お箸を使って自分で食事を摂るための機能訓練・リハビリ内容を紹介

機能訓練

上肢

更新日:2024/11/06

自分でお箸を使って食事を摂ることは、日常生活を送る上で大切なことです。しかし、何らかの理由で箸を使うことが難しくなった場合、食事をすることが困難になり、生活の質が低下してしまう恐れがあります。この記事では、自分のお箸で食事ができるようにするための機能訓練・リハビリ内容を紹介します。お箸で食事をすることの重要性や機能訓練の目的、必要な機能、具体的な訓練方法、効果的な訓練のコツ、継続するためのモチベーション維持方法、注意点などについて解説します。

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お箸を使って自分で食事を摂ることの重要性とは

お箸を使って自分で食事を摂ることは、実はとても重要な役割を果たしています。ここでは、自立した食事動作の意義とQOL向上への影響の2つの観点から解説します。

【自立した食事動作の意義】

自立した食事動作の意義として、主に以下の2つが挙げられます。

  • 自信が向上し、社会参加につながる
  • 介護者の負担が軽減する

以下に詳しく解説します。

お箸を使って自分で食事を摂ることは、自信の向上に大いに寄与します。自分で食事を摂るという基本的な動作ができることは、自己肯定感を高め、社会参加の機会を増やします。特に高齢者にとって、自信が持てるという精神的な効果は、日常生活の質を大きく向上させることでしょう。

また、利用者が自分でお箸を使って食事を摂れるようになると、介護者の負担も軽減されます。食事介助の時間が減ることで、介護者は他のケアに集中できるようになるでしょう。これにより、全体的な介護の質が向上し、利用者と介護者の双方にとって良い環境が作られます。

【QOL向上への影響】

QOL向上への影響として、主に以下の2つが挙げられます。

  • 適切に栄養摂取できて、健康維持につながる
  • 食事を通じて他者と交流し、社会的孤立の防止につながる

以下に詳しく解説します。

お箸を使って自分で食事を摂ることができると、適切に栄養摂取しやすくなります。栄養摂取は、健康状態の維持に直結し、日々の生活の質にも関わります。バランスの取れた食事を自分のペースで楽しく摂ることで、健康管理も効果的に行えるでしょう。

食事は社会的な交流の場にもなります。自分のお箸で食事を摂ることで、自然と他者との交流が促進され、社会的孤立を防ぐことができます。誰かと共に食事をすることで、そこにコミュニケーションが生まれ、心の健康にも良い影響を与えます。

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お箸で食事を摂るための機能訓練・リハビリとは

介護現場では、リハビリと機能訓練は同じ意味で用いられることがあります。しかし、医療現場では、リハビリと機能訓練は明確に分けて考えられます。

機能訓練は、怪我や病気からの回復を目的とした治療の一環として行われることが多いです。主に特定の身体機能や動作の改善を目指します。たとえば、歩行訓練や筋力強化など、具体的な機能の向上を図ります。

一方、リハビリは全体的な生活の質を向上させることを目的としており、機能訓練と全く同じ内容を示すものではありません。リハビリはリハビリテーションを略したものであり、人間らしく生きる権利の回復を意味します。身体的・心理的・社会的な機能の全般的な回復を目指し、病気やけがなどによる障害から、生活の質を向上させることを目的としています。

介護事業所では、機能訓練とリハビリを明確に分けて用いる機会は多くありません。同じ意味で使われることが多いため、ここでは「機能訓練」という表現を用います。

ここからは、機能訓練を行う場所と対象者について解説します。

【機能訓練を行う場所】

医療の現場では機能訓練室やベッドサイドが主となるでしょう。また、デイサービスなどの介護事業所では、箸を使う練習をする場合、機能訓練室のみでなく食堂などでも行われます。

箸を使うための機能訓練は、目的に合った上肢の運動ができる環境であれば、特に場所を選びません。運動方法によって、さまざまな場所で行われます。

【機能訓練の対象】

リハビリは、障害から生活の質を向上させることを目的にしています。よって、お箸で食事を摂ることに困難さがあり、リハビリによって生活の質を向上することができるのであれば機能訓練の対象になります。

一般的には、主に高齢者や身体に障害を持つ方々が対象になり、保険が適用されることも多いでしょう。ただし、自費のリハビリテーションなどもあるため、対象にならなければ機能訓練が行えないとは限りません。 

機能訓練・リハビリの目的と重要性

機能訓練・リハビリの目的と重要性について、以下の3つの観点から説明します。

  • リハビリの目的
  • 介護現場での重要性
  • 自立支援とQOLの向上

以下で詳しく解説します。

【リハビリの目的】

お箸で食事を摂るためのリハビリの主な目的は、利用者が食事動作を円滑に行えるようにすることです。お箸をスムーズに使うことができれば、食事の楽しみが増し、栄養摂取の効率も向上することでしょう。

