介護現場のDX化は実際どう?デイサービス管理者の実体験
運営ノウハウ
2024/11/06
運営ノウハウ
科学的介護
更新日:2024/11/05
LIFE(科学的介護情報システム)とは、2021年の介護報酬改定で導入されたシステムです。ここでは、LIFEを理解してから活用したいという介護事業者の方のために、国がLIFEを導入した目的やその運用方法を詳しく解説していきます。
この記事の目次
⇒LIFEへの報告様式を自動作成!LIFE提出が手間なくカンタンに!資料を見てみる
「「LIFE」利用開始までの手順書(画像付きで解説) 」がわかる資料(PDF)を無料プレゼント中!
科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence; LIFE ライフ)とは、全国の介護施設・事業所において記録されている利用者の状態やケアの計画・内容についてのデータを収集し、蓄積したデータに基づいてフィードバックを行う情報システムです。
厚生労働省老健局老人保健課において、以下のように述べられています。
介護事業所では利用者へケアを提供するにあたり、利用者の状態や実施するケアの計画・内容について、定期的に評価し記録を行っています。これらの情報を様式に基づいてLIFEに提出することで、全国の利用者の状態やケアの計画・内容に関わるデータを蓄積することができます。
LIFEでは蓄積したデータに基づいて、介護事業所へフィードバックとして情報を提供します。
フィードバックの情報は、事業所毎のフィードバックと利用者毎のフィードバックの2種類があります。
LIFEによるフィードバックは、各施設や事業所で記録している他の情報と組み合わせて有効に利用することで、質の高いケアを提供できます。
また、LIFEは蓄積されたデータをもとに、研究にも活用されます。全国の事業所や利用者のデータによって、介護分野における新たな発見やフィードバックの充実につながることが期待されています。
LIFEが開始される以前、厚生労働省では2017年度に通所・訪問リハビリテーション事業所を対象としてVISITが運用されました。2018年度には介護報酬での評価が始まり、リハビリテーションに係るデータの収集・分析が行われていました。
また、2020年度にはCHASEの運用を開始し、リハビリテーションに限らず全ての介護サービスを対象として、高齢者の状態やケアの内容などの情報収集を開始しました。
VISITとCHASEが一体となり開始されたのが「科学的介護情報システム(LIFE)」です。LIFEは2021年度の介護報酬改定により新たな加算が創設され、介護事業所におけるPDCAサイクルを回すために活用されています。
参照:科学的介護情報システム(LIFE)について(厚生労働省)
⇒LIFEへの報告様式を自動作成!LIFE提出が手間なくカンタンに!資料を見てみる
LIFEは、データに基づくPDCAサイクルを推進する役割があります。PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)を繰り返すことです。
PDCAサイクルを回すことで、ケアの質の向上につながると考えられています。
介護の現場においても、データに基づくPDCAサイクルを活用することによって、わかりやすく目標を設定でき、関わるスタッフが同じ認識を持ちやすくなります。
ただし、LIFEからのフィードバックを活用する際には数値だけで判断せず、内容を解釈する必要があるでしょう。
フィードバックに含まれる指標値は、各介護事業所で実施された取り組みや利用者の状況などの様々な要因が複合的に影響しています。そのため、指標値がケアの良し悪しを直接的に反映するものではないことに注意が必要です。
以下にPDCAサイクルを活かしてケアの質を高める方法を記載します。
参照:ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)の利活用のための自治体職員向け手引き(令和5年3月 厚生労働省)
科学的介護とは、エビデンスに基づく介護のことを指します。
エビデンスは「根拠」「裏付け」といった意味をもつ言葉です。医療分野では「科学的根拠に基づいた医療(Evidence-Based Medicine::EBM)」を提供することが重要とされています。
EBMとは、文献などを吟味した上で患者への適応や価値観・意向を考慮して専門的な医療行為を行うことです。
それに対して、介護分野における「科学的介護」では、以下の1から3を繰り返します。
介護分野では、医療分野とは異なり、研究による論文などによる科学的根拠の蓄積ではなく、事業所ごとの利用者様のデータを蓄積して活用します。
蓄積されたデータをもとに科学的介護を実施することで、質の高いケアの提供や利用者の重症化予防にも役立つことが期待されます。
参照:科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について(令和3年4月 厚生労働省)
令和3年度の介護報酬改定に関するアンケート調査をもとに、LIFEの利用状況や今後の課題について解説します。
LIFEは各介護サービスにおいて、初年度から意欲的に利用されました。
LIFEの利用状況について「データ登録まで終えている」から「利用申請予定」の回答までを含めると以下のようになります。
LIFEの利用に対して積極的な事業所が多いという結果が示されています。
一方、どのサービスにおいても約1〜3割が「利用申請する予定はない」と回答していました。
