自費リハビリ|保険適用との違い・効果・料金・注意点など徹底解説
機能訓練
2024/11/28
機能訓練
全身
更新日:2024/09/13
家事動作の機能訓練・リハビリは、日常生活の自立を助けるために非常に重要です。この記事では、調理、洗濯、掃除などの家事動作に焦点を当てて、その動作に必要な機能と、鍛えるための方法を解説します。初級から上級までの訓練方法や日常生活での活用方法、効果的な訓練のポイント、訓練時の注意点についても紹介しています。
この記事の目次
家事動作とは、家庭や一緒に生活をするために必要な活動のことを指します。家事動作には、いくつか種類があります。
具体的な家事動作の例は以下の通りです。
上記のように多岐にわたる動作を含みます。家事動作は、生活機能チェックシートにおいても評価される重要な項目です。
厚生労働省の生活機能チェックシートでは、調理・洗濯・掃除の3項目が家事動作として挙げられており、家事動作の中でも重要視されています。
これらの動作を円滑に行うことが、自立した生活を維持するために欠かせません。
本記事では、家事動作の訓練方法について具体的に紹介します。対象とする家事動作は、調理、洗濯、掃除の3つです。それぞれの動作に必要な訓練方法を詳しく解説し、利用者の自立支援に役立てられるような情報を提供します。
なお、介護現場では、機能訓練とリハビリは同じ意味で用いられることがあります。しかし、医療現場では、機能訓練とリハビリは明確に分けて考えられます。
家事動作は、心身の機能に影響する重要な動作です。家事を行う目的と重要性について、主に以下の3つの観点から解説します。
【自信を高める】
身の回りの家事を自分で行い、同居している家族の役に立つことができると自身の存在の必要性を感じやすく、自信を持ちやすくなるでしょう。
自信は自己肯定感に良い影響を与えます。精神的健康感やQOLにも関わる重要な要素です。
人生に満足感を得るためにも、家事動作を行えるようになり、自信を高めることが目的になるケースも考えられます。
【QOLを高める】
自分で家事動作を行えるかどうかは、QOLに重要な影響を与えます。たとえば、自分で家事が行えない場合「調理の仕方が違う」「この場所はもっと丁寧に掃除したい」など、不満が現れるかもしれません。
自分で家事を行えることで、自分好みの生活を組み立てることができます。QOLを高めることを目標にして、家事動作ができるように訓練するのも良いでしょう。
【身体機能や認知機能が向上する】
身体機能や認知機能を高めるためにも、家事動作は重要です。
家事動作は、日常生活の中で繰り返し体を動かします。それに伴い、関節の動きや筋力、バランス能力など多くの機能が鍛えられます。
また、認知機能も身体機能と同様です。家事では、道具の準備や手順などを考えるため、脳が活発に働きます。
身体機能や認知機能を高める土台として、家事を行う生活習慣を作ることが大切になるでしょう。
効果的な訓練を行うためには、必要な機能の理解は欠かせません。家事動作に必要な機能について、調理・洗濯・掃除動作に分けて解説します。
機能としては、腕や脚の筋力や認知機能など、全般的な心身機能が必要になります。
それぞれの動作に必要な、具体的な機能の例を以下に示すのでご参考ください。
調理動作 | 包丁を握る握力鍋やフライパンを持ち上げる腕の筋力調理中に姿勢を保つ体幹や脚の持久力調理手順を理解する認知機能 |
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洗濯動作 | 濡れた衣服を持ち上げる腕の筋力物干し場まで服を運ぶ体幹や脚の筋力洗濯バサミを使う指のつまむ筋力衣服を干す時に腕を上げる関節可動域衣服を干す時のバランス能力 |
掃除動作 | 箒や掃除機を使いながら移動するバランス能力低い場所の掃除では、しゃがむための脚の関節可動域と筋力高い場所の掃除では、腕を上げるための肩の関節可動域と筋力 |
家事に必要となる機能は、家事のやり方や道具、環境などによって異なるため注意しましょう。
一人ひとりの家事動作にとって、必要な機能は何か、評価する必要があります。
家事動作の機能訓練・リハビリについて、具体的な方法を解説します。
調理・洗濯・掃除などの機能訓練は、理学療法士や作業療法士などのリハビリ関連職種だけでなく、看護師や介護士など現場で働くすべての職種が機能訓練に関わります。
