整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
全身
更新日:2024/11/05
麻痺のある方にとって更衣動作は非常に難しい動作の1つです。本記事では更衣動作を習得するためのリハビリ訓練方法について紹介します。介護事業者向けに、効果的な訓練のポイントやコツにも触れ、更衣動作の自立を目指し、生活の質を向上させるためのサポート方法を解説します。
この記事の目次
衣服の着脱をスムーズに行えるようにするために更衣動作のリハビリを行います。具体的には、袖に腕を通したり、ボタンを留めたり、靴下を履いたりする動作練習などが挙げられるでしょう。
更衣動作のリハビリの目的は、更衣動作の自立を目指すことにあります。一口に更衣動作と言っても、リハビリ内容は単純ではありません。
たとえば以下のようなケースが考えられるでしょう。
上記のようなさまざまな更衣動作に必要な機能を向上させるため、更衣動作の訓練のみでなく、筋力トレーニングやストレッチ・バランス練習を行うこともあります。
また、更衣動作の自立を目指すには、安定して座位を保てることが重要なポイントになるでしょう。座位のバランスが不安定な場合は、更衣動作時に椅子から転落してしまう可能性が高まります。
さらに、更衣動作の難易度は、衣服の形態(サイズや素材、ボタンの有無など)により大きく異なるため衣服の工夫も大切です。できるだけ大きめの衣服で、ボタンはないかあっても片手で操作できる大きさであれば、比較的簡単に衣服を着ることができるでしょう。
更衣動作訓練を行う理由について、以下の2つの観点から説明します。
更衣動作訓練の目的は、利用者が自力で衣服の着脱を行えるようになることです。その先には、好きな衣類を着て出かけることができるといったQOL(Quality of Life)の向上につなげることもできるでしょう。
細かく説明すると、更衣動作訓練の目的には、以下のような具体的な内容が含まれます。
1.自立度の向上 | 自分で衣服の着脱ができることは利用者の自立度を高める重要な要素です。適切な衣服を適切なタイミングで着脱できることで、体調管理がしやすくなり、日常生活の自立度が向上します。 |
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2.QOLの向上 | 更衣動作が自分で行えるようになることで、日常生活の質が向上します。自分で身だしなみを整えることができると、社会参加や外出の機会を増やしやすく、人とのコミュニケーションが活発に行えます。また、精神的な充実感や満足感が得られるため、生活全般に対する意欲も高まるでしょう。 |
3.身体機能の維持・向上 | 更衣動作は、手足や体幹の大きな動きを伴う動作のため、筋力や身体の柔軟性を保ちやすくなります。また、細かい動作やバランス能力も養われます。日常的に行う更衣動作で身体を使うことで、他の生活動作にも良い影響を与え、機能訓練の効果が高まりやすくなるでしょう。 |
4.安全性の確保 | 正しい方法で更衣動作を行うことで、転倒や怪我のリスクを減らすことができます。介護者が適切な介護サービスを提供したり、利用者本人が適切な更衣動作の方法を身につけることで、安心して日常生活を送ることが可能になるでしょう。 |
【更衣動作訓練の重要性】
更衣動作訓練は、介護の現場において非常に重要な役割を果たします。具体的には、以下のような具体的な内容が含まれます。
1.QOLの向上が目指せる | 自分の好みの服を選び、自分のペースで行動することで、日常生活においての満足感が向上する方も少なくないでしょう。機能訓練を行う目的になりやすく、自分らしい生活を送るために重要性の高い項目と言えます。 |
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2.介護負担が軽減できる | 利用者が自分で着替えられるようになると、介護者の負担が軽減されます。利用者の更衣動作にかかる介護負担が軽減された場合、介護者は他の重要な支援やケアに集中することができるでしょう。 |
3.精神的健康感を向上させることができる | 自分でスムーズに着替えができることは、精神的な自立感を高めます。また、他者から素肌を見られる機会を減らし、羞恥心を軽減することもできるでしょう。利用者の自尊心を保ち、うつや不安の予防にもつながる可能性があります。 |