その理由として「システムへのデータ登録が負担」「システム全体への理解が負担」といった回答が上位を占めており、LIFEの利用自体が負担となっている施設や事業所もあることがわかります。
また、LIFEへのデータ提出を要件とする加算がいくつか新設されました。その中で、特に「科学的介護推進体制加算」は積極的に算定されています。
科学的介護推進体制加算の算定状況は「加算(Ⅰ)を算定」「加算(Ⅱ)を算定」「算定予定」までを含めると以下のようになりました。
どのサービスにおいても算定状況は5割を超える見込みであり、LIFEの利用申請から関連加算の取得に向けてのデータ提出など、多くの事業者が初年度から意欲的に取り組んでいる状況がわかります。
さらに、今回の改訂ではアウトカム評価を要件とした加算が新設されました。しかし、ADL維持等加算・自立支援促進加算・排せつ支援加算を算定している事業所が少ないという課題もみられています。
たとえば、ADL維持等加算という通所介護に設けられていた加算が特別養護老人ホームにも適用が拡大されました。しかし、86.9%が「算定する予定はない」と回答しています。
理由としては「かかるコスト・手間が加算額に見合わない」が最も多く挙げられていました。
その他、自立支援促進加算や排せつ支援加算は共通して医師が算定要件に関わる必要があります。そのため、医師の業務体制がとれず、算定が難しい施設が多いようです。
LIFE利用状況から考えられる今後の課題としては、ほとんどの事業所で算定されておらず、収集しにくいデータをどう集めて現場に活かすかという点。
また、算定しにくい加算については現場の実情から算定すること自体が難しい可能性も考えられるため、今後の科学的介護の発展のためにも現場に寄り添った加算取得条件の設定なども挙げられるでしょう。
参照:2021 年度(令和 3 年度)介護報酬改定に関するアンケート調査(前編) 令和3年11月
「自立支援」を目的に作られた従来のLIFEですが、様々な課題がありました。
具体的にはフィードバック票がわかりづらい、アウトカムが適正に評価されない、データ提出のタイミングが複雑、評価・入力項目に重複が多いなどの課題が挙げられていました。
以下、令和6年度の報酬改定で新LIFEになったことによる変更点を紹介します。
これまでのLIFEは、フィードバック票のデータの粒度が粗く「データ活用がしづらい」「計画書への反映の仕方がわからない」ことが課題視されていました。「介護に活かせるフィードバックデータ」を提供するために、以下のような見直しが実施されました。
注意点としてLIFEフィードバックを活用しないと運営指導の対象になる可能性が出てきました。
ADL維持改善の取り組み評価の充実化や利得計算がわかりやすくなりました。
従来のADL維持等加算は
という課題がありました。
改善後のADL維持等加算は
のように変更されました。
データ提出のタイミングを「3ヶ月に一回」に統一することで、一括してデータ提出できるようにし、管理の簡略化に繋げました。しかし、ADL維持等加算は従来の提出頻度から変更されておらず、3ヶ月に統一されていません。
LIFEを使用する場合、あらかじめWebサイトから新規の利用申請手続きをした上で、ログインのID設定やユーザー登録を行う必要があります。パソコンとインターネット環境があれば、どこでも無料で利用可能です。
ここでは、LIFEの運用方法と使い方について紹介します。
LIFEの初回利用時のみ以下の項目を実施する必要があります。
まずは国保連から電子請求受付システムのID・パスワードをもらいます。
※自治体によって対応スピードが異なるため注意が必要です
新LIFEの新規利用の手続きをする
その後は、加算の算定要件に応じた頻度で「利用者情報・様式情報の登録」と「フィードバックのダウンロード」を実施します。
以下に介護事業者のデータ提出とLIFEへのデータ提出方法、フィードバックの活用について解説します。
介護事業者がLIFEへ提出するデータは、利用者の状態やケアの計画・内容、評価についての記録であり、加算毎に定められています。
例えば、科学的介護推進体制加算の場合は以下の項目があります。
算定する加算によって重複するデータもあるため事前に確認が必要です。また、LIFEへのデータ提出の頻度も加算によって異なります。
たとえば、科学的介護推進体制加算・ADL維持等加算・自宅支援促進加算は6ヵ月に1回の提出ペースですが、個別機能加算・リハビリテーションマネジメント加算・褥瘡対策指導管理加算・排せつ支援加算などは3ヵ月に1回のペースで提出が必要になります。
さらに、LIFEへのデータ提出は期限が定められており、データの提出は毎月10日までに提出する必要があります。10日の締め切りを過ぎると当該月の加算が得られなくなる可能性があるため注意しましょう。
施設・事業所ごとに算定する加算を確認した上で、評価や記録、LIFEへ提出するデータの準備が大切です。
参照:ケアの質の向上に向けた科学的介護情報システム(LIFE)の利活用のための自治体職員向け手引き(令和5年3月 厚生労働省)
LIFEへのデータ提出方法について解説します。提出方法は、以下の2つです。
1つ目のLIFEへの直接入力は、LIFEの画面上の入力フォーマットから手入力により登録する方法です。この方法は、介護記録ソフトの使用状況に関わらず、インターネットの接続があれば全ての介護事業所で利用することが可能です。