利用者や家族が家事に関するニーズに応じて、家事動作の機能訓練を開始します。開始するタイミングとしては、以下が挙げられるでしょう。
他にも、利用者から「家事を自分でやりたい」「家事が難しくなってきた」などの話があり、訓練を開始するケースもあるでしょう。
訓練では、全身の状態やニーズに合わせた訓練方法を選択することが重要です。なるべく実践に近いシチュエーションで訓練を行うことで、機能改善を図りやすくなります。
そのため、訪問リハビリや訪問介護のサービスを活用しながら機能改善を目指すことも少なくありません。
以下に具体的な訓練方法をレベル別に紹介します。実際の現場でも活用してください。
訓練の効果を高めるために、なるべく日常生活に訓練内容を取り入れることが大切です。ここでは、日常生活へ取り入れる方法やポイントについて解説します。
小さな目標設定をして成功体験を積む | 一部分からでも良いので、実際の日常生活で目標を立てて家事を行ってみましょう。なるべく、家事動作を分解して細かく考え、できそうな内容から行うことが大切です。 たとえば、洗濯の家事動作であれば「タオルを畳む」ことのみを目標として、訓練を行なっても良いでしょう。 実際に家事を行うことで、体の使い方が分かるようになり、少しずつ洗練された動きができるようになります。また、家事を行う筋力や持久力も向上するでしょう。 少しでも家事動作を行い、できる動作が増えるという成功体験を重ねることで自信につながります。また、小さな目標の達成を繰り返すようにすることで、行える家事動作の範囲も広がることでしょう。 |
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支援者や家族と一緒に家事を行う | 支援者や家族と一緒に家事を行うことも、訓練を日常生活に応用するための重要なポイントです。 家事動作を訓練する際に支援者や家族は必要な存在ではありますが、それのみでなく、社会的交流のきっかけにもなります。 たとえば、調理をする際には買う物を決めたり、作る料理を想像して楽しむ機会になるでしょう。家事動作訓練の中であっても、会話のきっかけがたくさんあります。 また、支援者や家族と家事を行うことで事故などの危険を抑えて、安全に行うことができます。家族もどれくらい家事ができるか知ることで、安心して家事を任せられるでしょう。 社会的交流の場がモチベーションにつながることもあります。支援者や家族と一緒に家事を行う機会を作ることも、訓練内容を日常生活へ応用するきっかけ作りになります。 |
家事を習慣化するタイミングを作る | 日常生活に取り入れるためには、家事を習慣にすることが重要です。しかし、習慣化することは容易ではありません。 ます、決まったタイミングで家事を行うと決めることで家事が習慣化されやすくなります。たとえば「朝ご飯を食べた後に、掃除をする」といったように、家事を行う機会を決めておきましょう。 習慣ではないことを取り入れる際には心理的な負担を伴います。 そのため、習慣にする家事は、簡単な内容から始めるのが良いでしょう。苦労なくできる内容にすることで、習慣として定着しやすくなります。 また、習慣にしたい家事を行えなかった時の対策を考えておくと、より良いでしょう。 参考:習慣形成の行動心理学 |
体調や生活の状態に合わせて、できそうな内容から生活に取り入れてみましょう。
ここでは、家事動作の訓練を効果的に行うために、訓練のコツとモチベーションを高める方法について解説します。
効果的に訓練を行うコツは、主に以下の2つです。
それぞれ詳細に説明します。
【実際に使う道具で訓練をする】
道具の持ち方や力の入れ方によって家事のしやすさは大きく変わるため、実際に生活場面で使う道具を用いると効果的な訓練が行えるでしょう。
訓練時と自宅で使う道具が違えば、訓練の成果を発揮できない可能性は十分に考えられます。
可能であれば、訓練の時には自宅で使っている道具を用意してもらいましょう。難しい場合は、本人や家族から話を聞き、使っている道具と似た道具を用いて訓練しましょう。
【家の環境に近い状況で訓練をする】
効果的な訓練には、家の環境に近い状況で訓練をすることが重要です。
自宅の環境によって、家事に必要となる能力は変わります。たとえば、広い部屋の掃除は、狭い部屋よりも体力が必要となるため、必要とされる耐久力は大きく変わります。
自宅と同じ、もしくは近い環境で訓練をすることで、必要な機能を適切に鍛えることができます。
