整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
下肢
更新日:2024/10/30
抗重力筋とは、文字通り「重力」に「抗う」ことを指します。誰しも座っているときも、寝ているときも体は重力の影響を受けます。重力は一定のため加齢に伴い、筋肉の弛みなどが出てくるのはこのためです。抗重力筋は、高齢者の姿勢保持にも重要な筋肉と言われており、高齢者トレーニングではこの抗重力筋をターゲットにすることも多くあります。今回は、そんな抗重力筋のトレーニングの理論とエクササイズ方法についてご紹介していきます。
この記事の目次
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抗重力筋とは、地球の重力に対して立位や座位などの姿勢を保持する筋肉のことを言います。
この抗重力筋は、運動など体を動かしているときに働く訳ではなく、無意識に姿勢を保持しているときに働いている筋肉です。つまり、重力と抗重力筋とが均等に釣り合っていることを意味します。
例えると、生まれたばかりの赤ちゃんは重力に対して抗重力筋がまだ発達していないので座ったり、立つ事ができません。成長と共に、まず抗重力筋が鍛えられていき座ったり、立つことができるようになります。
抗重力筋は、日常生活で常に働いている部位ですがこの筋肉が衰えてしまうと重力に対して正しく姿勢を保持することが難しくなります。そのため高齢者の姿勢保持に非常に重要な部位となります。
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抗重力筋を大別すると5箇所が挙げられます。
この背中・腹筋・お尻・太もも・ふくらはぎの抗重力筋が前後に働きながら重力に対してバランスを保っていることになります。
抗重力筋の働きは、基本的な立位姿勢からの重心線がズレるのを直ちに補正することにあります。(代償的姿勢戦略)
理想とされる基本的な立位姿勢には「ニュートラルポジション」という姿勢があります。ニュートラルポジションは、重力に対してもっとも効率的に身体を支えることができる姿勢です。図のランドマークを確認していきましょう。
【基本的な立位姿勢(ニュートラルポジション)】
矢状面で以下の5点が直線上の位置する姿勢
通常の立位姿勢は、腹筋群や太ももの筋肉よりも背面部の背中やふくらはぎの筋肉が重要な働きをしています。
具体的には…
○足関節の場合は、重心線は外踝(外くるぶし)より前方を通るため身体は前に倒れやすくなります。それに対してふくらはぎの筋肉である「下腿三頭筋」が働くことで姿勢を保持します。
○股関節の場合は、重心線は大転子のやや後方を通るため上半身はやや後方に倒れやすくなります。これに対して「腸腰筋」が働くことで姿勢を保持します。実際には姿勢の前後の変化によって重心は前後に変動しやすいためお尻の筋肉「大臀筋」も相互に働いていることになります。
○脊柱の場合は、重心線はやや前方を通過するため上半身は前方に倒れようと作用します。これに対して「脊柱起立筋」が働くことで姿勢を保持します。
どの筋が活動するかは、重心線と各関節との位置関係により異なります。前後方向に重心位置がズレてしまうとそれを補助しようと他の筋肉が過剰に働います。
いつも同じ部位に疲労が溜まる場合は、長年の癖や身体の傾きの影響によってこの姿勢が崩れている場合がありますのでチェックしておきましょう。
次に理想とされる安定した座位姿勢には、図のランドマークで示された姿勢があります。
【基本的な座位姿勢】
矢状面で3点が直線上の位置する姿勢
【骨盤の基本的位置】
ASIS(上前腸骨棘)とPSIS(上前腸骨棘)を直線で結んで座面と水平を保っている姿勢
座位姿勢では、主に体幹の支持性が重要です。この体幹の支持性を高めるためには、腹直筋・腹横筋・腹斜筋の働きによって腹腔内圧を高める効果があります。
腹腔とは、上下を横隔膜と骨盤、前後を腹直筋、腹横筋、腹斜筋及び脊柱で囲まれた楕円状の空間です。
座位姿勢の安定性を高めるためにはこの腹腔内圧を高める、ランドマークに沿った姿勢の保持が重要です。
抗重力筋は、通常日常生活を送っているだけでも常に働いている筋肉です。
しかしながら、筋力は加齢と共に衰えていくものです。日常生活の中で立ち座りや立っていることが辛くなったと感じている高齢者はこの抗重力筋の低下が起こっている可能性があります。