【介護現場での重要性】

介護現場において、利用者が自立して食事を摂ることができるようになると、介護者の負担が大幅に軽減されます。本人の思い通りに食事をしながら、介護者は食事介護以外の支援に時間をかけられるようになります。よって、全体的な介護の質が向上し、利用者の自立を支援することにつながるでしょう。

【自立支援とQOL向上】

利用者が自立して食事を摂ることができるようになると、生活の質(QOL)が大きく向上します。自立した生活は、心理的な安定とともに、社会参加の機会を増やし、全体的な生活の満足度を高めることでしょう。

食事動作に必要な機能

食事動作に必要な機能については、以下の2つに注目します。

  • 握力と手の動き
  • 細かい操作技術

握力と手の動きについては、箸やスプーンを使う基本的な機能に注目します。

お箸を使うためには、適切な握力と手の動きが必要です。筋力や関節の動きなど基本的な機能がしっかりしていることで、食事動作がスムーズに行えます。筋力は、握る力だけでなく、指先の細かい操作にも関わるため、総合的な手の力を鍛えることが重要になるでしょう。

細かい操作技術については、 食事動作に必要な精緻な動きに注目します。

お箸を使って食事動作を行う際には、精緻な操作技術が求められます。箸先で食べ物をつかむ、持ち上げる、口まで運ぶといった一連の動作を正確に行うためには、指先の細かい動きを練習することが重要になるでしょう。

お箸を使えるようになるための機能訓練

ここでは、お箸を使えるようになるための機能訓練について、細かくレベルに分けて解説します。

初級レベル

  1. 紙を指で掴みます。紙を両手の指先でしっかりと掴みましょう。「紙をしっかり持ってください」と声をかけると良いでしょう。
  2. 紙を指先で掴み前後に引きます。紙をしっかりと掴んだ状態で、前後に引っ張ります。力を入れ過ぎず、紙の張りを感じる程度に。
  3. 紙を破きます。反復して紙を切っていきます紙を破り、指先の力加減を調整しながら切っていきます。「ゆっくりと紙を破いてみましょう」と声をかけましょう。
  4. 繰り返し行います。

紙を千切る以外の運動として、握力を鍛えるためにボールを握る練習も良いでしょう。柔らかいボールを使い、指先でしっかりと握る動作を繰り返すことで、握力が向上します。

その他、スプーンを使った訓練も良いでしょう。スプーンを使う基礎訓練は、お箸を使うための第一歩になります。まず、スプーンの基本的な持ち方と使い方を練習します。スプーンで小さな物をすくうことで、手の動きの基本を身につけます。すくう物の重さを変更すれば、筋力トレーニングにもなるでしょう。

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中級レベル

  1. 箸を使用し、セラプラストを切っていきます。セラプラストを箸でしっかりと持ち、切る準備をします。
  2. 箸で適度な大きさに摘みます。箸を使い、適度な大きさに摘みます。「少しずつ摘んでみましょう」と案内します。
  3. 箸で適度な大きさに切ります。セラプラストを少しずつ切り分けていきます。慣れてきたら、切る大きさをコントロールしてみるのも良いでしょう。
  4. 繰り返し行います。

その他、手先の精密な動きを促進するために小さな物を指でつまむ練習や、ビーズを使った訓練などを行うのも良いでしょう。これにより、指先の細かな動きの精度の向上が期待できます。

上級レベル

  1. 箸を持ちます。箸を正しく持ち、準備します。「箸をしっかり持ちましょう」と声をかけましょう。
  2. 箸でスポンジを挟みます。スポンジを箸でしっかり挟みます。「優しく挟んでみましょう」と案内します。
  3. スポンジを持ち上げます。箸で挟んだスポンジを持ち上げます。手元を見ながら行いましょう。
  4. お椀にスポンジを移し入れます。スポンジをお椀に移します。箸を使い、丁寧に入れましょう。
  5. 反復して、スポンジを全て移動します。 同じ動作を繰り返し、全てのスポンジをお椀に移します。「落ち着いて繰り返しましょう」と声をかけます。

上級レベルでは、バネのついた箸などの自助具を用いて、実践的に操作する訓練方法を取り入れましょう。利用者に合った特定の自助具を使うことで、実践形式の訓練になり、箸の操作をよりスムーズに行えるようになるでしょう。