本人や家族から話を聞き、家事を行う環境を調査しましょう。必要であれば、自宅を見せてもらうことも大切です。
ここでは、家事動作の訓練を継続するためのモチベーション維持方法について解説します。
モチベーションを維持する方法は、以下の3つです。
【明確でイメージしやすい目標を立てる】
モチベーションを高めるためには、家事に関して、明確でイメージしやすい目標を立てることが重要です。
家事の内容は非常に幅広く、何をどこまでするのかイメージしにくい部分があります。目標を達成した時の光景が想像しやすいように、具体的な内容にしましょう。
家事における目標設定の例を以下に紹介します。
家事における目標は、一人ひとり大きく異なってきます。訓練の前に利用者のニーズや希望を確認をしましょう。
そして、決めた目標は家族や周りのスタッフと共有することが大切です。具体的な目標を周囲の人が理解していることで、訓練に対して適切なアプローチができます。
他人に決められた目標ではモチベーションは上がりにくいため、目標は本人が求めている内容に決めるのが良いでしょう。
そして、期間を設定した上で、現実的な目標達成に向かって訓練を続けることが大切です。
【できる内容を段階的に確認する】
モチベーションを高めるために、家事のできる内容を段階的に確認しましょう。家事動作はさまざまな動きの組み合わせであり、1つでも動きができなければ、家事を完遂できません。
家事動作の訓練では、1つの動きごとに練習をして、できることを増やすトレーニングをします。
そのため、どの範囲まで家事ができるのか、段階的に評価することが大切です。
できるようになった部分に着目することで、達成感を得ることができ、モチベーションを高めることにつながります。
家事動作全体だけをみるのではなく、どの程度できているのか段階的に確認をしましょう。
そして、達成度に応じて新たな目標達成を目指します。目標は、短期目標を更新しつつ、長期目標の達成を目指すことが大切です。
【積極的に声をかける】
支援者や家族の声かけは、モチベーションに関わる重要な要素です。
頑張りを認められると、意欲が高まります。家族がいれば、訓練の様子を家族に伝えて、積極的に声をかけてもらいましょう。
また、家族がいる場合、自宅で行う家事の様子は家族の方が確認できる機会があります。利用者が家事をしている時には「助かったよ、ありがとう」など、積極的かつ前向きな声かけをすると効果的です。
ただし、個人特性などによっては声かけがモチベーションにつながらないケースもあるため、利用者に合わせることも大切になるでしょう。
家事動作の機能訓練の注意点を解説します。
機能訓練を行う前に知っておきましょう。
大きな注意点は以下の3つです。
詳細に解説します。
【認知機能の評価をする】
認知機能は家事動作の訓練に、大きく影響します。認知機能が低下している場合、事故などのリスクを引き起こす可能性が高くなります。訓練の前に認知機能の評価をするようにしましょう。
認知機能が低下している場合、新しく学ぶ能力が衰えます。そのため、複雑な家事の手順や道具の使い方を覚えることが難しくなります。家事の手順や説明を簡単にするなど、認知機能に合わせた訓練に変更することが重要です。
認知機能が低下していると、調理時に火を消し忘れなど、重大な事故を引き起こすかもしれません。
家事動作の訓練をする際には、認知機能を評価し、必要であれば専門の病院などに相談が必要です。
【無理のない範囲を把握する】
家事動作の訓練を行う際には、無理のない範囲を把握することが重要です。
家事は、利用者の環境などによって長時間の動作を要するため、体力が必要になることがあります。そのため、筋力や持久力が備わっていない段階で、無理をすると関節痛や体調を崩す原因になります。
家事は疲れすぎない範囲から開始して、少しずつできることを増やしましょう。
また、家事では手を伸ばすなど、高いバランス能力が必要な動きも多くあります。無理をすれば、転倒など事故につながるかもしれません。
安全かつ、体力に無理のない範囲で行える動作を評価することは重要です。状況に応じて、支援の方法や量を調整しましょう。
【家族の同意を確認する】
家族がいる場合、家事動作の訓練を開始する前に家族の同意も得るようにしましょう。
家事は、家族にも関わる活動です。「台所を使ってほしくない、洗濯は危ないからやめてほしい」など、さまざまな理由で利用者が家事をすることを望まないケースもあります。
