整容動作の機能訓練とリハビリ:訓練手順と目的・必要な機能とは
機能訓練
2024/11/06
機能訓練
療法
更新日:2024/09/12
年齢とともに筋肉の量が減少していく老化現象のことをサルコペニアといいます。25~30歳頃から進行が始まり生涯を通して進行する老化現象であり、活動量が低下する高齢者に顕著にみられる現象です。ここでは、サルコペニアの症状や原因、診断基準などについて解説しています。
この記事の目次
サルコペニアとは加齢に伴って筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下する状態を指します。
2010年にEWGSOPと呼ばれるヨーロッパのワーキンググループが「筋量と筋肉の進行性かつ全身性の減少に特徴付けられる症候群で、身体機能障害、QOL低下、死のリスクを伴うもの」と定義し、広く知られるようになりました。
サルコペニアは抗重力筋と呼ばれる体を支える筋肉にみられやすく、立ち上がりや歩行が徐々に難しくなり、歩行困難に至る可能性もあるため、注意が必要な症状です。
サルコペニアになる原因は厚生労働省において明確にはされていないと示されていますが、主に不活動が関連すると考えられています。
サルコペニアになると、転倒や骨折のリスクが高まり、日常生活の活動が制限されることも考えられます。また、認知症や心血管疾患などのリスクを高めるとも言われているため、予防の意識が大切な症状と言えるでしょう。
抗重力筋のトレーニングの理論とエクササイズ方法について具体的に知りたい方は、ぜひこちらの記事をご一読ください。
▶︎抗重力筋とは?抗重力筋トレーニングの理論とトレーニング方法を学ぼう
サルコペニアによって引き起こされる代表的な症状に、「筋肉の減少を背景とした運動の困難」が挙げられます。以下に具体例を示しますのでご参考ください。
参照:MEDLEY
サルコペニアによって下肢の筋肉量が減少し、歩く速度が遅くなります。手すりなどを使用しないと立てなくなる可能性もあるでしょう。
イスへ座る動作をする時も、動作が性急となりやすいため注意が必要です。また、バランスが悪くなり、ふらつきが生じやすくなることから転倒のリスクが高まります。
サルコペニアでは全身の筋肉量の減少により姿勢が崩れやすくなり、屈んだ姿勢になりやすいとされています。屈んだ姿勢では足が上がりにくく、つまづきやすくなってしまいます。
筋力低下が無い場合、つまづくと足を出して踏んばることもできるでしょう。しかし、筋肉量が減少していると支えきれず転倒につながる可能性が高くなります。
また、前傾姿勢では周囲が見えにくくなり、事故につながる可能性も否定できません。頻繁につまづき、サルコペニアの症状がかなり進んでいると考えられる場合は注意しましょう。
参照:6月リハビリ講座(一般社団法人神奈川県西地区リハビリテーション協議会)
サルコペニアでは手の筋肉も減少するため、握力低下が生じます。サルコペニア診断基準では、握力が男性28㎏未満、女性18㎏未満を握力低下を有するとしています。
握力が低下するとペットボトルのフタや瓶のフタなどが空けにくくなり、日常生活内で不便を感じることも増えるでしょう。
また下肢の筋肉減少からバランスがとりにくくなると、ズボンを立って履けなくなったり、歩く速度が低下し横断歩道を渡るのが困難になったりすることもあるでしょう。
日常生活に不便さや危険を感じることが増えると、活動しようという気持ちが弱くなり、日常の活動量が低下してしまう恐れがあります。
参照:日常生活機能と骨格筋量,筋力との関連(第 53 回日本老年医学会学術集会記録)
参照:総論 フレイルの全体像を学ぶ3.フレイルとサルコペニア:サルコペニア診断の変遷とAWGS 2019(公益財団法人長寿科学振興財団)
サルコペニアの原因は明らかになっていない面もあるとされていますが、以下のような原因が挙げられています。
また「世界のサルコペニア研究の最新知見」では以下のような原因が挙げられています。
一次性サルコペニア | 二次性サルコペニア | |
---|---|---|
原因 |
|
|
一次性サルコペニアは、加齢性と表現され、加齢以外に原因が明らかではない場合を指します。また、二次性サルコペニアは1つ以上の原因が明らかな場合を指します。