また、実際の食事動作を再現する訓練を行い、日常生活での応用を目指しましょう。たとえば、食事をするシチュエーションを再現して口元まで箸でスポンジを運ぶなど、実際の動作を通じて技術の習得を目指します。

掴む物はスポンジだけに限らず、ボタンなどに変更することで、より効果的な訓練ができるでしょう。

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日常生活への応用

上級レベルの訓練で習得した技術を日常生活に効果的に活かす方法を考えてみましょう。ここでは、実際の生活の中でスムーズに技術を応用するためのポイントを紹介します。

1.日常動作の中での実践 訓練で身につけた箸の使い方を、毎日の食事で積極的に取り入れます。食材の種類や大きさを変えて、実際の食事で練習することで、箸の操作性を向上させましょう。
初めは柔らかい食材を使い、次第に硬い食材に挑戦することで、自信を持って箸を使えるようになるでしょう。
2.自助具の活用 訓練で使用したバネ付き箸やその他の自助具を日常的に使用することで、実践に近い形で練習を続けられます。
自助具の扱いに慣れることができれば、日常生活でもスムーズに箸を使用できるようになります。
3.家族との共同で練習 家族と一緒に食事をする際に、訓練の成果を共有し、互いにサポートし合いながら練習を続けることが大切です。
関わる人たちの協力があれば、練習に対するモチベーションも維持しやすくなります。
4.食事以外での応用 日常の様々な場面で、箸を使う機会を増やします。たとえば、料理の盛り付けなど、実際に食事をする以外の場面でも箸を使うことが、良い訓練になるでしょう。
5.日常生活の再現 訓練で行ったスポンジの移動やボタンのつまみなどを実際の食事や家事に応用し、実践的な技術を磨きましょう。
日常生活内で、訓練の成果を活かせるような動作を自然と組み込むと、訓練と実生活の橋渡しがスムーズになります。
6.定期的な振り返り 日常生活での応用を定期的に振り返り、自身の進歩を確認します。成功体験を積み重ねることで、自信を深め、さらなる技術向上につながります。

これらの方法を通じて、上級レベルで習得した技術を日常生活に活かし、より充実した生活を送りましょう。技術が向上することで、食事の時間がさらに楽しみになり、生活の質も向上します。

このアプローチで、上級レベルの訓練を日常生活に効果的に応用できるようになります。

初級レベルも難しい場合の訓練

  1. 姿勢を正して座ります。背筋を伸ばし、椅子にしっかり座ります。「姿勢を整えましょう」と声をかけます。
  2. 肘を90度程度曲げます。両肘を体の前で90度に曲げます。「肘をしっかり曲げてください」と案内します。
  3. 胸の高さで肘を前方へ伸ばします。息を吐きながら、肘を前に伸ばします。「しっかりと前に伸ばしましょう」と促します。
  4. 元の位置まで戻します。息を吸いながら、肘を元の位置に戻します。「ゆっくり戻りましょう」と声をかけます。
  5. 反復して行います。この動作を繰り返し行います。「リズムよく続けましょう」と励まします。

初級レベルの運動も難しい場合、手指の細かな動作が安定しない身体状況にある可能性があります。

たとえば、以下のようなケースが考えられるでしょう。

  • 座位のバランスが安定せずに腕や手を動かすことが難しい。
  • 関節可動域が狭く、そもそも紙を摘むまで手指を動かせない。
  • 腕や手の筋力が不足していて、細かな動作をするのに多くの努力を要している。

精密な動作をするためには、その動作に集中する必要があります。自らの身体を支えるために努力を要したり、バランスが取れなかったりする状態では、箸の訓練をすること自体が難しいでしょう。

身体の状態だけでなく、椅子やテーブルの高さなどの環境が影響している可能性も考慮する必要があります。

まずは、精密な動作に集中できる身体や環境を整えることが大切です。

効果的な訓練を行うためのポイント

ここでは、効果的な訓練を行うためのポイントを解説します。

訓練のコツ

訓練のコツは、以下の2つに注目すると良いでしょう。

  • 段階付けと個別化
  • 介護スタッフのサポート

訓練は利用者の状態に応じて段階的に行うことが重要です。比較的簡単な運動から徐々にステップアップしながら、それぞれのレベルに合わせた訓練を提供することで、無理なく効果を高めることができます。また、個別のニーズに対応した訓練プログラムを作成することも大切になるでしょう。

また、効果的な訓練を行うためには、介護スタッフの適切なサポートが欠かせません。スタッフは利用者の状態をよく観察し、必要に応じて声かけや補助を行うことで、訓練を効果を引き出しやすくなります。