更衣動作を行うためには、筋力・柔軟性・バランスなどの身体機能が重要になります。
以下に、更衣動作に必要な主要な身体機能を説明するのでご参考ください。
更衣動作を行うには、動作に応じて身体の各部位を思い通りに動かすための筋力が必要です。更衣動作において重要な筋力の概要は以下の通りです。
上半身の筋力 | 衣服を持ち上げる、シャツなどを着るときに腕を上げる、袖に腕を通すための力。ボタンを留めたり外すための力。肩や手の力。 |
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体幹の筋力 | 姿勢を保ちつつ、バランスを取りながら衣服を着脱するための力。腹筋や背筋の力。 |
下半身の筋力 | ズボンや下着を履くために起立したり、片足を持ち上げる力。脚の力。 |
【柔軟性】
柔軟性は、関節や筋肉がどれだけ大きく動くかを示す能力です。更衣動作には、主に以下の項目の柔軟性が必要になるでしょう。
肩や腕の柔軟性 | 腕を後ろに回したり、頭の上に持ち上げたりする際の肩関節や腕の動き。 |
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腰や膝の柔軟性 | 靴下やズボンを履くときに前かがみになったり、膝を曲げたりする動き。 |
指の柔軟性 | ボタンを留めたり、ファスナーを上げ下げする際の指の動き。 |
バランスは、身体の安定性を保つ能力のことを指します。更衣動作においてバランスは、主に以下の場面で必要になるでしょう。
立っている時 | 立ったままズボンや下着を上げ下げするときの安定感。 |
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座っている時 | 椅子に座りながらズボンや下着、靴下や靴を履くときの体幹の安定性。 |
更衣動作中 | 腕を伸ばしたり、体をひねったりする際に転倒しないようにする能力。 |
協調性は、複数の筋肉や関節を連動させて動かす能力です。更衣動作では、以下の協調性が重要になるでしょう。
手と指の協調性 | ボタンを留めたり、ファスナーを上げ下げする際の細かい動作の連携。 |
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腕と肩の協調性 | シャツなどを着るときなどに必要な腕や肩の動きのスムーズな連動。 |
全身の協調性 | 複数の動作を連続して行う際の体全体のスムーズな連動。 |
更衣動作をスムーズに行うためには、上記の機能をバランスよく鍛えることが大切です。
また、効果的な機能訓練を実施するために利用者にとって必要な機能を見極め、適切なトレーニングを行うことが重要になるでしょう。
更衣動作訓練の方法は数多く考えられますが、行えそうな機能訓練方法から、段階的に進めることが大切です。
利用者に合ったレベルの機能訓練から行い、徐々に中級、上級へと進むことで、無理なく技術を身につけられます。必要に応じて介護者が補助し、利用者を励ましながら行うことで、前向きに訓練に取り組みやすくなるでしょう。
また、訓練を行う場所を安全で快適に保つことも重要です。たとえば、転倒防止のために床に滑り止めを置くなどの工夫をしましょう。
以下で更衣動作の機能訓練について、レベルに分けて解説します。一例ではありますが、ご参考にしてください。
他にも、セラバンドを利用し、座位でのズボン・下着の更衣動作練習を行うのも良いでしょう。セラバンドを使うことで、より効果的に衣服をつまむ力や引っ張る力を鍛えることができます。
1.体の左右後方に、目標となるものを置きます。
2.左手で右後ろにある目標物へ手を伸ばします。「身体をねじって後ろの目標物にタッチしましょう。」と声を掛けるとよいでしょう。背中や肩などに痛みのない範囲で、無理なく行ってください。
3.元の姿勢に戻します。
4.反対側も同様に行い、この動きを繰り返しましょう。
座位バランスを向上させるエクササイズを取り入れることで、更衣動作の安定性を高めることができます。
ここでは、片麻痺のある方への実践的な訓練方法を紹介します。
脱衣を訓練する場合は、逆の手順で行ってください。
利用者に合った衣服を使って練習することで、モチベーションを高めながら訓練が行えます。
上級レベルでは、実践的な訓練を行うと良いでしょう。着たいと思っている衣服の形や家や身体の状況などに合わせて、実際の更衣動作を想定した上で訓練を行いましょう。