参照:世界のサルコペニア研究の最新知見 荒井秀典
参照:サルコペニアの原因(公益財団法人長寿科学振興財団)
サルコペニアとフレイルは高齢者の健康状態を表す言葉ですが、それぞれ異なる意味を持っています。
サルコペニアは「筋肉量が減少し、筋力または身体機能の低下した状態」を指し、フレイルは「高齢による衰弱」を指します。
サルコペニアは筋肉量の低下を主としており、著しく転倒や寝たきりのリスクが高まる状態です。筋肉の中でも特に抗重力筋と呼ばれる姿勢を保持する筋力の低下がみられるとされており、それによって姿勢の保持が難しくなることに注意する必要があるでしょう。
筋肉量の減少は加齢に伴って起きる変化ではあります。しかし、「ある一定量以上に骨格筋量が減少した場合には、生理的な骨格筋量低下と区別するべきである」との考えのもと、サルコペニアという概念が提唱されました。
サルコペニアは、単なる加齢に伴う筋肉の減少ではなく、より筋肉の減少の程度が著しい状態を示しており、そこがフレイルとは違う部分です。
一方、フレイルは予備能力の低下による身体機能の低下を示し、要介護に至る前の段階を指します。
フレイルに関して理解を深めたい方は以下の記事をご参考ください。
参照:高齢者の特性を踏まえた保険事業ガイドライン
参照:世界のサルコペニア研究の最新知見 荒井秀典(国立長寿医療研究センター)(日本食生活学会誌 第29巻 第2号81-84)
サルコペニアには、身体機能の低下や筋力低下に基づいてリスクを評価する基準が策定されています。
サルコペニアの定義は、筋肉量の低下のみでなく、筋力や身体機能を含めて評価するべきであるという考え方が一般的になってきました。
よって、握力や歩行速度など、特別な機器を用いなくても測定できる項目が診断基準になっています。
自宅で行えるチェックリストを以下に示しますのでご参考ください。
チェックリスト1
0点 | 1点 | 2点 | 10点 | |
---|---|---|---|---|
4.5kgの荷物の持ち運びはどの程度困難ですか? | 全く困難でない | いくらか困難 | 非常に困難、またはできない | |
部屋の端から端までの歩行するのにどの程度困難がありますか? | 全く困難でない | いくらか困難 | 非常に困難、またはできない | |
椅子やベッドからの移動はどの程度困難ですか? | 全く困難でない | いくらか困難 | 非常に困難、またはできない | |
階段10段をのぼることはどの程度困難ですか? | 全く困難でない | いくらか困難 | 非常に困難、またはできない | |
過去1年で何度転倒しましたか? | なし | 1〜3回 | 4回以上 | |
ふくらはぎの最大周囲長は何cmですか? |
男性34cm以上 女性33cm以上 |
– | – |
男性34cm未満 女性33cm未満 |
合計11点以上でサルコペニアの疑いがある |
チェックリスト2
男性 | 女性 | |
---|---|---|
握力 | 28kg未満 | 18kg未満 |
5回立ち上がりテスト | 12秒以下 | 12秒以下 |
握力もしくは、5回立ち上がりテストの値が示した数値以下であればサルコペニアの可能性がある。 |
※5回立ち上がりテストは、椅子に座った状態で両手を体側に置き、5回連続で立ち上がりと着座を繰り返します。姿勢を正し、できるだけ素早く行います。全ての動作を終えるまでの時間を測定します。
上記のチェックリストに引っかかった場合は、サルコペニアの可能性が疑われます。その場合、生活習慣の改善や健康教育が推奨されますが、確定診断のために病院受診をおすすめします。
参照:サルコペニア診療ガイドライン
参照:サルコペニア・フレイル 社会医療法人札幌清田整形外科病院
サルコペニアを予防するためには、運動と栄養管理が重要です。サルコペニアは筋肉量の低下や筋力の低下によって特徴付けられます。
運動によって筋肉を鍛え、栄養摂取により筋肉の合成を促すことがサルコペニアの予防に繋がります。
たんぱく質は筋肉を作る上で重要な栄養素です。運動は筋肉の成長に欠かせない要素ではありますが、準備として食事から適切な量を摂ることが求められます。