モチベーションの維持

機能訓練のモチベーションを維持し続けるのは簡単なことではありません。難易度の高い訓練を繰り返していると、モチベーションが保てなくなることもあるでしょう。

楽しく機能訓練を継続するためには、楽しさを取り入れることが重要です。たとえば、ゲーム感覚で楽しめる訓練法を取り入れることで、利用者のモチベーションを維持しやすくなります。

また、小さな目標を設定し、その達成感を感じさせる工夫も有効でしょう。目標を達成することで、利用者は自信を持ち、次のステップに進む意欲を高められます。

お箸を使えるようになるための機能訓練の注意点

機能訓練を行う際には、いくつかの注意点を考慮する必要があります。以下に主なポイントをまとめます。

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個別ニーズに合わせた訓練を提供する

利用者ごとに状態が異なるため、それぞれに合わせた訓練法を提供することが重要です。特定の疾患や体の状態に応じた個別的なアプローチを行うことで、効果的な機能訓練が可能になります。

また、訓練の進行は無理なく行うことが大切です。訓練の強度や回数を調整し、安全に行うことを心がけましょう。

手の震えや他の障害にも対応する

さまざまな障害に対応するためには、主に以下の2点が重要になります。

  • 自助具の活用
  • 特定の障害への配慮

以下で詳しく解説します。

【自助具の活用】

手の震えを軽減するために、適切な自助具を活用することが重要です。たとえば、Liftwareのような製品を利用することで、手の震えによる食事の困難を軽減できます。

【特定の障害への配慮】

リウマチやパーキンソン病、脳梗塞などの特定の障害に対しても、適切な対応が求められます。それぞれの疾患に合った訓練法やアプローチを取り入れることで、効果的なリハビリが行えます。

たとえば、リウマチのリハビリテーションでは、炎症活動期と炎症非活動期に分けて行います。活動期は痛みの軽減と関節変形の予防が中心で、装具を使って関節を保護しつつ、可動域を維持するための軽い運動を行います。一歩、非活動期は予防的な機能訓練以外も行っていく必要があるでしょう。関節の動きや筋力を回復させるリハビリを行い、等尺性運動を取り入れて筋力強化を図ります。自助具の活用も重要で、日常生活の動作をサポートする道具を使用します。適切なリハビリにより、関節の機能低下を抑え、生活の質を向上させることが可能です。

また、脳梗塞の場合は麻痺の回復状況と予後を確認し、右半身に強い麻痺が残ってしまった場合は左手を使用することも検討する必要があるでしょう。

このように、疾患特性への配慮をした上で対応する必要があります。

自助具を適切に使用する

自助具は利用者が自立した生活を送るための重要なサポートですが、過度な依存に注意しましょう。自助具を使うことで手の動作が楽になる反面、基本的な握力や指先の操作能力の向上を妨げる恐れがあります。

たとえば、握力が弱い方が補助のついたお箸を使用する場合、握力や指の操作訓練を並行して行うことが大切です。

また、自助具は利用者の状態に合ったものを選び、実際の生活動作を再現する訓練を続けることで、基本的な動作能力を維持・向上させます。自助具はあくまで補助具として活用し、日常の訓練を通じて利用者が自分の力でできることを増やすことを目指す意識を持って取り組めると良いでしょう。

機能訓練の状況に応じて、補助具を変更をしていくことも念頭におきましょう。

よくある疑問と解決策

ここでは、機能訓練やリハビリについて、利用者や家族からよく寄せられる疑問とその解決策について説明します。

初歩的な疑問

訓練を始める適切な時期と基本的な方法について気になる方は少なく無いでしょう。

一般的に、ケガや病気がある程度安定した時点で、医師やリハビリ専門家の指導のもとで訓練を開始することが推奨されます。

訓練開始のタイミングは疾患ごとに異なります。リウマチでは、炎症が落ち着いた時期に、関節の保護を考慮しつつ適切な運動を開始します。パーキンソン病では、症状の進行に応じてバランス訓練や歩行訓練を取り入れつつ、早期から運動を行うことが有効でしょう。脳梗塞の場合、早期にリハビリを始めることが勧められていますが、開始を判断する基準があります。