片麻痺患者に対する更衣動作訓練は、特に注意が必要です。片麻痺患者は、片側の手足に麻痺が残っていることが多いため、通常の更衣動作の方法では更衣が難しい場合があります。
【片麻痺患者の身体的な特徴】
運動麻痺 | 片麻痺患者の運動麻痺の特徴として、筋力の低下・筋肉の緊張・協調性の低下が挙げられます。脳の損傷によって脳からの指令がうまく伝わらず、麻痺がある側の腕や脚の筋力が低下します。また、筋肉の緊張(痙性麻痺)によって、筋肉が異常に硬くなり、関節が動かしにくくなることが多いです。たとえば、手が曲がったままになってしまうこともあるでしょう。また、脳からの指令がうまく伝わらず、複数の筋肉を協調して動かすことが難しくなります。ボタンを留める、靴ひもを結ぶといった細かい動作が困難になります。 |
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感覚麻痺 | 感覚麻痺が生じると、麻痺側の感覚が鈍くなったり、完全に失われたりすることがあります。感覚麻痺が生じると、衣服の感触や体の位置を感じることが難しくなるでしょう。たとえば、服を着る際に袖がどこにあるか感じ取れなかったり、椅子に座るときに体がどの位置にあるか分かりにくくなったりします。 |
関節の硬直 | 長期間動かさないことによって、関節が硬くなり、動かすのが難しくなることがあります。関節が硬直してしまうと、服を着る際に腕を上げたり、ズボンをはいたりする動作が困難になってしまうでしょう。また、関節の硬直は痛みを引き起こし、更衣のみでなく日常生活の動作にさらなる障害をもたらします。 |
バランス能力の低下 | 片側が麻痺すると、バランスを取るのが難しくなります。これにより、立ち上がったり、片足立ちをするのが難しくなるでしょう。たとえば、ズボンを履く際に片足を上げる動作や、シャツを着る際に体をねじる動作が不安定になり、転倒のリスクが高まります。また、身体のバランスを取るために無意識に体の重心が偏ることがあり、これが長期的には体の歪みを引き起こす可能性もあります。 |
続いて、一般的に考えられる片麻痺患者の更衣動作の課題について説明します。
【片麻痺患者の更衣動作の課題】
腕や脚が動かしにくい | シャツなどを着る際に腕を持ち上げたり、ズボンや下着などを履く際に脚を持ち上げることが難しくなります。特に、患側の手足を動かすことに苦労するケースが多いでしょう。麻痺の重症度によって、更衣動作方法の工夫が必要です。たとえば、下衣の着脱動作を椅子と手すりを活用して行う動作方法を身につけるなどが考えられます。 |
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細かい動作が難しい | ボタンを留めたり、ファスナーを上げたりするなどの細かい動作に課題が生じるケースは少なくないでしょう。麻痺側の手の指の動きが制限されている場合、細かな衣類の操作を行うのが困難になります。ボタンエイドやソックスエイドなどの補助具を活用することで、課題が解消できる可能性があります。 |
バランスが取りにくい | 立位でズボンやスカートを履く動作を行うことが難しく、転倒するリスクも高まります。座っている場合であってもバランスを崩しやすく、転落のリスクは高まります。麻痺側に体重をかけると不安定になることが多いでしょう。また、バランスを崩しやすい状況にあると身体をバランスを保つために活用するため、更衣動作に集中しにくくなります。麻痺の重症度によりますが、安定した背もたれ付きの椅子を使用するなど、安全対策を講じることが重要です。 |
服の着脱に時間がかかる | 麻痺側の動きが制限されると、服の着脱に時間がかかってしまいます。これにより、日常生活のリズムが乱れることがあるでしょう。更衣動作にかかる時間を考慮して、日常生活のリズムを整えることが大切になります。 |
疲労と挫折感を感じる | 更衣動作に時間と労力がかかるため、疲労を感じやすく、挫折感を抱くことがあります。たとえば、体が湿っている時に更衣動作をする場合、衣類の操作が難しくなり時間がかかりやすくなります。更衣動作に疲労と挫折感を感じる状況が続くと、モチベーションの低下につながることがあるでしょう。できる範囲の更衣動作を理解し、無理な動作をし続けないように注意しましょう。 |
片麻痺患者の更衣動作の課題を克服するためには、以下のポイントに注意すると良いでしょう。
