個別機能訓練計画書|効率的な作成方法・おさえるべきポイントとは
介護保険法
2024/11/06
介護保険法
個別機能訓練加算
更新日:2024/11/05
【令和6年報酬改定対応】個別機能訓練加算の算定で必要になるのが「個別機能訓練計画書」です。令和6年度介護報酬改定では個別機能訓練加算の機能訓練指導員の配置基準が変更になり、個別機能訓練計画書の様式も若干変更されています。 ここでは、記入例、プログラム内容の作成ポイントなどについて詳しく解説しています。
この記事の目次
個別機能訓練計画書は、個別機能訓練加算(Ⅰ)イ・ロと、(Ⅱ)を算定するときに必要な書類の1つです。個別機能訓練加算は、機能訓練プログラムに沿ったサービスを提供したときに算定します。計画書では、利用者一人ひとりの身体状況や希望、自宅環境に合わせて具体的な目標を設定します。記載内容の例は、以下の通りです。
計画書の作成者は1人ではなく、主に以下の機能訓練指導員からの助言を求めながら、多職種協働で実施します。
個別機能訓練計画書の作成手順は以下の流れで行います。
「手順1」の居宅訪問では、利用者の身体状況や生活環境を確認し、どのような目標を設定するべきかを検討します。その他にも、ケアプランやケアマネジャーからの情報収集も忘れずに行いましょう。
「手順6」の進捗状況の評価は、3ヵ月に1回以上実施し、利用者の居宅を訪問・居宅での生活状況を確認するとともに、必要に応じて個別機能訓練計画の見直しなどを行う必要があります。
2024年度(令和6年度)の介護報酬改定で若干書式が変更となりました。健康状態・経過の箇所について、合併症の部分はチェック形式となったため、記入がしやすくなっています。
さらに、目標達成度(達成・一部・未達)の箇所については、前回作成した短期目標に対する目標達成度(達成・一部・未達)に変更になっています。
厚生労働省のページに個別機能訓練計画書のひな形があるので、基本的にはその書式を活用して記入します。
下記のページから、計画書のひな形をダウンロードできます。
ここでは以下4つのポイントに分けて、記入方法や記載例、作成時のポイントを解説していきます。
まずは個別機能訓練計画書の上部、「作成日」「計画作成者」「要介護度」などの記入方法に関して解説していきます。
【記載例】
作成日:令和5年5月1日
前回作成日:令和5年2月1日
初回作成日:令和4年12月1日
作成日はサービス提供日よりも前の日にちを起点として記載します。前回作成日は、1つ前の計画書を作成した日にちを、初回作成日は初めて計画書を作成した日にちを記載します。
【記載例】
要介護3
現在の要介護度(1〜5)を記載します。
【記載例】
計画作成者:スタッフ名
職種:看護師
計画書を作成するスタッフ名とその職種を記載します。多職種と協働した上で計画を立案、実施することを証明するものなので、記載漏れには注意しましょう。
多職種連携の重要性について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。
▶︎介護における多職種連携の必要性を3つの事例から読み解く
【記載例】
ランクB1
障害高齢者の日常生活自立度とは、対象者の自立度の程度を評価するものです。生活が自立していれば「ランクJ」、準寝たきりは「A」、寝たきりは「BまたはC」で表します。「ランクAからC」は、寝たきりの程度によってさらに「1から2」の2段階に分かれます。
【記載例】
ランクⅡb
認知症高齢者の日常生活自立度では、対象者の認知症の程度を評価します。ランクは「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、M」の順番に分けられており、「ランクM」に近づくほど認知症の程度が大きくなります。また「ランクⅡとⅢ」はさらに「aとb」の2段階に分かれます。
要介護認定の基準となる障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定基準や評価方法について知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)とは|ランクごとの判定基準や評価方法
利用者の基本情報の項目では、本人や家族の希望・要望、社会参加の状況、居宅の環境、健康状態・経過などを記載します。居宅環境の項目は利用者宅へ訪問した際に、健康状態に関しては医師や歯科医から受け取った情報を参考にして記載しましょう。それぞれの記載例と書き方は以下の通りです。
利用者の希望や家族の要望、社会参加、居宅の環境は、実際に居宅訪問したときに得た情報をもとに記載します。その際は「生活機能チェックシート」と「興味・関心チェックシート」と呼ばれる評価シートを活用しましょう。
生活機能チェックシートは、利用者の居宅環境やADL状況について確認するためのものです。興味関心チェックシートでは、利用者が普段生活で行っていることや、今後行いたいことを確認します。
これらの項目については、必要に応じて医師又は歯科医師から、これまでの利用者に対する 病名、治療経過、合併疾患、機能訓練実施上の留意事項についての情報を得たうえで記入します。
直接医師又は歯科医師から情報が得られない場合は、介護支援専門員を通じて情報収集を測ります。
この記事を読みながら、個別機能訓練計画書の作成を「やっぱり難しい」「できる気がしない」とお感じの方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、実際に計画書作成に悩まれていた事業所様のリアルなお声を紹介します。同時に、どのように悩みが解決できたかのかも記載していますので、共有いたします。
株式会社柔様(愛知県津島市)では、個別機能訓練計画書の作成については独自の方法で取り組んでいました。だからこそ、その作成方法が正しいのかわからず、迷いながら作成していた部分があったそうです。
