターンを理解することで、その人に合った対応を考えることができます。また、利用者の理解が深まることでわがままの背後にある意図やニーズを見極めやすくなり、要求に対応しやすくなります。

高齢者の心理・病気に対する理解を深める

高齢者のわがままな行動の背景には、病気や心理的な不安が隠れていることがあります。特に認知症やうつ病、パーキンソン病などの疾患が、高齢者の行動や感情に影響することも少なくないでしょう。

将来に対する不安は、高齢者特有のものがあります。老化や病などが精神に与える影響は決して小さくありません。しかし、高齢者の心理状態や病気へ理解があり利用者の不安や心理状態に寄り添える介護スタッフが側にいると、不安を軽減できます。

また、病気の影響を理解することは、介護スタッフ自身の精神的負担を軽減することにもつながるでしょう。利用者の気持ちに少しでも共感を示せるようになることで、わがままと感じる行動の捉え方も変わってきます。

生活リズムを整え、役割を担ってもらう

利用者に生活の中で役割を担ってもらうことは、自尊心や生活への意欲向上を促すことにつながります。

たとえば、簡単な家事の手伝いや施設内の活動への参加を促すことで、役割を持つ喜びや達成感を感じる機会を提供できます。適度な責任感を持ってもらうことで生活のメリハリがつきやすくなります。

役割を持って生活することができれば、満足感を得られるだけでなく生活リズムも整いやすくなり、わがままな行動の抑制が期待できるでしょう。

利用者に役割を担ってもらうアプローチは、アクティビティという要素になるだけでなく、心理面にも影響を与えます。うまく役割を分担することで、利用者と介護スタッフ双方にとって良好な環境を作り出すことができます。

利用者の意欲をアップさせる方法を以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
リハビリ意欲アップ!やる気を引き出す7つのポイント・現場の成功事例

利用者のわがままへの具体的な対応方法

介護施設では、利用者からのさまざまな要求に対応することが日常的に求められます。

ここでは、さまざまなシーンを例に、具体的な対応方法を紹介します。

他の利用者の悪口や怒鳴り声

【シチュエーション例】

 施設の共有スペースで、ある利用者が他の利用者に向かって大声で不満を述べている。

【対応方法】

 まずは、それぞれの利用者を離して静かな場所へ誘導し、落ち着いた環境で話を聞きます。否定的に話を進めてしまうと、より怒ってしまう可能性もあるため、なるべく共感の姿勢を示します。また、他の利用者の安全確保や精神面での配慮をするとともに、問題の原因に対処するための具体的な方法が提案できると良いでしょう。可能であれば、謝罪などを介して、その場で問題を解決します。

しかし、その場しのぎの謝罪では根本的な解決にならないケースもあります。また、そもそも問題が解決しないこともあるでしょう。

悪口や怒鳴り声が続く利用者については、介護記録に状況を細かく記載するようにしましょう。介護記録に書かれた情報をもとに、現場で解決可能なのか、判断をします。解決可能であれば、対応方法を関わるスタッフ全員に共有します。解決不可能であれば、専門家に相談することを検討しましょう。

できないこと・対応していないことへの無理な要求

【シチュエーション例】

利用者が深夜にスタッフに対し、今すぐ外出して買い物をしてくるよう要求している。

【対応方法】

まずは「今は夜遅く、外出することはできませんが、明日の朝に買い物しましょう。必要なものがあれば教えてください。」と提案するのが良いでしょう。利用者の要求を拒否するのではなく、実現可能な代替案を伝えます。

しかし、代替案を伝えても落ち着かないケースもあるでしょう。施設のルールや人員体制、安全性への配慮などの観点から、すぐにその場で問題解決できないときもあります。

対応困難な理由を伝えても無理難題を要求してくる場合は、簡単に解決できない可能性があります。そのため、状況を記録に残すようにしましょう。他のスタッフと情報を共有し、利用者が無理な要求をする理由を探します。その上で、対応を考えると良いでしょう。

自分を最優先してほしい・早く対応してほしいという要求

【シチュエーション例】

他の利用者の対応中、別の利用者が「私のことを最優先で対応してほしい」と強く要求している。

【対応方法】

まずは、全ての要望を落ち着いて聞き、優先順位を説明します。「今、緊急度の高い方の対応をしていますが、その後すぐにお手伝いします。」と伝えることで、利用者に待ってもらう間の理解を求めます。その後に対応すると良いでしょう。

利用者が「いつでも私を最優先してほしい」と、訴えるケースも考えられます。そのような場合は、優先して欲しいニーズを把握した上で、可能な部分は対応すると折り合いを付けると良いでしょう。