一般的な片麻痺患者の更衣動作を理解する | 「着健脱患」という言葉があるように、片麻痺患者の更衣動作には一般的な流れがあります。 「着健脱患」とは、衣服を着る際には健側から先に通し、脱ぐ際には麻痺側から先に抜く方法です。これにより、麻痺側の負担を軽減し、動作がスムーズになります。 利用者の身体状況などにもよりますが、着健脱患という片麻痺患者の一般的な更衣方法を理解しておくと良いでしょう。 |
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適切な衣服の選択する | 伸縮性のある素材や前開きのシャツなど、着脱しやすい衣服を選ぶことが重要です。たとえば、以下のような衣服が適しています。 ・前開きのシャツやジャケット・ゴムウエストのズボン・大きめのサイズの衣類 柔軟性や操作性が高く、動きの自由度の高い衣類が適しています。片手でも着脱が容易にできる衣類が一般的に選ばれます。 |
補助具の利用を検討する | 片麻痺患者の更衣動作をサポートするために、以下のような補助具を活用することが推奨されます。 ・マジックハンド(リーチャー)・長柄の靴べら・専用の衣服の補助具 マジックハンドや長柄の靴べらなどの補助具を利用することで、動作を補います。 ボタンやジッパーの操作が片手で行えない場合は、マジックテープ(ベルクロ)を利用して衣服が着やすいように工夫するのも良いでしょう。ボタンエイドやソックスエイドなどの専用の補助具もあるため、状況に応じて活用しましょう。 |
環境を整備する | 体を動かしにくい状態で、なるべく安全で快適に更衣動作を行うためには、十分に環境を整える必要があります。 たとえば、以下のような調整が考えられるでしょう。 ・見やすい照明にする・座る場所を用意する・床面に滑り止めを設置する・収納の高さを調整する・引き出しやすい収納家具にする・大きな鏡を用意する・壁掛けフックを付ける・衣類を改造する 環境を調整することで、動作の自立度が向上し、モチベーションアップにつながることもあります。 |
段階的に訓練する | 最初は簡単な動作から始め、徐々に難易度を上げることが大切です。たとえば、以下のような流れで段階的に訓練すると良いでしょう。 シャツの袖を通すだけを練習ボタンを留める動作も追加全体の着脱を行う 全ての動作を最初から練習することは難易度が高く、疲労やモチベーション低下を引き起こす可能性があるでしょう。各項目の動作を繰り返し練習することで、動作が習慣化しスムーズに行えるようになります。細かく動作を分割して、短期的な目標を設定すると、継続的にモチベーションを保つことができるでしょう。 |
心理的なサポートを行う | 利用者の努力や進歩を積極的に認め、励ますことでモチベーションを維持しやすくなります。家族や親しい人達との協力体制を整え、患者が孤独を感じないよう支援します。さらに、作業療法士などの専門家のサポートを受けることも大切になるでしょう。適切なアドバイスや心理的な支援を提供し、利用者が安心して訓練に取り組める環境を作ることが大切です。 |
更衣動作訓練は、日常生活の中で実践することが大切です。
実際の生活の中でスムーズに更衣動作訓練を応用するためには、以下のポイントを抑えておくと良いでしょう。
片麻痺患者が更衣動作の課題を克服するためには、日常生活の中で継続的に訓練を行うことが重要になります。
しかし、生活の中で常に訓練を意識するのは難しく、精神的な負担にもなるでしょう。継続するためには、できそうなことから意識して挑戦することが望ましいです。
たとえば、全ての時間帯で行おうとするのではなく、夜の着替えのみを機能訓練の一環として取り入れると決めるなど、負担にならない範囲で訓練を続けることが大切になるでしょう。毎日同じ時間に訓練を行う習慣をつけることで、生活リズムも整いやすくなります。
更衣動作を安全に行うためには、環境の整備も欠かせません。利用者本人専用の使いやすい収納タンスなどを用意することで自立度を高めつつ、モチベーションの維持にもつながるでしょう。
また、家族のサポートを得ることも重要です。初めから全ての行程を自分で行おうとすると疲労が溜まり、挫折感を感じてモチベーションが下がることがあります。体調や動作能力に応じて家族が手伝いながら、無理しない範囲で訓練を行うと励みになるでしょう。
日常生活での更衣動作を定期的に振り返り、進歩を確認することも大切です。成功体験を積み重ねることで自信を深め、モチベーションを高められるよう支援しましょう。