「厚生労働省から推奨されている記載方法はアバウトだったり、加算や介護報酬が改定されるたびに変更があったりするため、さまざまな不安を抱えていました」
現在は、介護ソフトを導入し、法令を遵守したフォーマットで計画書を作成できるようになっています。さらに、介護報酬改定がある度に、計画書がアップデートされるため、業務負担が増えることもないとのことです。
計画書の作成時間については、以前までは1件あたり40分かけていたのが、15分にまで減らすことができておられます。
株式会社すみれ様(栃木県宇都宮市)では、リハビリ職ではない看護師が計画書を作成していました。そのため、計画書作成には利用者1人当たり60分かかっていたそうです。特に作成時に悩んでいたのがプログラムの立案でした。
「計画書を作成する際は、利用者様ごとにプログラムの内容を差別化することに悩みました。運営指導で指摘されることもありました」
現在は、介護ソフトを導入し、一人ひとりの利用者に適したプログラムが自動提案されるため、業務負担が随分軽減されています。個別機能訓練計画書の作成時間は20分にまで短縮したとのこと。
計画書の作成・評価のタイミング・入力の手順など、算定要件に沿った操作案内があるため、手順通りに入力をするだけで悩むことなく作成ができるようになっておられます。
長期・短期目標は、個別機能訓練計画書の中でも最も重要な項目です。しかし、長期・短期に分けて目標を記入するのは難しく、迷ってしまう方もいると思います。ここでは、機能訓練計画を作成する際のポイントと目標の記入方法をそれぞれ解説していきます。
個別機能訓練計画書の長期目標の作成ポイントは、「身体機能・活動・参加レベル」の目標を具体的に記載することです。居宅状況における生活レベルや、地域における社会的関係の維持に関する点など、より具体的な目標の達成を目指します。
長期目標は生活機能の構成要素である以下a〜cをバランスよく含めて設定することが大切です。それぞれの長期目標の例文は以下の通りです。
a 体の働きや精神の働きである「心身機能」
⇒下肢筋力・耐久性の向上
認知機能低下に対する対応(メモなどの代償的手段の活用など)
b ADL・家事・職業能力や屋外歩行といった生活行為全般である「活動」
⇒屋外歩行を見守りで1時間程度実施できる
c 家庭や社会で役割を果たすことである「参加」
⇒スーパーで買い物が出来る。自分で買った食材を使って料理が出来る。
長期目標には改定前の「個別機能訓練加算(Ⅱ)」に近い内容が求められており、そこから短期目標に細分化していきます。どちらの目標も、単に「座る・立つ・歩く」などの身体機能面の内容を記載すれば良いわけではない点に注意しましょう。
長期目標を設定できたら、長期目標を達成するために必要な行為ごとに細分化し、整理していきます。
短期目標は、より具体的にイメージできるものにするのがポイントです。具体的な長期目標の細分化と、短期目標の例文は以下の通りです。
<長期目標が「スーパーマーケットに食材を買いに行く」の場合に必要な行為について>
長期目標を達成するために細分化した必要な行為 | |
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短期目標の記載例 | |
(機能)下肢筋力・耐久性の向上 (活動)スーパーマーケットまで歩いていける (参加)家族と家の周りの散歩を楽しめる |
プログラム内容の作成は、長期・短期目標をしっかりと記入した後に取り掛かることがポイントです。プログラム作成の基本的な考え方は「目標を達成するための行動づくり」です。目標設定がブレていると利用者に適切なプログラムを提供できないので、長期・短期のゴールを確実に固めておきましょう。
プログラム内容を作成する場合は、短期目標の達成に必要なポイントを利用者の身体機能と照らし合わせながら整理してみましょう。現在困難に感じている部分に対して、どのような訓練を行えば達成できるか考え、内容をプログラムに記載します。
プログラム内容を具体的に作成するためには、長期・短期目標を明確に立てておくことがポイントです。
プログラム内容の立案は、目標達成に向けて具体的に記載する必要があるので、記載が難しくマンネリ化しがちです。しかし、現状で可能なことと難しいことを整理して、どのような訓練をすべきなのかを深堀りすれば、プログラム内容が見つかりやすいです。なるべく利用者と家族に負担をかけ過ぎず、積極的に取り組めるような内容が望ましいです。
個別機能訓練計画書は、利用者に提供した訓練の効果を定期的に評価するために、約3ヵ月ごとに1回以上の更新が必要です。個別機能訓練の実施状況や個別機能訓練の効果などについて、担当のケアマネジャーにも報告・相談し、必要に応じて個別機能訓練の目標の見直しや訓練項目の変更を行うなど適切な対応をします。
そして、あらためて目標を見直したり、内容を変更したりなどの対応を行います。
このときの評価者は、看護師や理学療法士などの機能訓練指導員である必要はありません。評価・更新の実施者については職種が示されているわけではないので、機能訓練指導員以外のスタッフも行えます。
令和6年度の介護報酬改定でも引き続き「科学的介護」を国は強く押し出しており、介護・リハビリサービスの質向上が求められる傾向にあります。具体的な目標をもとに作成する個別機能訓練計画書は、質の高い機能訓練を提供するための要といっても良いです。
今後、多くのデイサービスが個別機能訓練加算(Ⅰ)(Ⅱ)の算定を検討すると予想されます。そのため、算定に必要な個別機能訓練計画書の変更点は詳しく頭に入れておきましょう。
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