家族が同意していない状態で利用者の家事動作の訓練を進めると、トラブルになる可能性もあるでしょう。家事に対する考えや希望などについて、訓練の前から利用者と家族に確認をしましょう。
ここでは、家事動作訓練における疑問についての解決策を紹介します。
片麻痺利用者の家事動作において、問題となりやすいポイントは、以下の2つです。
【片手での作業】
片麻痺では、麻痺した腕を動かすことが難しいため、家事を片手で行う場合があります。片手では物を固定する作業を反対の手で行うことが難しくなるため、包丁を使った調理や洗濯物を干すなど、多くの家事に困難さを感じます。
そのため、片手での作業の負担を減らし、効率的に家事を行うための自助具を活用すると良いでしょう。
自助具とは、麻痺などの病気による障害や加齢による身体機能の低下によって生じた、生活の困難を補うための道具や装置のことです。
生活にあった自助具を用いることで、片手での作業でも比較的容易に家事を行うことができます。以下のような自助具や道具を用いることで、片麻痺でも家事動作が行いやすくなるでしょう。
【転倒のリスク】
片麻痺がある場合、バランス能力や歩行能力が低下するため、転びやすくなります。また、家事動作では立った姿勢で手を伸ばすなど普段の生活よりも転倒のリスクが高い動きをするため、生活の中でも転倒しやすい場面になるでしょう。
そのため、片麻痺利用者が家事動作を行う際の転倒リスクを減らす工夫が重要です。
転倒リスクを減らす方法の例を以下に紹介します。
道具や環境を変えることで転倒の危険を減らすことができます。全身の状態や自宅の様子に合わせて、転倒リスクを減らす方法を検討しましょう。
作業療法士は、日常生活に関わる作業の専門家です。そのため、作業療法士に相談や確認をすることで、家事動作訓練を効果的に行うアドバイスなどを受けることができます。
作業療法士と連携する内容としては、以下のような項目が挙げられるでしょう。
作業療法士との連携に決まりはありません。相談できる環境があれば、些細なことでも積極的に声をかけてみましょう。専門的な意見を取り入れることで、訓練の効果をより高めることができます。
参考:日本作業療法士協会
ここでは、家事動作の評価について解説します。
家事動作を評価する方法は、いくつかありますが、今回は以下の2つの方法を紹介します。
以下で細かく解説します。
【評価表を用いる方法】
家事動作は、手段的日常生活動作(手段的ADL)と呼ばれる応用的な動作の1つです。そのため手段的ADLの評価表を用いて、家事動作を評価することができます。
手段的ADLを評価する代表的な評価表は、以下の2つです。
LawtonのIADL評価尺度は、食事の支度や家事、洗濯を含めた8項目からなる評価表です。できる(1点)・できない(0点)で判定し、合計スコア0〜8点で採点します。得点が高いほど、自立している状態を表します。
FAI(Frenchay Activities Index)自己評価表は、普段の生活の様子に関して15項目の質問からなる評価表です。最近の3ヶ月間の生活状態について、0(していない)〜3(頻繁にしている)の4段階で評価します。合計スコアは0〜45点で表し、得点が高いほど家事や趣味活動を積極的に行っている状態です。
【動作を観察する方法】
家事動作の評価には、実際に家事を行ってもらい、動作を観察する方法も重要です。動作の中で困難な動きを確認することで、具体的な問題点を発見しやすくなります。
ただし、以下の2点に注意が必要です。
注意点を踏まえて、実際の家事動作を観察してみましょう。
動作を分析し、困難さを生み出している原因を探ることが大切です。判断が難しいケースも十分に考えられるため、専門家へ相談することをおすすめします。
家事はQOLに関わる重要な動作です。
また、家事を行うことで習慣的な運動になり、身体機能や認知機能、心身機能の向上を図る効果も期待できます。
しかし、家事動作は複雑で耐久力を要する内容が多いため、病気による障害や加齢に伴う機能低下によって困難になりやすい側面もあるでしょう。
家事動作の訓練を行う際は、実際に自宅で行う環境に近付けることが重要です。自宅とは異なる環境で訓練をしても、訓練の成果を十分に発揮できない可能性があります。
道具や環境を整え、適切な評価を行い、実際の自宅の家事を想定して訓練すると良いでしょう。
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