特に、外出機会が減り、日中は椅子座りTVを見ている時間が増えている高齢者の方は下半身の抗重力筋が弱化してしまうため抗重力筋同士のバランスを崩して姿勢が崩れてしまいます。
そのため高齢者の介護予防には「抗重力筋」が低下しないようエクササイズしていくことが大切です。
抗重力筋の強化を行うことで「ロコモ」や「サルコペニア」の予防にも効果が期待できます。
▶︎サルコペニアの評価方法をわかりやすく解説!原因・症状と筋力低下対策
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抗重力筋が衰えることの影響は、私たちの日常生活や健康に大きな影響を与える可能性があります。この筋肉が衰えると、まず姿勢の崩れが生じやすくなります。例えば、長時間の座りっぱなしの状態が続くと、抗重力筋が疲労し、その結果、体のバランスを保つ力が弱まります。これにより、背中が丸まったり、肩が前に出たりといった姿勢の悪化が起こりやすくなります。姿勢が悪い状態が続くと、体に歪みが生じ、慢性的な肩こりや腰痛の原因となることがあります。
さらに、加齢によって抗重力筋は徐々に衰えていく傾向があります。この衰えは「サルコペニア」と呼ばれ、筋肉量の減少によって高齢者の活動力が低下し、日常生活に支障が出ることがあります。抗重力筋が弱まると、立ち上がったり歩いたりするのが困難になる場合があり、転倒のリスクも増大します。転倒による骨折やその後の寝たきり状態は、QOLを大幅に低下させることもあります。
抗重力筋を維持し、鍛えることは、姿勢の改善や日常生活の動作をスムーズに行うために重要です。また、これにより慢性的な痛みの予防や、健康寿命の延伸にもつながると考えられます。以下、具体的な方法を紹介します。
抗重力筋を鍛えるために効果的なウォーキングを行うためには、いくつかのポイントを意識すると良いです。
1. 姿勢を正しく保つ
ウォーキングでは姿勢が重要です。背筋を伸ばし、胸を張って歩くことで、抗重力筋がしっかり働きます。顎を引いて前を見ることでバランスが取りやすくなり、抗重力筋の強化につながります。
2. かかとから着地し、つま先で蹴り出す
正しい歩行フォームを意識することで、ふくらはぎや太ももなど、抗重力筋を効果的に使えます。かかとから着地し、つま先でしっかり地面を蹴ることが大切です。歩幅も大きめに保つとさらに効果的です。
3. 坂道や不整地を歩く
平坦な道だけでなく、坂道や不整地を歩くことで、抗重力筋への負荷が増え、効率よく鍛えられます。特に坂道では太ももやお尻の筋肉がよく使われるため、普段と違った筋肉の動きが期待できます。
この3つのポイントを意識してウォーキングを行えば、抗重力筋を効果的に鍛えることができ、姿勢改善や体力向上に役立ちます。
抗重力筋を疲労させないためのストレッチは、筋肉を柔軟に保ちながら、体を支える力を強化するために重要です。抗重力筋を効果的にストレッチするための3つのコツを紹介します。
1. 姿勢を整え、ゆっくりと深呼吸を行う
ストレッチを行う前に、背筋を伸ばし、リラックスした姿勢を保つことが重要です。姿勢を正しくすることで、抗重力筋に効果的にアプローチできます。また、深呼吸を意識しながら行うことで、筋肉がリラックスし、ストレッチの効果が高まります。
2. 大腿四頭筋とハムストリングスを重点的に伸ばす
抗重力筋の一部である大腿四頭筋(太ももの前側)とハムストリングス(太ももの裏側)は、特に重要な筋肉群です。片脚を後ろに曲げて足首を持ち、膝を後ろに引いて大腿四頭筋を伸ばします。また、前屈してハムストリングスを伸ばすことで、姿勢を支える筋肉をバランスよくストレッチできます。
3. 腸腰筋を伸ばすストレッチを取り入れる
腸腰筋は体を前方に引き上げる重要な抗重力筋です。片膝を立てたランジの姿勢をとり、後ろに伸ばした脚の股関節を前に押し出すようにストレッチします。これにより、歩行や立位姿勢に必要な筋力を維持しやすくなります。
これらのストレッチを日常的に取り入れることで、抗重力筋の柔軟性と強さを保ち、姿勢改善や運動機能の向上に役立ちます。
抗重力筋を鍛えるための筋力トレーニングは、姿勢を改善し、日常生活での動作をサポートするために非常に重要です。以下に筋力トレーニングのコツを3つ紹介します。
1. 正しいフォームを意識する
筋力トレーニングでは、フォームが非常に重要です。抗重力筋を鍛えるためには、背筋を伸ばし、胸を張った状態でトレーニングを行う必要があります。正しいフォームを保つことで、筋肉への負荷が適切にかかり、怪我の予防にもつながります。