日常生活内で訓練を応用し、更衣動作が上達することで、着替えにかかる時間が短くなり、生活の質も向上しやすくなります。
効果的な訓練を行うためには、継続が欠かせません。そのために、モチベーションを維持しやすくなるポイントは以下の3つです。
以下で詳しく説明します。
【小さな目標を設定する】
前述した「段階的に訓練する」について、さらに詳しく説明すると「小さな目標を設定する」ことの連続が大切になります。一度に大きな目標を立てるのではなく、段階的な小さな目標を設定することで、達成感を得やすくなります。
たとえば「服を1人で着替えられる。」という大きな目標よりも「患側の手を袖に入れる。」「患側の手を袖に入れられたら、次は肘上まで服を引き上げることができるようになる。」などの小さな目標を連続して立てると取り組みやすいでしょう。
小さな目標を立てるには、着替えの要素をピックアップし、整理する必要があります。また、利用者が「練習したらできるようになりそうだ。」と思える課題から挑戦し、成功体験を積み上げると良いでしょう。
いきなり難易度の高い目標設定をしてしまうと、「自分にはできそうにない。」とモチベーションが下がってしまうため注意してください。目標は、リハビリの専門家が関わりながら設定することで、適切な難易度に調整しやすくなるでしょう。
【訓練の記録をつける】
毎日の進捗を記録し、成果を確認することでモチベーションが維持できます。「自分がどのくらいできるようになっているのか」「どうすれば自分で着替えられるようになるか」を理解すると、今後の見通しが立ちモチベーションが高まりやすくなるでしょう。
成果が出た時は家族やスタッフが共に喜びを分かち合うと、訓練により前向きな気持ちになれるでしょう。
【楽しく訓練をする】
楽しむことも、訓練を続ける秘訣です。目標設定や訓練自体をゲーム感覚で行うと楽しみやすくなります。
たとえば、さまざまなボタン付きの衣類を並べて、どれだけ早くボタンを留められるかという形式で訓練を行うなどが考えられます。家族などと競争形式にしたり、音楽を聴いたりしながら訓練を行ったりするのも良いでしょう。
体調が悪いときは無理をせず、できる範囲で続けることが大切です。
更衣動作訓練を行う際には、以下の3点に注意してください。
下記で詳しく解説します。
【無理をしない】
訓練を安全に行うために、痛みや違和感を感じたら無理せず休むことが大切です。痛みを感じた状態で訓練を続けると関節や筋肉を痛めてしまう可能性があります。
また、痛みが出るというネガティブな感情を持って訓練を繰り返した場合、痛みが慢性化してしまう可能性もあります。
リハビリの専門家に相談しつつ、なるべく痛みが出ない方法を検討しましょう。
【環境を整える】
訓練を行う場所は、安全な環境を整えましょう。身体能力に合わせて、動作が安全に行えるように把持物の設置などを検討することが大切です。
片麻痺患者は、状態によって更衣動作中に転倒や転落してしまうリスクを抱えています。
たとえば、以下のような時に転倒や転落するリスクが高まるでしょう。
健康な時は、大したことのない細かな環境や状況の変動であっても、片麻痺患者にとってはリスクになり得ます。反対に、細かな環境調整で動作が行いやすくなることもあり得るでしょう。
環境を整えた上で、訓練を行いましょう。
【専門家の指導を受ける】
理学療法士や作業療法士など、リハビリの専門家の指導を受けると安心です。身体の状態に合わせた更衣動作訓練の方法や環境調整・道具の使用についてアドバイスを得られるでしょう。
また、訓練時のリスク管理についても指導を受けることも可能です。
ここでは、よくある質問とその解決策について解説します。
Q:どのタイミングで更衣動作訓練を始めるべきですか? | A:訓練を始めるタイミングは、ケガや病気により異なります。医師やリハビリ専門家と相談して決定するのが良いでしょう。一般的には、体調が安定し、基本的な動作ができるようになった時点で訓練を始めることが推奨されます。体調が安定しない時の訓練は避けるべきですが、なるべく早期のリハビリが重要になるとされています。
参考:早期リハビリテーション |
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Q: 訓練を始める際に用意するものは何ですか? | A:快適で安全な環境を整えることが重要です。椅子、手すり、滑り止めマット、長柄の靴べら、ボタンエイドなどの補助具が役立ちます。また、伸縮性のある衣服を用意することも大切です。どの補助具を利用するかは、身体の状況により異なるためリハビリ専門家に相談すると良いでしょう。 |