それでも折り合いがつけられず、すべての要求を最優先してほしいと訴える場合は、対応が困難な理由を伝えます。

理由を伝えても納得されない場合、状況を記録に残し、他のスタッフや上司と対応を検討しましょう。解決につながる一例として、熱中できる趣味活動などがあると、強く訴えることが少なくなるというケースもあります。

利用者の思い込み・相違があるという怒り

【シチュエーション例】

 利用者が施設のサービスの内容について誤解をしており、そのために不満を強く訴えている。

【対応方法】

可能であれば 「お気持ちは理解していますが、実際のサービス内容はこうです」と正確な情報を伝えます。しかし、利用者が興奮している場合、正しい情報を伝えても怒りが収まらないケースも考えられます。

そのような時は、不満の内容を正確に聞くように対応しましょう。そして、怒りが収まってから正確な情報を伝えると良いでしょう。

さらに、利用者が自ら解決策に参加する機会を提供すると、解決に導きやすくなります。利用者が受けられるサービスに着目するのみでなく、利用者が自ら問題解決を考える機会を持ち、職員がサポートする形をとることで、不満を和らげることができるでしょう。

介護の傾聴に関しては以下の記事で詳しく解説しています。こちらも参考にしてください。
介護における傾聴とは?高齢者とのコミュニケーション術・傾聴力を上げるポイント

わがままな行動に対する基本的な対応方針

利用者のわがままは予測が難しく、どんなタイミングでトラブルにつながるかわかりません。そのため、あらかじめ対応方針を決めておき、スタッフ全員で共有と理解をしておくことが重要です。

一貫した対応を行い、ルール等を常に明確に示せると、問題が大きくなることを防げます。

できること・できないことを明確にして伝える

介護施設において、スタッフが対応できる範囲と対応できない範囲を明確にすることは、利用者への適切な対応の基礎となります。

対応できる範囲を明確に伝えることで、サービス内容の誤解やサービスに対する不満を減らすことができるでしょう。

スタッフが提供できるサービスの範囲や、安全上の理由から実施できない活動などを、利用者に対しては契約時に、スタッフに対してはミーティング時に説明することが大切です。

集団生活のマナー・施設でのルールを伝える

集団生活においては、他の人への配慮や施設でのルールを守ることが大切になります。一般的なマナーやルールを守らない人が大勢いる場合、快適に過ごせなくなってしまうでしょう。

たとえば、他の利用者の悪口を言わない、スタッフや他の利用者に対する八つ当たりをしないなど、基本的なマナーを改めて伝えることが重要です。

これらのルールやマナーを定期的に利用者に伝え、理解を深めてもらうことで、わがままな行動の発生を予防することができます。

また、定期的にルールやマナーを共有することで問題が明確になりやすくなり、対応もスムーズになるでしょう。

わがままが長引いたときの対応を決めておく

利用者のわがままが長引いて、他の利用者やスタッフに影響を及ぼす可能性に備え、事前に対応計画を立てておくことも重要です。

たとえば、他の利用者に対して迷惑がかかるような要求(「順番を変えろ」など)をした場合の対応策を決めておくと仮定しましょう。

対応方法について、以下に解説します。

他の方へ直接的に影響が出ている場合は、それぞれの利用者を引き離します。安全を確保する必要があれば、一時的に隔離できるような安全な部屋を活用すると良いでしょう。

興奮が落ち着いたタイミングで、冷静に話をします。利用者の感情に理解を示しつつ、ルールやマナーに違反することに関しては適切に対応しましょう。

わがままを原因としたトラブルが長引くようであれば、状況を記録に残し、スタッフや上司に共有します。その上で解決策が挙がるのであれば、スタッフ間で統一した対応を行うようにしましょう。

統一したケアを継続してもトラブルが改善しない場合、関係者を巻き込み、会議を開いて解決策を模索します。

会議を開いても、わがままな要望を解決できる術が無いのであれば、解決できそうなサービスの紹介を検討します。これについては、他職種や家族とも関わりながら話を進めたほうがスムーズでしょう。

このような対応の流れを決めておくとトラブルを回避しやすくなるでしょう。

過剰なわがままへのNG行動

介護施設における利用者のわがままに対する対応は、常に慎重さが求められます。利用者の要求が過剰と感じられる場合でも、その背後にあるニーズや感情を見逃してはなりません。

以下のような対応は、状況を悪化させる可能性があるため、避けるべきです。

  • 聞こえないふりをして無視する

利用者の要求や不満を意図的に無視する行為は、短期的には問題を避けることができるかもしれませんが、長期的には利用者との信頼関係を損ないます。無視された利用者は孤立感や不信感を抱くことになり、その結果、より強い要求や抗議の形で反応する可能性が高まります。

  • 利用者の過剰なわがままにすべて対応してしまう

利用者のすべての要求にすべて応えることは、一見、利用者を満足させることができるように思われるかもしれません。しかし、これは過度な要求を助長し、他の利用者との公平性を損ねる結果にもつながります。

  • 大声で怒鳴る・命令口調になる

利用者の行動に対して感情的になり、大声で怒鳴ったり命令口調で対応したりすることは、状況を一層悪化させるだけでなく、プロフェッショナリズムを損ねる行為です。このような対応は、利用者を恐怖や不安に陥れ、さらに対立を深める原因となるでしょう。

万が一、介護利用者を叩きたくなってしまったら?