2つ目のCSVファイルの取り込みは、LIFEに対応した介護記録ソフトを用いている場合のみ可能です。介護記録ソフトなどで記録している情報をCSVファイル形式で出力し、LIFEへの取り込みを行う方法です。
これにより、データを何度も入力する必要なく、少ない負担でLIFEへのデータ提出が行えます。ただし、この方法は介護ソフトがLIFEのフォーマットでのCSVファイル出力に対応しているか確認が必要です。
一般的には、介護ソフトを用いることで書類時間の短縮や書類確認などの業務負担の軽減が可能です。
⇒LIFEへの報告様式を自動作成!LIFE提出が手間なくカンタンに!資料を見てみる
LIFEから介護事業所へのフィードバックの内容と活用方法について解説します。
表(1)
出典:科学的介護情報システム(LIFE)による科学的介護の推進について(令和3年4月 厚生労働省)
LIFEの役割はフィードバックデータをもとに、科学的介護に則った質の高いケアを提供することです。そのため、フィードバックを活用することが重要です。
LIFEのフィードバックは、トップ画面から「フィードバックダウンロード」を選び、ダウンロードするファイルを選択することで手に入れられます。
LIFEのフィードバックの種類は、以下の通りになります。
当初、事業所単位のデータしか手に入れることができませんが、2023年6月30日より利用者別、加算別フィードバック票の提供が始まりました。
事業所単位と利用者単位のフィードバックを他の評価情報と組み合わせて解釈することで、事業所全体のケアの改善や利用者のケアプラン改善に活用できます。
ケアの改善に活かす方法として、フィードバックをもとにPDCAサイクル(表1)を回すことが必要になります。
具体的には、P(計画)で施設や利用者様への改善計画を立て、D(実行)で作成した計画を実行します。そして、C(評価)で実行した後の利用者様の状態やケアの実績を評価・記録します。また、フィードバック結果から全国平均と差のある項目をピックアップしながら、Pで作成した目標が達成しているか振り返りをします。
A(改善)では、Cでピックアップした項目について「解決すべき課題」であるかを検討し、Pの計画を見直します。
フィードバックを活用してPDCAサイクルを回し、継続的にケアの改善を続けることが、介護事業所・利用者ごとのケアの質を高めることにつながります。
ここでは、LIFEの活用が要件に含まれる加算について紹介します。
通所・居住サービスにおけるLIFEの活用が要件に含まれる主要な加算には以下があります。
参照:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(厚生労働省)
▶ 初心者でもわかる個別機能訓練加算【総論】算定要件や人員配置を解説
▶ よくわかる!ADL維持等加算の算定要件
▶ ADL維持等加算の計算方法は?バーセルインデックス(BI)や利得の計算式を解説
▶口腔機能向上加算とは|(Ⅰ)(Ⅱ)の違い・算定要件・計画書について
▶科学的介護推進体制加算の算定要件とは?LIFEへの提出頻度や記入例
※デイサービス(通所介護)では算定できません
※デイサービス(通所介護)では算定できません
※デイサービス(通所介護)では算定できません
※デイサービス(通所介護)では算定できません
※デイサービス(通所介護)では算定できません
LIFEの算定を行う際にICTを活用している事業所を紹介します。
ICTを有効に活用することでLIFEに関連した書類業務を効率化できる可能性があり、業務負担の軽減や時間の短縮が図れます。
LIFEによる書類作成と提出は、日々の業務負担が増え、利用者様と向き合う時間が減るという問題がありました。業務量の軽減を図るために導入したのがRehab Cloud リハプランでした。
リハプランは、各種加算に必要な計画書など共通したデータを転帰することが可能で、入力漏れがあれば表示できる機能もあります。
リハプランを活用することで、作業量が多いLIFEへの提出も短時間で実施できるようになり、書類不備のチェックも負担が減りました。
結果、業務負担を軽減することができ、利用者様と向き合う時間を確保しやすくなりました。
LIFEの算定を開始した当初、LIFEへの提出データ作成は業務記録から手入力で行っていました。そのため、時間がかかる上に、作業が複雑で、LIFE提出業務の引継ぎも難しいのではないかと懸念する状態でした。
しかし、Rehab Cloud リハプランを導入することでこの問題を解決することができました。リハプランは出力したCSVファイルをそのままLIFEに取り込み、提出することができます。また、操作の説明もあり誰でも理解しやすいようになっています。
導入後はLIFE提出業務が簡略化し、他職員にもLIFE提出業務を引き継ぐことができるようになりました。業務の簡略化だけでなく、業務の分担や引継ぎも容易となるため事業所に有益です。
日々の加算算定業務や記録業務などで苦労されている人も多いのではないでしょうか?科学的介護ソフト「Rehab Cloud」であれば、現場で抱えがちなお悩みを解決に導くことができます。
例えば、加算算定業務であれば、計画書作成や評価のタイミングなど、算定要件に沿ってご案内。初めての加算算定でも安心して取り組めます。さらに、個別性の高い計画書は最短3分で作成できます。
記録した内容は各種帳票へ自動で連携するため、何度も同じ内容を転記することがなくなります。また、文章作成が苦手な方でも、定型文から文章を作成できるので、簡単に連絡帳が作成できるなど、日々の記録や書類業務を楽にする機能が備わっています。