Q:どのくらいの頻度で訓練を行うべきですか? | A:利用者の年齢、性別、疾患などによって、効果的な機能訓練方法は異なる方針が考えられます。利用者の状況を多角的に考慮した上で、機能訓練の頻度などを決定します。医師や専門家の指導のもとで実施することが重要です。 |
Q:効果が感じられない場合はどうしたら良いですか? | A: 訓練の進み具合や疾患などの状況には個人差があります。他人と比べず、利用者のペースで進めることが大切です。なかなか改善しないと感じるのであれば、リハビリの専門家などに相談し、訓練内容や方法を見直しましょう。 |
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Q:効果が実感できるまでにどのくらい時間がかかりますか? | A:効果が実感できるまでの時間にも個人差があります。効果を感じられるようになるには、数ヶ月以上かかる場合もあります。継続的に訓練を続けることで、少しずつ改善が見られることが多いです。 ただし、疾患の状況や進行度なども考慮する必要があるため、必ずしも大幅な改善が見込めるとは言えない側面もあるでしょう。 |
Q: 脳卒中の更衣動作訓練にはどんな工夫が必要ですか? | A: 麻痺の重症度により訓練方法は異なります。麻痺側が完全に動かない場合、健側手を主に使って服を着替える練習が考えられます。軽度の麻痺の場合は、積極的な機能訓練により両手を使った更衣動作の練習が効果的です。片手での着脱には補助具の使用が有効であり、利用者の状況によっては積極的に活用する練習をした方が良いケースもあるでしょう。 |
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Q:脊髄小脳変性症の更衣動作訓練にはどんな工夫が必要ですか? | A: 運動失調によるバランスの不安定さを考慮し、座位で更衣動作を行う習慣を付けることが重要です。立位では壁に寄りかかると安定しやすいでしょう。ズボンの着脱は仰向けに寝て行うと安全です。ボタンをマジックテープに変更したり、ファスナーにリングを取り付けたりするなど、自助具の活用によって動作が上手くできるケースもあります。脊髄小脳変性症のような進行性の疾患の場合は、医師に相談しながら、家族などの継続的なサポートを念頭に入れて対応していく必要もあるでしょう。 |
Q:関節が硬くて動きづらい場合の対処法は何ですか? | A:無理に動かそうとせず、まずはストレッチやマッサージで柔軟性を高めることが必要です。温湿布や入浴で筋肉を温めると動かしやすくなります。ただし、関節が拘縮してしまった場合、柔軟性を向上させるのが難しいケースもあります。その場合、無理のある柔軟性改善の訓練によってケガをする可能性も否めません。リハビリの専門家の指導の下、安全性に配慮した上で、段階的に動作訓練を進めましょう。場合によっては着脱のしやすい衣類を選ぶ必要性もあるでしょう。 |
Q:感覚が鈍い場合の訓練の注意点は何ですか? | A:視覚や聴覚を利用して動作を確認することが有効です。鏡を使ったり、リハビリ専門家や介護者の声掛けを頼りにして、訓練を進めることができます。 動作を繰り返して行い、正しい動作パターンを身につけることが大切になります。 |
参考:ADLとその周辺
更衣動作は、患者の自立度を高め、生活の質を向上させるために重要な役割を果たしています。更衣動作訓練を始める際には、個々の状態に合わせた対策をしっかりと理解した上で進めていく必要があるでしょう。
目標や環境設定が適切ではない場合、モチベーションが低下する可能性があります。無理なく継続することが大切です。筋力、柔軟性、バランス感覚などの基礎的な動作能力の訓練を考慮し、段階的に訓練を進めることで、スムーズに更衣動作の獲得につなげられるでしょう。
また、片麻痺患者や特定の疾患を持つ方には、それぞれに合った訓練方法が必要です。適切な評価を行い、小さな目標を設定することで、継続的にリハビリに取り組みやすくなります。効果的な訓練を行うためには、専門家の指導を受けることも大切になるでしょう。疾患や年齢などによって、更衣動作訓練の方法は変わります。利用者それぞれのペースに合わせて訓練を行うことが大切です。
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