介護の現場で働くスタッフは、時に利用者のわがままな行動に直面し、強いストレスを感じることがあるでしょう。

時には、利用者を叩きたくなったり怒鳴りたくなったりするような気持ちが湧くこともあるかもしれません。

介護は、いかに感情を管理し、適切な行動を取るかが重要になる仕事です。以下で、具体的な対処法を解説します。

  • 一時的にその場を離れる

感情が高ぶったと感じたら、可能であれば一時的にその場を離れ、深呼吸をして冷静さを取り戻しましょう。感情のコントロールを失う前に、少し距離を置くことで、冷静に状況を評価して適切な対応を考える余裕が生まれます。

  • 感情を仲間と共有する

同僚や上司と感情を共有することも有効です。自分の感じているストレスや怒りを表現することで、感情の負担を軽減し、他のスタッフから助言やサポートを受けることができるでしょう。他者との共感は、ストレスを軽減する重要な方法の1つです。

  • ストレスマネジメントの技術を身につける

定期的なストレスマネジメントの研修やセミナーへの参加を検討しましょう。アンガーマネジメントや時間管理など、ストレスを効果的に管理する方法を身につけ、プロフェッショナルな対応が継続できるように学び続けましょう。

  • 専門家のサポートを求める

感情的な問題が継続している場合は、心理カウンセラーやメンタルヘルスの専門家からサポートを受けることも検討してください。専門的なサポートを通じて、ストレスや感情的な問題の解決策が見つかるかもしれません。

以下の記事では介護における倫理について解説しています。こちらもぜひご一読ください。
介護における倫理の役割とは?介護職の倫理基準・現場で実践するためのポイント

認知症によるわがままへの適切な対応とは

認知症を抱える利用者のわがままな行動は、その病状による認識の違いや不安から生じることが多く、慎重な対応が求められます。

適切に対処するためには、事前にルールを整備しておくことや、アンガーマネジメントなどの教育を徹底することが重要になるでしょう。

以下で、認知症によるわがままに対する適切な対応方法について解説します。

  • ルールを整備しておく

わがままな要求に対しては、施設のルールを明確かつ簡潔に伝えることが効果的です。認知症のある方もいるため、ルールは理解しやすい形で設定される必要があります。日常生活の中でルールに一貫性を持たせ、規則正しい生活リズムをサポートすることで、利用者の混乱を抑えることができるでしょう。

  • アンガーマネジメントを徹底する

認知症の利用者がわがままな行動をとる理由として、不安や恐怖、環境への適応困難などが考えられます。スタッフは、感情をコントロールし、冷静に対応することが重要です。利用者の話をじっくりと聞き、感情を共有し、共感を示すことで利用者の不安を和らげることができるでしょう。

  • 状況に応じた柔軟な対応

認知症の利用者への適切な対応は、その人の性格や状態、病状の進行具合などによって異なります。スタッフは、利用者の現在の認知機能や感情の状態を正確に把握し、その人に合わせた対応を心がけましょう。利用者の尊厳を尊重しつつサポートすることが大切です。

利用者のわがままな行動にはバランスを保って対応しよう

本記事では、利用者のわがままに対する対処法を解説しました。また、日常の中でスタッフが取り入れられる具体的な対応方法や、集団生活でのマナーやルールの重要性を説明しました。

介護スタッフは利用者の要求とルールとマナーのバランスを保ち、実現可能で健全な範囲でのみ対応する判断が大切になります。また、利用者が安心して自己表現できる環境を作ることで、わがままな行動を取る理由を減らすことができるでしょう。

介護施設で遭遇する利用者のわがままな行動は、疾患や心理的な要因となっていることが少なくありません。適切に対応するためには、利用者一人ひとりの背景を理解し、ニーズに耳を傾けることが重要になるでしょう。

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この記事の著者

Rehab Cloud編集部   

記事内容については、理学療法士や作業療法士といった専門職や、デイサービスでの勤務経験がある管理職や機能訓練指導員など専門的な知識のあるメンバーが最終確認をして公開しております。

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