サルコペニア診断実践ガイドでは、体重1kgに対して1日あたり1.2〜1.5gのたんぱく質摂取がサルコペニア予防のために必要とされており、体重50kgの方であれば1日あたり60〜75gのたんぱく質摂取が勧められます。
たんぱく質を摂りやすい食材としては以下が挙げられるのでご参考ください。
上記の食品を上手く活用して食事でたんぱく質を摂ることが大切です。しかし、それのみをたくさん摂れば良いというものではありません。
サルコペニアを予防するためには、主食や副菜などを含めてバランスの良い食事を心がける必要があります。筋肉のみでなく、体の機能を維持するためには多様な食品を摂ることが大切だと考えられています。
筋肉の量や体の機能を良好に保つためには、以下の10食品群を摂ることが勧められているのでご参考ください。
上記の10食品を毎日バランス良く食べることが重要だとされています。
持病などによっては、食べることを制限される食材もあるため、糖尿病などの疾患をお持ちの方はかかりつけ医に相談しつつ食事を考えることをお勧めします。
参照:地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連(日本公衆衛生雑誌)
参照:サルコペニアに対する栄養(公益財団法人長寿科学振興財団)
サルコペニアを予防するためには、定期的な運動を取り入れることが推奨されています。特に骨格筋に負荷をかけながらトレーニングを行うレジスタンス運動が有効です。
たとえば、スクワットなどのレジスタンス運動をすることで、抗重力筋と呼ばれる体を支えるための筋肉を効果的に鍛えることができるでしょう。
一般的に骨格筋の機能向上を目指す場合、1repetition maximum(1RM)の70~80%程度の負荷で実施すべきと考えられています。
1RMとは、1回だけ実施できる最大負荷のことを指し、筋力の指標として良く用いられます。たとえば、1回だけ持ち上げられる重さが50kgの場合、35 〜40kgの重さが1RMの70〜80%という計算になるでしょう。
つまり、一般的な骨格筋の機能向上のためには「かなりきつい」運動を要するのです。
しかし、高齢者においては高負荷のトレーニングは適切ではありません。高齢者においては1RMの50%程度の低負荷でも効果が得られる可能性が示されています。これは運動負荷としては「楽である」〜「ややきつい」と感じる程度の運動です。
つまり、上記のような適切な運動負荷で抗重力筋を鍛えることがサルコペニア予防において重要になるでしょう。
抗重力筋を鍛えるための運動は以下のレジスタンストレーニングが挙げられます。
サルコペニア予防のためにトレーニングすることは重要ではありますが、体調が悪い時には無理をしないようにしましょう。
サルコペニアの予防には運動と栄養管理が欠かせません。筋力を向上させるためには継続的な負荷が必要になるため、定期的な運動を生活習慣として取り入れることが重要です。
参照:心拍数と運動強度(公益財団法人長寿科学振興財団)
参照:サルコペニアに対する運動(公益財団法人長寿科学振興財団)
参照:要支援・軽度要介護高齢者を対象とした主観的運動強度による運動負荷強度設定方法の考案(理学療法科学 30(2):187–192)
ここまで説明してきましたが、デイサービス利用者の中にはフレイル・サルコペニアという状態の方が多くいらっしゃいます。
デイサービスで使える体操方法について、弊社理学療法士・作業療法士がまとめていますので、以下の記事を参考に、状況に合わせてうまくご活用していただけると嬉しいです。
サルコペニアは、予防と治療が可能です。サルコペニアの症状が疑われる場合は、早めに対策することが大切です。加齢のみでなく、病気が原因のことも考えられるため、かかりつけ医への相談も検討しましょう。
適切な栄養摂取や適度な運動がサルコペニアの予防に役立ちます。早期の治療と予防策の実施により、サルコペニアの進行を遅らせることや改善が期待できるでしょう。
運動を実施する際は栄養状態に配慮しながら、自分に合った運動を継続的に行うことが大切です。自宅で行える予防策も数多くあるので、ぜひ本記事を参考にしながらサルコペニア予防に意識を向けてみてはいかがでしょうか。
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