2. 徐々に負荷を増やす
トレーニングの負荷は、筋力を効果的に向上させるために少しずつ増やしていくことが大切です。抗重力筋をしっかり鍛えるためには、軽い負荷から始めて、回数や重さを徐々に増やしていきます。
3. バランスを重視したエクササイズを取り入れる
抗重力筋は、体のバランスを保つために重要な役割を果たします。そのため、バランスを意識したエクササイズを取り入れることで、より効果的に鍛えることができます。片足立ちで行うエクササイズや、バランスボールを使ったプランクなどは、抗重力筋を強化し、安定性を向上させるのに役立ちます。
これらのポイントを意識して筋力トレーニングを行うことで、抗重力筋を効果的に強化し、姿勢改善や運動能力の向上を目指すことができます。
それでは、抗重力筋のエクササイズ方法をご紹介していきます。まずこちらは、立位姿勢でできる抗重力筋のエクササイズです。
抗重力筋を鍛えるには、正しい姿勢を意識することがBestな方法です。抗重力筋は、筋力トレーニングをすれば鍛える事もできますが、運動習慣がない人はなかなか長続きしません。そのためこちらの姿勢と呼吸の意識をしたエクササイズで抗重力筋を鍛えていきましょう。
【運動のやり方】
【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
次に座位姿勢でできる抗重力筋のエクササイズです。
座位姿勢の安定性を高めるためには腹腔内圧を高めることが重要です。そのため腹式呼吸を意識したエクササイズを実施していきましょう。
また骨盤の後傾姿勢(いわゆる仙骨座り)を改善するためにも骨盤の前後運動を促していきましょう。
【運動のポイント】
【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
次に、四つ這いでできる腹筋群のエクササイズをご紹介します。
一般的にプランクという体幹トレーニングの中でも比較的難易度の低いトレーニングです。プランク運動は、ゆっくりと時間をかけて行うと効果的です。
【運動のやり方】
【回数】
10回×2セットを目安に行いましょう。
抗重力筋の中でも脊柱起立筋や多裂筋を効果的に鍛えることができるダイアゴナルエクササイズのご紹介です。
背中の抗重力筋は、上半身は前方に倒れようとすると主に脊柱起立筋が働くことで姿勢を保持します。背中に位置する脊柱起立筋は、立位や座位の姿勢ではなかなか鍛えていくことが難しい部位ですので四つ這い姿勢でのダイアゴナルエクササイズをお勧めします。
【運動のやり方】
【運動のポイント】
【回数】
10秒×8回を目安に行いましょう。
次に抗重力筋の中でも大臀筋を鍛えることができるお尻上げの運動のご紹介です。
お尻の抗重力筋は腸腰筋と大臀筋が相互に働くことによって姿勢を保持します。お尻上げ運動の際はかかとのみを設置することで太ももよりもお尻の筋肉を効果的に鍛えることができます。
【運動のやり方】
【回数】
10秒×8回を目安に行いましょう。
次に抗重力筋の中でも大腿四頭筋を鍛えることができるハーフクスワットのご紹介です。
大腿四頭筋は、主に重心が後方に位置した際に働き姿勢を保持します。スクワットの際は上半身が前に倒れやすくなるためバランスボールを背中に置くことをお勧めします。
【運動のやり方】
【回数】
10回×3回を目安に行いましょう。
最後に、抗重力の中でも下腿三頭筋を鍛えることができるヒールレイズのご紹介です。
ふくらはぎの抗重力筋は、身体が前に倒れようとすると下腿三頭筋が働き姿勢を保持します。立った姿勢で下腿三頭筋をトレーニングする場合はバランスを崩しやすくなるので椅子などを支持するようにしましょう。
【運動のやり方】
【回数】
10回×3回を目安に行いましょう。
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今回は「抗重力筋トレーニングの理論と実際」をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
抗重力筋は、高齢者の正しい姿勢保持や介護予防などの高齢者トレーニングとしても重要な部位ですので参考にしていただけると幸いです。
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