その他、たとえば骨折した場合、手術したその日からリハビリを行うケースもあるでしょう。ただし、当然ながら身体状況に応じて、安全に行える範囲で機能訓練は行われます。

機能訓練の方法については、上記のように背景にある疾患や身体状況によってさまざまです。

いずれも、医師や専門家の指導のもとで行うことが重要になるでしょう。

訓練の進め方や効果の疑問

効果的な訓練の頻度や進め方、期間については利用者の身体特性や疾患によって変わるため、一概に言い切ることはできません。

以下に抄録等で示されているデータを示しますのでご参考ください。

  • 身体機能を維持するためには、毎日30分以上の運動を取り入れた生活を送ることが望ましい。
  • 60歳代女性では、肘関節を曲げる筋力の増大はトレーニング開始3週間後から認められる。
  • 脳卒中維持期において、麻痺側上肢の強制使用を行うCI療法では、上肢の運動の質が向上する。
  • 脳卒中発症後早期の患者では、より効果的な筋力低下の回復を促すために、訓練量や頻度を増やすことが推奨される
  • 神経筋疾患患者では、廃用と過用が同時に存在するという特徴があり、廃用をベースに負荷が増大した時に過用性筋力低下が生じる。

以上のように、利用者の年齢や性別、疾患などによって効果的な機能訓練方法はさまざまな方針が考えられます。利用者の状況をさまざまな視点から考慮した上で、機能訓練の頻度などを検討します。

医師や専門家の指導のもとで行うことが重要になるでしょう。

特定の疾患に関する疑問

脳卒中の機能訓練については先ほど記載しましたが、さらに具体的に説明すると、脳卒中の発症からの経過や麻痺の重さなどによって訓練方法は変わってきます。

たとえば、麻痺側が完全に動かないほど重度であった場合、利き手交換の練習をすることが考えられます。しかし、麻痺が軽度であった場合は、積極的な機能訓練によって細かな動作の練習をする方が効果的なケースもあるでしょう。

その他、リウマチを抱えている場合は、過剰な運動や誤った運動を避ける必要があります。また、炎症期には関節の保護も念頭におく必要があるでしょう。関節の変形が進んでいる場合は、自助具の活用も十分に検討するべきです。その場合、自助具の練習が訓練として望ましいこともあるでしょう。

よって、疾患の特性に配慮しながら、どのような目標に向かって機能訓練を行うのか見定めることが大切です。

疾患の進行状況によっても目標の変更などを検討する必要があります。

作業療法士との連携

ここでは、作業療法士との連携方法について説明します。日常生活動作のリハビリの専門家と協力することで、より効果的な訓練プログラムを作成し、実施することが可能になります。

以下で、具体的にどのように連携するのかを解説するのでご参考ください。

1. 個別プログラムの作成 作業療法士は、利用者の日常生活動作への適応を目指すサポートをする職種です。
利用者の身体的特徴や生活環境を考慮し、個別にカスタマイズされた訓練のプログラムを設計します。
利用者のニーズに合わせた具体的な目標設定を検討しましょう。
2. 日常生活動作の改善
(機能訓練)
日常生活の中で必要となる動作や活動を重視した訓練を行うことで、実際の生活の質向上に直結します。
たとえば、食事などの動作をスムーズに行えるように適切な訓練が実際に行われます。
3. 家族や介護者との連携 家族や介護者への指導も作業療法士の重要な役割です。作業療法士は、家庭での訓練方法や介助方法をアドバイスし、継続的なサポート体制を構築します。
家族の状況に合わせたサポート体制が重要になるため、専門職と相談しながら体制を整えるようにしましょう。
うまくサポート体制が構築できれば、家庭環境でも訓練をすることが可能になります。
4. モチベーションの維持 作業療法士は、利用者のモチベーションを高める役割も担います。また、介護職員や家族がその役割を担うこともあるでしょう。
楽しみながら訓練を続けるために、趣味や興味を取り入れたプログラムを利用者に提案し、長期的に取り組めるようサポートしましょう。
5. 定期的な評価と調整 定期的に訓練の進捗を評価し、必要に応じてプログラムの調整を行います。
これにより、利用者の状態や目標の変化に応じた最適な訓練を継続することができます。

作業療法士との効果的な連携は、利用者がより独立して生活できるよう支援するために重要なテーマになるでしょう。日常生活の中での目標達成を目指し、利用者とスタッフ、家族が一体となって取り組むことが、成功への鍵となります。

お箸を使って自分で食事を摂ることがQOLを維持するためには大切

お箸を使って自分で食事を摂ることは、自己肯定感の向上や介護者の負担軽減に繋がります。食事は健康維持や社会的孤立を防ぐ手段でもあります。

適切な機能訓練を通じて、利用者の自立とQOL向上を支援し、日常生活を豊かにすることができるでしょう。

お箸の使い方を段階的に学ぶことで、利用者は自信を持つことができ、社会参加の機会も広がります。訓練を続けることで、リハビリの効果を最大限に活かし、生活の質をさらに向上させることもできるでしょう。

まずは実践することが大切です。すでに実践している方は、今後も継続し、さらなる機能改善を目指しましょう。

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この記事の著者

morita ryoichi  森田 亮一

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